例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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サイン会と母からの無茶振り

翌水曜日、私達は再びロンドンを訪れていた。

13時頃に両替・引き出しを終えてグリンゴッツ前に待ち合わせ、と言う約束である。

私達は薬問屋によって魔法薬の調合と研究に使う材料を注文…支払いは金庫から引き落としで受け取りはフクロウ便…をした後、グリンゴッツにやってきた。

前回と同じように、小鬼は去年と同様にお茶をごちそうしてくれようとしたが、母がそれを断り、母の私用金庫へ向かった。

そこで母は教科書の買い足しには過剰に見える量の貨幣を取り出し…それとは別にガリオン金貨を革袋に入れて私達に渡した。

「本当に小遣いからの引き出しは5ガリオンずつで良かったのか?友人と買い物をするならもう少し現金で渡して欲しいとねだっても小言は言わんぞ?」

ちなみに、魔法界の貨幣での用途指定のないお小遣いは去年のホグワーツ特急に乗った際のお小遣いを別にすれば初めてもらった。

母からの小遣いは基本、魔法薬の材料費に消える為、現金支給ではなく帳簿決済である。

「今、そんなに高いものは欲しいと思っていないから大丈夫、ペチュニア伯母さん。

今年もホグズミードには行けないし」

「そうね、5ガリオンあればちょっとした衝動買いと往復の車内販売には十二分だもの」

「そうか…お前達、今年も結局ペットを買わなかったし…いいのか?

特にふくろうとか、個人的に手紙を出すのには便利だぞ?」

母の言葉に、私達は顔を見合わせてこの休みの間に出た結論を述べた。

「「ペットの世話をする時間が惜しい」」

その答えに母は苦笑した後、小鬼に金庫を閉じるように言った。

 

地上に戻ってきて大理石の大ホールに戻ってきた時、カウンターにハーマイオニーとその両親がいるのを見つけた。

「アイリス!ハリー!もう来ていたのね、ついさっきロン達一家が地下に向かって行ったわ」

「入れ違いね。ハーマイオニー達はもう少しかかる?」

「去年と同じならあと5分から10分くらいかしら。ポンドをガリオンに換えるのって結構時間がかかるのよ。小鬼の発行した貨幣ではないから真贋の確認に時間がかかるんですって!」

「了解!それじゃあ外で待っているわね!」

という事で、私達はグリンゴッツを辞し、その玄関前でグレンジャー一家とウィーズリー一家を待った。

10分ほどしてグレンジャー一家が、15分後にウィーズリー一家がやってきた。腕時計を見ると時間は12時55分であった。

で、だ。これだけの大人数で一緒に行動するのも今更ながらに大所帯にすぎるし、各自買いたい物も違う。

従って、ここから1時間の自由行動として、その後にフローリシュ・アンド・ブロッツ書店に集合という事になった。

「念のため言っておきますけど、『ノクターン横丁』には一歩も入ってはいけませんよ!」

早速、偶然出会った悪友のリー・ジョーダン先輩と共に何処かに行こうとする双子の背中に向けてウィーズリーおばさんが叫んだ。

パーシーは一人で人混みの中に消え、ウィーズリーおばさんはジニーと中古の制服等を買いに行き、ウィーズリーおじさんはグレンジャー夫妻を誘って漏れ鍋に向かった。

「さて、それなら私もちょっと買い物をしてくる。

お前達も『ノクターン横丁』に来てはいけないよ、まだ危ないからね。

それと、できるだけ4人一緒に、最低でも二人組で行動するように。ではまた後で」

そう言って母は人混みに消えていった。

「ねえ、『ノクターン横丁』って?」

「あーダイアゴン横丁の裏にある闇の魔術関連の品を扱う店の集まった一角の事だよ」

ハーマイオニーの質問にロンがそう答えた。

私達はアイスクリームパーラーでそれぞれ好みのアイスを買ってそれを食べながらダイアゴン横丁でウィンドウ・ショッピングをする事になった。

尚、ハリーはイチゴ入りピーナッツバター味、ハーマイオニーはラズベリー入りチョコレート味にナッツをトッピング、ロンはチョコミント味、私はラムレーズン入りのバニラにした。

途中、ロンがクィディッチ関連の店舗の前で贔屓にしているらしいチームのユニフォームに引かれて足を止めて食い入るように見つめて動かなくなった。暫く待っても動く様子が無いので、羊皮紙とインクを補充するという名目で隣の文具店に引きずっていった。

また、途中でウィーズリー家の双子とリー・ジョーダン先輩が悪戯グッズ専門店で花火を購入しているのを見かけた。

その後、古道具屋でパーシーが古本を立ち読みしているのを見かけた。

その古道具屋で軽く店内を物色してみたが、古本以外は私の興味を惹くものは特になかった。

古本もざっと見た限りは面白そうな本は少なく、皆を待たせるのも悪いので退店する事にした、時間があるときに宝探しに来ても良いかな、と記憶の片隅にメモを取って。

 

約束の時間の少し前にフローリシュ・アンド・ブロッツ書店にやってきた私達は黒山の人だかりを見た。

どうやら、教科書の著者であるギルデロイ・ロックハートのサイン会をしているらしい。

「来たか」

母がその黒山の人だかりを忌々し気に眺めながら私達を待っていた。

「アイリス、ハリー、すまんが私は入らない…この黒山の人だかりに突っ込んでいくのはしたくない」

母はそう言うと教科書代(ロックハートの本7冊と基本呪文集1冊)として8ガリオンずつ、私とハリーに渡してくれた。

ハーマイオニーはロックハートのサインを貰おうと言ったが、私とハリーとロンはこの列に並んでまで彼のサインを欲しいとは思わなかった。

「あーウィーズリー夫人とグレンジャー夫妻はサイン待ちの列に並んでいる筈だ。

進み具合から言って順番はもう少し後だと思うから合流すればそんなに待たずに済むと思う」

母のその言葉を聞いて、私以外の三人は人混みの中に突っ込んでいった。

私もそれに続こうとして…やめた。

「アイリスは行かないのか?」

「サインは欲しくないし、私達は無理に今日、教科書を買う必要はないもの…どうせ、夏休み中にあと1回か2回は来るでしょう?ダイアゴン横丁に」

「…それもそうだな」

と言う訳で、書店の外で私と母は皆を待った…突然、書店の中が騒がしくなった。

何事だろうと、聞き耳を立ててみると、ロックハートがホグワーツの『闇の魔術に対する防衛術』の教授に就任するという事らしい。

「…あの目立ちたがり屋で自惚れ屋のギルデロイ・ロックハートが…?」

母は驚愕した様子でそう呟いた。

「母さん、ロックハートの知り合い?」

「奴は私のホグワーツでの後輩だ、同寮(レイブンクロー)で4つ下だな。

成績も才能も平均以上ではあるが…その能力に見合わん野望を吹聴しては裏で笑われていたよ。

奴がよく言っていた野望の中に『賢者の石を作る』と言うのがあったから、どれほど適性があるのかと一度話をしてみたが…O.W.L.試験で錬金術の履修前提を満たすには相当の努力が必要、程度の才能しかなかったように思えた。

加えて、私が卒業した後の事だが、自己顕示欲丸出しのトラブルメーカーにもなったそうだ。

まあ、目を見張るような成長をする者もいるし、少なくとも文筆活動の才能はあるようだがな…ゴーストライターにかかせているのでもない限りは」

母から小声でそんな話を聞いているとドラコ・マルフォイと彼の父親らしき人物が出てきた。

そして少ししてから、ウィーズリー一家、グレンジャー一家、ハリー、ハグリッドが出てきた。みんなしょんぼりした様子であった。

もう帰る、という事で漏れ鍋に向かいながら話を聞くと、ウィーズリーおじさんとドラコ・マルフォイの父親…ルシウス・マルフォイと言うらしい…が殴り合いの喧嘩をした事が新聞に載るかもしれない、という事であった。

また、その前にハリーがロックハートに晒し物にされており、それも新聞に載りそう、だという事である。その後、私達は漏れ鍋で解散し、帰宅した。

なお、私とハリーの教科書は後日、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店に買いに行った。

 

 

 

「まったく…今年はハリーにはおとなしくして欲しいものだ」

漏れ鍋の一室で私は父との面会しながらお茶をしていた。その時の会話の流れで父が言ったのがその言葉だった。

「…さすがに2年連続でそんな大問題も起きないでしょう?ハリーの冒険心が刺激されるような大事件が起きなければハリーは知識を貪る事とクィディッチ以外には大して興味を持たない筈よ」

「だが、既に不穏な動きは起きているのだろう?例のしもべ妖精の件とか…な」

「ああ、ドビーと名乗ったあの屋敷しもべ妖精の件?ただの嫌がらせじゃないの?」

「ペチュニアはそうあって欲しい、と願ってはいるが、ペチュニアも私も警戒するべきだと思っている。

そして、そんな事件にハリーが首を突っ込まないと信じるのは…愚かだ」

父はそう不機嫌そうに言った。

「…まあね、多分、ハリーは首を突っ込むでしょうね」

「そして、それにアイリス、お前も好奇心から首を突っ込む、と」

「…理性を捨てる気はないわ。ハリーみたいに命がけで突っ込むつもりはない」

「グリフィンドールらしい答えをありがとう、アイリス」

父は皮肉たっぷりにそう言った。

 

 

 

魔法薬学漬けの日々の後、夏休みが終わり、ホグワーツ特急に乗る日が近づいてきた。

「さて、そろそろ今学年に取り組むべき新しい課題を与えよう」

そう言って母は羊皮紙にかかれたリストを私とハリーにそれぞれ渡してきた。

そこにかかれていた課題には…O.W.L.試験に出る程度の難度からN.E.W.T.過程で習う様な呪文の習得、それを超える難度の課題など様々であった。まあ、少なくとも、新二年生に出す課題ではない。

主だったものを抜き出すと

・武装解除呪文の習得

・妨害呪文の習得

・失神呪文の習得

・盾の呪文の習得(派生呪文・強化呪文も可能であれば習得する事)

・守護霊呪文の習得(当然、有体であれば尚よい)

・無言呪文の習得(行使する魔法の難度は問わないが最低3種類の呪文について習得する事)

・閉心術の習得(スネイプ教授が開心術・閉心術双方の使い手なので指導を仰いでも良い)

・真実薬の調合法とその対抗策についてのレポート

・箒などの飛行用道具なしでの飛行術の開発・習得(理論構築だけでも良い)

・錬金術を用いた物品の作成計画の立案

・許されざる呪文3種とその対抗手段に関するレポート

・『腐ったハーポ』とその発明についてのレポート

・その他、自由研究を提出しても良い

との事である。

「母さん、正気?私達、今年やっと2年生よ?」

私の言葉に母は笑いながら答えた。

「正気だとも。

去年は共同でレポートを書くようにと言ったが、今年は相談・協力は許すが課題はそれぞれ実施する事。

ちなみに、特に特定のご褒美は定めないし、一つも達成していなくともペナルティもない。

出来そうな課題から取り組んでも良いし、面白そうな課題から取り組んでも良い。はたまた、課題を無視して望むがままに知を貪るのも一興だ。

とは言え、課題の出来具合に応じて適当な願いを叶えてやろう」

そして、急に真面目な顔になって続けた。

「一応言っておくと、6年生に上がるまでに一定程度の戦闘力と秘密保持力は身につけておいて欲しい。闇祓いになれる程、とは言わないが錬金術の秘奥をちょっとの事でペラペラしゃべらされるようではいけないからね」

「戦闘力と秘密保持力の基準はどれくらいを目指せばいいの?」

そう、ハリーが問う。

「どちらも、上を目指せば青天井だが…戦闘力は盾の呪文と何らかの攻撃呪文の習得が最低限のラインだな。攻撃呪文は失神呪文や武装解除呪文程度でいい。

秘密保持力は心を閉ざす程度の閉心術と真実薬に対する持続性解毒剤の調合くらいか」

「ちなみに、母さんがその基準を満たしたのは?」

「確か…5年生のイースター休暇頃だな。閉心術以外は4年生のクリスマス頃に達成したんだが」

「…それでもとても速いペースだと思うわ。でもそれを上回るスピードでの学習を推奨するのは何故?」

「だって、お前達、入学前から理論学習はしているからその分実技に時間を回せて、もっと早く習得できるだろう?

忘れているかもしれんが、私とリリーはマグル生まれのマグル育ちだから魔法の学習を始めたのはお前達よりずっと遅い」

母の、期待なのか確信なのか判断し辛い態度に、私とハリーは顔を見合わせた後にこう答えた。

「「やってはみるけど、ダメでも怒らないでね?」」

母はその答えに満足したようで、私とハリーに無言で微笑んだ。

 

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