例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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後始末と穏やかな日常

マートルのトイレを出た私達はフォークスに先導されてマクゴナガル先生のオフィスにやってきた。

扉を開けると、中にはウィーズリー夫妻とマクゴナガル先生、そしてダンブルドア先生がいた。

「ジニー!」

一瞬の沈黙の後、叫び声が上がった。ウィーズリーおばさんだった。

ウィーズリーおばさんは暖炉の前で泣いていたようだったが、飛び上がってジニーに駆け寄り、ウィーズリーおじさんもそれに続いた。二人はジニーを飛びつくように抱きしめた。

フォークスが部屋の奥でほほ笑んでいるダンブルドア先生に飛んで行って、その肩にとまった。

次の瞬間、私達4人はウィーズリーおばさんに強く抱きしめられていた。

「あなたたちがあの子を助けてくれた!あの子の命を!どうやって―どうやって助けたの?」

「私達全員がそれを知りたいと思っていますよ」

マクゴナガル先生がぽつりと言った。

ウィーズリーおばさんから解放されたハリーは少しためらった後、部屋の中に進んでいき、机に組分け帽子、いつの間にか手にしていた剣、そしてリドルの日記の残骸を置いた。

「…どこから話しましょうか…ダンブルドア先生、ウィーズリーご夫妻に以前お話した事はお話されましたか?」

「いや、簡単にしか話しておらん…できれば君の口から説明してあげて欲しい、最初から、の」

そう言われたハリーは今学年にあった秘密の部屋に関するすべてを順に話し始めた…ポリジュース薬作戦の件とリドルの日記については巧妙に触れない様にして。

しかし、話がいざ秘密の部屋でのことになるとハリーは言葉を詰まらせていき、遂に語るのを止めた。

「…すいません、少し何か飲ませて頂いても良いですか?水でも構いません」

それは明らかに時間稼ぎであった。

マクゴナガル先生から水差しの水を汲んでもらい、飲んだハリーは言葉を紡ぐ。

「ええっと…一つ大事な話を忘れていました。今回の事件の元凶となった日記についてです。」

そう言ってハリーはリドルの日記の残骸を持ち上げ、皆に見せた。

「この日記は破壊されるまで、意思が宿っていました…それも自立思考できるくらい高度なモノが…これはこの日記がホグワーツの開祖4人の合作である組分け帽子に匹敵する至宝であったか…あるいは極めて高度な闇の魔術が詰まっていた事を意味します。僕はこの日記に50年前の記憶を実際に見せられました。そこに至るまでのやり取りは誰かと筆談をしていたかのような精度でした」

ウィーズリー夫妻はその説明でそれがどれだけ高度な闇の品であるかを理解した様子で、息をのんだ。

「僕とアイリスは秘密の部屋の最奥で実体化したトム・リドルの…日記の作成者の記憶と出会いました。そして彼が語った事ですが…ジニーは日記の虜にされていたと…トム・リドルに…『死喰い人の主』の記憶に操られていたと言う事です」

「な、なんですって?『例のあの人』の記憶がその日記に宿っていて、ジニーを操った…?本当に?」

話はそこで中断され、ダンブルドア先生が日記の残骸を検めて言った。

「…見事な品じゃ…確かに、トム・リドルはホグワーツ始まって以来、最高の秀才だったと言えるじゃろう」

そう、ダンブルドア先生は言い、つづけた。

「ヴォルデモート卿が、かつてトム・リドルと呼ばれていた事を知る者はほとんどいない。わし自身、五十年前、ホグワーツでトムを教えた。

卒業後、トムは消えてしまった…遠くへ。そして方々に旅をし…闇の魔術にどっぷりと沈み込み、魔法界で最も好ましからざる者たちと交わり、危険な変身を何度も重ねて、ヴォルデモート卿として再び姿を現した時には、昔の面影を全く残してはおらなかった。

あの聡明でハンサムな男の子、かつてここで主席だった子を、ヴォルデモート卿と結びつけて考える者は、ほとんどいなかった」

「でもジニーが、うちのジニーが、その―その人と―何の関係が?」

ウィーズリーおばさんがそう問うた。

「その人の、に、日記なの!」

一時泣き止んでいたジニーがしゃくりあげていった。

「あたし、いつもその日記に、か、書いていたの。そしたら、その人が、あたしに今学期中ずっと、返事をくれたの―」

「ジニー!」

ウィーズリーおじさんが仰天して叫んだ。

「パパはお前に、何にも教えてなかったというのかい?パパがいつも言ってただろう?

脳みそがどこにあるのか見えないのに、一人で勝手に考える事が出来るものは信用しちゃいけないって、そう教えただろう?

どうして日記をパパかママに見せなかったんだ?そんな妖しげな物、闇の魔術が詰まっているに決まっているじゃないか!」

「あたし、し、知らなかった」

ジニーは再びしゃくりあげた。

「ママが準備してくれた本の中にこれがあったの。あたし、誰かがそこに置いて行って、すっかり忘れてしまったんだろうって、そ、そう思った…」

「ミス・ウィーズリーはすぐに医務室に行きなさい」

ダンブルドア先生はきっぱりとした口調でそう言った。

「過酷な試練じゃったろう。処罰は無し。もっと年上の、もっと賢い魔法使いでさえ、ヴォルデモート卿にたぶらかされてきたのじゃ」

ダンブルドア先生はそう言って部屋の扉を開けた。

「マクゴナガル先生、すまないがマダム・ポンフリーを起こして熱い湯気の出るようなココアをマグカップ一杯、ミス・ウィーズリーに処方してくれるように言って欲しい。

ミス・ウィーズリー、安静にしてそれを飲むと良い。わしは何時もそれで元気が出る」

マクゴナガル先生とウィーズリー夫妻がジニーを連れて出ていった。

そして、私達4人にホグワーツ特別功労賞が与えられ、それにふさわしい加点措置も行うと告げられた後、話題はロックハートの事になった。ハーマイオニーとロンが、マートルのトイレで分かれた後にした事を教えてくれた。

オフィスが近く、闇の魔術に対する防衛の教授でもある事から、ロックハートのオフィスを訪ねた二人は、夜逃げしようとしているロックハートを発見した。

ロックハートはペラペラと自分の罪…他人の功績を奪い、忘却術を施した後、脚色して本にしていたという事を話したかと思うと、二人に忘却術をかけようとしたらしい。が、その直前、ハーマイオニーに武装解除されて、そのまま捨て置けないと秘密の部屋に連れて降りたらしい。

そして、通路の途中で、ロンに襲い掛かったロックハートは折れた杖を使用して忘却術を使用しようとして暴発、自身の記憶を完全に破壊してしまったとの事である。

そして、ダンブルドア先生はロックハートを医務室に連れていくという仕事を与えて、私とハーマイオニーとロンを部屋から追い出した。

 

後日、その後のダンブルドア先生との会話についてハリーと話した。

ハリー曰く、フォークスが組分け帽子と共に現れたのは、ダンブルドア先生への真の信頼を示したからであり、あの剣はゴドリック・グリフィンドールの遺した品であり、真のグリフィンドール生だけが帽子から取り出す事がかなうとされているのだ、と教えてくれたらしい。

その後、ルシウス・マルフォイが訪ねて来て、ダンブルドアと停職処分についての話をして出ていき…日記の残骸を返すという名目で靴下に来るんだ日記を渡して靴下を投げ捨てさせ、ドビーを自由にしてやったという事だった。

「勿体ない…あの日記は残骸でも結構な研究材料になったわよ?」

「でも、ドビーをそのままにしておくのは可哀そうだったから」

「まったく…お優しいんだから…まあ、そう言う所もハリーの長所だからいいんだけれどね」

尚、ドビーが我が家での尋問時に本当に伝えたかったのは『死喰い人の主』が名前を変える前の品物が関係している、という事らしかった。

 

それから、杖を完全に破壊されたロンは今学期の残りを杖無しで過ごす…訳にもいかず、特別休暇を貰ってオリバンダーの店で杖を買って貰いに行った。柳の木、ユニコーンの尻尾の毛が芯材、33センチ。自分に合った杖を手に入れたロンは呪文の自主練習でもめきめきと実力をつけていった。

『闇の魔術に対する防衛術』が休講になった以外は平常運転に戻ったホグワーツはてんてこ舞いだった。まだ被害者たちが回復していないにもかかわらず、そしてマンドレイクの成熟具合から推定してほぼ同時期になるにもかかわらず、期末試験は平常通り実施される事になったからである。

また、ルシウス・マルフォイはダンブルドア先生の停職決議にあたって他の理事を脅迫した疑いで理事を解任された。おかげでドラコ・マルフォイはしばらくの間おとなしかった。

そして、決闘クラブが正式なクラブとして発足した。顧問はフリットウィック先生で、決闘の作法と実戦形式の訓練、そして現代の決闘で使用するような非致死性攻撃呪文について学ぶクラブであった。マクゴナガル先生から、失神呪文の練習はこのクラブに参加して行うように、と言われて、私達4人は決闘クラブに籍を置く事にした。まあ、ハリーはクィディッチの練習で出席率はあまり良くないが。

 

で、秘密の部屋事件が片付いて、暫く個人的に話せていなかった父とお茶会を持てた。

父は私とハリーが秘密の部屋に突っ込んで行った事に対して非常に不愉快に思っている様子であったが、ハリーが作戦を忘れてグリフィンドールの剣でバジリスクに挑みかかっていった話をするとより一層不機嫌な顔をした。

グリフィンドールの剣を得られる条件を知った父は、真のグリフィンドール生とは勇気と無謀をはき違えた狂戦士の事を意味するのではなかろうな、とまで言っていた。

 

そうこうしている内に、季節は移ろい、ホグワーツに夏がやってきた。クィディッチの試合も再開してウッド念願のクィディッチ優勝杯もグリフィンドールは手に入れた。

そう言う事も有り、グリフィンドールが寮対抗杯を2位のスリザリンにほぼダブルスコアという420点差をつけて獲得した。内、400点は私達4人に与えられた秘密の部屋事件解決の特別功労賞に付随する加点である。

また、期末テストの結果は去年と同じような感じであった。

ハーマイオニーが学年トップ、ロンも中の上程度の成績、私とハリーは全体的に上の下位、魔法薬学は満点である。

 

後、蛇足だが、ジニーが知ってしまったパーシーが秘密にしておきたかった事、というのはパーシーにガールフレンドがいるという事実だった。お相手は、私とハーマイオニーの目の前で石にされたレイブンクローの監督生、ペネロピー・クリアウォーターだった。

空き教室でキスをしている所を目撃してしまい、パーシーから硬く口止めされていたのだ、とロンドンに向かうホグワーツ特急の中でジニーが話してくれた。

その場にジョージとフレッドがいたのだが、パーシーは大丈夫だろうか。

と、言うか、秘密の部屋事件の最終盤でジニーがハリーに秘密を打ち明けようとしたのを邪魔した仕返しではなかろうか…ジニーならやりかねない。

 

そうして私達はロンドンに帰って来て、夏休みが始まった。

今年の夏休みはハーマイオニーはフランスに行く予定があるのでうまく日程調整しないと休暇中は会えないかもしれない、という事であった。

また、私達も魔法薬学と錬金術に没頭する予定なので夏休みがどうなるかは未知数だった。

 

何時もの様に、母に付き添い姿現しで家まで送ってもらった後、祖母のローストディナーを食べながら、話せる範囲…秘密の部屋事件は祖父母には秘密なので絶命日パーティーくらいまでとクィディッチ関係や他愛のない事について…でホグワーツの事を話した。

 

去年と同様に、翌日は課題の採点が行われた。

「レポートは全て読ませてもらった…提出分については、全てよくかけていた。

特に『腐ったハーポ』とその発明についてのレポートで、彼の末路とその原因についての考察は期待以上だ、ほとんど情報がないアレにまでたどり着くとは称賛に値する。

ああ、そうそう。不老不死や不滅を望むな、とは言わないけれどハーポや『死喰い人の主』の様に無様に死に損なうだけの末路にたどり着きたくなければその手段はよく考える事だね」

母の言葉に私とハリーは静かに頷いた。

「…全般的にアイリスの方がレポートの質が良かったのはつぎ込める時間の違いかな?」

「多分、そうだと思うわ、母さん…ウッド…今のグリフィンドールのクィディッチチームのキャプテンは練習好きだから…」

「それを言い訳にしたくはないけれど、否定はできないかな。基礎的な資料集めはアイリスが協力してくれたおかげで大分助かった」

「まあ、それは仕方ないね。じゃあ、次は呪文の習得状態について教えてもらおうか」

私達はそれぞれの呪文の習熟度を説明した。

「よろしい。練度の差は有れども、守護霊呪文以外は全て形にはなっている、と。

無言呪文も簡単な呪文で幾つか実施はできているならば、今年度の環境を考えれば上出来、いや期待以上だよ…閉心術の習得に一切手を付けていないのは想定外だが」

「難易度が高そうだったので後回しにしようかと」

「後…伯父さんに指導を頼める状況じゃなかったし…」

「ん?襲撃事件が収束して1カ月半くらいあっただろう?」

「学年末テストの準備で忙しかったのと…えっと…ちょっと私達、父さんの機嫌を損ねちゃって…」

「…ポリジュース薬の密造がセブルスにバレた、にしては情報の流れがおかしいね…やっぱり、今年の襲撃事件にも首を突っ込んで危ない事をしたんだね?」

「あーポリジュース薬の件、バレてた?」

「確信ではなかったが、自由研究のレポートを見て確信した…で?今年は何があって、何をした?」

「…それを話す前に、母さん、どこまで知っているの?」

「確定情報として、ホグワーツで襲撃事件があった事、それを突かれてダンブルドアが数日間、校長職を一時停止させられた事、ハグリッドが同じく一時的にアズカバン送りにされた事…今年、ホグワーツから聖マンゴに送られた生徒はいないらしい事…あとはウィーズリー家のジニーという娘さんが殺されたらしいという一報とそれを打ち消す情報、ギルデロイ・ロックハートの罪と末路…それに断片的な情報がいくつか。

そこから推測すると複数人の生徒が聖マンゴに送られるほどでもない程度の、それでいてマダム・ポンフリーやセブルス、そしてダンブルドアでも治療に時間がかかるか治療に特別な物が必要な程度の重度魔法障害を負わされた事、その犯人又は凶器は魔法生物である可能性が高く…最後の被害者がジニー・ウィーズリーで死んだと思われていたが救出されたか、治療が間にあうか、したんだろうな、と推定している。

ああ、ドビーとかいう屋敷しもべ妖精の事を考えればそれらをドビーの主人が仕組んだと推定できるし、ダンブルドアの停職に関しても罠の一部だとすれば黒幕は、ドビーの主人はルシウス・マルフォイかその仲間だろうな。しかし、決定的な証拠は残っていない」

「…正解。ちなみに、犯人は『死喰い人の主』の50年前の記憶が宿った日記で、凶器はバジリスクだったわ」

「50年前…という事は秘密の部屋事件か。ハグリッドが退学になる決定打になったという

…ん?ドビーは今年度の件は『死喰い人の主』ではないと言っていなかったか?」

「あーそれだけどね。ドビーが言うには死喰い人が正式にヴォルデモート卿と名乗り始める前の名前、トム・リドルだった頃が関係している、って言いたかったらしいよ。

ドビーは『例のあの人』じゃなくて『名前を読んではいけないあの人』って言ったじゃない?」

「…ヒントになってない。

というか、ヴォルデモート卿の正体がスリザリンの秀才、トム・リドルだという噂、本当だったのか…」

「ちなみに、混血らしいわよ。それも純血一族の母親とマグルの父親との」

「…純血主義を掲げて暴れまわったくせに…本人は混血だったのか」

「ソレ、私も行ったけれど、父親の血と名前は捨てた、と称していたわ」

「血を捨てる…か。まあそれは良い。で、お前たちは何をしてセブルスを不機嫌にしたんだ?」

母が一転、楽しそうに問うた。

「…秘密の部屋に突撃して、トム・リドルの記憶とバジリスクと戦った。私とハリーで。援軍にフォークス…ダンブルドア先生の飼っている不死鳥が来てくれたけれど」

「ぶっ…正気か?」

「ジニーが連れ去られて、死んでしまうかもしれない、まだ生きているかもしれない、と思ったらつい」

「ついでに言うと、ハリーは真なるグリフィンドール生だけが取り出せると言われる、ゴドリック・グリフィンドールの剣を組分け帽子から取り出してバジリスクに挑みかかっていったわ、剣で」

「…ハリー、お前は狂戦士か何かなのか」

「あ、それ、父さんも言っていた。真なるグリフィンドール生とは狂戦士の事なのか、って」

「…で、どうやって勝った?」

「実体化したリドルの記憶はアイリスがエイビスの呪文で出現させた雄鶏を盾にして死の呪文を防いでクロスカウンターで武装解除した上で全身金縛りにした」

「バジリスクは、ノックス・ポーションをぶっかけた後、ハリーが口から剣を突き入れて退治したわ。その時、ハリーの腕に刺さったバジリスクの牙でリドルの日記を破壊して、フォークスの涙で癒してもらっていたわ」

「…それは、セブルスが不機嫌になる。

というか、バジリスクの口内に腕を突っ込んだハリーも大概だが、アイリスも良く生きていたな…死の呪文を防ぐのは生き物を盾にするのが一番安全とは言え、鶏程度の大きさでよく死の呪文を受けられたものだ」

「うん、やらなきゃ殺されると思ったらなんかできた」

「…できれば、もうやらないで欲しい所だな」

「大丈夫、死の呪文対策の錬金術アイテムを設計したからやるとしてもリスクは下がると思うわ」

「いや待て、ソレ、できたら大発明だぞ。許されざる呪文を回避と生贄以外で防ぐ方法は」

「そうかな、適当な動物の命を材料にすればそう難しくなく使い捨てアイテムを作成できると思うけれど」

「その方法で死の呪文に対抗するには魂の保存が必要なのだが、まず、それが難しい」

「うん、でも、できるわよね?魂の物品への保存。もろに闇の魔術ではあるけれど。

今年、現物らしき物を見たわ。

まあ、アレは自分の魂の分割…『腐ったハーポの最も邪悪な発明』と同じものでしょうけれど」

「…で、だ。それが出来たとしても、適切なタイミングで保存した魂を解放して防御に使わないといけない。

タイミングがずれると何の効果も得られない…魂は保護されていないとすぐに死後の世界に行ってしまうからな」

「能動的に解放する必要、ある?死の呪文を受けた衝撃で破壊される程度の強度で魂を保存して盾の呪文とリンクさせるか、物理的な盾に装飾として張り付けておけばいいんじゃない?」

「あ…そうか、そこを改良すればいいな…魂の保護と言えば『分霊箱(ホークラックス)』を筆頭に失いたくない魂を厳重にする方に考えられがちだから、既存の方法だと保護が強力すぎるが難度としてはそこまで難しくない…いけるな」

「ホークラックス?」

「ああ、『腐ったハーポの最も邪悪な発明』の名前だ。私達、闇の魔法使い達にとっても忌むべき名前だがね」

「そんなに?たかが、魂の一部を分割して、この世に魂を繋ぎとめるだけのモノでしょ?」

ハリーが母に問うた。

「まあ、効果としてはそうなんだが…実用的に魂を分割する方法が肝でな…純粋な同族殺しが必要なんだ」

「同族殺しって殺人?」

「そうだ。明確な殺意を持って、対象を殺害しなければならないとされる。

しかも、ただの殺人だけではだめだ。正当防衛・過剰防衛・自殺幇助・過失・事故…全てこの方法には足りない」

「それって、死刑囚や戦争なんかじゃダメなの?」

「そう言った、義務による殺人も駄目だとされる。

正当性のかけらもない殺人を犯す事で魂が傷を負い、魂の分割が可能となる…らしい」

「あ、そこはらしい、なんだ」

「流石に自分でやったことがないのは当然として、殺人の分類とその魂の傷つき具合について研究した文献があるわけではないからな。

理論的推測と断片的な実験データからそう言われている、というだけだ」

「そこまでしても、あんな死に損なうだけの汚らわしい末路に至るだけ…完全に割に合ってないよね」

「うむ。しかも、分割された魂は本体と繋がっていないと意味がないがゆえに理論的には分霊箱は最悪の弱点にもなりうる…その日記とやらを通して『死喰い人の主』の魂の本体に悪影響を及ぼしてやることもできただろうに…仕方なかったとはいえ、勿体ない。

だが、『死喰い人の主』は思われていたよりも邪悪だという事が推定されるぞ…分霊箱を使い捨てるかのような運用をしたという事は他にも分霊箱が存在すると推定すべきだ。

すなわち、史上例を見ない複数の分霊箱の作成を実施していた可能性が高いぞ…」

そう言って、母は遠くを見るような眼差しをした。

 




実際は?:原作通り、日記の真の意味を知らないルシウス・マルフォイのやらかし。
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