めちゃくちゃ気まずい目覚めだった。はじめての相手が女の子で、よりにもよって副官である。
薄々自覚していたが、多分私は、男より女の子が好きだ。前世の性的嗜好が残っているのかもしれない。
「アミニアちゃん、性欲強すぎません?」
「ごめん……」
「甘えてくるのは良いんですけど、体力有りすぎて何回イっても終わんなかったんですけど」
「ごめん……」
「で、どうするんですか?」
「どうするとは?」
「あなたが転生者を自称する、頭がちょっとアレな人だってことですよ。この先、戦争が起きて、海兵隊がコロニーに毒ガスを流すらしいじゃないですか」
洗いざらい吐いてしまったらしい。リンちゃん助けて。
「どうしようね……?」
「だから、私が聞いているんですよ。どうしたいんです?」
私は、答えに詰まった。
「……戦争を避けたい」
「無理ですね。あなたが足掻いても無駄です。国民はみんなギレンを支持してます。戦争を支持してるんですよ」
困った。ちょっと反論できない。
「じゃあ、ギレンを暗殺すれば」
「無駄ですね。国民は戦争したがってるんですよ。あなたが殺されて終わりじゃないですか。ギレン総帥が死んでも、代わりはいますよ」
「うう……じゃあ、どうすれば……」
「逃げちゃいましょうよ。月に行けば大丈夫です。私に家族はいませんし、アミニアちゃんと一緒に逃げられますよ」
それは、魅力的な提案だった。全てを捨てて逃げ出せば、私は戦争という恐怖から逃げられるのだ。
しかし、間違いなく後悔が残るだろう。叔父や、サイド3の人々を守りたいと、心に誓ったはずだった。
「ごめん。リン。私は行けない。私は、ジオン軍人で国民を守る義務が有る。私の後には、守るべき価値のある人がいるから」
「はあ〜〜。じゃあ、仕方ないですね。少尉が逃げないというなら、私もお供します。私の後には守りたい人はいませんけど、隣の少尉は守りたいですからね」
若干照れているらしく、頬が赤くなっているリンに抱きつく。彼女も、渋々といった様子で、私の背に手を回した。
「午後から仕事ですよ。なんで、シたそうな顔してるんですか。ダメですからね。こら、押し倒すな。バカ」
仕事が、終わったあと私室にリン軍曹を呼び出した。下心も有ったが、まだ今後について話がしたかった。
「まだ、したりないんですか? 変態エロ少尉さん」
「うっ、いや違くて。今後について、話したいなって」
「ふーん」
なんやかんやで、君も物足りなさそうじゃないか。いけない。自重しなければ……
「UC0079の開戦初頭、海兵隊は、サイド2アイランド・イフィッシュにGGガスを流すことになる。ジェノサイドだ。だが、これは仕組まれたものだった。私は、これを止めたい」
「うーん。まあ、なんとかできそうですね。海兵隊の幹部連は気心が通じてますし、なんとかなるんじゃないんですか?」
さすがだ。私の悩みが晴れていく。持つべきは頼りになる彼女だ。
リン軍曹のお墨付きをもらったことで、私は勇気を得た。なので、海兵隊の幹部連が集まる中で、全てを曝け出すことにしたのだ。私の昇進が言い渡され、アサクラ大佐を除く、幹部連が揃ったこの会議室で私はぶちまけた。
「おまえら聞けぇ! 静かにしなさい! 話を聞きなさい!
お嬢様一匹が、命をかけて諸君に訴えているのですわ! いいですの、UC0079に戦争が起きますの! 海兵隊は結果的にサイド2の首都バンチ、アイランド・イフィッシュに毒ガスを注入することになりますわ。戦後にはB級戦犯指定がされますの!」
「アニミア中尉、ここは会議室だ。巫山戯るのも大概にしてくれ」
「うるさいですわね!!」
はじめは、気でも狂ったのかと、話を邪魔しに来た幹部もいたが、机を粉微塵にしたら大人しくなった。
「アサクラ大佐によって、コロニー虐殺の汚名を着せられてしまいます! あの名ばかりの反逆者を誅なければ海兵隊の未来はないですわ! カス大佐に毒されていますわ!
私達は海兵ですわ! 海兵ならば! 自分を否定する上司を誅するべきですわ!」
首を賭けて説得するつもりだったのだが、ゲール中佐と、シーマ中佐は冷汗をダラダラ垂らしていたし、他の幹部も顔面蒼白だった。
副官として、私に付いてきたリン軍曹は、額を抑えて点を仰いでいた。
「アニミア少尉、いや、中尉。君の話は、正直分からない」
「ゲール中佐、わたくしの真摯な想いが伝わらないのですの!? それと、そこの憲兵大尉さん、外部に連絡を取って狙撃でもさせようとしてます? そんな弾当たりませんわよ」
椅子を粉微塵にすると、物分りが良くなったようで皆が両手を上げた。
「ですから、海兵隊は今後、ギレン閥に通じているアサクラ大佐により、ジェノサイドの汚名を着せられます。なので、先に大佐を排除するか、無力化するべきですわ。わたくし、腕力には自信があるのです。もしくは、みなさまが、大佐を信用しないで、私の話を信じてくださること。どちらかを選んでください」
「頼む。大人しくしてくれ。中尉、君の話は分かった。十分に分かったから暴れないでくれ。部下を、殺人者にしたくはないんだ」
「中佐、わたくし、大変、手加減してますのよ。これは、100%善意からの忠告ですわ。わたくしの忠告が聞けないと言うなら、わたくしは、軍を辞めます。では、話は終わりです。営倉でも、精神鑑定でも不名誉除隊でもしてくださいまし。あ、死刑は嫌ですわ」
颯爽と会議室をあとにした。すぐに憲兵が、私を取り囲んだ。話したいことは話したので、後悔はない。
その後、私は精神鑑定を受け、営倉に送られ、人事から退役勧告を受けた。精神鑑定では、不安障害とされお薬が出てしまった。
私の共犯とみなされたが、すぐに容疑の晴れたリン軍曹。彼女は、娑婆に戻った私を詰った。
「バカなんですか? なんで、正面から言ってるんですか? これで、死刑になったらどうするんですか? このバカ!」
半年ほど、憲兵がめちゃくちゃ監視してきたが、問題はなかった。ゲール中佐やシーマ中佐は、かなり優しくしてくれた。他の幹部の人たちも、気を使って接してくれた。
どうも、精神的に疲れているとみなされていたらしい。わたくし、今は、バリバリ元気ですけど! 出されたお薬もすぐに終わりましたし!