【完結】TS脳筋没落ジオンお嬢様戦記   作:むにゃ枕

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03 メンタルケアお嬢様

 暁の蜂起の戦勝パレードが終わった。そして諸々のゴタゴタが収まった。それでも、私の気分は晴れなかった。

 

 自分が罪悪感を覚えていないこと。何もなく眠れてしまうことが怖かった。私が殺した兵士は、誰かの夫で、誰かの息子で、誰かの父親で、誰かの友人で、誰かの恋人だった。

 それを自覚しても私には、罪悪感がなかった。

 

 私の友人であったゼナ。彼女は、ドズル・ザビとの結婚もあり忙しい。そんな中で、私に時間を割いてくれた。

 

「アミニア、みんな、あなたが落ち込んでいるって言ってるわ。私で良ければ、話を聞くから」

「別に、落ち込んでなんかいない。だって、私はそんな弱くないから」

「強がらなくても良いのよ。エジリさんは、あなたの親友だったじゃない。それに、人を殺したのよ。辛いはずじゃない」

 

 ゼナが、本心から心配してるのはわかった。それでも、私は彼女の態度に苛立ちを隠せなかった。

 

「辛くない! だって、私は何も感じないから! エジリが死んでも! 人を殺しても! 私は何も感じなかった!」

「嘘よ。じゃあ、どうしてそんな泣きそうな顔なの?」

 

 ゼナの態度に、私は我慢できなかった。士官学校のカフェテラスを飛び出す。もうこんな場所に居たくなかった。

 

 脱柵になるけれど、そんなことはどうでもいい。こんな場所には居たくなかった。制服のまま街に飛び出す。

 居合わせた人は、私の顔を見て、一様にギョッとする。私は、酷い顔をしているのだろうか? 人殺しの顔をしているのだろうか?

 

 どこを彷徨ったのか、覚えていなかった。気がつくと、私はかつての自宅に戻っていた。

 士官学校に合格してから、家には戻っていなかった。多分、叔父と会いたくなかったからだ。

 

 かつての自室はそのまま残されていた。若干の埃っぽさはあるが、定期的に掃除がされているらしい。私のことを煙たがっていたのに、変なところでマメだ。

 

 日が傾いてきて、室内が暗くなる。私は、暗いままが良くてそのまま布団を抱えてうずくまっていた。

 

「アミニアか? おーい? 帰ってきたのか?」

 

 階下から物音がした。叔父が仕事から戻ってきたのだろう。叔父は、私が士官学校に入ってから親戚との付き合いをきっぱりとやめたらしい。毎月一方的に送られてくる手紙には、そう書かれていた。

 

「なんだ真っ暗じゃないか。居るんだよな? アミニア? 泥棒とかじゃないよな?」

 

 階段を上がってくる音がする。嫌だと叫びたかったが、声が出なかった。

 

「開けるぞ。泥棒じゃないよな? アミニアだよな?」

 

 スーツ姿の叔父は憑き物が落ちたような普通の人の顔をしていた。かつてのようなどこか、追い詰められたような表情はしていない。

 

「こんな真っ暗で……泣いてるのか? こんな俺で良ければ話してくれよ」

「いや」

 

 小さな子供のような弱々しい声しか、私には出せなかった。

 

「聞いたよ。サイド3を守ったんだって? 俺達を守ってくれたんだろ? 何か士官学校で嫌なことが有ったのか? 俺が言ってやるよ。ツテとかは無くなったけど、一応、俺はお前の親代わりだしな……」

「親なんて言わないで! だったらなんで私を売ろうとしたの! 叔父さんのこと、信頼してた。お父さんだって思ってた。でも、お父さんは裏切った。なんで!? なんでなの!?」

「あの時の俺は、どうかしてたんだ。アランス家の名誉に取り憑かれていた。信じてもらえるとは思わない。名家なんて自惚れてお前を売ろうとした俺だもんな……」

 

 以前届いた叔父の手紙には、父との確執について書いてあった。そして、親戚との縁を切ったから、軍に入らなくても良くなったこと。士官学校を辞めても構わないことも。

 

「私、人を殺しちゃった。殺した人のポケットから娘の写真が出てきたの。そこで、その人と叔父さんの顔が重なったの。

 士官学校には親友が居たんだ。コハル・エジリっていって、コハルが変な発音になっちゃうからエジリって呼んでたの。バディだったんだ。でも、私が無茶したせいでエジリは死んじゃった」

 

 叔父は黙って、私の話を聞いていた。

 

「私、未来の知識があって前世の知識もあるの。それなのに何も出来なかった。やろうとも思わなかった。ごめん。エジリ。ごめん。ごめん」

 

 叔父は、不器用に私を抱きしめた。壊れ物に触っているような、変な抱きしめ方だ。多分、困っている。

 

「まあ、なんだ。アミニアがなんであれ、お前は俺の、あー、娘だ。うん。娘だからな」

 

 抑えていた涙腺が一気に崩壊した。私の中に有った重いものが一気に無くなったように思えた。幼児のように私は泣いた。

 

 ぐしゃぐしゃになった叔父のスーツに申し訳無さを感じながら、私は顔を洗いに洗面所へ向かった。鏡に映るのは、泣き腫らした不細工な顔の私だった。

 

「なぁ? 本当に軍を続けるのか? 辞めたって良いんだぞ。お前を養うくらいの経済力は有るんだからな」

「うん。大丈夫。だって私は、アランス家のお嬢様だから。それに、叔父さん弱そうだもん。わたくし、アミニア・アランスが守ってあげますわ」

 

 叔父は、ちょっと微妙な表情を浮かべた。それから、寂しそうな表情で私を見送った。

 

 ようやく、私にも覚悟が決まった。私は、叔父を含めたサイド3の人を守るために、宇宙世紀を生きたい。

 ノブレス・オブリージュってやつだ。だって、私はアランス家のお嬢様だから。

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