墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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闘々丸   *挿絵有

 闘々丸は今まさに善朗の魂を取らんと、全力で刃を振りぬこうとしていた。

 そんな闘々丸の脳裏に去来するのは・・・。

 

 

 

 

 

(姉上ッ、お見事ッ!)

 闘々丸は久々に姉の大前と共に菊の助の腰に揃い踏みで戦場に来ていた。

 菊の助が放つ大前が敵を切り捨てていくと、闘々丸は自慢の姉を高々と言葉で持ち上げる。

 

(ハッハッハッハッ、いくらでも来いというものだッ・・・闘々丸ッ、お前の出番はないぞっ!)

 にこやかに大前は菊の助に振るわれながら、妹に胸を張る。

 

 闘々丸は自分のことのように、その言葉が誇らしかった。

 

 

 

(はぁ~~っ・・・今日も留守番か・・・姉上は今どうしているだろう?)

 闘々丸は菊の助の寝室に飾られたまま、今も戦場で菊の助と共に戦っている姉の事を思いふける。

 

 

 

(・・・退屈だ・・・今日も仰々しい寄り合いに連れてこられた・・・姉上は戦場に連れて行ってもらっているのに・・・私は今度いつ連れて行ってもらえるのだろうか・・・。)

 きちんとした正装をした菊の助の腰に一本のみ差されて、どこか不満げな闘々丸がぼやく。今日は大前の方が菊の助の寝室で一人留守を守っているようだった。

 

 

 

 

 

 闘々丸の脳裏に懐かしい明るい輝きを放つ記憶が過ぎ去っていく中で、突如、どす黒い感情に覆われた記憶がこびりついてきた。

 

(どうして・・・どうして、私だけこんな目に合うんだっ・・・どうして、大前は・・・ッ。)

 闘々丸は名もろくに知らない女に握られて、自分を菊の助に向けられることに、これ以上ない憤りを隠せない。その思いは、いつしか、自慢の姉だった大前に向けられる。

 

「・・・お許し下さいッ、菊の助様・・・こうするしか、わが国は・・・わが国は救われない・・・。」

 白無垢を着た女が涙を流しながら菊の助を刺そうと菊の助の方に切っ先を向けて、力一杯闘々丸を握りこんでいる。

 

「殿ッ!お逃げ下さいッ!▽○国の兵が迫っております!」

「うわあああああああああああっ!!」

「おおおおおおおおおおおおっっ!!」

 部屋の外から菊の助の部下と思われる男の叫び声が響く。それを掻き消すかのように人々の合唱が屋敷中に木霊していた。

 

「・・・世知辛い世の中じゃねぇか・・・是非もなしって・・・ことかね・・・。」

 菊の助はどこか悟ったような瞳で新妻になるはずだった女を見て、そうこぼした。

 

 

 

 

(・・・私はいったいなんなんだ?)

 

 

 

 

 闘々丸の記憶は、菊の助の体内に自分が刺し込まれる以降、フラッシュバックするかのようにパラパラと駆け巡っていく。

 

 戦利品として、あの女が自分の父親に闘々丸を差し出す。

 炎に包まれている部屋の中、闘々丸を握るあの女が、自分の首元に刃を走らせる。

 どこぞの知らない殿様が、武勲の証として、闘々丸を部下に振舞う。

 どこぞの知らない男が、妻の不貞を暴いて、闘々丸を使って、怒りに任せ、妻と子供を殺める。

 闇夜に紛れて、賊が闘々丸を盗み、金銭問題で揉めた後、闘々丸を使って仲間を殺していく。

 

 殺める殺める殺める殺める殺める殺める殺める殺める

 殺める殺める殺める殺める殺める殺める殺める殺める

 殺める殺める殺める殺める殺める殺める殺める殺める

 

 子供だろうが、女だろうが、老人だろうが、その刀身は人の生き血をすすって行く。

 

 

 いつからだろう?

 

 

 それが自分の意志で出来るようになったのは・・・。

 

 

 

 

 

(闘々丸・・・ワシはお前を許さぬぞッ!)

 般若の如く、顔を怒りで歪める自分の自慢の姉がそこに立っていた。

 

(・・・どの口が言うのか?)

 闘々丸は絶対勝てない強敵を前に、その敵の言葉に呆れていた。

 

 ユルセナイ許せない赦せないゆるせない

 赦せない許せないゆるせないユルセナイ

 

 

 

 

 

(オマエヲユルセナイノハ、アタシノホウダッ!)

 闘々丸は善朗を狙うその切っ先を正確に定める為に力一杯握りこむ。

 

 

橙刀 烽炎連刀(とうとう ほうえんれんとう)」〔ゴゴゴゴゴゴッ、ズバアアンッ、ズバアアアアアンッ!〕

 闘々丸の大業に苦しんでいた善朗は、ダメージが回復するや否や、空中で体勢を立て直し、こちらも初見の大技を迫る闘々丸に放つ。

 

 

「ナニッ、バカなッ・・・・ぬあああああああああああああっ!」

 闘々丸は突然放たれた大技に度肝を抜かれて、反応が遅れてしまう。

 

(どこまでも、コシャクなガキだっ!・・・似たような業を一度ならず、二度までも使いやがってっ!)

 闘々丸はモロに食らってしまった善朗の技をなんとか刀で致命傷をそらし、後方に弾かれた後に地面を転がる。

 

 

 

蒼刀 一刀氷心(そうとう いっとうひょうしん)』〔ヒューーーーッ、パキパキパキパキキィーーーーンッ〕

「ナッ?!」

 地面を転がり、体勢を立て直そうとした闘々丸の身体に何かが触れ、通り抜けた瞬間、全身が凍り付いて動けなくなる。

 

 

 

「『蒼刀』は触れるもの全てを凍らせる一刀を振り、その剣圧から繰り出される飛ぶ斬撃に触れるものも全てを凍らせる技だよ・・・流石のお前でも動けないようでよかった。」

 ハッキリとした足取りで、善朗は闘々丸との距離を詰めながら、技の説明をする。

 

「・・・お前・・・は・・・いったい・・・。」

 片膝をついて、善朗を見据えたまま凍って動けない闘々丸が驚愕の色を隠せないまま、年端もいかぬ少年と侮って闘っていた者の正体を改めて尋ねる。

 

 

「俺は善湖善朗・・・師匠である『虹色の刀士』菊の助の弟子だ。」

 闘々丸を自分の間合いにキッチリ納めた善朗が、そう胸を張って、自分が何者なのかを大きな声で示す。

 

「・・・・・・。」

 善朗の名乗りをどこか孫を見る好々爺の顔で静かに見守るのは菊の助。

 

 

 

 勝負はついた。

 

 

 

 あの圧倒的とも言える化け物『い組』の悪霊、闘々丸は年端もいかぬ少年善朗に討ち取られる。そこに居た誰もがそう確信した。

 

 

(・・・姉上・・・やはり、姉上はお強い・・・。)

 壮絶な戦いを繰り広げた闘々丸は、ここにきて全ての毒気が抜け、なぜか心が晴れやかだった。

 

 

 闘々丸の目には、善朗がしっかりと大前を握っているにも関わらず、その善朗のすぐ後ろで自分を厳しい目で見る誇らしい姉の威風堂々たる姿がハッキリと見えた。

 

 

赤刀 活火激刀(せきとう かっかげきとう)

 

 

「御見事」

 

 

 闘々丸は迫り来る地獄の業火の一刀を全身で受け入れて、潔く笑いながら散っていく。

 後にそこに残ったのは、血の海にポツンと佇む折れた脇差が一本あるだけだった。

 

 

 

 闘々丸が完全に消滅して、戦いが終わった時、

(・・・あぁ~~っ、楽しかったなぁ~~・・・。)

「ッ?!」

 善朗は聞き覚えのある声が聞こえたような気がして、辺りを見回した。

 しかし、どこを見ても、人はいるものの、声の主らしき人物を見つけることは叶わなかった。自分と同じぐらいの少年の無邪気に笑う声だけが、善朗の頭の中に木霊して、こびりついていた。

 

 

 

 

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pixivにて、挿絵有
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