墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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~~エピローグ~~  墓参りと縁

 

 猿山での激戦から翌日。

 

「・・・・・・。」

 屋敷の一室で美々子が何かを見て、ニコニコしている。

 

「・・・・・・。」

 太郎も美々子の傍で付き従うようにジッと座って一緒に何かを見ている。

 

「これはね、私のお父さんなのよ。」

 そんな二人を導くようにアヤメが指差しながら、美々子達が見ているモノについて説明する。

 

 どうやら、美々子達が見ているのはアルバムのようだった。

 

 そんな美々子達がアルバムを見ていると、

「お前ら、なにしとんねん?」

 外を散歩していた猿・・・賢太が戻ってくるなり、美々子達に何をしているのか尋ねた。

 

「あっ、ケンちゃんお帰りっ!」

 美々子は賢太の素っ気ない言葉にも満点の笑みで答える。

 

「うむ、美々子殿がアルバムと言うモノを引っ張り出してみていたので、アヤメ殿に都度都度説明してもらっていた所だ。」

 太郎が丁寧に現状を賢太に伝える。

 

「ほぉ~~っ・・・なんや、おもろそうやな・・・俺にもみしたれやっ。」

 賢太が好奇心だけでヅカヅカと土足で輪の中に入ってくる。

 

「ふふふふっ、そんなおもしろいものじゃないけど、どうぞ。」

 アヤメが興味津々な賢太のハードルを下げるように微笑んだ。

 

 

 

 賢太は3人が座っている輪の外からアルバムを見下ろすように目線を落とすと、

「ッ?!」

 賢太は一枚の写真に釘付けになった。

 

 その瞬間、だれしもが賢太の立場になったなら、神のイタズラと思わずにはいられなくなっただろう。

 

 その日、たまたまアルバムを見ていた美々子達。

 その一枚の写真に目を落とす瞬間に散歩から帰ってきた賢太。

 今思えば、もしかしたら、この地に訪れたことも運命だと言わざるを得ない確信の瞬間がその時、賢太に訪れたのだった。

 

 

 

 賢太がアルバムを見て、固まっていると、

「どうしたの?」

 美々子が賢太を不審に思って、上目遣いで賢太を見上げながら声を掛ける。

 

「・・・・・・アヤメ・・・この人は・・・。」

 賢太は声を絞り出すようにある一枚の写真の一人の人物を指差しながら、アヤメに質問する。

 

「え?」

 アヤメが突然の質問に戸惑いながらも賢太の指先が導く先に視線を送る。

 

 アヤメは賢太の指に導かれて、一枚の写真を見てみると、そこには白黒の鼓條家一門の集合写真があった。賢太の指先はその集合写真に写っている一人、抜けて大柄な男性を指差していた。

 

「あぁっ・・・この人?この人は事情があって、今は一門の人ではないだけどね・・・私の祖父と同世代の人で、かなりの使い手だったって、祖父から聞いているわ。」

 アヤメは賢太がなぜ、この人物に対して質問したのかを不思議がるも、素直に丁寧に質問に答える。

 

 

 

「・・・・・・オジキ・・・。」

 賢太は写真に写る自分がもっとも尊敬していたオジキを指差したまま座り込み、目に焼き付けるように見入る。

 

 

 

「オジキ?」

 美々子が賢太が発した不思議な言葉に目を点にする。

 

「・・・霊界での知り合いか?」

 太郎が何かを察するように賢太に尋ねる。

 

「・・・・・・知り合いも何も、俺が霊界で一番世話になった恩人や・・・。」

 賢太はオジキをジッと見たまま太郎の質問に答える。

 

「・・・そう・・・そうだったのね。この人は、強くて立派な人だったって、祖父は言ってたわ・・・霊界でも、さぞ慕われていたのね・・・。」

 アヤメは賢太の過去形に何かを察して、賢太にそれ以上は聞かなかった。

 

「・・・名前の読みが同じやったから、不思議には思おとったが・・・まさか、オジキが美々子の親戚やったとはな・・・。」

 賢太はオジキを見ていた目を切なそうに悲しげにウルませながら走馬灯のように、オジキとの日々を思い返す。

 

「私の祖父のそのお父さんが家長の時にね・・・喧嘩別れして、破門になったのよ・・・でも、後々その理由を知った祖父がね・・・家長を継いだ時に、遺骨は結局見つからなかったんだけど、お墓だけは作って、一門に形だけでも戻したのよ・・・・・・行ってみる?」

 アヤメがオジキの生前の話を賢太に簡単に説明して、最後にしっかりとしたそれでいて、優しい眼差しを賢太に向けて、オジキの墓参りに誘う。

 

「・・・・・・。」

 賢太は言葉は出なかったものの、アヤメをしっかりと見て、無言で答えた。

 

 

 

 

 

 賢太達4人はアルバム鑑賞を一端止めて、皇峨輪が収められているあのお寺へと足を運んでいた。

 

「・・・オジキ?さん。が破門になった後ね・・・祖父が家長を継いだ時に彼が死んだことを風の噂で祖父が知ってね、彼の遺骨の行方を一生懸命捜したんだけど、結局は分からなかったの・・・でも、どうしても彼のお墓を作りたかった祖父が、周囲に反対されるのを家長の権限で押し切ってね、無理やり作ったのよ・・・。」

 アヤメが一門のお墓の少し離れた脇に小さく立てられたお墓に手を合わせながら、賢太に丁寧にお墓の経緯を話す。

 

「・・・・・・。」

 賢太も静かにオジキの墓に手を合わせながら、アヤメの話をジッと聞いている。

 

「おばあちゃんの?・・・おじいちゃんは本当にその人が好きだったんだねっ。」

 美々子は余りにも遠い血筋に困惑しながらも、理解できる範囲でアヤメに笑顔を向けた。

 

「・・・そうねぇ~・・・霊能力者としても、人としても、尊敬できる人だったって・・・普段は言葉数の少ない祖父が珍しく饒舌《じょうぜつ》だったものね・・・。」

 アヤメが昔を遠い眼差しで思い返しながら美々子に語る。

 

 

 

(・・・オジキ、あんたが俺を導いてくれたんか・・・ありがとうなっ。)

 賢太はオジキの墓をジッと見ながら、美々子との出会いや、今回の皇峨輪との出会いを含めて、全部が神などと言うあいまいな関係のものより、尊敬するオジキの導きだったのではないかと信じて疑わない。

 

 

 

「・・・縁って、不思議なものね・・・オジキさんの知人が美々子ちゃんの式霊になって、ここに戻ってくるなんて・・・。」

 アヤメがニコニコと賢太を見ながら、そう話す。

 

「・・・知人なんて、そんな大層なもんちゃうで・・・まぁ、一の子分ではあるけどなっ・・・。」

 賢太が普段は見せない柔らかな微笑をアヤメに返す。

 

「・・・子分なら、そのオジキという人物の骨が埋葬されている所も分かるのではないか?」

 太郎が賢太にそう尋ねる。

 

「・・・・・・いや、俺が言うわけにはいかへん・・・確かに俺は、オジキが埋葬されてる所を知っとるが、オジキはあっちでも頑なに血筋のもんにも言わんかったんや・・・名前は使えど、男がキッチリ線引きしとるところを本人以外が越えるわけにはいかんやろ・・・。」

 賢太はオジキが信念を持って、無縁仏でいる事を選択した考えを自分なりに汲み取り、尊重して、しっかりと太郎に答える。

 

「・・・そうね・・・オジキさんが霊界でもそうだったのなら、そこを曲げるわけにはいかないものね・・・。」

 アヤメがオジキの墓に目線をゆっくりと戻しながら、賢太の考えに賛同した。

 

「そのオジキさんは息災なのか?」

 太郎が何気なく、賢太にオジキの現状を尋ねる。

 

「・・・あぁ、ワロとるよ・・・満面の笑みでな・・・。」

 賢太はオジキの墓をニヤリとみながら、そう答える。

 

 賢太は血筋である美々子やアヤメにオジキの真実を言わなかった。いつかはバレる事ではあるが、自分の口から言うべきではないと思ったからだ。

 

 賢太は誰よりも早く、オジキの墓から背を向ける。

「・・・しみったれた姿はここまでや・・・帰るで・・・。」

 賢太はそう言い残して、美々子達を置いて、霊園から去っていく。

 

「・・・そうね・・・そろそろ、帰りましょうか。」

 アヤメがそう言いながら美々子に手を差し出す。

 

「うんっ。」

 美々子はアヤメから差し出された手を取り、笑顔を返す。

 

「・・・・・・。」

 太郎は殿を務めるようにしっぽを左右にゆっくり揺らしながらその場を去った。

 

「・・・・・・。」

 賢太が去りながら、背を向けつつ、不意に右手を上げて、誰に対してでも無く軽くその手を振った。

 

 美々子達はその光景を不思議に思っていたが、その後ろで、墓の前でオジキが仁王立ちで、微笑んで腕組みをしている姿が見えるものは賢太以外にはいなかっただろう。

 

 

 

 

 

 




登場人物5



 アヤメ
 美々子の祖母。お茶の名産地の田舎に住んでいる。霊能力者。
 

 ムネナリ
 美々子の祖父。アヤメの夫。霊能力者。腰痛持ち。


 太郎
 あの有名なしっぺい太郎の霊。付喪神『皇峨輪』の化身。
 茶道に精通していて、アヤメ達とは茶飲み友達。




 悔畔(ぶはん)
 アヤメ達の住む田舎を襲おうとした、ろ組の悪霊。
 力士のような巨漢で張り手が得意。



 皇峨輪
 しっぺい太郎の骨を混ぜて作られた腕輪。長く大切に奉納されていた事で付喪神となる。
 皇峨輪を着けた者の全ステータスを大幅に上昇させる。



 虎丞
 2m近い大男。お坊さんのような服装をしている。頭も丸めて、手拭を巻いているが、額には大きな傷があるのがはみ出て見える。性格は寡黙だが、ハッキリと言う時は言う。組織をまとめているだけあって、人望は厚い。賢太が尊敬する霊界の恩人。
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