ドラゴンメイド・ラブコール   作:久本誠一

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今回だけちょっと短いです。
もう少しイベント挟んでだらだら引き延ばしても良かったけど、スッキリ終わる方が気分がよかったので。
そんな実質エピローグ。


チェイムと翔けた夜の場合

 パルラから聞いた伝言通りに部屋の中でしばらく待つ。最初はただベッドの上に胡坐をかいて座っているだけだったが、すぐに飽きたので部屋の隅からデッキを取り出した。せっかくだからこの暇な時間、調整でもやっていようとカードを広げて改めて待つことしばし。

 

 ―――――ダメだ、こりゃ

 

 呟いた声は小声のつもりだったが、思いのほか大きく静かな部屋に響いて自分で少し驚いた。いくらカードを見ていても、まるで頭が集中できていない。こんな状態で調整したところで、デッキの改善は難しいだろう。せめて今のでどれだけ時間を潰せたかと時計を見れば、パルラが出て行ってからまだ長針が半周も動いていない。

 どうやら、思いのほか私はそわそわしているらしい。しかしあえて自己弁護するならば、それも無理はないだろうと主張したい。懐から例の羽根を取り出し、窓の向こうの夜空に溶け込んでしまいそうなその黒色をしげしげと眺める。

 シュテルン。全ドラゴンメイド使用者たちにとって、数年越しに思い残し続けた悲願。ハスキーさんからこの世界に呼ばれ、生のチェイムと出会ってからもなお見ることのなかったその姿が、ついに私の手の届くところにまで近づいている。一体彼女は、どんな姿をしているのだろうか。レベルは?効果は?ステータスは?

 今更ながらになんだか緊張してきて、広げたままのカードを片付けながら小さく唾をのむ。喉が渇いた気もするが、それで部屋を出て入れ替わりなどになってしまってはあまりにお粗末だ。

 そんな時だ。控えめな、しかし確実なノックの音が耳に届いたのは。

 

「……ご主人様。まだ、起きていらっしゃいますか?私です、チェイムです」

 

 ―――――うん、入って

 

 出来る限り余裕を持って答えたつもりだったが、それでも自分の声が少し上ずっているのがわかった。しかし、その情けなさを悔やむ暇もない。

 

「では、失礼します」

 

 ひどくゆっくりと、ためらいがちにドアが開く。その向こうに立っていたのは、チェイム。羞恥のあまりほんのり赤く染まった肌が夜空のように黒いメイド服と月明かりのような銀髪にくっきりと浮かび上がり、いつにもましてその神秘的な美しさが引き立って見えた。もっとも、ここに来てから(有難いことに)私を含めその身内にだけ見せてくれる彼女の内面からすれば……。

 

「うぅ、ひどいですよご主人様……なにも、なにも皆さんを焚きつける事はないじゃないですか」

 

 背後でドアが閉まるや否や案の定その神秘的な美貌に見合った雰囲気は一瞬で溶け去り、早くも涙目になりながら不満を訴えてくる。いつも通りの顔(とスタイル)からは想像もつかない彼女のみせる子供っぽい一面にはもはや安心感と愛おしさすら覚えながら、しかしただその姿を愛でているわけにもいかない。

 

 ―――――いや、別にそういうつもりじゃなくて……実際悪かったよ、ラティス達に詰められたんだって?

 

「はい……お昼過ぎに一度たまたまこの廊下で会ったんですけど、その時には夕飯の席で少し話があるからそのつもりでいてほしいとだけ言われて……それでうっかりお話を振ったら、他の皆さんにも聞こえるように……」

 

 ―――――うっわあ……

 

 その時のチェイムの気持ちはもう、想像するだけで恐ろしい。何が策士かってただ皆の前で逃げられなくするだけでなく、わざわざ一度予告を入れることで自分から話を振らせているところがなんともえげつない。ナサリーも結構底知れない所があるけれど、ラティスのそれはもう一つ容赦がないらしい。しかもそれが彼女の気分を害した、怒らせたといったマイナスの感情によるものではなく、単にチェイムはこれぐらいやって退路を断たないと恥ずかしがり屋の方が勝つだろうという長年の経験と信頼から出たチェイムと私への善意(あるいは彼女自身の面白半分)による行動であると容易に想像が付くところが怖い。

 反面確かにラティスのとったこの劇薬じみた方法が、チェイムとその性格を知り尽くしたうえでの最短ルートだったのは今こうして彼女がここにいるという結果が証明している。ただちょっと、最高効率すぎて人の心が薄いようにも感じるだけで。

 

 ―――――その……ごめんね、チェイム。元はといえば、なかなか言い出せなくて

 

 そして、これには私にも責任がある。私も私でかれこれ数か月間ひとつ屋根の下で過ごしていながら無理にドラゴン体を見せてくれなくてもと遠慮してなかなか言い出せず、なんなら今日の昼まではその正式な名前すら知らなかったのだから。もしラティスが今も屋敷に帰ってきてくれていなければ今もなあなあで流しずるずる引っ張り続けていて、最終的にこの状態まで漕ぎつけるのに一体どれだけかかっていたかは想像するだけで気が遠くなりそうだ。

 

「いえ、私もご主人様の優しさに甘えて、明日にしよう次の機会にしようって、ずっと先延ばしにしていましたから……本当は、私も分かっていたんです。まだこうして直接お逢いするより前、あちらの世界にいらしたときから、ずっと私のドラゴンとしての姿をご主人様が心待ちにされていたのは」

 

 ―――――それは、まあ

 

 否めない。ハスキーさんのもうひとつの姿であるシュトラールの存在が明らかとなり、それと同時にチェイムの存在が明かされてから、何年も何年も待ってきたのは事実だ。それは本当のことなのでちょっと言葉に詰まっているとやっぱり、という気まずそうな顔になり、次いで申し訳なさと半泣きが……その他にも色々と整理しきれていない感情が混じり合った、なんとも言えない表情で涙目のまま詰めてくる。

 

「でもだからって!ご主人様もいらっしゃらないタイミングで、あんなに外堀から埋めてくることはないじゃないですかぁ!」

 

 ―――――あー、うん……それは、本当ごめん。せめて私も一緒にいればね

 

「本当ですよ!もちろん元はといえば私が悪いんですけど、悪いんですけど!そこは申し訳ありませんご主人様!」

 

 いつもの彼女らしくない大声まで出して、よほど思い出すのも恐ろしく恥ずかしいのか顔といわず首といわず手といわず、メイド服に隠れていない素肌全てを真っ赤にして身震いしながら(それだけの動きで、いかにも柔らかそうなふたつの巨峰もぶるんと音を立てそうなほど大迫力に揺れた。危うく視線を持っていかれそうになった)それでも律義に謝罪の言葉を口にするチェイム。実際あの夕食の場に当事者の私がいつも通り来ていればもう少しフォローもできたし、多分本来はラティスもそれを計算に入れていたのだろうが……色々と不幸な偶然が重なりあって、彼女にとっては散々な時間だったろう。

 ともあれ叫んで少し落ち着いたのか、あるいは単に我に返ったのか。少し肌の白さを取り戻しつつ、チェイムがコホンと小さく咳払いする。

 

「それで、ですねご主人様。その、私のドラゴンの姿……なのですが。お部屋の中だとかえって恥ずかしいですので、お庭では駄目、でしょうか……?」

 

 ―――――よくわからないけど……チェイムがそっちの方がいいなら、今すぐ行こうか

 

 この辺りの感性は人間の私にはよくわからないが、実を言うと心当たりがないわけでもない。

 直接聞いたわけではないのでぼんやりした理解ではあるが、どうもドラゴンメイドの彼女たちには何となくの共通意識として、人間……少なくとも人型で二足歩行の生物が使うことを想定されたこの屋敷の中で四つ足のドラゴンになる事には、若干の心理的抵抗があるらしい。現にエルデもルフトもフランメも庭や屋敷の外ではよく変身してくれるし背中にだって快く乗せてくれるが、屋敷の中であちらの姿に変身するところはほとんど見たことがない。要するにこの屋敷内はあくまで人型で過ごす場所、ということなのだろうか?

 ちなみにこの話の例外は私のブラッシングがすっかり癖になってよく変身しておねだりしてくるフルス、そして先日ラティスが帰還した日のように非常時とあらば一切の躊躇いなくその力を行使するシュトラールだが、後者に関してはそもそも外敵もいないこの世界でのんびり過ごす毎日であのハスキーさんが本気を出さねばならないほどの事態などそうそうあるものでもなく、屋敷の中も外も関係なくあちらの姿を見る機会自体が少ないと言った方が正しいだろう。私は格好良くて美しいあちらの姿も大好きなので、見せてほしいと頼めば用がなくてもすぐやってくれるのだが。

 話が逸れた。ともかくチェイムがそういうことを言い出しても別に不思議はなく、私もすぐに立ち上がった。寒いということはないだろうが、一応上着のひとつくらいは薄手のものでも羽織っていこうと思ったのだ。

 

 

 

 

 

「で、では、いきますね?あまり見ても面白いものではありませんが……」

 

 ―――――いやあ、やっぱりすっごく楽しみ。お願い、チェイム

 

 庭。広さも十分なそこは元の世界とは比べ物にならないくらい澄んだ空気の中を存分に降り注ぐ月の光と星明りに照らされて、真夜中でも光量に不自由はない。この期に及んでまだ謙遜するチェイムをきっぱりと焚きつけると、穴があったら埋まってしまいたいと言わんばかりに赤面しつつもその全身に光の粒子が立ち上り始めた。光に包まれるその中で、瞬く間にそのシルエットが変化していく。

 

『うぅ……その、これが私の、姿です……あの、恥ずかしいのであまり見ないで頂けると……』

 

 そしてついに光の粒子の最後のひとつが闇に溶け、シュテルンの姿が夜に浮かび上がった。

 その姿を見てまず最初に感じたことは、その大きさだった……と言うと、本人はまた涙目になって怒るかもしれないが。全体的な体躯も、広げた翼の全長も、太く長い尾も。その体を構成するすべての要素が、他のドラゴンメイドたちよりもなんというか一回り大きい。

 ただこれは無論悪い意味ではなく、本当に全体的に一回り大きいため悪目立ちするような箇所もなく、調和のとれた美しい造形だと思う。チェイムの姿では確かにスタイル抜群なモデル体型の美女でこそあるものの、そこまで群を抜いて高身長というイメージがあるわけでもない(前も後ろも出るところはだいぶ大きく出ているため、とてもとても私の目の保養にはなる)が、あれはわざと身長を抑えているのだろうか?それともメイドとしての姿は私のような人間がそうであるように自力でデザインを弄れるものではなく、単にドラゴンとしての姿との間にサイズ的な関連性がないということなのだろうか?

 そういえばフルスもあちらの姿では東洋竜の系譜であるシルエットの差もあるとはいえ他の皆とおおむね遜色のないサイズだが、ラドリーは明確に背が(背だけでなく他にも色々と……いや身長から比べれば決して発育自体は悪いわけではない、どころかむしろ逆まであるだろうか?この屋敷はスタイルの絶対値が凄まじいせいで、パルラもそうだが相対値がまるであてにならずに困……りはしていないしむしろその逆か、うん)小さい。そのあたり今度、そういう話にも詳しそうなハスキーさんかナサリーに聞いてみてもいいかもしれない。

 そしてようやくその大きさからくる他の皆で何となく見慣れていたサイズ感との差に目が慣れてきたところで、その細部の造詣が目に入ってきた。力強く立派な翼はまさしく私が手に入れた羽根と同じものであり、夜の闇と同じで優しく包み込むような黒色と、光の当たり方によって常にわずかにその光沢が変化し続ける白とも銀ともつかない不思議な色合いの……いや、やはりここはこう称するべきだろうか。

 

 夜色の翼と、月の色の羽根。

 

 うん、下手に幾重もの言葉を駆使するよりもこう評する方がよほどスマートだし、彼女の本質にもより近いと思う。そしてその夜の色をベースにした月の色はそのまま全身を彩っており、あくまでも闇に溶け込むような全身のカラーリングに控えめに慎ましげに、しかし額の中央でさながら一番星のように輝く箇所をはじめ全身でその高位の存在感をしっかりと放っている。

 その他に目につくのは、その頭部だろうか。他のドラゴンメイドたちは、ドラゴンの姿とメイドの姿でそのカラーリングや細部の造詣は抜きにしても確かにその顔立ちからしてどことなく似通っているところがあり、例え初見でもどれが誰の姿かを当てることはそう難しくもない。だがこのシュテルンの姿は彼女らとは一線を隠し、その顔立ちにはかなり明確にチェイムとしての面影が残っている(あるいはその逆で、チェイムの姿にシュテルンの面影が色濃いと言うべきか)。

 そしてそう感じる一番の理由はどこだろうと考えると、すっかり見慣れたちょっぴり気弱そうな眼付きやその恥ずかしげな表情、頭部を守り目元を隠し自分に向けられる視線を遮るような格好で生えた二本の角の存在もさることながら、やはりその髪型からくる印象だろうか。どうしても爬虫類じみた印象の強いドラゴンという言葉からは珍しく彼女の頭部にはチェイムと同じ銀の長髪が、あちらよりも若干トゲトゲしているもののおおむね同じ造形で伸びている。それらひとつひとつの印象が組み合わさり、だれが見てもこのドラゴンは疑いようもなくチェイムなのだという確信を抱かせるほどに至っているのだろう。

 またその他に少しばかり目を惹くのがその頭頂部で角の生えていない箇所全体をぐるり守るように、ちょうど銀髪の生えていない額との境目当たりからピンと立っている、どこか王冠のような雰囲気すら感じさせるフリルのような謎の装飾だろうか。結構長いことヘッドドレスの一部だと思っていたあれがシュテルンの姿でも付けているということは紛れもなく彼女の体の一部(あるいはずっと付けていたいと思うほどによほどのお気に入りという線もあるが)なのだろうが、控えめなお洒落だったはずのそれが存在感を増したことでその上品な顔立ちにどこか王侯貴族めいた雰囲気までもを纏わせており、その姿にナサリーの口にしていた、チェイムは彼女たちよりも高位のドラゴンであるという言葉が頭をよぎる。

 実際いつものチェイムらしく恥ずかしげにもじもじとしていて、中身だって何時もの、あれで子供らしいところも多々あるチェイムと知っていてなおこれだけその姿には圧倒されているのだから、もしこれで彼女がその見た目通り生まれつきの上位生物、神秘的な性格の完璧美人だったならば、庶民根性の抜けていない私はいっそ彼女に近寄りがたさすら感じ自然とひれ伏していたかもしれない。

 それほどまでに彼女は高位のドラゴンであり、頭では理解していたその事実が改めて現実として私を圧倒していた。

 

 ―――――これが、ドラゴンメイド・シュテルン……

 

『は、はい。ええと、お見苦しいものをご主人様にお見せして……』

 

 ようやく絞り出した言葉に、やはり返事だけはいつものチェイムが自信なさげに答える声が、口を開かず頭に直接響く。見苦しい、だなんてとんでもない。ずっと待ちわびていた高貴で優美な夜色の竜の姿に、一目ですっかり私は魅せられていた。

 

 ―――――そうだ。ねえ、シュテルン。ひとつお願い、聞いてもらってもいい?夜間飛行、一緒に行こうよ

 

 そんな彼女の姿と天頂から降り注ぐ月と星の光に、私も少し酔っていたのかもしれない……というのは、少しばかり気障ったらしすぎる言い回しだろうか。つい口から出たあまりやらないタイプのお願いに少し目を白黒させてから、シュテルンは控えめに頷いた。

 

『……はい。私でよろしければ、ご一緒します』

 

 翼を広げて後ろを向き、身を屈んでみせたその背中にえいやっと取りつく。実際にこうして触れてみればやはり他のドラゴンメイドよりも翼だけでなく体躯全体が一回り大きなその体は大きいだけあり乗り心地もゆったりとしており、最上級のシルク(屋敷の調度品の品質が凄いものだから、高級品の感触だけはすっかり私も体で覚えてしまった)のようになめらかで触り心地の良い背中からは彼女の体温と脈拍をほのかに感じる。

 

『では、離陸しますね』

 

 ―――――うん!

 

 元気に答えると力強い羽ばたきがそれに応え、巨体がふわりと浮かび上がる。ぐんぐん高度が上がっていく感覚をへその下で感じながら景色を眼下に眺めていると、ともかくこの姿を私に見せるという一番の心理的難関を乗り越えて少し調子が出てきたのか先ほどよりは元気な問いかけが聞こえてきた。

 

『さあご主人様、どちらに参りましょう?』

 

 よかった、と思い、つい口元が綻ぶ。大人しそうな顔立ちと恥ずかしがり屋の性格に見合わず子供っぽい一面も持ち合わせる彼女がこんな風におどけた言い回しをできるようになったということは、それだけ気が晴れた何よりの証拠だ。本人も一応気にしてはいたみたいだし、ラティスの力技もやっぱり長い目で見ればそれが一番の正解だったということだ。

 上空でホバリングしながら長い首を曲げて私の方を振り返り次の言葉を待つシュテルンを軽く撫で、ぐるりと周りを見渡す。やがて私が目を止めたのは、地平線の少し上あたりにひときわ明るく輝く一番星だった。都会の町からかつて見ていた夜空なんて、のっぺり明るい漆黒であったとしか思えないほどに綺麗に輝く満天の星空にあって、なおも存在感を放つ大きな星(少なくともあちらは北ではないため北極星でない……というか、そもそもこの世界で見える星の配置は地球とはまるで違うためあちらの知識は当てにならない)。

 ざっくりとそちらを指さして、羽ばたきの音に負けない声を出すため冷たい空気を胸いっぱいに吸う。もちろん私もテレパシーを使えば口を開く必要はないのだが、それでも声に出して言いたかったのだ。

 

 ―――――向こうに行こうよ、しばらく真っすぐ!

 

『……はいっ!』

 

 嬉しそうな力強い返事と共に、行き先の決まった翼がバサリとはためく。ようやく逢えたシュテルンとしてのチェイムの姿、これで終わらせるにはもったいない。ずっとずっと見ることもできなかったぶん、これまでの時間を取り戻すまでは一緒にいよう。そうだ、それが終わったらカードとしての姿も見てみたい。元々自力でお心づくしをサーチできるチェイムに、それを初動として展開を可能とする革命児ラティス。彼女たちを経て今のデッキが一体どうなることか、考えるだけで期待も希望もたっぷりだ。それから、それから……。

 

『ご主人様、なんだか凄く楽しそうですね?』

 

 風を切って空を進みながらも色々と考えていると、チェイムが小さく笑う気配がした。そんなにか、そんなにわかりやすかったか。

 

『はい、とても!』

 

 そう言うチェイム自身もよほど胸のつかえがとれてスッキリしたのか、それこそ私と初めてこの屋敷で顔合わせした時並みに生き生きとしている(もっとも、あの当時はまだ人見知りと恥ずかしがり屋の方が強く出ていたのでそうは見えなかった。後から彼女なりの感情表現の出し方に慣れてくると、改めて考えればあれは相当はしゃいでいたんだな、とわかったのだが)。

 だがそれを素直に認めるのもなんだか癪だったため、代わりに上半身を大きく倒して彼女の首根っこにかじり付くような格好になる。さすがにこの物言いは、少しくらい言い返したって罰は当たらないだろう。

 

 ―――――そうは言うけどさ?もとはといえば誰のせいだと思ってるの!

 

『はうっ。それはその、本当に申し訳なかったと思っていまして……』

 

 痛いところを突かれて見るからにしょんぼりし、高度も速度もわずかに乱れて落ちる。しかし私の顔を見て、またすぐに動揺から持ち直してくれた。私とシュテルンだけの空の真ん中で少し翼を休めて滑空しながら、顔を見合わせふたりで笑う。

 どこまでも続く夜空の下で、その笑顔は本当に綺麗だった。




連続更新はまたこれでおしまいです、お付き合いありがとうございました。
今更ですがここの描写が特によかった、あるいはこの態度は解釈違い等、正負問わず拙作について何かしら思う所あればいつでもお待ちしていますのでお気軽にどうぞ。私としてもことドラゴンメイドにはこれでも妥協したくないので。

ちなみに最初のティルル回でちょっと暴露しかけていますが、ここまで過ごしていていまだ主人の彼がえっちなことになっていない(直球)のは当人が肝心なところで奥手なヘタレだからです。が、それとは別にハスキーさんから自分も含めメイド全員に対して絶対禁止の厳命を血涙と共に下しているのでどのみち今はそういうことは起こらないです。今は。
この辺実は裏設定とかも考えてはいるのですが、活動報告あたりにこぼれ話として載せるかいつかまた、そしてそもそもまだ書くのかもわからない本編でネタにするために残しておくかも含めどうするか決めかねています。いっそこの設定の消化も含め正式なR付きに挑戦するのも一つの手かもしれない。
まあいずれにしても決めかねているので、今後の更新はやっぱり未定です。このまま裏設定は裏設定としてひっそり墓の下まで持っていく可能性も普通にあります。

それでは、またいつか……を書く時が果たしてあるのかはわかりませんが。
ドラゴンメイドはいいぞ。
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