01 TS脳筋没落ジオンお嬢様
サイド3にTS転生した。お嬢様だった。しかし、家はダイクン派。私が幼い頃に瞬く間に没落し、私は没落お嬢様となってしまった。
「ザビ家の妾と、五十代のおっさんと結婚するのどっちが良い?」
「両方嫌ですわ」
「選択肢は無いんだよ。アミニア。アランス家の復興のためにはお前が犠牲になるしかないんだ。家の為に尽くすのがお前の役目だ。悪いとは思っている」
「どっちも嫌ですわ」
「選ぶんだ。お前には二つの選択肢がある。選ばなければならないんだ」
「嫌なものは嫌ですわ」
「誰がお前を養ったか分かってるか? 俺だ。アランス家の復興のため、俺はお前をここまで育てあげたんだぞ。クソ兄貴の娘のお前を」
「うるさいですね……」
アランス家の本家当主であった父は
私は家とかどうでもいい。貴族ごっこは楽しかったけど。
「選んでくれ。親戚筋からの圧力もある。この二択しか選択肢は無いんだよ」
脂ぎったキモいオッサンとの見合い話、ザビ家の妾。そんなクソみたいな二択が選べるわけがない。私が導き出したのは第三の選択肢。
「じゃあ、わたくしは軍に入りますわ。手柄を挙げて出世しますの。それで復興してさしあげます」
「は? あー。そうか……兄貴みたいなことを……あぁ……お前は兄貴の娘だからな、そりゃそうか」
ベインズ叔父は父と何らかの因縁が有ったらしい。どうでもいいけど。
「お前は女だ。女は軍で出世できない。だからこの話は無意味だ」
「そうでもなくてよッ! オラァ!」
私は客間に飾ってあった木彫りの熊に腕を振る。熊は愉快な音を立て、爆散した。
「ね?」
「あっ、ああ。そうだな」
叔父の顔は引き攣っている。親戚の圧力に負けて、ザビ家に媚を売るために私を犠牲にしようとした小心者だ。溢れる我がパワーを恐れるのも仕方ないだろう。
「入学試験に落ちたらお前は、ザビ家の妾だからな。わかったな」
「ええ。勿論ですとも。機会を与えてくれて有難うございますわ」
叔父は、小声で受かってこいと言っていた。お嬢様イヤーは聞き逃さなかった。ツンデレかよ。家の重要度が高いだけで、彼は、悪い人間というわけではない。
私はお嬢様ブレインと勉学の結果、士官学校への切符を手に入れた。
お嬢様転生知識チートによると、一年戦争は回避できない。だから、やりたいことやりますわよ! モビルスーツでチート無双ですわ!! 乗機のパーソナルカラーは水色にしますわ! かわいいので!
§ § §
「お゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛」
知らなかった。私、箱入り没落お嬢様だったから知らなかった。宇宙がこんなに酔うなんて。
生涯で一度も宇宙に出たことなかったから知らなかった。コミューター機だから酔うとかそういう次元じゃない。宇宙という場所を私が受け入れられない。
隣の席グラサンニキが、めっちゃ嫌そうな顔してる。ごめんシャア。そうです。私が変なお嬢様です。重力に魂を引かれた人間がこちら。大変お安くなっております。
「大丈夫か?」
「お゛っ゛」
「駄目そうだな……はぁ……」
シャアの殺害リストに入った気がする。やめてくださいまし。お嬢様は銃で撃たれると死んでしまいます。
士官学校があるガーディアンバンチに着くと、私の宇宙酔いはピタリと収まった。重力。愛してる。
髪の毛が長いと面倒なので、今の私はボーイッシュお嬢様だ。金髪碧眼ショート美女お嬢様ですわよ。残念ながらゲロ臭いですが……
身なりを改めて、私は講堂に向かった。これから入学式が行われるのだ。
講堂にずらりと並んだ学生。その中で女子学生の割合は決して多くない。その中で一際、目立つのがアミニアだ。理由は彼女の振る舞いにあった。箱入り娘そのものといった様子で、忙しなく目線をあちこちに飛ばしている。
軍人の卵の集う士官学校では、彼女のような存在は皆無だ。だからこそ、教官らの注目を集めていた。
教官らの悪い意味での期待は、すぐに裏返ることとなる。何故ならアミニアには異常な筋力が有ったからだ。彼女は、どこか儚げな印象とは裏腹に、粗暴でガサツだった。
スポーツは得意ではないが、とにかく力が強く、体力が多い。一般的な女子生徒どころか、男子生徒の体力も越え、男性アスリート以上の体力を誇った。
その代わりといってはなんだが、勉強の方は平凡。宇宙酔いや乗り物酔いが酷く、そういった適性は一切持っていないようだった。
故に教官らは、彼女が歩兵向きの特性を持っていると判断した。それを聞いた、アミニアは宙を眺めていた。
「ぇっ? わたくし、モビルスーツに乗れないんですの……じゃあ、なんでガンダム世界にいるんですの? 宇宙世紀の意味ないじゃない」
これは、機動兵器全盛の時代に、没落お嬢様が、歩兵として頑張る話である。