例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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ホグワーツ特急にて

それから1カ月の間、私とハリーは教科書と副読本等を使っての座学の予習、『錬金術入門』を読み解くための自主勉強、その他趣味の読書などに励み…遂に運命の日がやってきた。

「懐かしいのう…ペチュニアとリリーが初めてホグワーツに行った日が昨日の事の様だ」

「そうね、あなた…」

祖父母が感慨深げにロンドン駅の9番線と10番線の間の壁を眺めて言う。

「それじゃあ、おじいちゃん、おばあちゃん。いってきます」

「私達、がんばって勉強するからね」

ハリーと私は祖父母にしばしの別れを告げる挨拶をした。

「さて、ではホームに行こうか。アイリス、ハリー、ついておいで。ここからでは魔法族の目にもホームは見えないけれど、恐怖心を持たずに…行くよ」

母はそう言って真っ直ぐ柵に向かって歩き出し…それに続いて私とハリーは歩き出した。

そして母が柵に溶けるように消え…それに私達は続いた。

気づけば私達は紅色の蒸気機関車が停車した、乗客でごった返すホームを歩いていた。

「ここがホグワーツ行き特急の出る9と3/4番線ホームだ。名残惜しいが出発まで10分程度…そろそろ席を探さないとコンパートメントが埋まってしまうな。私達の頃と同じなら席は前の方から埋まる、後ろから探そう」

そう言う母に連れられて私達は目立つ赤毛の一団を横目に列車に沿って歩いて行く…そして後ろの方の車両のコンパートメントで空きが見つかった。

「幸先が良いな。っと、そうそう、忘れる所だった」

そう言って母は私とハリーにそれぞれシックル銀貨を10枚ずつ握らせた。

「ホグズミードにはまだ行けないからホグワーツで金を使う事は…生徒同士の物品取引以外でないと思うが、行きと帰りの車内販売があるからな。

あと、勉強関連の本はだいたい図書室にあるとは思うが欲しい本があれば、理由次第で買って送ろう。

他に何か入用な物があれば同じくフクロウを送ってくれ」

「うん、わかったわ、母さん」

「ありがとう、ペチュニア伯母さん」

そうこうしていると汽笛が鳴った…出発の時間だ。

「では、いってらっしゃい、アイリス、ハリー。お前たちのホグワーツ生活に、幸多からん事を!」

「「行ってきます!」」

そう答えて私とハリーは汽車がカーブを曲がって母の姿が見えなくなるまで手を振った。

 

 

 

「あーここ空いてる?」

私達がトランクから本を取り出そうとしているとコンパートメントの戸が開いて、赤毛の少年が顔をのぞかせた。

「他はどこもいっぱいなんだ」

向かい合って座っていた私達は一瞬顔を見合わせて頷き合うとハリーが口を開いた。

「いいよ、ちょっと待ってね」

そう言ってハリーは私の隣に座り、赤毛の少年をコンパートメントに招き入れた。

「おい、ロン」

コンパートメントの扉が開き、赤毛の同じ顔が二つ飛び出てくる。

「なあ、俺たち、真ん中の車両あたりまで行くぜ…リー・ジョーダンがでっかいタランチュラを持っているんだ」

「わかった」

同じ顔の片方とコンパートメントの中にいる少年がそんな会話を交わす。

「そうだ、ロンを仲間に入れてくれてサンキューな、お二人さん。僕たちはウィーズリー一家、僕たちはフレッドとジョージ、グリフィンドールの3年生さ。そいつは弟で新入生のロン、ホグワーツにつくまで、できればその後も仲良くしてやってくれ!じゃ、またあとでな!」

「「「バイバイ」」」

そうして同じ顔の赤毛二人は嵐のように去っていった。

「さて…自己紹介でもする?私はアイリス・P・エヴァンズ。新一年生よ」

「あ、うん。僕はロナルド・B・ウィーズリー、新一年生。ロンって呼んで」

「僕はハリー・J・ポッター、同じく新一年生でアイリスの従弟だよ」

ハリーが名乗るとロンは目をぱちくりさせてハリーを見つめた。

「え…ハリー・ポッター?『例のあの人』を倒したって言う…?」

「そのハリー・ポッターらしいね…その時の事は何も覚えてないけれどね」

「なんにも?」

「緑色の光がいっぱいだった…気はするけれども」

「うわーっ」

「それに、伯母さんは僕が何かしたというよりは僕の両親が僕にかけた何らかの守護の魔法の効果だったんじゃないか、って」

「へぇ…確かにそう言う意見もあるらしいよね…少数派だけれども…噂だと額に傷跡があるって聞いたけど、アレはただの噂だったんだね」

「稲妻の傷痕はあるよ。見せびらかすような物じゃないから特製のコンシーラー?で隠しているけれども」

「へぇ…」

ロンはハリーを暫く興味深そうに見つめていたが、少しするとはっとなって目をそらした。

「ウィーズリー一家って、古い一族だって言うのは聞いた事あるけれど家族はみんな魔法使いなの?僕たち、マグルの祖父母の家で暮らしているからあんまり詳しくなくって」

「あぁ……うん、そうだと思う」

ハリーのちょっとたしなめた方が良いかなと思った質問にロンは答えた。

「ママのはとこだけが会計士だけど、僕たちその人のことを話題にしない事にしているし」

多分、それは会計士をしているスクイブ、という事なのだろう。

「そうなんだ…じゃあ、君はもう魔法を使えたりするんだろうなぁ…僕達、理論の勉強は良いけれど実技はホグワーツに行くまでダメって言われていて…」

そんな感じで私達…と言うか主にハリーとロンは身の上話をしつつ、時々沈黙しつつ時間を過ごした。私はシレっと本を取り出して軽い読書(比較的頭を使わないという意味で)をしながら二人の会話を聞いていた。

 

12時半ごろ、通路でガチャガチャと大きな音がしてえくぼの小母さんがニコニコ顔で戸を開けた。

「車内販売よ。何かいりませんか?」

「あー何があります?僕、マグル育ちでこっちのお菓子とか飲み物にあまり詳しく無くて」

祖母特製のサンドイッチと紅茶と何種類かの飴(マグル製の市販品)を持ってはいたが、飲み物はもっていないので買わないといけないし、デザート兼おやつも欲しい。

結局、車内販売のおばさんとロンの説明を聞いた後、私とハリーは合わせてカボチャジュースの大瓶1つとカボチャパイ1ホール、蛙チョコレートを1ダース、それに百味ビーンズを1袋買った。

「さ、お昼にしよう。ロンも一緒に食べよう、ね?」

ハリーはそう言いながら祖母のサンドイッチの包みを取り出した。

 

「ママったら、僕がコンビーフは嫌いだって言っているのに、いっつも忘れちゃうんだ」

「じゃあ、僕のと半分交換する?お祖母ちゃんお得意のキュウリのサンドイッチと卵サラダのサンドイッチだけど」

「じゃあ、私とも半分交換しましょう、そしたらロンはコンビーフのサンドイッチを食べずに済むわ」

「でも、これ、パサパサでおいしくないよ…ママは時間がないんだ。5人も子供がいるんだもの」

「多少パサついて居ても、飲み物があれば大丈夫よ、ね?」

「いいから、交換しようよ、ね?」

という事になり、私達はサンドイッチを交換して食べた。

確かにパンが若干古くなっている感じはあったが味付けは絶妙でロンのお母さんの料理の腕は悪くないのだとわかった。

その後、6つに切ったカボチャパイを1切ずつ食べた後…恐怖の百味ビーンズ大会を始める事とした。

 

まともな味と酷い味と吐きそうな味…実は蛙チョコレートは口直しの為に買った…を楽しんで、残りのカボチャパイをお茶うけにティータイムと洒落込みながら読書(私とハリーが読書を始めると手持無沙汰になったロンも教科書を眺め始めた…うん、読み始めた、ではなく眺め始めた)しているとコンパートメントの扉がノックされ丸顔の少年が泣きべそをかきながら入ってきた。

「ごめんね、僕のヒキガエルを見かけなかった?」

私達が首を横に振ると、少年はめそめそ泣きだした。

「いなくなっちゃった。僕から逃げてばっかりいるんだ!」

「きっと出てくるよ」

ハリーが言った。

「うん。もし見かけたら……」

そう言ってその少年はしょんぼりとした様子でそう言うとコンパートメントを出て行った。

その後、ロンはペットの事…ネズミのスキャバーズの事で自虐をはじめ、ペットを『面白く』するために呪文をかけて黄色くしようとしたと言い出した。

少したしなめ様かな…と思った時、またコンパートメントの戸が開いた。

先ほどの丸顔の少年が今度は栗色のふさふさした髪の少女を連れて現れたのだ。

ちなみに、その少女は既にホグワーツの制服に着替えていた。

「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」

「見なかったって、さっきそう言ったよ」

そう、ロンが応えたがその少女の興味はロンの杖を向いていた。

「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」

そう言ってその少女はコンパートメントのロンの隣に座りこんだ。

「あー…いいよ」

そうロンは答え、咳払いをした後…私の知識に照らし合わせる限り、無茶苦茶な呪文を唱えた。と言うか今思い至ったが、生物に影響を与える魔法は結構高度な筈だ。

「その呪文、間違ってないの?」

栗毛の少女はそう言うと、自分は簡単な呪文を幾つか試して上手く行った事、完全なマグル生まれである事、手紙を貰って驚いたが嬉しかった事。教科書は全て暗記した事、を一気に言ってのけた。

「私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

そして、そう問うてきた。

暗記…暗記かぁ…必要だし、まあ苦手ではないが…丸暗記は無駄だしなぁ…

「僕、ロン・ウィーズリー」

等と思っているとロンが名乗った。

「私はアイリス・エヴァンズ」

「僕はハリー・ポッター」

ハリーが名乗るとハーマイオニーは目を丸くして再びまくしたてる様に喋り出した。

「ほんとに?私、もちろんあなたのこと全部知ってるわ…参考書を2、3冊読んだの。

あなたのこと、『近代魔法史』『闇の魔術の興亡』『20世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ」

「そうでしょうね、ミス・グレンジャー。でもね、本を読んだだけでハリーのすべてを知る事が出来るわけではないわ。知る事が出来るのはハリーと言う人間の他人から見たほんの一部だけよ」

私の反論にハーマイオニーは目をぱちくりさせて答えた。

「…そうね、全部、って言うのは言いすぎだったわね。

所で、三人はどの寮に入るかわかってる?私、いろんな人に聞いて調べたけど、グリフィンドールに入りたいわ。絶対一番いいみたい。ダンブルドアもそこ出身だって聞いたわ。でもレイブンクローも悪くないかもね……とにかく、もう行くわ。ネビルのヒキガエルを探さなきゃ。三人とも着替えた方が良いわ。もうすぐ着くはずだから」

ハーマイオニーはそう言い切るとネビルと呼ばれた少年を連れて出て行った。

 

それから、交代で制服に着替えた後に雑談…寮の話やロンの兄の就職先の事、クィディッチについてなんかについて…をしていると突然扉が開き、3人の少年が入ってきた。

それは二人の意地悪そうなガッチリとした少年を連れた青白い顔の少年だった。

「ほんとかい?このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話でもちきりなんだけど…それじゃ、君なのか?」

「そうだよ」

ハリーはめんどくさそうにそう答え、両脇の少年に目を向けた…ハリーも喧嘩が弱いわけではないが二人同時は無理だろう。

「ああ、こいつはクラップで、こっちがゴイルさ。

そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」

「ご丁寧にどうも。改めて初めまして、僕はハリー・ポッター、こっちは従姉のアイリス・エヴァンズと友人のロン・ウィーズリーだよ」

「フム、最低限の礼儀はあるようだね、だがポッター君。魔法族にも家柄の良いのとそうでないのとがいるとわかってくるよ。間違ったのとは付き合わない事だね。その辺は僕が教えてあげよう」

そう言ってドラコ・マルフォイはハリーに握手を求めたが、ハリーは応じなかった。

「ご親切にどうも、ミスタ・マルフォイ。でも、僕はマグル育ちでね…純血貴族様のマルフォイ家の方のお手を煩わせるのは恐れ多くて…ね?」

マグル育ちのハリーからそんな言葉が飛び出ると思っていなかったのか、はたまた皮肉気に、しかしハッキリと拒絶された故か、ドラコ・マルフォイはたじろいだ。

「ミスタ・マルフォイ、そろそろホグワーツに着く時刻のようですしご自身のコンパートメントに戻って着替えられてはどうでしょう?」

そう、ハリーが言うとドラコ・マルフォイは一瞬顔をしかめた後に表情を取り繕い、言った。

「…そうだね、御親切にどうも、ミスタ・ポッター。そうさせてもらうとしよう」

そうして、ドラコ・マルフォイとその手下二人はコンパートメントを出て行った。

 

暫くすると、あと五分でホグワーツに到着する旨を告げるアナウンスが響いた。

私達は荷物をトランクに片付けると放送に従って荷物をコンパートメントに残して列車を下りた。

その後、新一年生たちはハグリッドに引率され、険しくて狭い小道を滑ったりつまずいたりしながら降りて行った。

暫く行くと狭い道が開け、大きな黒い湖のほとりに出た。向こう岸に高い山がそびえ、そのてっぺんに壮大な城が見えた。その城には大小さまざまな塔が立ち並び、キラキラと輝く窓が星空に浮かび上がっていた。

その後私達は魔法で動くボートに乗って湖を渡り、船着き場からまた少し歩き…巨大なカシの木の扉の前にやってきた。

ハグリッドが扉を3回叩くと扉が開いてエメラルド色のローブを纏った厳格な顔つきの黒髪の魔女が現れた。その魔女をハグリッドはマクゴナガル教授と読んだ…副校長か。

そして私達はマクゴナガル教授に引き渡され、扉の中の玄関ホールにいざなわれた。

入り口から見て右手の方から何百人ものざわめきが聞こえる…恐らくそこに学校中が集まっているのだろう。

そこに通されるのだと私は思っていたが、マクゴナガル教授は私達をホール脇の小さな小部屋に案内した。

それから、マクゴナガル教授はこれから大広間で歓迎会があるがその前に寮を決める儀式をすると説明し、また寮についての簡単な説明をすると学校側の準備が終わったら戻ってくると言って部屋を出て行った。

一年生たちが緊張した様子で思い思いに過ごしているとゴーストの一団が突然現れ、こちらには気も留めず会話をしながら部屋を横切り始めた。

「おや、君達、ここで何をしているんだい」

ゴーストの一人?一体がこちらに気付いて声をかけて来た。

「新入生じゃな。これから組分けされる所か?」

別のゴースト…太った修道士のゴーストが私達に向けてそう問うた。

「ええ、マクゴナガル教授から暫くここで待つように言われています」

私がそう答えたのに対して太った修道士のゴーストは言った。

「ハッフルパフで会えるとよいな。わしはそこの卒業生じゃからの」

「さあ行きますよ」

背後からマクゴナガル教授の声がした。

「組分け儀式が間もなく始まります」

そうしてマクゴナガル教授は私達を一列に整列させて大広間に引率した。

4つの長テーブルに上級生たちが着席し、宙に浮かぶ無数のろうそくがそれを照らしていた。

マクゴナガル教授は私達一年生を教授陣の座る広間の上座にあるもう一つの長テーブルのところまで引率し、上級生の方を向けて整列させた。

そして、マクゴナガル教授は四本足の背もたれのない椅子を一年生の前に置き、さらにその上にボロボロの帽子を置いた。

すると、帽子が歌い出した。その歌詞は自分が頭の中をのぞいて組分けをする、各寮はどんな寮だ、と言うようなことを説明する内容であった。

ああ、母が言っていた「身を委ねるだけでいい」とはそういう事か。

歌が終わると広間にいた全員が拍手を送り、帽子は四つの寮のテーブルにそれぞれお辞儀をして静かになった。

そして、マクゴナガル教授が長い羊皮紙の巻紙を手にして前に進み出た。そして、アルファベット順に名前を呼ぶので帽子をかぶって椅子に座るように言った。

そうして組分けが始まった。

 

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