例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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リドルの日記と追放

状況は、1か月の間動かなかった。誰も襲われる事はなかった。

一方、学校側も特に何かできたわけではなく、夕食後の外出禁止も継続のままであった。

事件が起きたのはバレンタインの日の事だった…ロックハートが盛大にやらかした、というべきか。

ロックハートは大広間をケバケバしく飾り立てた挙句、フリットウィック先生に魅惑の呪文を、スネイプ先生に愛の妙薬を習いに行ってはどうかなどと述べた。

更に、飾り立てた12人の小人をホグワーツに放ち、授業妨害ともいえるバレンタイン・カードの配達をさせた。

が、それは一つだけ良い事をもたらした。ハリーがリドルの日記の使い方を暴き、情報を引き出したのである。

どうやら、リドル氏は50年前、ハグリットが巨大な蜘蛛の化け物をホグワーツの秘密の部屋から解き放ったと認識しているらしく、それをくだんの日記に『インクよりずっと長持ちする方法』で記録したらしかった。ハリーはあえて日記に宿ったリドル氏の記憶とやらに反論せずに色々と聞き出したそうである。

…自立思考できる意思を持つ物品とかどれだけ高度な魔法の品だ。そんなもの、賢者の石の創造クラスの偉業であり、『組分け帽子』やそれに準ずる至宝である。

まあ、錬金術の域に足を突っ込む、程度の難易度でそれらしいモノを作成する技術もあるにはある(らしい)が、それは極めて高度な『闇の魔術』に属する(と、組分け帽子について母と話した際に聞いた)。

それか、単純にマグルのコンピュータの様に特定の入力に対して特定の反応を示すようにしておいて意志を持っているかのようにする事もできるがそれにしては反応が高度であった、とハリーは言っていた。

4人で話し合った結果、私達は状況を静観する事としたが、私達がダンブルドア先生に話した推理(バジリスク犯人説)とリドル氏の認識(ハグリットが秘密の部屋を開いて蜘蛛の化け物を飼い、事故で死人が出た)の両方が正しかった場合、秘密の部屋に封じられていたのは魔法生物そのものではなく、強力な魔法生物を従える何かであるという可能性も出てきた。

それを使って50年前、ハグリッドはアクロマンチュア(らしき蜘蛛の化け物)を従え、そして今、継承者はバジリスクを従えている、という可能性である。

その可能性をダンブルドア先生に告げるか否かについては…あえてハグリッドに不利な事はしたくない、と次の被害者が出るまでは留保される事になった。

で、残った問題はリドル氏の日記についてである。多分、日記は闇の魔術に属する方の手段で作られている。さもなくば、リドル氏の名前はダンブルドアをも凌ぐ魔法使いとして知られていなければおかしい技術である。

私はリドル氏の日記を即座にダンブルドア先生かマクゴナガル先生に提出すべきと主張したが、ハリー達3人はハグリッドを庇う観点から、前述の可能性をダンブルドア先生に話す際に提出すればいい、という意見であった。

別に事件がこれで終わりさえすれば犯人がどうなろうがどうでもいい私としては最終的にそれに同意した…何なら、このまま事件が収束した場合は母に対する良い土産にもなるし。

 

四月のイースター休暇の頃、マンドレイクの成熟が進んできた事が確認できた。

その頃にはホグワーツ中に広まっていた恐怖感は大分薄れてきていて、守りの呪文がかかったゴーグルをきちんと着用していないで注意される生徒もちょくちょく出てくる始末であった。

また、イースター休暇では私達2年生はある課題が与えられていた。

それは3年次以降に履修する科目を選択する事であった。

「正直言えば、全教科興味はあると言えばあるけれど、同時にどれも決定打にかけるんだよね」

ハリーは談話室でそんな事を言った。

「そうよね…どの科目も興味はあるけれど決定打がないわよね…」

それに私も同意する。

「あら、それなら二人も全科目を履修したら?」

と、ハーマイオニー。

「それはそれでペチュニア伯母さんからの課題やら自主学習やらに充てられる時間が削られるからイマイチなんだよね…正直、追加科目無しでその分自習させてもらえればそれもアリかなって位だよ」

「じゃあ、予習や課題に手のかからない選択科目を選んだらどうだい?」

「それも考えたんだけれども、各教科に利点はあるのよね…『数占い』は高等算術を学べるし、『マグル学』はマグルの科学に触れられるホグワーツでは数少ない機会だし、『古代ルーン文字学』はルーン魔術の基礎になるし、『魔法生物飼育学』は魔法生物について知る事は錬金術にも欠かせないし…『占い学』は…自習し辛いという意味では後から取り返しがつかないわね」

「それは…悩ましいね…うん。僕は『魔法生物飼育学』と『占い学』にするよ」

と、ロンは早々に議論から抜けた。

結局、母から『独学では学べない、実習メインの科目を優先するのはどうか』というアドバイスが届き、それに従ってロンと同じ『魔法生物飼育学』と『占い学』を履修し、他は必要に応じて独学で勉強する事にした…O.W.L.試験で12フクロウとか取得する人たちは実際そうしている、という情報があったのも大きい。

 

イースター休暇も終わり、新学期が始まって少しした頃、ハッフルパフとの試合の前日にハリーの荷物が荒らされ、リドルの日記が盗まれる事件が起きた。

それは、ポリジュース薬でも使ったのでなければグリフィンドール生が犯人だという事である。

私とハーマイオニーはスリザリンの継承者かその手下の仕業であると推定し、即座に盗難届を出すように言ったが、ハリーはそれを渋った…ハグリッドを庇いたい、という気持ちかららしい。

その日は夜も遅かったため、次に何か…例の声を聞く、補充された雄鶏が再び殺されるなどの自体を含めて…あれば即座にダンブルドア先生にお話しする、と約束させるだけで済ませた。

翌朝、手早く朝食を済ませた私はクィディッチの試合前にハーマイオニーと図書室に向かい、本の借り換えをした。そして、クィディッチ競技場に向かおうとした…途中、私達の目と鼻の先、廊下の曲がり角でレイブンクローの上級生が突然悲鳴を上げて倒れた。

咄嗟に、私は念のためにウィーズリー家の双子に頼んで調達してあった煙幕と音玉(雄鶏の朝の鳴き声を録音してある)を廊下の曲がり角の向こう側に投げ入れた。

途端に、煙が廊下にあふれ、雄鶏の鳴き声が響き渡った。

「ハーマイオニー!ソノーラスを使って叫びながら逃げて先生を呼んで!」

「アイリス、貴女は!?」

「先輩に止めを刺されない様に連れて逃げる!」

「…了解!無事で!」

ハーマイオニーはそう答えてソノーラスで拡大した声で叫びながら逃げ出した。

「さて…あとは」

私は無言呪文で浮遊術を行使し、先輩を浮かせて引っ張りながら、盾の呪文を行使して推定バジリスクが煙幕を超えてきても視線を直接受けない様にしつつ、後ずさりでその場を離れた…少しして、ハーマイオニーがマクゴナガル先生とマダム・ピンスと共に戻ってきた。

「エヴァンズ!無事ですか!」

「ええ、今の所は!」

「なら、貴女はグレンジャーと共にクリアウォ―タ―を…貴方が浮かせている監督生を医務室に運びなさい。その後は医務室で待機していなさい」

という事になり、私はハーマイオニーと現場を離れて先輩を医務室に運んでいった。

 

クリアウォーター先輩をマダム・ポンフリーに引き渡した後、医務室で待機しているとダンブルドア先生がやってきた。

「アイリス、ハーマイオニー、ついておいで…君達の話を聞きたい」

「ハイ…知っている限りの事はお話します。それと、ハリーとロンと…ハグリッドも呼んで頂いてよろしいでしょうか」

「単にあの場に居合わせただけではなく、なにか知っておるんじゃな…よろしい、そのようにしよう」

私達は校長室に移動し、ハリー達が到着するのを待った。

 

ハリーとロン、それにおびえた様子のハグリッドがマクゴナガル先生に引率され、校長室にやってきた。

「さて…どこからお話しするべきでしょうか…以前、バジリスクが凶器ではないか、とお話した後、私達はある人物の日記をマートルのトイレで入手しました。

T・M・リドルと最初のページに署名だけされた50年前の日記です。

マートル曰く、ソレは誰かがトイレに流した物らしいのです。

そして、それには記憶が封印されていた、という事です。詳しくはその記憶と対話したハリーが詳しいでしょう」

「…ハリー?話してくれるね?」

「…はい。その日記は、インクを吸収し、書き込まれた文字を認識し、文字を浮かび上がらせる事で会話ができます。そして…その日記は50年前の6月13日の事を、僕を当時のホグワーツの記憶に招く事で、ハグリッドが蜘蛛の化け物…アクロマンチュラかそれに類するものだと思うんですが…を飼育していたことを教えてくれました。リドル氏の記憶によればそれが秘密の部屋の化け物だと学校に告発した様でした」

「まさか、トムの名を聞く事になるとは…ハリー、君達はハグリットが犯人だとは考えていないんだね?」

「はい。そう信じてはいます、少なくとも今回は。しかし、50年前の事を良く知らないので、秘密の部屋に封じられていたのがバジリスクそのものではなくて、魔法生物を操る何かだという可能性も捨て切れられず…その、ごめん、ハグリッド、50年前の事については信じたいけれど、判断できる材料が足りない、としか申し上げられません」

「あいつは、アラゴグはやってねぇ!」

ハグリッドが信じてくれ、というように叫んだ。

「…ハリー、50年前の犠牲者たちもアクロマンチュラに襲われたというよりは、バジリスクに襲われた、と認識すべき状況じゃったよ…被害者たち全員の証言もそうじゃった。

それで、その日記は今は?」

「僕が保管していたんですが、昨晩寝室が荒らされて…盗まれました」

「どうしてすぐに提出しなかったんですか、そんな怪しげな物を!?」

マクゴナガル先生が叫んだ。

「ええ、確かにその日記は組分け帽子級の至宝か、闇の魔術の詰まった品かのどちらかだと認識はしていたんですが…その、ハグリッドが50年前かけられた冤罪の件を蒸し返す事になると思いまして…」

「話は分かった…それで、今日の事も聞いておかねば…アイリス、ハーマイオニー?」

「はい。とは言っても、図書室からクィディッチ競技場に向かおうとした時に突然目の前で先輩が悲鳴を上げて倒れたという事しかわかりません…恐らく曲がり角の先にバジリスクと犯人がいたんだと思いますが、すぐにその場を離れたので」

そう、ハーマイオニーが言った。

「私も、それしかわかりません。視線を遮る為の煙幕と効果があったかわかりませんが『雄鶏の時を作る声』を録音した音玉は使いました…犯人の特定より、自分たちの身を守る事を優先したので」

「なるほど、良い判断じゃ…他はないかの?」

「あの…ダンブルドア先生、僕、実は例の声をクィディッチ競技場に行く前、大広間を出てすぐに聞きました。でも、クィディッチの試合の時間が迫っていたのですぐにお知らせできず…申し訳ございません」

「おそらく、すぐに知らせてくれていても襲撃には間に合わなかったじゃろう…気に病むでないよ、ハリー」

ダンブルドア先生がそう言った後、しばしの沈黙が場を包んだ。

「…バジリスクはどうやって校内を移動しているんでしょう」

マクゴナガル先生はそう呟いた。

「もしかして、パイプの中を伝って?」

ハーマイオニーが言った。

「パイプか…確かにパイプならホグワーツ中に張り巡らされておるし、出入り口もあちこちにある…説としては有力視されるべきじゃろう…皆の安全を確保し次第、急ぎ調べよう…さあ、君達はマクゴナガル先生と寮にお帰り」

そうして、私達はマクゴナガル先生と共にグリフィンドール寮に戻った。

その後、再び臨時職員会議が開かれたらしく、校内の警戒レベルがゴーグルの配布前に戻った。守りの呪文付きのゴーグルで死は免れるという事がわかったが、石にはされるという事がはっきりしたからだ。

そして…その晩、ダンブルドア先生が理事会から停職命令を出され、ハグリッドがアズカバンに収監された。

 

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