海兵隊は武装解除された。その後、捕虜収容所に反乱容疑で収監された。大所帯がいっぺんに投獄されたため、収容所の人たちは忙しそうだった。
収容所は、そこまで酷い場所ではない。ご飯もちゃんとしたものが出るし、運動もできる。ちょっと、設備がボロいけど。
海兵隊の工兵も捕まっているので、収容所の連中と一緒になって工事をはじめていた。看守たちも、コロニー開発時代のものが残っていたりする設備の古さにうんざりしていたらしい。
反乱の首魁とみなされた、シーマ中佐、ゲール中佐、そして私は、たまに尋問されることが有った。しかし、いつしかそれも無くなった。
お喋り好きで情報通な看守と、勝手に回線を引っ張ってきたリン軍曹の情報を統合し、現在の戦況をまとめる。
私たちが、役目を放棄した毒ガスの注入。それを行うことをどの部隊も嫌がった。結局、ギレン親衛隊のエギーユ・デラーズ大佐が行うこととなった。しかし、グダグダしているうちに連邦軍が艦隊再編を行う。
ハッテ奪還を目的とした連邦艦隊とジオン艦隊の戦闘で、ジオンは勝利した。MS部隊による奇襲を行い、連邦に打撃を与え、ハッテ奪還を諦めさせることに成功した。
この連邦軍の敗北を受け、アイランド・イフィッシュは降伏。サイド5、ルウムは中立を宣言。事実上の降伏だった。
ハッテ海戦でジオン軍は勝利した。しかし、犠牲は大きかった。何しろ連邦軍との艦数差は三倍だったのだから。
戦闘自体は連邦艦隊とジオン艦隊の遭遇ではじまった。ミノフスキー粒子を散布したジオン軍は、ムサイ級やチベ級からMSを出撃させる。連邦軍もその動きに応じ、前方に展開した空母機動部隊から戦闘機群を発艦させた。
敵戦闘機部隊に対し、ジオン艦隊は、MSによる艦隊防空を実施。だが、これが裏目に出ることとなった。防空部隊と攻撃部隊にMS隊を二分してしまったのだ。
史実のルウム戦役では、艦隊決戦を発生させることで、MSを防空に当てず、十分な衝撃を連邦艦隊に与え撃滅させることに成功した。だが、ハッテ海戦ではそうならなかった。
ジオン攻撃隊は、連邦軍艦隊へと十分な打撃を与えた。しかし、連邦軍の数のためか当初のジオン上層部の想定よりもその戦果は下回った。
防空MS隊は艦隊防空を達成。連邦攻撃隊を撃滅する。
「妙だな。勝っているはずなのに胸騒ぎがする。熱源を探知しろ。連邦の動きを把握したい」
「爆発痕から味方が敵空母、護衛のフリゲートを沈めていることは確実です。間違いなく我が軍は優勢です」
「空母と、フリゲート? 戦艦や巡洋艦はどこにいる?」
「は?」
「連邦自慢の戦艦群はどこだ? 防空MS隊に探知に行かせろ! マズイ。空母は囮だ!」
最低限の艦隊防空機を残し、MS隊が捜索へと出る。連邦軍艦隊の予測される位置はジオン艦隊から遠く離れており、遭遇にはまだ余裕があるとされたからだ。
「味方MS、敵艦隊発見! 大規模な艦隊です。マゼラン、サラミス級のみで構成されています! 方位、距離出します」
「やってくれたなレビル! 捜索機を戻せ! 攻撃隊も全機この艦隊にぶつけろ!」
連邦主力艦隊が、ジオン艦隊に接敵するまでの、猶予は残り少なかった。
「クソ、不味いな。ギレン親衛隊を盾にしろ。キシリア様に預かった兵を無駄に減らせん」
「マ中将! 勝手な艦隊運動をするな! 艦隊統合司令官は俺だぞ」
「我々には、我々の都合がある。ドズル中将は麾下の統率に専念するが良い」
僅かに残っていた防空MS隊が、連邦主力艦隊への攻撃に向かったが、それは焼け石に水だった。強大な戦艦群を撃滅するのには、余りにも数が少なかった。
「残り5分で、敵の有効射程圏に入ります!」
「残存MS全機を攻勢に出せ!」
「全機出撃中! 全力出撃中です!」
「止まらんか……全体のためだ。やむを得ん。マ中将に追随する。デラーズ大佐、すまん」
マ・クベ艦隊が輪形陣から移動し、ドズル艦隊がそれに続いた。この動きを予期していなかったデラーズ艦隊は取り残されることとなった。その結果、デラーズ艦隊の横陣、そして、ドズル艦隊、マ・クベ艦隊の二艦隊での横陣。合わせて二枚の横陣が展開されることとなった。
厚さを持った陣形のジオン軍に対し、連邦軍は艦隊を紡錘に展開。この主力艦隊は、サラミス級、マゼラン級のみで構成された決戦艦隊であり大艦巨砲主義を誇る連邦軍の最精鋭だった。
「MS隊、頼む。このままではジリ貧だ」
艦隊戦で、ジオンに勝機はない。MS隊が戻るまでジオン艦隊が粘れるか。それがこの戦いのカギだった。
「グワデン撃沈! デラーズ艦隊に穴が空きました!」
「マ中将。早く合流しろ! このままでは、分断されるぞ!」
「ミノフスキー粒子が濃く、通信不全です」
「光通信をしろ。このままではジリ貧になる」
紡錘陣の連邦艦隊は、デラーズ艦隊の中心を突破した。マ・クベ艦隊は突破を避けるように運動した。その結果、ジオン艦隊は二分されるような陣形となった。
連邦軍は、艦数の少なかったマ・クベ艦隊に狙いをつける。
「マ中将と合流する。全艦、マ・クベ艦隊を救出しなければ敗北するぞ!」
ドズル艦隊は、マ・クベ艦隊へと辛うじて合流。その時にはマ・クベ艦隊は、半分まで減っていた。
「マ中将! 貴様、艦隊運動すら出来んか!」
「すまない。私は艦隊運用には向いていないようでね」
「御託は良い。持ち堪えるぞ!」
一隻、一隻と脱落していく中、ジオン艦隊にとって待ちに待った瞬間がやってきた。
「MS隊、戻りました!」
「ようやくか!! ここを耐えれば勝利だ!」
「敵旗艦アナンケ撃破!!!」
「よし!」
「連邦艦隊、撤退します! 追撃しますか!?」
ドズルは冷静にその提案を拒否した。ジオン軍の総力を決した艦隊。その残存艦は、今や五十にも満たなかった。とても追撃など叶わない。艦は戦時転用で賄えるとはいえ、熟練した兵士はそうではない。
連邦軍の作戦目的であるアイランド・イフィッシュの救出。その目的は頓挫させたものの、ジオン軍の損害は莫大だった。
辛うじてドズルを慰めたのは、MS隊が連邦軍空母を撃滅したこと。連邦軍主力艦隊旗艦アナンケを沈めたことだった。
「レビル、お前は、どうせ生き延びているのだろう。このままでは、終わらせん……」
その後、ハッテ海戦の結果を受けアイランド・イフィッシュ市長が降伏を決断した。また、
毒ガス注入の件は、新たに責任者となったエギーユ・デラーズ大佐が戦死したため、責任の所在が曖昧となった。
ハッテ海戦の結果、そしてデラーズの死を聞いたギレンは、コーヒーカップを落としたという。
ハッテ海戦の結果、両軍は戦力の再編に集中することとなる。一ヶ月の間、目立った戦闘は行われなかった。この
南極で行われた両軍の停戦交渉。連邦軍の全権はレビル中将が担い、ジオン全権はドズル中将が担った。合意形成は成されず条約のみが締結される結果となった。
ギレンの思惑は完全に破綻した。ジオンは連邦軍に対して宇宙での優位を得たが、それだけだった。宇宙に残された連邦の拠点はルナツーのみだが、それを攻略する戦力をジオンは持っていなかった。ルナツーは距離的に遠い。ルナツーの連邦軍は脅威ではあるが、喫緊の脅威ではない。
いずれにせよ、このままでは国力差により、ジオンが敗北するのは明らかだった。
ギレンは、核パルスエンジンを装着させた小惑星ソロモンを動かす。ジャブローへの質量攻撃により戦争の結末をつけることを選択した。
ギレン「連邦派のカススペースノイドは、コロニーごと殺す。そしてそのコロニーを地球へ落とす。劣等種族は皆殺しだ!」
セシリア「実行部隊が反乱しました。他の部隊も嫌がってコロニーに毒ガスを注入しません」
ギレン(せや、デラーズにやらせよ)
「行け、デラーズ! 劣等アースノイドをブチ殺せ!」
セシリア「ハッテ海戦で、我が軍は艦隊の大多数を失いました。宇宙でしばらく行動できません……デラーズ大佐も亡くなりました……」
ギレン「ファっ!? うーん」
(仕方ないから、小惑星落とすか)