東京が丸くなったので自由気ままに全員ぶっ殺す 作:Leiren
クソデカエイ、ふぉるなんたらを病院内で撃破し、俺はようやく病院の外へ出ることが出来た。しかし外はかつての東京の姿なんてやっぱり無かった。真上を見ればなんかでっかい太陽みたいのがギラギラと輝き、上も左右も全て地面。東京は完全な球体になっていた。
「なんということでしょう。喧騒とカスの集まりで出来ていた東京が、すっかり丸くなって色々消えました。こっちの方が返って良くね?」
そうして東京の姿に唖然としていると、目の前の遠くの所に黒いマントと制服を着た美青年と黒猫がいた。なにやら俺を見ながら会話しているようだが、良く聞こえない。
俺に向かって陰口だと? ふざけんじゃねええぇ!
俺は助走なしで地面が爆発するほどに地面を蹴り、拳を引きながら超加速。俺の打撃は相手に直接当てる必要はない。空気を殴るだけ敵を切り刻む突風を吹き起こす。
「オラァッ!! ……あれ? 消えた……?」
だが既に美青年と黒猫は目の前から消えていた。俺の攻撃から逃れるとはな? なかなかやるじゃねぇか。
それはさておき、ここから行ける所をなんとか目指すか。
しばらく砂漠化した東京を歩いて、俺は渋谷にたどり着いた。全く、所々が地面そのものが消滅していて歩きにくいったら無い。渋谷はスクランブル交差点と、地下モールに続く階段だけが唯一二つだけ残っていた。
階段は地下モールとディスコの二つに分かれており、ディスコってすげー懐かしい響きだなと思って先に向かった。
そしてそこには一人の人間の女と出会った。
「え……人間? 私の他に人がいたんだ……!」
完全に滅んだ東京にやっと生存者を見つけた安心感なのか、しかしなにか複雑な表情で俺を見つめる。
「……。えーっと、どちら様で?」
「……。貴方、突然だけど東京に何が起こったか分かる?」
「知らん。起きたらこうなってた! そんで悪魔共をここまで吹っ飛ばして来た!」
「えぇ……? そう……。私も病院で突然気を失って、気付いたらもう私の知る東京は全部無くなっちゃってた。外出たら悪魔ばかりで、人間は一人もいない。自分の家すら何処に建っていたのかすら分からない。もうこの世界には私一人しかいないんじゃないかって思ってた……。でも今こうして貴方と出会えた訳だけど……私はこれからどうしたら良いのかな?」
「知らん!! 自分で考えろ! 俺は邪魔するものは全部殺す! だからテメェは俺を怒らせるんじゃねぇぞ? 女だろうが容赦しねぇからな? じゃ!」
俺も漸く人間に会えてちょっとテンション上がったが、なにやらうだうだうだうだと……んなことどうでも良いじゃねぇか。人間のクズとカス共が綺麗さっぱりに居なくなって清々したぜ。
俺は女の話をきっぱり切って、近くに居た変に誘惑してくる悪魔を問答無用で吹き飛ばす。
「じゃあ、達者でな!」
「え、ちょ……」
俺はディスコを出ると深くため息を吐く。危ない危ない、後少しでイライラでぶっ殺す所だった。人間殺したら犯罪だからな。
俺はディスコから出て地下モールにいくと、奇妙な物体が置かれた広い部屋を見つけた。そしてなんとそこにも一人の男と遭遇する。
「ん……? お前まさか人間か? 病院では会わなかったが……まさか病院からここまで歩いて来たとか言わないよな?」
「え、そうだけど……?」
「……!? へぇ〜こりゃなんて好都合だ。人間のくせに悪魔と渡り合えるなんてすげぇなぁ」
「断る!!!」
「は?」
なんか凄く頼み事されそうな流れだったので先に断っておく。俺は絶対にやらんからな? 何があろうとも……。
「お、おう……。そうだ。一応自己紹介しておこう。俺はヒジリ。オカルト雑誌を書いている記者やってんだ。ここまで歩いて来たってことはもう見たんだな?」
「え? あー、アレね! みたみた!」
「ありゃあ恐らく俺の予想が正しければ、『カグツチ』って呼ばれていてな。東京がこのボルテクス界になっちまった原因と、これから始まるだろう『創世』ってやつに深く関わっていると思ってんだ。ただ生憎空は飛べねぇしなぁ……。だが俺はもう一つ可能性を探っている。お前、氷川って人間知ってるか?」
カグツチって何のことなのか、創世ってなんやねん。誰や氷川って……全く訳が分からないがとりあえず頷く。
「通信会社サイバース・コミュニケーションの重役にして、代々木公園の暴動事件を首謀したとされる男。しかもその事件の中には既に今やそこら中にいる悪魔の姿も目撃されてるっていうな。なんか匂わねぇか?」
「え、なんか匂いしてる? 別になんも臭くねぇけど。まぁ、怪しいなら真っ先にぶっ殺しておく? 犯罪者は死ぬべきだしな。それとお前さっきから歩いてきたことに驚いているようだが、お前こそどうやってここに来たんだ?」
まさかワープしてきたとは言わねえだろ。きっと悪魔と一度も出会わない裏ルートってのを知ってるんだ。協力するつもりはねぇが、ちょっと気になる。
するとヒジリは部屋の中央に佇む、長細い湯呑みみたいな形をした謎の物体に寄りかかりながら言う。
「こいつで飛んできた」
「え!! 詳しく教えてくれ!!」
マジでワープだったー! すげえええぇ。いつまでも外で悪魔を吹き飛ばすのも面倒だしな! これは使い方を脅しても教えて貰わなくては。
「そうだな……なんなら俺と協力……」
「だから断るつってんだろ!? いいから使い方教えやがれ……」
「おっとこれは脅しってやつか? 無法地帯になっちまった今の東京こそ協力してくれるとめちゃくちゃ助かるんだけどな。知りたくないってんならお前の好きにやがれ。俺はいつでも逃げられるからな」
「あぁッ!? そうはさせねぇぞゴラァ!!」
俺はヒジリが逃げる姿勢を取るので咄嗟に捕まえようと、部屋の壁が吹き飛ぶ程の力で床を蹴り、また超加速でヒジリの洒落た服を掴もうとする。しかしヒジリは運良くも、まるで稲妻のようにその場から消えた。
また逃げられた!! クソがアアアアァァァ!!
こうなったら自分でこの物体の構造を理解してやる……。