【完結】TS脳筋没落ジオンお嬢様戦記   作:むにゃ枕

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06 調査お嬢様

 キンチェム・コロニーの港湾管制室。そこからベイの様子は簡単に確認できた。ベイ内部には、モビルスーツの侵入に備えて、バリケードが作られている。対戦車ミサイルを携えたノーマル・スーツ姿の歩兵も見える。

 

 管制室が占拠されたことには、まだ敵は気づいていない。しかし、敵の無能に期待するわけにはいかない。

 

「リン軍曹、ハッキングを頼む」

「はい」

 

 情報特技兵であるリン・キム軍曹。彼女は、女性でありながらレンジャー資格まで持っている逸材だ。まあ、私もレンジャー徽章は持っているが。

 

「分隊が、エリアを制圧した。MS隊との通信もクリアだ。ベイ内の気圧を低下させ、同時に隔壁を開けてくれ」

「了解しました」

 

 リン軍曹が、コントロールパネルにコマンドを打つ。港湾内部の気圧が一気に下がり、隔壁が上がる。襲撃に備えていた兵士が、宇宙へと吸い出されていく。一部の兵士は、壁に激突し血溜まりに変わった。

 

「少尉、成功しました。味方MS隊の損害はありません」

 

 リン軍曹が、小さくガッツポーズする。

 

 その後、MS隊がバリケードを撤去。揚陸艦エンタープライズが入港し、揚陸作業が開始された。港湾機能を回復させると、二隻のムサイ級も入港した。

 

 その間、小隊は、斥候として港湾エリアの周辺を偵察した。幸い、戦闘はなかった。

 偵察の結果分かったことがある。敵は港湾内部と、基地周辺の市街地に戦力を集中させていることだ。

 

 後続であるシーマ率いるMS隊。更に他部隊のMS隊もゲールMAUに合流した。十分な数のMSと歩兵戦闘車が揃ったことで、市街地戦闘がはじまることとなる。

 

「海兵隊がタダ飯喰らいじゃないことを証明するよ!」

「シーマに負けるなよ。負けたやつは俺たちに奢ることになるからな」

 

 MSパイロットが威勢よく、戦闘に臨む。対照的に、歩兵や歩兵戦闘車の乗員は寡黙だった。

 MSは巨大で頑丈だ。小銃弾では傷一つつかない。だが、歩兵は違う。歩兵戦闘車だってMSほど頑丈ではない。

 

 巨体と頑丈さを活かし、MS隊が先行する。埋伏していたマゼラ・アインが、砲を撃つ。しかし、それは蟷螂の斧だった。機動力と強固な装甲が、マゼラ・アインを単なる雑魚敵にしていた。

 歩兵や歩兵戦闘車にとって、戦車は強大な敵なのだ。だが、MSにとっては、そうではない。

 

「戦争は変わったんだなぁ」

 

 歩兵戦闘車から降車し、暴れるMSを見ながら五十路の先任准尉が呟いた。

 

 歩兵と歩兵戦闘車には、それほどの役目はなかった。逃げ遅れた住民の保護や、負傷者の保護。敵兵士の捕虜収容などを行うだけの戦闘だった。

 

 MSによる快進撃もあり、戦闘は終始一方的に進んだ。敵は基地周辺を放棄し、組織だった抵抗力を失った。基地副司令が降伏責任者になり、反乱軍は降伏した。

 

 戦闘が終了し、捕虜収容や傷病者の保護、避難民への対応などが落ち着いた頃。私は、ゲール中佐に呼び出された。

 

「アニミア少尉、よく来てくれた。今回少尉を呼んだのは、管制室で捕虜になった女の子に関してだ。あの子、ずっと何も食べていない。このままだと、捕虜虐待を疑われる可能性もある。少尉、どうにかしてくれないか?」

「中佐。お言葉ですが、私は歩兵です。医者でも心理カウンセラーでもありません」

「分かってる。分かってるんだが…………どうも上があの子を気にしているらしい。頼んだぞ少尉」

 

 ゲール中佐は、そう言い残し、MSの整備に行ってしまった。中佐は、MSの整備を言い訳にして逃げることが常である。

 

 件の少女に対しての情報を集めることにした。捕虜対応の責任者である憲兵少尉。彼に話を聞きに行くことにした。

 

「知りませんよ。そんな子供。忙しいんですから面倒を押し付けないでいただきたい」

 

 曹候補からの内部昇進組の少尉は、にべもなく私をあしらった。私は、彼の仕事を部下に手伝わせることにした。

 陰気な少尉は、私に親切にしなかったせいで、筋肉モリモリマッチョマン共に囲まれることになる。

 

「部下を貸してくれるのは助かります。憲兵は嫌われ者ですからね。確か、調書がそこら辺にありますよ」

 

 眼鏡の憲兵少尉は、嫌な顔をせず部下を借りていった。嫌がらせのつもりだったが、意味はなかったようだ。

 件の少女に関するデータはほとんどなし。何しろ彼女は何も話していない。名前はアンジェリカというらしい。姓は不明だ。

 

「名前しか分からないじゃない!? あの眼鏡、わたくしを嵌めましたね!」

「少尉って、たまに変になりますよね」

 

 余計なことを言ったリン軍曹の尻をつまむ。普通に硬かった。

 

「うわ。セクハラだ。ひどい」

 

 リン軍曹が、仕返しをしてきた。彼女とやり取りをし、空気が弛緩する。ずっと張り詰めていたから、ちょっとホッとした。

 

 アンジェリカと名乗る少女は、留置所の面会室にいた。アクリル板越しに、頑なな表情が見える。

 

「人殺しに話すことは、何もない」

 

 それだけ、言うと少女は黙った。私が、何を言っても口を開くことはなかった。

 

「リン軍曹、首尾は?」

 

 軍曹は、暇そうに端末を弄っていた。彼女は、面会室には入らなかった。

 

「バッチリです。ま、カメラにアクセスしてデータ抜くだけですからね」

「何日後に特定出来る?」

「二、三日ってとこですね」

 

 私はリン軍曹にちょっとした、手伝いをさせていた。留置所の映像データから少女の画像データを取らせた。

 そして、そのデータをキンツェム・コロニーの住民データと照らし合わせ、彼女の身元を特定するのだ。ちなみにこれ、非合法だったりする。リン軍曹なら足を付かせないだろう。

 

 上層部が気にしているらしい少女。非常に嫌な予感がする。軍曹に調べさせるのは、ちょっとした予防線だ。

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