翌日から授業が始まった。
最初の授業はハッフルパフと合同で薬草学だった。
その授業では非常に貴重なモノを扱った。それはマンドレイクだ。
興奮のあまり、スプラウト先生のマンドレイクの性質を問う質問に対して、私とハリーはハーマイオニーと同時に手を挙げた。
そして、指名されたハリーはマンドレイク…別名、マンドラゴラが変身術事故や呪いに対する解呪薬の材料としていかに汎用性があり、かつ有用であるのか、特に十分に成熟した新鮮なマンドレイクがいかに強力なのかを述べた。
そして、マンドレイクを使用した魔法薬について語り始めた辺りでスプラウト先生に止められた。
「そこまでで結構です、今は魔法薬学ではなく、薬草学の時間ですから。グリフィンドールに10点加点。
ミスター・ポッターの述べたとおり、マンドレイクは強力な回復薬、特に解呪系の回復薬の主成分として用いられます。しかし、その有用性と同じくらい、危険な面もあります。誰か、その理由が言える人は?」
再び私とハリーとハーマイオニーが手を挙げる。しかし、ハーマイオニーが一番早かった。
今度はハーマイオニーが指名され、マンドレイクの泣き声が致命的である事を述べ、加点された。
その後、スプラウト先生は私達に耳当てをさせ、マンドレイクの植え換えを実演してみせた。
私達は授業の残り時間を使ってマンドレイクの植え換えをした。
大変な作業ではあったが、非常に興味深かった…まあ、必要が無ければ1度でいい類の体験だが。
次の授業は変身術で、コガネムシをボタンに変える課題であった。
その課題を問題なくこなし、昼食を取った後はロックハート先生の『闇の魔術に対する防衛術』であった。それは…問題だった。というか、昼休みから問題が起きた。
昼食後の少しの時間に私達4人は校庭に出たのだが、グリフィンドールの新一年生…コリン・クリーピーがハリーの写真を撮りたいと言って声をかけてきたのだ。
コリンはハリーのファンのようであり、ハリーと二人で写真を取って欲しくて、できればサインもほしい、という事だった。
そこにマルフォイが寄って来てハリーがサイン入りの写真を配っていると吹聴した。
そこから空気がどんどんと険悪になっていき…そこにロックハート先生がさっそうと現れた。
そして、ロックハート先生がハリーと二人で写真をコリンに撮らせると言い出し…授業の始まる時間を告げる予鈴が鳴り、ロックハート先生はハリーを連れ去った…わけが分からない。
10数秒程、唖然としていたが授業に行かねばと思い至り、私とロンとハーマイオニーはハリー達を追いかけるように『闇の魔術に対する防衛術』の教室に向かった。
ロックハート先生は彼なりのユーモアを交えたつもりらしい挨拶の後、ミニテストを始めた。
その内容からして、酷かった。
ミニテストは54問からなる質問の連続であった。
それは良いのだが、内容が酷い。
ロックハート先生の好きな色とか、ひそかな大望とか、誕生日と理想的な贈り物とか、そう言った質問ばかりであった。
とはいえ、30分を無為に過ごすのも不本意であるし、あまりにも不真面目な態度で減点されてもたまらないので私はミニテストに取り組む事にした。
第一問、ロックハートの好きな色について答えよ。
回答、薄い青色
理由は彼のローブの色である。歓迎会の時も、今も、薄い青色系統のローブを着ている。
第二問、ロックハートのひそかな大望
回答、ダンブルドア先生の後を継いでホグワーツの校長になる
理由は特にない。魔法大臣と一瞬悩んだが。
第三問、私が最も偉大だと思うロックハートの業績
回答、何冊もの著作を執筆し、イギリス魔法界の娯楽に貢献した事
理由は、彼が本当に成し遂げた業績だと思える物の内、最も偉大なモノ。
と言った具合で回答を続けて言った。途中、偶然答えを覚えている質問もあったが大体は適当に答えた。
第五十四問、ロックハートの誕生日と理想的な誕生日プレゼント
回答、4/1、上等のウィスキー
まあ、エイプリルフールに酒が飲める大人に送るのに無難かつ喜びそうなものである。
30分して、ロックハートがテスト用紙を集めた。結果は…ハーマイオニーが満点、との事であり、10点加点された。
そして授業が始まった…あろう事か、ロックハートはピクシーをどう扱うかやってみましょうなどと述べ、大きな籠一杯のピクシーの群れを教室に解き放った。
確かに、ピクシーは分類XXXの安全とは言えないが大して危険でもない魔法生物ではある…が、群れとなればそれは相当ひどい事になると推定される。
咄嗟に私は全ての荷物を鞄に突っ込んでそれを抱え、机の下に隠れた。
ハリーも鞄を抱えて同様にした…それは正解であった。
ピクシーの嵐は教室中を無茶苦茶にしていた…とっさに杖を抜いたロンとハーマイオニーはロンがピクシーに杖を取り上げられ、教室の前の方に放り投げられた時点で机の下にやってきた。
少ししてロックハートが何やら変な呪文を唱えたがそれも効果を発揮せず、逆に杖を取り上げられるという有り様であった。
私達は荷物を守りながらこちらにちょっかいをかけてくるピクシーを全身金縛りの呪文で床に転がして身を守っていた。
終業の鐘が鳴り、クラスメイト達は一斉に出口へ向かって逃げ出した。
私達もそれに続こうとしたが、杖を回収しなければならないロンに引き留められて少し遅れてしまった。
そのせいで私達4人はロックハートに教室に残ったピクシーを籠に戻しておくようにと仕事を言いつけられてしまった。なお、ロックハートはその仕事を放棄して立ち去った。
私達は愚痴りながら私、ハリー、ハーマイオニーの三人がかりで飛び回るピクシーを全身金縛りにしていった。ロンはまだ杖が見つかっていないので私達が墜落させたピクシーを拾って籠に放り込んでいった。
全てのピクシーが墜落するか教室外に逃げ出すかした後、私は改めて口を開いた。
「…私、ロックハートの本の内容、やっぱりフィクションだと思うわ」
「…そうだね、僕もそう思う」
私の言葉にハリーが同調する。
「でも…本にはノンフィクションだって…」
ハーマイオニーがしりすぼみに言う。
「本人はやったとおっしゃっていますがね…」
ロンはあきれるようにそう言った。
その後、魔法で簡単に片づけをしているとロンの杖が見つかった。
落下したシャンデリアの下から、真っ二つに折れて心材であるユニコーンの毛でつながった状態で。
ロンは悲鳴を上げたが、どうしようもなく、スペロテープで応急処置を施して家にフクロウ便を送る事になった。
結果、夏休みまでに何とか資金を用意するから今学年はそれで何とか頑張れ、という事であった。
それから、その週の残りの授業はつつがなく終わった…ネビルが魔法薬学でまた事故を起こしかけてハリーに静止されたのはカウントに入れていないが。
土曜日の午前中、私達はハグリットに会いに行く予定をしていた。
私とハリーはついでに、ハグリットの小屋の近くで呪文の練習をしていいか、許可を取りたいと思っていた。
まずは朝食を取ろうと定刻通りにハーマイオニーと談話室に降りていったが、そこにはロンが一人で待っていた。
「ハリーは?」
「ウッドにさらわれたみたいだ。ハリーのメモがあった、クィディッチの練習だってさ」
「そう…それじゃあ大広間から何か持って行ってあげましょうか」
と、いう事で、私達は大広間に朝食に出かけた。
軽めに朝食を取った後、トースト2枚でベーコンエッグをケチャップと共に挟んだモノを7セット用意し、クィディッチチームへの差し入れとした。
それとは別にマーマレードを塗ったトーストを3枚、練習を見学しながら食べる為に用意した。
それらを持ってクィディッチ競技場に向かったが誰も空を飛んでいなかった。
「もう終わったのかしら…だとしたら、余計なお世話だったわね」
「更衣室に行ってみようよ」
ロンの提案通り、更衣室の扉をノックすると少ししてグリフィンドールのクィデッチチームキャプテンのオリバー・ウッドが顔を出した。
「…ハリーに用事か?まだ練習は終わってないぞ」
ウッドは不機嫌そうにそう言った。
「あー僕達、差し入れにと思って大広間から少し食べ物を持って来たんだけど…」
ロンがそう言うと扉が勢いよく開いた。
「ロン!助かった!腹が減っていたんだ!」
それはジョージかフレッドであった。
「…まあいいだろう、入っていい。だが差し入れを配ったら出てくれ」
私達はハリーを含むグリフィンドールのクィディッチチームの選手にトーストで作ったサンドイッチを配ると更衣室を出てスタンドに向かった。
スタンドでマーマレードトーストを食べ終わった頃、ハリー達グリフィンドールのクィディッチチームの面々がピッチに現れて空に上がった…私達から離れたところに座っていたコリンはカシャカシャと音を立てて写真を取っていた。
「今から始めるなら、練習が終わるのは午後になるかもしれないわね、ちょっとハグリッドに知らせてくるわ」
私はロンとハーマイオニーにそう告げて一度競技場を後にした。
ハグリッドの小屋に近づくと、話し声が聞こえた…ハグリッドとロックハートの声だ。
そう言えば、ロックハートは教職員にその専門性を軽んじるような言動をして回っているという噂があった気がする。
さらに近づいて会話内容に聞き耳を立てるとハグリッドがロックハートにロックハートの本など一冊も読んで無いと告げた様子だった。
足音が近づいてくる…私はとっさに小屋の陰に隠れた。すると、ロックハートが小屋から出てきた。
「やり方さえわかっていれば簡単な事ですよ、助けて欲しい事があればいつでも私の所にいらっしゃい。
私の著書を一冊進呈しましょう。まだ持っていないとは驚きましたね。今夜サインをして、こちらに送りますよ。ではお暇しましょう!」
そんな奇妙な捨て台詞を述べてロックハートはさっそうと城の方に歩き去った。
ロックハートが見えなくなり、私が小屋の陰から出た時、ハリー、ハーマイオニー、ロンが茂みの中から現れた。
「どうしたの?もう練習は終わり?」
「後で合わせて説明するから、まずはロンを休ませないと」
そう言ってハリーはハグリッドの小屋の戸を叩いた。
ハグリッドが不機嫌な顔で現れたが、訪問者が私達だと認識するとパッと顔を輝かせた。
ハグリッドはロックハートがまた来たのかと思った、と言いながら私達を小屋の中に招き入れた。
ロンを椅子に座らせてハリー達が説明するには、あの後すぐに競技場にスリザリンチームが現れ、スネイプ教授のサイン入りメモを振りかざして競技場の共同使用を主張したらしい。
その後、口論になり、その中でマルフォイがハーマイオニーを侮辱したらしい。
それで一触即発になった時、ロンがマルフォイにナメクジの呪いをかけようとして、杖が逆噴射したらしい。
「出て来んよりは出た方がええ、ロン、みんな吐いっちまえ」
そう言ってハグリッドはロンの前に銅製の大きな洗面器を置いた。
「止まるのを待つほか手が無いと思うわ…あの呪いって、ただでさえ難しいのよ。まして杖が折れていたら…」
ロンを心配そうに見ながらハーマイオニーが言った。
「水をたっぷり飲んで吐いてみる?ナメクジが一緒に出てくるかも」
洗面器に顔を突っ込んだロンは首を縦に振ったので私はお茶の用意をしているハグリッドに許可を取ってハグリッドのマグカップ…ジョッキサイズだが…に水を汲み、ロンに差し出した。
ロンは苦労してそれを飲み干し、吐いた…ドボドボとナメクジが水と共に吐きだされてきた。
その様子を尻目にハリーとハグリッドはロックハートが何をしに来たのか、と言う会話をしていた。
ハグリッド曰く、水魔の追い払い方を教えようとした挙句、長々と自分がバンシーを追い払った時の話をぶち上げたとの事であった。
「やっこさんの言っとることが一つでもほんとだったら、俺はへそでちゃをわかしてみせるわい」
等とまで言ってのけた。ハーマイオニーは何時もより少し上ずった声で、ダンブルドアがロックハートを一番適任だと判断したんじゃないのかと反論したが、ハグリッドは糖蜜ヌガーを私達にすすめながら、ロックハート以外誰も手を挙げなかったのだ、と言った。
その話の隣で、ロンは再び水とナメクジを吐き出した。
「それで?マルフォイのとこの倅は何と言ってハーマイオニーを侮辱したんかい?」
「…マルフォイの奴、穢れた血(mud-blood)って…詳しい意味は知らないけれど、ペチュニア伯母さんにはそう言ったと取られる言葉を口にするな、って言われているから相当な侮辱なんだと思う」
「そりゃそうじゃ!そんなこと、本当に言うたのか!」
ハグリッドが大憤慨した。その隣でロンは三度、水とナメクジを吐き出した。
「言ったわよ。でも、どういう意味だか私は知らない。もちろん、ものすごく失礼な言葉だという事はわかったけど…」
ハーマイオニーが戸惑いながら言った。
「あいつの思いつく限り最悪の侮辱の言葉だ」
少し落ち着いたらしいロンが口を開いた。その後、ロンが説明してくれた事には、穢れた血(mud-blood)とは完全なマグル生まれの(両親共にマグルである)魔法使いの事を指す侮辱語らしい。
ついでに、ロンは純血である事が偉いと思っている連中もいる事、実際は殆どの魔法使いは半純血(混血)である事を話してくれた…ネビルを例に純血だから優れているわけではない、と言うのもどうかと思うが。
その後、再び気分が悪くなったらしいロンは洗面器に戻っていった。
そんなロンを見て、ハグリッドはもしロンの呪いがドラコ・マルフォイに命中していれば、親のルシウス・マルフォイが乗り込んできたかもしれないと、その面倒を避けられたという意味では杖が逆噴射したのは良かったかもしれない、と言った。
「…所で、ハリー。あの時、貴方、マルフォイに何か言いかけていたわよね、私の血が泥ならお前の血はどうなんだ、って。もしかして、純血に対する対の侮辱語もあるの?」
「あーうん…侮辱語として知っている訳じゃないんだけれどね、こう言おうとしたんだ、お前の血は澱んでいる(murky)んじゃないのかって」
その言葉にハグリッドは目をぱちくりとさせた。
「そりゃあ、ハリー、ペチュニアから聞いたんかい?澱んだ血(murky-blood)っちゅうのは奴さんが、自身が純血だと主張してそれを誇示する連中を揶揄して口にする言葉じゃ。奴さんがこっそり使っているだけだがな」
「確かに、純血に固執する連中にはピッタリな言葉だね。うぷっ」
「でも、血統を馬鹿にされたからって血統を馬鹿にするのはよくないわ」
「そうだな、色々と敵に回す事になるかんな」
「そうだね、気を付けるよ」
その後、ハグリッドがハリーを写真の件でからかった。ロンが水を飲んで吐いた回数が10回に達し、私達が糖蜜ヌガーをお茶うけにティーカップを空にした頃、ハグリッドが口を開いた。
「おれが育ててるもん、ちょいと見にこいや」
ハグリッドに誘われて小屋の裏の野菜畑にやってきた。そこには巨大なカボチャが10数個あった。
それはハロウィン用のカボチャらしい…明らかに魔法の手が入っている。
ハーマイオニーの意見も同様のようでハーマイオニーは面白半分、非難半分と言った具合でハグリッドの手腕を評した。
その後、ハグリッドはジニーがこの部屋近くにやってきたと言い、もしかしたらハリーに会えるかもと思ってきているのじゃないか、きっとサイン入りの写真を欲しがるぞ、とハリーをからかった。
そろそろ昼食の時間で、ハグリッドの小屋を辞す時間が近づいてきた。
「あ、そうだ、ハグリッド、すっかり忘れていたんだけれど、お願いがあって…」
ハリーが思い出したように口を開いた。
「実はペチュニア伯母さんから幾つかの呪文を習得するように課題が出ていてさ、その練習をする場所を探しているんだけど、ハグリッドの小屋の近くに練習場…と言っても、的を置くだけだけど…を作ってもいいかな?」
「もちろんかまわん…と言ってやりたいが、俺の一存じゃあ決められん。
そりゃあ、お前さんたちが使う位なら構わんが皆に群がられると良く無いかんの、ここは森が近い。
寮監のマクゴナガル先生に相談してみたらどうだ」
ハグリッドのいう事は最もだった。
なお、murkyには濁った、的な意味以外にも暗くて前方を見通せない、誤魔化した、不正な、うさんくさいという意味もあります。