そうして、新学期の日がやってきた。
今年は祖父母とコークワースの家で別れ、母の引率の元、キングス・クロス駅にやってきた。
そして、9と3/4番線ホームに入ろうとした時、問題が起きた。
母が鉄柵の向こう側に消え、ハリーと私がカートを押して並んでそれに続こうとした時…私達は弾かれた。
幸い、スピードは大して出ていなかった為、大惨事にはならなかったが、少ならからず、周囲の注目をひいてしまった。
「君達、カートは注意深く扱いなさい」
近くにいた駅員にそう怒られたのち、私とハリーはホームに繋がる柵から少し離れた。
私達が弾かれたのを見ていたらしい魔法使いの家族達が慎重な様子で9と3/4番線ホームに向かうが、問題なく通れている様子である。
ホームに向かう人の波が収まった頃、私達は再びゆっくりとホームに繋がる柵に近づき、今度はもたれるように身を預けてみた…しかし柵は通り抜けられない。
途方に暮れているとにゅっと柵の向こう側から人が現れた。それは母だった。
「トラブルのようだな…外から様子を見ているから通れるかやってみなさい。荷物は預かっておく」
母は小声で私達にそう指示した。ホグワーツ特急の出発時刻まであと10分を切っていた。
今度こそは、と私とハリーは柵に向かって歩き出す…私とハリーは柵にぶつかった。
「…何者かに通行を阻害されているのはわかったが…誰だ。例のドビーか?」
母はそう呟きながら柵に手を触れる…母の手は柵の向こう側に溶けるように消える…母は通れる様子である。
「私と一緒に通れないかやってみよう。手を繋いで。荷物はカートを引っ張る振りをしてくれ、実際は私が魔法で運ぶ」
今度は母、私、ハリー、カートの順に繋がって鉄柵の突破を試みた…今度も柵を超える事は出来なかった。
「ハリー!アイリス!どうしたんだい?」
その時、急いだ様子でウィーズリー一家が現れた…時刻は既にホグワーツ特急の発車時刻まであと5分であった。
「ロン、なぜだかわからないけど、ホームに行けないんだ…僕らだけ」
「ふむ…何が起きているんだろうか」
「とりあえず、ウィーズリー一家の皆さんはホームに行ってください、そしてご夫妻はホーム側から問題がないか観察をお願いします」
そう、母が言った。
まず、ウィーズリーおじさんが柵を越えた。
それにパーシー、ジョージとフレッドが続いた。
「やはり、アイリスとハリー以外は問題ないな…」
「大丈夫なの?二人とも」
「大丈夫、最悪、漏れ鍋から煙突飛行でホグズミードに向かってホグワーツから迎えをよこしてもらう。ほら、ロン君も、ウィーズリー夫人と妹さんも」
母に促されてロン、ウィーズリーおばさん、ジニーもホームに向かう。
「さて、もう一度やってみよう」
再び私達は手を繋いで柵の突破を試みた…私達は柵の突破に成功した。
「なぜ、今度は通れたかは分からんが、早く汽車に乗りなさい、乗り遅れる」
「さあ、貴方達も、早く乗りなさい」
母とウィーズリーおばさんの言葉、そして汽笛に促されて私達は心配して待ってくれていたウィーズリー兄弟と共にホグワーツ特急に乗り込んだ。
監督生のコンパートメントに向かったパーシー以外の皆でコンパートメントを探すと、ハーマイオニーがコンパートメントを一つ、確保してくれていた。
そのまま7人でコンパートメントを使っても良かったのだが、ジョージとフレッドは荷物を置いて悪友のリー・ジョーダンを探しに出かけていった…彼のいるコンパートメントに空きがあればそちらに移動する、という事である。
「遅かったわね、何かトラブルでもあったの?」
ハーマイオニーが読んでいた本を閉じて言った。
「僕ら一家はちょっと学校の忘れ物を取りに何度か引き返してギリギリになっちゃった」
「僕とアイリスは何故か9と3/4番線に入る柵を越えられなくて…ペチュニア伯母さんは何者かに妨害されている様だ、って言っていたよ」
「妨害自体はそう難しくないとは思うんだけれども、私達だけ弾こうとしたら結構高度な魔法を使うか、術者がそばで隠れて自分で切り替えるしかないと思うのだけれど…」
「そうね、アイリスの言う通り、これだけ人の多い環境でああいう境界に干渉するのは難しいわね…」
「と言うか、ペチュニア伯母さんが通れたり通れなかったりしなかったりしたからたぶん、術者が近くに隠れていたんじゃないかな」
(ロンとジニーを半ば置いてきぼりにして)三人で議論をしているとジョージとフレッドが帰ってきた。
リー・ジョーダンのいるコンパートメントに移るので荷物を取りに来た、という事であった。
ジョージとフレッドを見送った後、私達は話題を変えた。
「ところで、みんなは実技の自習に使える場所って知っている?」
「実技の練習って…呪文の練習って事?適当な空き教室か談話室ですればいいんじゃないの?」
「ロン、それが…僕達ペチュニア伯母さんから戦闘用呪文の習得を課題として出されちゃって…妨害呪文位ならともかく、失神呪文や盾の呪文の練習は難しくないかな、って。
倒れたら危ないじゃない?」
「…適当にカカシでも立てて校庭の隅で練習すれば?もしかしてお互いを的に攻撃呪文の練習する気だったりした?」
「「…そのつもりだった」」
私とハリーはあきれたようなロンの言葉にそう答えた。
「ちなみに、ペチュニアおばさんからどんな課題を出されたの?去年は魔法薬学系の高度なレポートをいくつも出されていたって言っていたけれど」
「うん…取り組むにしてもできるだけでいいし、無視して好きに勉強しても良いって言われたけど…こんなの」
ハーマイオニーの疑問に私は母からの課題が書かれた羊皮紙を皆の前に広げた。
「…とても高度ね」
ハーマイオニーは呆れたようにただそう言った。
「後ろの方は、課題の意味すら分からない者が混ざっているんだけれども…閉心術って何?『腐ったハーポ』って誰?…うわ、許されざる呪文に関するレポート迄ある」
「閉心術は開心術って言う相手の心に侵入する呪文に対する唯一の対抗手段と言われている技術だよ」
「『腐ったハーボ』って言うのは古代ギリシャの魔法使いね。記録された中で最古の闇の魔法使いと言われているわ。パーセルタングでバジリスクって言う分類XXXXXの魔法生物をペットとしていたらしいわね。後、蛙チョコレートのレアカードじゃなかったかしら?」
「…言われてみれば、持っている気がする」
「ええっと、ハリーも同じ課題をするの?」
ジニーが遠慮がちに聞いた。
「そうだね、比べてみたけれど課題の内容は同じだったよ。
僕はクィディッチの練習もあるからアイリスの方がたくさん課題をできると思うけれどね。
今年は各自、課題をするように言われているから」
そんな感じで会話をたり、読書をしたりしていると車内販売が回ってきた。
私とハリーは皆で食べる為にカボチャジュースとザクロジュースの大瓶を1本ずつ、カボチャパイ1つと魔女鍋スポンジケーキ1つ、蛙チョコレート(1ダース入り)2箱、百味ビーンズ1袋を買った。
私達は各自、家から持参したサンドイッチを荷物から取り出し、ランチタイムにする事にした。
私とハリーは祖母の作ったキュウリのサンドイッチとハムチーズサンドイッチ、ハーマイオニーはローストビーフのサンドイッチ、ロンとジニーはベーコンサンドイッチだった。
食後に魔女鍋スポンジケーキを楽しんだ後、お腹が落ち着くまで読書とお喋りタイムとなった。
これは、ハーマイオニーが食後すぐに百味ビーンズ大会はやりたくない、と言ったためである。
車窓から見える景色が移り変わり、時間が3時頃になった。
百味ビーンズ大会を終え、カボチャパイを切り分けていると足音が聞こえ、コンパートメントの扉が開いた。
そちらを向くと、ドラコ・マルフォイとその二人の子分…グラップとゴイルがいた。
「おやおや、ポッターにウィーズリーじゃないか」
マルフォイが続けて何かを言おうとした時、ハリーが言った。
「ノックくらいしたらどうだい、マルフォイ。それとも、そうしないのが魔法使いの名家のマナーなのかな?」
ハリーのその言葉にマルフォイは青白い顔をうっすらと紅く染め、ロンはあからさまに笑った。
「…ポッター、君が9と3/4番線ホームに入るのに失敗したと聞いたんだが本当かい?
そんなに柵に向かって歩くだけという行為が難しかったのかな?」
マルフォイはハリーの嫌味を無視する事に決めたようだ。
「そうだね、大して難しくはないよ、邪魔さえ入らなかったらね。
どこかの魔法使いの貴族様が僕達にホグワーツに登校してほしくないと思っている様で、夏休みに我が家に屋敷しもべ妖精がやってきて、ホグワーツに登校しないで欲しいと懇願してきたよ。
混血でマグル育ちの僕達に坊ちゃまが成績で負けて恥ずかしかった、とかそう言うんじゃないかな?
そう言えば、マルフォイ、家柄自慢の君の家には、もしかしたら、屋敷しもべ妖精がいるかもしれないけれど、そんな事はしないよね?」
そう、ハリーが嫌味を返した。わかりやすいように、家(ハウス)ともしかしたら、を強調しながら。
「ポッター、うちの屋敷では、当然、屋敷しもべが働いている!どこかの貧乏な赤毛の一家と違ってね!」
そう、マルフォイは返した。屋敷と当然、という言葉を強調して。
「そうかい。それは羨ましい事だね。
所で、僕らはこれからお茶の時間なんだけれども、君達もそうしたらどうだい?用事は済んだんだろう?」
一家をバカにされて飛び掛かろうとするロンを手で制しながら、ハリーはマルフォイ達を睨みつけつつも穏やかな口調でそう言った。
マルフォイは数舜固まった後に口を開いた。
「…そうだね、アフタヌーン・ティーは大切にするべきだ。君達はミットディ・ティーを楽しみたまえ」
そう言ってマルフォイは子分二人を引き連れて去っていった。
お茶の時間を済ませた後はのんびり読書をしてホグワーツまでの時間を過ごした。
その後、見えない馬が引く馬車…そう言う魔法生物が引いているのか、魔法がかかっているのかはハリーとハーマイオニーと1年生の学年末のホグワーツ特急で暇つぶしの議論のネタにした…でホグワーツに向かった。
ガタゴトと馬車に揺られてホグワーツに入城した私達はそのまま大広間に導かれてグリフィンドールの席に着いた。
そして、暫くするとハグリッドが大広間に入って来て教員席の端に座った。
その後、すぐに新一年生がマクゴナガル先生に率いられて大広間に現れた。
ジニーを探したが、彼女はすぐに見つかった。ウィーズリー家の特徴である燃える様な赤毛が目立つのである。
去年とは違う組分け帽子の歌が終わり、組分けの儀式が始まり…終わった。
ジニーはグリフィンドールであった。
ダンブルドア校長の去年と似たような短いジョーク交じりの祝辞の後、御馳走が現れた。
去年と同じ様なローストディナーを楽しみながら夏休みをどう過ごしたかという話題を他のグリフィンドール生と交わした。
御馳走の皿がデザートに切り替わり、控えめに食べていたハリーが糖蜜パイを自分の皿に山盛りにした。私は初めに美味しそうなカスタード・タルトを皿に取った。
少しして食事が終わり、ダンブルドア先生が立ち上がった。
まず、ロックハートが『闇の魔術に対する防衛術』の新任教授として紹介された後、いくつかの注意事項…禁じられた森と廊下での魔法禁止について…とクィディッチに関するお知らせが告げられた。
その後、恒例の校歌の時間となり、それが終わった後、私達は寮に向かい、早々にベッドにもぐりこんだ。