例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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お待たせしました。
今後は今回のように、基本1巻分書き上げてまとめて投稿という形にする可能性が高いですのでご承知ください。


アイリス・エヴァンズとアズカバンの囚人
窮屈な夏休み


結局、夏休みのお泊り会は無しになった。

ハーマイオニーはフランスに行くし、ロンはウィーズリー家が日刊予言者新聞の主催するクジの大賞に当選し、そのお金を滞在費として7月下旬から8月下旬までの日程でエジプト(ウィーズリー兄弟の長兄のビルの勤務先)へ旅行に行く事になったからである。

私達はこっそりと持ち帰ったバジリスクの素材を母に譲り渡した対価に得たたっぷりの素材を用いて魔法薬学と錬金術を堪能しつつ夏休みの前半を過ごした。

技術習得目的の習作を除けば、『犠牲の石』と『飛翔の指輪』と仮に名付けたアイテムの開発に多くの時間を費やした。

これは前学年、私とハリーがそれぞれ設計したアイテムで、『犠牲の石』はアバダ・ケダブラ(死の呪文)対策のアイテムであり、『飛翔の指輪』は箒なし飛行術の補助具(なくても飛べるが、これによって共同開発中の飛行術が格段に簡単になる)となるアイテムである。

もうすぐハリーの誕生日、という頃、日刊予言新聞経由(記事の質は玉石混交だが一応情報収集はしておいた方がよい、という事で英国魔法界唯一の全国日刊紙を私とハリーは一部ずつ取ることにした)で衝撃のニュースが飛び込んできた。

アズカバン要塞監獄からシリウス・ブラックという囚人が脱獄したというのだ。

新聞によると、アズカバンの運用が始まってから脱獄に成功したのはシリウス・ブラックが初めてだという事である。

シリウス・ブラックは本人がアズカバンで終身刑を喰らった事で実質的に滅んだ純血名家の最後の一人である。(他家に嫁入りした女系血脈は保たれている)

具体的な地位には色々と説があるが、表向きはダンブルドア陣営として活動しつつ、その真の立場は死喰い人であったとされる。

そして、『死喰い人の主』が没落した直後、学生自体の友人、ピーター・ペティグリューと対峙した際、十人を超えるマグルを巻き込んでピーター・ペティグリューを吹き飛ばした極悪人である。

「あんの裏切り者のクソ野郎、今更脱獄なんてして何のつもりだ」

そのニュースを知った母は恐ろしく怒りに満ちた顔でそう言った。

「母さん、落ち着いて」

「これが落ち着いて居られるか!あいつが裏切ったせいでリリーとジェームズ・ポッターはヴォルデモートに襲撃されて死んだんだ!」

「えっ…僕の両親が…?」

「そうだとも。ジェームズ・ポッターの親友だったシリウス・ブラックは忠誠の術でポッター家の所在を守る事になったんだ。

その守りが施された直後、ポッター家は襲われ、ヴォルデモートは没落した。その事実がシリウス・ブラックの裏切りの証拠となった!」

怒りに燃える母とハリーに私はかける声が見つからなかった。

衝撃の事実を知ったハリーでさえ、母の怒りの前に自身の怒りを発露させる事はなかった。

 

その日の夕刻、まだ怒りが収められないでいた母に驚きの来客があった…英国魔法省、魔法大臣、コーネリウス・ファッジ氏である。

闇祓いを1チーム護衛に引き連れたファッジ氏はよくないニュースを母に告げた。

シリウス・ブラックが脱獄したのはハリーを狙っての事だと推定されている、というモノである。

「あんのクソ野郎!リリーの次はハリーを殺す気だと!?面白い、私直々にぶち殺してやる!」

そんな母の叫び声がリビングから廊下(私とハリーはリビングから出るように、と言われて廊下で待っていた)にまで聞こえてきた位、母はキレた。

火に油を注ぐように、ファッジ氏はハリーを漏れ鍋に避難させる事を勧めてきた。

『良識ある大人の魔法使いの目が多くある』場所にハリーを置いておきたい、という意図らしかった。

母は我が家の守りを馬鹿にされたと受け取った母はまたもやブチ切れたが、最終的には我が家の近所にシリウス・ブラックを待ち伏せる為の監視チームを配置し、母が留守の間、ハリーと家族を守るために闇祓いを3名泊める事で同意した。

そして、ハリーは半ば自宅軟禁処置を受ける事になった…インドア派の私達とは言え、普段は気分転換に近所の公園にふらりと散歩や軽い運動に出かけるのだが。

故に、今年のハリーの誕生日はさほど楽しいモノではなかった。

近所への多少の気晴らし的な外出は闇祓い2名の同行を条件に認められていたがテーマパークや動物園など人出の多い場所は護衛に難があるからと外出が認められなかったのである。

更に、ハリーの気分を滅入らせる事態が発生した。

ハリーはシリウス・ブラックの一件が落ち着くまでホグズミード村への外出が禁じられる可能性がある、という事である。

母は『『良識ある魔法使いの村』たるホグズミード村ならいいだろう、教員の護衛が付くかもしれないが…何なら、外出日にホグズミード村に護衛に出向いても良い』と言ったのだが闇祓い達の意見はそうではないらしく、ファッジ氏に連絡が行った。

マクゴナガル先生が我が家を訪れ、ファッジ氏、マクゴナガル先生、母の三人が議論を交わした結果、最終判断はダンブルドア先生が行うが、魔法省からはハリーのホグズミード村行きに対して懸念が伝えられる、という事になった。

安全策というか責任回避策を取りたい魔法省、恐らくはハリーに外出許可を与えたい気持ちとハリーを見せ札にシリウス・ブラックを狩りたい気持ちの混ざった母、保護者同行でホグズミード村は勘弁してほしいハリーという構図である。

そんな感じで、夏休み後半は始まった。

母は闇祓いが同居している環境下で闇の魔術に属する技術を用いた錬金術の研究をするのをあまり好ましく思わなかったため、『犠牲の石』の開発に充てていた時間は閉心術の訓練(閉心術は魔法ではなく技術である為、未成年が夏休み中に行使しても合法)を行う事になった。

また、ハグリットからハリーに送られた誕生日プレゼントである『怪物的な怪物の本』…背表紙を上にカニの様にゴソゴソ動き、装飾された歯で噛み付いて来て、パタパタ羽ばたいて飛ぶ、生き物のような本。そして驚くべきことに来学年の魔法生物飼育学の教科書…の解析も行った。

かけられた魔法を解くのが中身を読む一番簡単な方法であると考えたくなるほどに暴れまわった怪物本だが、最終的に背表紙を撫でる事で暫くの間、大人しくなり、中身を読める事が判明した。

後から考えてみれば、秘密を守るための研究ノートの類ではないので、そう難しい手順であるわけはなかった…コロンブスの卵という奴である、多分。

それはさておき、護衛という名の監視の目は有れども、夏休みは過ぎていき…8月も下旬となるとホグワーツへの登校手段を考えないといけなくなった。

それには、変則的な手段がとられることになった。

去年はロンドンの母のアトリエから地下鉄でキングズ・クロス駅に移動したのだが、今年は漏れ鍋に移動し、そこから魔法省の用意してくれた車で移動、というプロセスを踏むことになった。

加えて、(時々フクロウのやり取りこそしているが)休み中、一度も会えていないウィーズリー一家とハーマイオニーと共に8月31日に漏れ鍋に宿泊し、ディナーを取る事になった。

なお、8月に入って二度ほどダイアゴン横丁には買い物に出ており、学用品も既に購入済みである。

8月31日の早朝、私達は漏れ鍋の裏庭(ダイアゴン横丁の入口)に母の付き添い姿現しで移動し、漏れ鍋に荷物を預けて朝食を取った。ロンとハーマイオニーとは漏れ鍋で待ち合わせていて、ダイアゴン横丁で遊ぶ予定であった。

朝食後の紅茶を飲んでいると、煙突飛行でまずロンが父親と共に現れた。

「おはよう、アーサーさん、ロン君」

「おはよう、ペチュニア、ハリー、アイリス」

保護者同士で挨拶を交わした後、ロンとアーサーさんが私達のテーブルに加わった。

暫く夏休み中の事についてお喋りをしていると、こんがり日焼けしたハーマイオニーが両親と共にやってきた。

アーサーさんはハーマイオニーの両親と一杯やりながら話を…特にマグルの歯科治療のやり方について聞きたかった様子だが、ハーマイオニーの両親は午後から地元に戻って仕事だという事で少し休憩した後に帰らなくてはならないので、と誘いを半分断り、紅茶を一杯飲みながら少し話をした後に帰って行った。

「ロン!クィディッチ用具店に行こうよ、すごいモノが入荷している」

「すごい物?ああ、噂のあの箒の事?いいよ、行こう。その後、ペットショップによりたい。スキャバーズの様子を見てもらいたいんだ…エジプトの水が合わなかったみたいで元気がないんだ」

「あら、私もペットショップに用事があるの。私、9月が誕生日なんだけれども、パパとママが誕生日プレゼントを買いなさい、ってお小遣いを下さったの。私、ペットを飼うのはどうかと思っていて、ペットショップに行きたかったの」

「じゃあ、まずはクィディッチ用具店によってハリーがご執心の美人箒さんを見て、その後、ペットショップね」

と、いう事になり、私達はさっそくダイアゴン横丁に足を踏み入れた。

母とアーサーさんからマグルのロンドンに出ない事と、ノクターン横丁に行かない事という注意を背中に受けて。

私達は高級クィディッチ用具店のウィンドウに飾られた箒、ファイアボルトを見学に行った。この箒は本来レース用の最高級箒で、プロチームが欲しがるような箒であるらしかった。

ハリーが課題達成のご褒美に母にねだろうとしたが、価格を聞いた母が流石に無理、と答えたほど高額である。

なお、ニンバス2001…ニンバス2001もかなり高額な箒で知られているのだが…なら買ってやれるが…と母は言ったがハリーは権利をとりあえず留保する事にした。

試作品という点とプレミアム込みでの価格らしいので量産型が出て価格が下がればいけるかも…と言う事らしい。

私も当座欲しいモノは研究材料くらいしかないのでご褒美の権利は保留してある。

それはさておき、ハリーとロンが満足するまでファイアボルトを見た後、私達はアイスクリームパーラーで少し休憩した後、近くの『魔法動物ペットショップ』に行った。

まず、ロンがスキャバーズを見てもらった。

結論から言うと、特に能力を示さない家ネズミの寿命が3年である前提はもっておくように、という事であった。

その上で、スキャバーズにネズミ用栄養剤をすすめられ、ロンはそれを購入した。

その時、赤色の何かがロンの頭に振ってきた。

それは巨大な赤猫で、スキャバーズに向かって突進していった。

「こらっ!クルックシャンクス、ダメっ!」

ペットショップの店員の静止虚しく、クルックシャンクスと呼ばれた猫は突進を続けた…が、スキャバーズは店員の手の中からスルりと抜け出し、カウンターからボトンと落ちると出口に向かって遁走した。

逃走したスキャバーズは高級クィディッチ用具店の外にあるごみ箱の下から発見されたらしい。

らしい、というのはスキャバーズとスキャバーズを追ったのはロンとハリーで私はハーマイオニーとペットショップに残ったからである。

で、ハーマイオニーがクルックシャンクス(ロンの頭に飛び降りてきた赤猫)を買うのを眺めていた。

「ハーマイオニー、大丈夫?ペットはちゃんとお世話しないといけないし、構ってあげないといけないのよ?思索にふけっていてご飯をあげ忘れたとかしたら駄目なのよ?」

「…もしかして、貴女とハリーがペットを飼っていない理由ってそれ?」

「うん、そうだけど」

「まあ、ある意味、動物を大切に思っているのね…大丈夫よ、ちゃんとお世話するわ」

という会話はあったが。

その後、ちょっとした言い争い(ロンがスキャバーズの心配をしたが、ハーマイオニーがそれぞれの寮で買うんだから取り越し苦労だ、と言った)を挟んで私達は漏れ鍋に戻った。

 

その日の夕食は漏れ鍋でフルコースを頂き、そのまま漏れ鍋に泊まった。

翌朝、魔法省の出してくれた3台の車に分乗して(ハリーは真ん中の車に、母とアーサー・ウィーズリー氏に挟まれて乗るように言われた)キングズ・クロス駅へと移動した。

その後、いつものように後ろの方の車両に荷物を積み込んだ。

「さて、ハリー。お前はシリウス・ブラックに狙われている。ホグワーツとホグズミード村は安全な場所ではあるが完全ではない、特にホグズミード村は人の出入りも多い…奴に変装する程度の理性が残っていればそうする事で侵入できるだろう…人気の少ない場所には護衛なしにはいかない様にね」

「うん、わかっているよ、ペチュニア伯母さん。ダンブルドア先生の判断次第ではホグズミード村自体に行けないかもしれない事も」

「ならばいい。じゃあね、アイリス、ハリー。お前達のホグワーツ生活が実り多いモノでありますように」

そう言って母は私達に微笑んだ。

 

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