【完結】TS脳筋没落ジオンお嬢様戦記   作:むにゃ枕

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08 朝チュンお嬢様

 ロバート・ロウ大佐が、娘に託そうとしたデータ・チップ。ザビ家の情報機関が求めていたものだ。そのチップが、今は私の手元にある。娘に渡さなかったのは、ロウ大佐へのせめてもの嫌がらせだった。

 

「これ、名簿ですね。計画書もあります。多分、今回のクーデター未遂に関与した人のリストと、クーデターの計画書ですね。軍人やら、政治家やらよりどりみどりです」

「軍曹、君ならこれをどうする?」

「うーん。めんどくさそうなので、ドブに捨てますね」

 

 スタンドアロンになっている端末で、データ・チップを洗ったリン・キム軍曹。彼女らしい答えに、私はつい笑ってしまった。

 

「なんで、笑うんです? 少尉だったらどうするんですか?」

「この問題は、私の手に負えない。だから、こういうのは上司に責任を取らせる」

「うわー。ゲール中佐がすごい顔しそう」

 

 リン軍曹と、ゲール中佐がこのチップをどうするのか、話していると、乱暴なノックがあった。

 

「朝っぱらから呼びやがって。一体なんだってんだ」

 

 昨晩は、飲み明かしていたのだろう。ゲール中佐の近くにいるだけで、酔ってしまいそうだ。

 

「リン軍曹、端末を中佐に渡せ」

「はっ。どうぞ、中佐」

 

 ゲール中佐は、嫌そうな顔で端末を睨んでいた。しかし、スクロールを続けるうちに、彼の顔色が変わった。

 

「これは、極めて深刻な問題だな。上層部が狙っていたのは、これだろうな……反政権派を一網打尽に出来る」

 

 頭をガリガリ掻いているが、答えは出ないようだった。

 

「シーマを呼ぶ。俺にはわからん」

 

 ゲール中佐は、シーマ中佐を呼んだ。話し合いの結果、このデータ・チップはシーマ中佐が扱うことになった。この情報は、海兵隊の状況の改善や、交渉に役立てるという。

 

 たかが情報だ。しかし、情報は武器になる。シーマ中佐には、頑張ってもらいたい。

 

§ § §

 

 海兵隊の女性陣は仲が良い。男職場である軍において、性別が同じである。それだけで、派閥が出来るのだ。

 

 小隊の先任であるジョルジュ准尉より、リン軍曹が私のブレーンとなっている。有り体に言ってしまえば、彼女は、非常に便利なのだ。

 

「リン軍曹は、どうしてここに来たの?」

「どうも前の職場で、やりすぎたみたいですね。それで、上司との折り合いが悪くなってここに左遷されました。人間関係のもつれですね」

 

 前世でも聞いたことがあるやつだ。人間関係は仕方ないね。

 

「そういう、少尉はなんで海兵なんかに送られたんです?」

「暁の蜂起に参加した。そこで、はじめて人を殺して、ショックで脱柵した。その結果、評価はガタ落ち。晴れて最初の任地が海兵隊になったんだよ」

「うわぁ……思ったよりヘビーなんですね。学生のうちにそんなことが有ったんですね」

「まあ、学生だろうが、なんだろうが。人が、人を殺すってことは重いんだよ」

 

 書類作業の休憩時間だ。場所は、小隊本部だし、周囲に人の姿はない。だから、私は少し、本音を話すことにした。

 

「ロウ大佐が、連邦政府との戦争が、近いと言っていた。恐らく、事実だと思う。私は、怖い。どうすれば良いと思う?」

 

 声に震えが混じっていた。恐怖が抑えられなかった。このまま行けば、私が虐殺の引き金を引くかもしれない。

 

「えー。本当です? 仮に本当だとして、みんなギレン総帥を信頼してるんですよ。ジオンの国民が総帥を選んだんです。連邦政府の方が強いじゃないですか。それで、戦争に負けて国がひどいことになっても自業自得じゃないですか」

「それは、違う。ギレンは、反体制派を弾圧して黙らせた。だから、みんなギレンに騙されているんだ。狡猾な詐欺師に騙されているんだ……」

 

 リン軍曹は、私の額に手を当てた。

 

「熱でも有ります? それとも、反乱軍の大佐にあてられました? ジオン国民は、ギレン総帥を支持してますよ。決して騙されたとか、そんなことは有りません」

「いや、違う。違うんだ。だって、そうじゃなければ救われないだろう! だったら、今回の反乱はなんで起こったんだ! 暴力で口を塞がれたから、立ち上がったんだろう?」

 

 椅子に座っている彼女を、睨みつけていた。

 

「少尉は、何もわかっていません。私、なかなか酷い人生を送っているんですよ。軍に入って、ようやく人間になりました。国民とかどうでもいいじゃないですか。あんなバカな奴らがどうなっても良いじゃないですか! なんで、そんなに頑張って全てを背負い込もうとしてるんですか? バカなテロリストの戯言に絆されましたか?」

 

 目の前の彼女は怒っている。不味い空気だ。折れるしかないだろう。

 

「わたくし、頭に血が昇っていましたわ。ちょっとどうかしてました。許してください」

「じゃあ、飲みに行きましょう。なんやかんや言って、少尉と飲んだことなかったですからね」

 

 正直、お酒は好きじゃない。酔うと不安になってしまうからだ。士官学校を卒業したあと、実家に泊まった時のことを思い出す。一緒にお酒を飲んだ叔父によると、私は泣き上戸で大層酒癖が悪いらしい。

 

「あの、お酒はわたくし、控えているのですが……」

「良いから行きますよ。今度の休みに行きましょう。それで、許してあげますから」

「え、ええ。わかりましたわ」

 

 外泊許可を取り、私はリン軍曹と飲みに繰り出した。酒癖の悪さは伝えたが、彼女は気にしないと言っていた。

 

「少尉、なんでそんな度数の強いお酒飲んでるんですか?」

「コスパが良いからですわ」

「ダメです。あー。脱がないで」

 

 あー、お酒が回りますわ〜

 

「なんで、泣いてるんですか!?」

「だって、わたくし転生者なのに、何もできずに……」

 

 うー、かなしいですわ。なんか、もう。泣きたい。からだが、あつい。あー、お酒がまわる。なんか、おそいたい。あまえたい。

 

「あれ、なんで、わたくし裸なんですの? それに、リン軍曹も裸……」

 

 めちゃくちゃ記憶がある。酔って泣き上戸になったわたくしは、なんやかんやでリン軍曹をホテルに連れ込んでアレなコトをやってしまったのだ。

 すごい甘えた記憶がある。ヤバい。わたくしは部下と致してしまった。

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