墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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妖怪化

 

 

「おいっ、どうなってんだよっ!大前っ、大前どこだっ?!」

 善朗は闇の中で必死に叫ぶ。

 

 目の前の闇の中、一つ大きく開いた穴から、自分を一人称ゲームで見ているかのような映像が先ほどから流れている。その映像を見ることしか出来ない善朗。善朗は闇の中で、もがき暴れながら、誰かに叫んで自分が今どうなっているのかを探っていた。

 

(どうなってんだよ・・・大前の声も聞こえなくなって、周りは真っ暗だし、さっきからFPSやってるみたいだし・・・。)

 善朗は必死に闇の中を見回しながら、自分の置かれた状況を理解しようとしている。

 

 

 

 そんな戸惑う善朗の様子を見ていた者が居た。

「おいおい、暴れすぎだぞ兄弟。」

 暗闇から聞き覚えのある声が善朗の耳に届く。

 

 

 

「えっ?!」

 善朗は声のする方向に身体を向けてみてみると、その声の主の姿に驚いた。

 

 そこに立っていたのは、全く瓜二つの善朗自身だったからだ。

 

「今まで随分楽しんだろ?・・・今度ぐらい俺に譲ってくれよ。」

 もう一人の善朗がニヤニヤしながらそう善朗に話す。

 

「・・・譲る?」

 自分の言葉の中の違和感に反応する善朗。

 

「そうだぜ・・・大事な身体・・・あっいや・・・もう死んでるから魂か?・・・まぁ、その魂を大事に使い分けようって提案だ。」

 もう一人の善朗が腕組みをして、ニヤケながら善朗にそう近付く。

 

「使い分けるって・・・これは・・・この身体は俺のだっ!お前、誰だよっ?!」

 善朗は訳も分からない相手の提案を当然のように突っぱねる。

 

 善朗の当然の言動をもう一人の善朗は鼻で笑うが、

「そっちこそ、何言ってんだ?・・・俺が今までつかわせてやってたんだぞ・・・。」

 もう一人の善朗は苛立ちから笑みが消える。

 

 同様に右も左も分からずにイライラが頂点に来ていた善朗は行動に出る。

「お前、悪霊か何かか?・・・大前をどこにやった?俺をどうする気だっ。」

 善朗はもう一人の自分に突然掴みかかって、状況を聞きだそうとする。

 

「・・・・・・気が変わった・・・仲良く一緒に使おうと思っていたが・・・消えろっ。」

「っ?!」

 もう一人の善朗は善朗の行動に怒りをにじませる表情で、自分の胸倉を掴む善朗を巧みに振りほどき、

 

 〔バキッ!〕

「グワッ?!」

 振りほどいた瞬間に左ストレートを善朗の顔面に放って殴り飛ばした。

 善朗はきれいにパンチを食らって、思わず吹っ飛ぶ。

 

 無様に吹っ飛んだ善朗を怒り交じりの哀れむような目で見るもう一人の善朗。

「・・・弱い・・・俺がこんな奴に今まで主導権を握られてたなんて、情けなさ過ぎる。」

 怒りを前面に押し出してきたもう一人の善朗が吐き捨てるようにそう言葉を善朗にかけた。

 

(・・・なんなんだ・・・ここは?・・・俺、どうしちまったんだ・・・。)

 善朗は殴ってきた自分を睨み付けながら、自分の中の混乱を収めようと必死だった。

 

 

 

 戸惑う情けない善朗に呆れたもう一人の善朗は渋々と口を開く。

「チッ・・・冥途の土産に教えてやる・・・ここは俺とお前の頭の中だ・・・俺とお前は二人でひとつ・・・今までは表にお前が出てたが、やっと俺の番が回ってきたんだ・・・優しく分け合おうと思ったが、抵抗するなら邪魔な大前と一緒に消えろっ。」

 もう一人の善朗はズボンのポケットに無造作に両手を押し込んだ状態で、ふんぞり返りながら善朗を見下ろして、そう言葉を吐きかける。

 

 

 善朗はもう一人の善朗の言葉にカッと目を見開く。

「大前を消しただとっ!」

「ッ?!」

 善朗は大前を消したといったもう一人の自分に堪忍袋の緒が切れたのか、咄嗟に斬りかかる。

 その善朗の行動にハッと驚いたのはもう一人の善朗。

 

 〔ガキンッ!〕

 二つの刃がお互いの中心で交わり、火花を散らす。

 

「ッ?!」

 自分の出した刀とそれを受けたもう一人の自分の出した刀とのつばぜり合いに善朗自身が驚いた。

 

「チッ・・・めんどくせぇ~な・・・あがくんじゃねぇ~~よっ。」

 もう一人の善朗がそう言いながら、今度は善朗の刀を受け流して、斬りかかる。

 

 〔ガキンッ!ガガキンッ、ジャキンッ!〕

 先ほどの殴り合いとは違い、刀の斬り合いで一歩も譲らない善朗。

 

 これまでの戦いと訓練、そして、修行が善朗の血と肉にしっかりとなっている証拠だった。

 

「・・・やるじゃねぇ~か・・・まさか、自分の中でこんなにワクワクしてくるとは思わなかったぜ・・・。」

 もう一人の善朗は舌なめずりをして、ニヤリと笑う。

 

 

「・・・お前がなんなのか・・・ここか何処なのかも、大体分かってきた・・・。」

 もう一人の善朗とは裏腹に、刀を構える事で冷静さを取り戻し出し、頭が落ち着いてきた善朗。

 

 

 それと同時に今まで、漫画やアニメの知識がここにきて、自分を冷静にしてくれるとは夢にも思わなかったと実感する善朗。ある種の答えが善朗の中で出た。

 

「ほほぉ~~・・・ちょっと見直してきたぜ、兄弟。」

 我流の形にはまらない構えで善朗を見るもう一人の自分。

 

「・・・俺が二重人格だったなんて驚きだ・・・。」

 善朗は自分の中で出た結論をそう口にする。

 

 

「・・・チッ、やっぱバカだな・・・興が冷めたぜ・・・。」

 そういうともう一人の善朗は刀をパッと手から消して、暗闇に唯一映る外の映像に目をやる。

 

 

「なっ・・・なんだよっ?!きっ、斬るぞ・・・。」

 目の前の相手の余りの無防備な行動に毒気が抜けたのは善朗。

 

「お前とやりあってるより、断凱とやりやってた方が数万倍楽しいぜ・・・。」

 もう一人の善朗はそう言いながら、映像に映る断凱の姿をニヤニヤしてみている。

 

 そこには先ほどから、断凱と闘っている映像がずっと流れていた。映像に映る断凱はおどろおどろしい怪物で、とても自分が闘っている相手とは信じ難かった。しかし、映像の向こう側の一人称の自分は断凱の攻撃をいとも容易く往なして、怖がるような相手とも思えなかった。

 

 

「いいね、いいね・・・断凱はプライドが高くてな・・・悪霊のくせに妬みや憎しみ、恐れなんてもんがわかってねぇ・・・断凱は強いが、このままじゃ、悪霊止まりだ・・・それじゃ、楽しくないのよ・・・。」

 もう一人の善朗は、映像に映る断凱を自分なりに総評して、そう語っている。

 

 

「・・・・・・。」

 断凱を楽しそうに見つめているもう一人の自分を不思議そうに見る善朗。

 

「断凱のプライドをぶち壊して、踏みにじって、粉々にして、悲壮感をぶちまけさせたら・・・奴は化けるぜ。」

 もう一人の善朗はそういって、笑みを善朗に向ける。

 

「・・・お前は断凱をどうしたいんだ?・・・悪霊連合は止めないといけないんだぞ。」

 もう一人の自分の思考が全く読めない善朗がもう一人の善朗に、素直にそう尋ねる。

 

 

 

「それだけじゃ、たのしくねぇだろ?」

 一言だった。

 

 

 

 もう一人の善朗はあっさりとそう言い放って、にやりと笑う。

 その時だった。

 

 

 

「ヨシロウサアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!」

 善朗の頭の中に、悲痛な乃華の叫び声が木霊した。

 

 

 

「ひゃははっ、いいエサだ・・・断凱がいよいよ化けるぜ・・・。」

 もう一人の善朗がそう笑うと、映像に乃華達が映りこんだ。

 どうやら、主導権のあるもう一人の善朗が乃華の声に反応したようだった。しかし、

 

「ッ?!」

 善朗は乃華達の様子を見て、戦慄する。

 

 乃華に佐乃が覆いかぶさり、今にも二人に飛び掛らんとする断凱の姿が映ったからだった。

 

 

 〔ブチッ〕

 何かが切れる音が善朗の頭の中に響いた。

 

 

「チッ・・・もう少しだったのによぉ・・・まぁいい・・・今回は闘々丸といい、十分楽しめた・・・今はまだ貸しといてやるよ・・・兄弟・・・。」

 もう一人の善朗はそう言うと闇の中へと溶けていく。

 

 

 

 

 

 〔ゾワッ〕

 断凱の全身に恐怖と戦慄が駆け巡る。

 

 

 その感覚の指し示す方向を恐る恐る見る断凱。

「ッ?!」

 断凱はその存在を横目で確認して、確信する。

 

 そこには、冷静に冷徹に冷酷に敵を無慈悲に滅す一心で、断凱に襲い掛かろうとしている化け物の姿があった。

 

 

 

 〔ドゴオオオオオオオオオオオオンッ!!〕

 今まさに佐乃達に襲いかからんとばかりに迫っていた断凱の巨躯が次の瞬間には洞窟の壁に吹き飛ばされていた。

 

 

 

蒼刀 一刀氷心(そうとう いっとうひょうしん)」〔ヒューーーーーッ、パキパキパキパキキィーーーンッ〕

 静かなる冷たい一刀が断凱を斬り、その身を瞬時に凍らせる。

 

(・・・フフフッ、悪くない・・・これが・・・死の恐怖か・・・俺は生き抜いた・・・。)

 断凱は最後にそう笑みを浮かべて、自分に迫る一刀をしっかりと見る。

 

橙刀 烽炎連刀(とうとう ほうえんれんとう)」〔ゴゴゴゴゴゴッ、ズバアアンッ、ズバアアアアアンッ!〕

 善朗から放たれた業火の斬撃が断凱の巨躯を軽々と切り裂き、その魂を霧散させた。

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?」

 乃華は自分の死を覚悟していたが、その差し出された手が大きく自分を守ってくれたのだと実感した。

 

 

 

「善朗さん。」

 乃華は善朗から伸ばされた手を握り、涙を流す。

 

「良かった、無事で・・・。」

 善朗はそう優しく乃華に微笑む。

 

 

 

 

 

 

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