例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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告知忘れておりましたが、本作品は不定期更新といたします。
毎週末のどこかで1話は投稿できるように努めます。


アイリス・エヴァンズと秘密の部屋
屋敷しもべ妖精との出会い


「で、アイリス、ハリー、ホグワーツでの一年について本当の所はどうだったんだい?

父さんと母さんには聞かせられないような愉快な事も山の様にあっただろう?」

夏休み三日目のお茶の時間の後、地下の実験室で母が私とハリーに問うた。

私とハリーは祖父母に昼食、午後の茶の時間、夕食時に少しずつ話せる範囲で話していた。

そして先ほどのお茶の時間で大体は話し終えたのだが…母がそう問うてきた。

「例えば…ニコラス・フラメル師の賢者の石や『死喰い人の主』について」

「ペチュニア伯母さん!どうしてそれを!?」

「大半は推測だけれどもね、フラメル夫妻から手紙が届いたんだよ、賢者の石を砕く事にした、とね。後は私が知っている細かい情報を統合して…ね」

「…伯父さん経由で全部聞いている、とかじゃないよね?」

そうハリーが問う。

「セブルスからもいくらか情報は抜いたが、大体は雑多な知識の力さ…さ、教えておくれ、話せる範囲でいいから」

母に促されて、私とハリーは、ハリーが『死喰い人の主』と対決し、賢者の石を守った事についていくつかの魔法薬調合の下準備をしながら掻い摘んで話した。

「フム…なるほどね。ダンブルドアらしい事だ…しかし、アイリスは不参加か、セブルスのお節介のせいとは言え」

「ええ、母さん…この休み中に解毒剤は幾つか煎じて持ち歩くようにしたいわね」

「そう言う心構えなら、ベゾアール石を分けてやろうか?アレは保存性と携帯性に優れているし、私も常に持ち歩いている」

そう言って母はポケットを叩いた。

「何より、N.E.W.T.過程までで扱うレベルの毒薬までなら殆ど解毒できるのが良いな。

ベゾアール石で解毒できない毒を調合するには相当の腕がいる…まあ、ベゾアール石の解毒効果を上回る毒を持った魔法生物もいるんだがな」

「…例えば?」

「一番有名なのはバジリスクの牙の毒だな。そう言う生き物は例外なく分類XXXXXを与えられている」

「バジリスクの毒かぁ…扱ってみたいなぁ…」

私がそう言うと母は顔をしかめていった。

「余程の理由が無ければ、興味本位ならば、やめておけ。アレは相当な危険物だ」

「…ペチュニア伯母さんは扱った事あるの?」

「…ない。と言うか、バジリスクの存在自体が禁制なので、流通しているかも定かではない。

もし、裏で流通しているとしても私程度のコネでは買えんよ…マルフォイ家程のコネがあれば知らんがな」

そう言う母は何かを隠している様子ではあった。

「…そう言えばホグワーツでのセブルスの教師っぷりはどうだった?」

母が唐突に話題を変えた。

「…なんというか、グリフィンドール嫌いを必死に抑えようとしているのに抑えきれてない感じがしたかな」

「うん…あと、僕を嫌っているみたい」

ハリーはそう、控えめな表現をした。実際は憎しみを込めた眼差しを向けられた事もある。

「あーそれは…ハリー、お前がジェームズ・ポッターの若い頃にそっくりだから…だと思う。

お前は奴の学生時代の写真を見た事が無いはずだが、瞳の色を除けばお前とジェームズ・ポッターは瓜二つだ。

ジェームズ・ポッターとその友人のコンビはセブルスと激しく対立していた…

そして個々の実力は兎も角、数で負けていたセブルスは負けが多くてな…

しばしば辱められていたよ…その記憶がよみがえるんだろうね。

ハリーがジェームズ・ポッターとは違う人間なのだと理解はしているだろうが感情はそれと別物だ」

「辱められていた…?伯父さんが父さんに?」

動揺した様子のハリーが聞いた。

「人間だれしも完璧ではないし、それが若い頃ならなおさら、という事だよ。

ま、最終的にジェームズ・ポッターは比較的マシにはなったよ、心優しいリリーが結婚相手に選ぶ程度にはね」

そう母さんは不機嫌そうに言った。

「ええっと、もしかして父さんが伯父さんの命を救った、っていう話もペチュニア伯母さんは知っている?」

「ジェームズ・ポッターがセブルスの命を救った…?そんな事あったか…?まさか、アレの事か?

…しかしアレは…ハリー、その話、誰から聞いたんだい?」

「…ダンブルドア先生から」

「…あんのジジイめ…よくもまあ…」

母はそうダンブルドア先生を罵った後に続けた。

「ハリー、私が知っている限りそれに該当しそうな事件は一つしかない。

そしてそれは教科書の生ける屍の水薬の記述みたいなもんさ…セブルスが私の知らない事件を上手く隠しているのなら別だがね、聞きたいかい?」

忌々し気に吐き捨てる母にハリーは恐る恐る首を縦に振った。

「詳しくは言えないが、セブルスがジェームズ・ポッターの友人に罠にかけられたのさ。

そして死にかけた。それを間一髪でジェームズ・ポッターが救ったという話は聞いた事がある。

ジェームズ・ポッターの本心は知らんが、セブルスはジェームズ・ポッターが助けたかったのはセブルスではなくて友人…あくまで保身の為、と解釈しているよ」

「じゃ、じゃあなんで伯父さんは僕を守ってくれたの?」

「…教師としての義務…で、納得はしないだろうね、ハリー。

その理由らしきものは知っているが、ハリー、アンタにはまだ少し早い…

そうさね、5年生が終わった夏休みに…O.W.L.試験の結果が出た頃にまだ知りたいと言うなら教えてやろう、さあ、手が止まっているよ。ハリー!アイリス!」

そう言って母は私達に調合作業を再開するように促し、母も母にとっては『比較的簡単な仕事』にあたる調薬を再開した。

 

 

 

夏休みも1週間ほど過ぎた頃、私とハリーは宿題と調合の日々を送っていた。

母は材料費に、と多少の小遣いをくれる事になったが、高度な調薬実験をするのにはもう少し欲しいな、と言う程度の額であった。

そこで、母との交渉の結果、母は私達を助手として使う事になった。

それは単に下準備の手伝いだったり、比較的簡単な魔法薬…と言ってもO.W.L.試験のレベル程度には難しい…を代わりに調合させたりした。

おかげで、私達はソコソコの額の小遣いを得て、錬金術理論と魔法薬学にますますのめりこんでいった。

 

そして7月も半分過ぎた頃…私達はある事に気付いた…ハーマイオニーからも、ロンからも手紙が一通も来ていない。

それぞれ、夏休みを楽しんでいて手紙を出すのを忘れている…訳はなかった、私達じゃあるまいし。

私はハーマイオニーに電話をかけてみる事にした。

「はい、もしもし、グレンジャーです」

「もしもし、ハーマイオニー?アイリスだけど」

そう言った瞬間、電話がブツリと切れた。明らかに何かおかしい。

近くにいた母が突然、杖を抜き、赤い光線を発射した。

ゴトリ

そんな音を立てて何かが倒れた…それは身長90センチくらいの枕カバーを纏った小人だった。

そしてよく見るとそのすぐ近くの電話のコードが切断されていた。

「屋敷しもべ妖精…だと?」

母が戸惑いながら立ち上がり、電話線を杖で叩いて修理し、屋敷しもべ妖精と呼んだ生き物に向けて何かしらの魔法をいくつかかけた。

すると分厚い手紙の束が枕カバーから飛び出してきた。それは私やハリーに宛てた手紙の束だった。

「やはりな…どこかの旧家が嫌がらせでもしているのだろうが…尋問してみるしかあるまい」

そう言って母は屋敷しもべ妖精と呼ばれた生き物を地下室に運んでいこうとした。

「あの、ペチュニア伯母さん…その子、どうするの?」

「とりあえず、こいつがどこの家の屋敷しもべ妖精であるかはっきりさせないといけない。

その後は…私の守護する領域でこんな舐めた真似をさせた、こいつの主人を許してやる気はないが…まあ、屋敷しもべ妖精は主人の一家に従うだけの生き物だ。わざわざ傷つける趣味はない、その必要が無ければな」

母はそう言って地下室への階段を下っていく…ハリーと私は顔を見合わせた。

「僕達も行こう」

「そうね、いきましょう」

母に追いついた時、母は実験室への扉を開いた所だった

「ペチュニア伯母さん、僕達も立ち会わせて」

「…見ていて楽しいモノではないぞ」

「でも、手紙を止められていた私達は当事者だもの」

「ならば来なさい、二人とも…ただし、辛くなったらすぐ出ていく事」

母はそう言って実験室の中に入っていった。私とハリーはそれに続いた。

母は杖を一振りしてスペースを作るとドラゴンの血液で床に何か魔法陣のようなモノを描いた。

「ペチュニア伯母さん…それは?」

「屋敷しもべ妖精に効くかはわからんが、魔法封じの結界だよ、簡易的なモノだがね」

そしてさらに母さんは屋敷しもべ妖精の身に着けていた枕カバーに何かしらの魔法をかけた。

そして、ロープで縛った後に紙と自動筆記羽ペンを用意した後、何か魔法をかけて結界の中心に屋敷しもべ妖精を座らせた。

「うぅ…ドビーは…」

「状況は理解しているか、ドビーとやら」

母は明らかに怒っているといった口調で尋問を始めた。

ドビーと言う名らしい屋敷しもべ妖精はぶるりと震えて答えた。

「ドビーめは捕縛されている様でございます」

「そうだ、ドビー、私は君を捕縛した。

君は私の家に忍び込み、あろう事か破壊行為を行った。

まずは君にこんなことを命令した主人を特定せねばならない。

…苦しみたくなければ素直に主人の名前を吐け、誰に命令されてやった」

「ドビーめは、誰にも命令されていないのでございます」

「は?君は無所属の屋敷しもべ妖精だというのか!?」

「いいえ、ドビーはご主人様とそのご家族に仕えております」

「…つまり、君は自分の意志で私の家に侵入し、破壊工作を行ったと主張するのだな?」

「はい、ドビーめはドビーめの意志によってハリー・ポッターがホグワーツに戻らない様にするために参りました」

「僕がホグワーツに戻らない様に?」

「…詳しく説明してくれるか?意味が分からん…なぜハリーとアイリスへの手紙を止めてハリーがホグワーツに戻らなくなる?」

「…ドビーめは考えました、ハリー・ポッターが友達に忘れられてしまったと思えば…ハリー・ポッターはもう学校には戻りたくないと思うかもしれないと…」

私とハリーは顔を見合わせた。ハリーも私もそんな性格ではない。

そりゃあ、友達がいた方がうれしいし楽しいだろうが別に学びの場に必須だとも思っていない…はずだ。

「ドビー、僕はそんな事をしてもホグワーツに行くのを止めないよ。お願いだから、止めてくれないかな」

「…つまり君のした事は嫌がらせにはなれど無駄だったというわけだ。

そして、ハリーをホグワーツに行かせたくないのは君の主人がそう望むからだな?

主人の命令無しに自分の意志で主人の願いをかなえるためにそうしたんだな?」

「いいえ!ドビーめはハリー・ポッターを守るためにそうしたのでございます!」

ドビーが叫んだ。

「ハリー・ポッターは安全な場所にいないといけません!ハリー・ポッターがホグワーツに戻れば、死ぬほど危険でございます!」

「…詳しく説明を」

「罠でございます!今学年、ホグワーツ魔法魔術学校で世にも恐ろしい事が起こるように仕向けられた罠でございます!

ドビーめは何カ月も前から知っておりました。ハリー・ポッターは危険に身を晒してはなりません!ハリー・ポッターはあまりにも大切なお方です!」

「具体的には?何が起きる?誰が罠を仕掛けた?」

ドビーは腹筋運動をする様に頭を床にガンガンと打ち付け始めた。

「ドビーは悪い子!ドビーは悪い子!」

「何をやっている!やめろ!」

「ドビーめはご家族の秘密を話そうとしたのです、ですからドビーは自分で自分をお仕置きしないといけないのです」

「…なるほど、つまり君の主人が仕掛けた罠なんだな」

「ドビーは悪い子!ドビーは悪い子!」

ドビーは再び自分にお仕置きを始めた。

「…相当主人に虐待されているな、ドビーは…」

母は憐れむ様にドビーを見た。

「だが、悪いがこちらも家族の、大切な娘と甥の命がかかっている様なのでな…尋問は続けさせてもらう。

その世にも恐ろしい事とやらに『死喰い人の主』は関わっているのか?」

「いいえ―『名前を読んではいけないあの人』ではございません」

ドビーはハリーの方を向いて必死に何かを訴えかけるようにそう言った。

「…ダンブルドアの守護するホグワーツで『死喰い人の主』以外がそこまで危険な罠を張れるとは思えんが…グリンデルバルトが今更何かするとは思えんし…」

母が迷い始めるとドビーが叫んだ。

「アルバス・ダンブルドアが偉大な魔法使いである事は存じております。

『名前を読んではいけないあの人』の力が最高潮の時の力にも対抗できると聞いています!しかし、しかしでございます!

アルバス・ダンブルドアが使わない力が…正しい魔法使いなら決して使わない力が…」

そこまで言って、ドビーはさらに強く頭を床にたたきつけ始めた。

「…何らかの闇の魔術が関係している、という事の様だな…フム」

そう言って母は杖を構え…ちらりと私とハリーを見た。

「…私は幾つか薬を取ってくる、二人でドビーを見張っておいてくれ」

母はそう言って杖を降ろし、姿くらましをした。

「今のもしかして…?」

「…服従呪文をかけるつもりだったのを止めたんじゃないかな…ペチュニア伯母さん」

厳密には、屋敷しもべ妖精は法的にはヒトではない為、合法ではあるが。

「大丈夫?ドビー」

ハリーはそう言ってドビーに声をかけた。

「ああ、ハリー・ポッター。ドビーめはずっとあなた様にお目にかかりたかったのです。…とっても光栄です…」

「うん、ありがとう、ドビー…ドビーの仕える家族ってどんな人たちなの?」

「そ、それは…ドビーは悪い子!ドビーは悪い子!」

ドビーはそう言って自分を罰し始めた。

「…ごめん、仕える家族の事は話せないんだね」

「ハリー・ポッター、ドビーめはご家族の悪口を言いかけたのでございます」

「…なるほど…そう言う間接的な情報提供はできるのね…」

私は少し呆れた様子でそう呟いた。

「でも、ドビー、貴方が本当はご主人様の命令でこうしているわけではないと証明できる?」

「ああ、アイリス・エヴァンズ。ご聡明な貴方様の懸念は最もでございます。

ただ、ドビーはドビーめを信じて頂きたいと申し上げるしかできないのでございます」

「…まあ、それはそうね。無駄な事を聞いたわ、ごめんね」

「ああ、なんと慈悲深いお方がた…魔法使いの方々がドビーめにごめん、などと」

そう言って、ドビーは感動している様子だった。

「そう言えば、ドビー、この家にはどうやって入ったの?ペチュニア伯母さんがいくつかの魔法をかけている筈だけれども」

「はい、ドビーめは魔法で入りました。

屋敷しもべ妖精の魔法は魔法使いの皆様方が用いられるのとは違うのでございます。

屋敷しもべ妖精にとってはホグワーツでさえ出入り自由なのでございます。」

「…つまり、ドビーに対抗するなら、他の屋敷しもべ妖精の力を借りないといけないって事?

っていうか、今すぐにでも、ドビーは逃げられる?」

「はい、ハリー・ポッター。ですが、ドビーめはハリー・ポッターとお話させて頂きたかったのでございます!」

ドビーがそう言った時、ポンッという音と共に母が姿現しで帰ってきた。

「それでは、そろそろお暇させて頂かなくてはならないのでございます」

ドビーのその言葉に母が杖を抜く…が、間に合わなかった。

ポンッという音と共にドビーは消えた。

「チッ…やはり屋敷しもべ妖精には効かなかったか」

そう言って母が何かしらの呪文…聞いた事がない…を唱えると顔をしかめた。

「一応、追跡用の印をつけておいたんだが消されている…奴は直接屋敷に戻らず、ロンドンのダイアゴン横丁に飛んだようだ。そこで印を消している」

そう、母は忌々し気に呟いた。

「アイリス、ハリー、すまないが午後の予定はキャンセルだ。

無駄だとは思うが幾つか手だてを打たねばならん…手紙もたっぷり来ている様子だしな、その返事でも書いておきなさい…グレンジャー嬢に電話をするのもいいだろう」

母に促されて私達は地下室を出てリビングに戻った。

 

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