例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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ホグワーツ特急とディメンター

汽車が出た。私達(ハリー、ハーマイオニー、ロン、ジニー、私)は車両の最後尾のコンパートメントに席を取った。そこには先客がいた。

それはよれよれの大人の男性だった。荷物に目をやるとR・J・ルーピン教授と文字が押してあった。なるほど、『闇の魔術に対する防衛術』の新教授か。

ルーピン先生を少し話題にした後、私達の話題はシリウス・ブラックに移った。

「…そう言えば、ハリー。シリウス・ブラックの事なんだけれども…君を狙っているらしいって本当?」

「うん、そうらしいね。少なくとも、魔法省はそう考えているみたいだ。

夏休みの後半、闇祓いを3人…監視チームを入れればもっとかな…を僕らの家に張り付けるくらいは本気でそう考えている」

「そうね…動機としては自身の裏切りを台無しにした『死喰い人の主』の破滅劇の生き残りであるハリーを逆恨みして…と言った所じゃない?」

「…ハリー、怖くないのかい?ブラックは呪文1つで10人以上を殺した魔法使いなんだろう?」

「まあ、全く心配していないと言えば嘘になるけれど…それでも、ホグワーツの守りを信じているし、万一、そうなっても『死喰い人の主』と対峙するよりはましだよ、きっと」

「まあ、それはそうかもしれないけれども…所で、何か変な音がしない?」

そう言って辺りを見渡したロンはハリーのトランクから音がしていると言った。

「開けるよ」

そう言ってハリーの荷物を探ったロンは、自身がハリーに誕生日プレゼントとして贈った『スニーコスコープ(携帯かくれん防止器)』を取り出した。それは激しく何かに反応していた。

私とハリーは警戒心をあらわにして隠し持っていた杖を握った。

しかし、自前で走査した探知呪文には特に何も引っかからなかった。

「特に何も反応はなし…スニーコスコープは何に反応しているんだろう」

ハリーがそう呟いた時、反応は一層激しいモノになり、すさまじい音を発した。

「シレンシオ!黙れ!」

ハリーは黙らせ呪文をスニーコスコープにかけてアラーム音を切った。

しかし、スニーコスコープは再び回り出し、音を発し始めた。

「これ、壊れているのかも…ホグズミードでチェックしてもらえるかもしれない」

「シレンシオ!黙れ!とりあえず、それ仕舞いましょう。ルーピン先生が起きてしまうわ」

私がそういうとロンは元通り、ハリーの着替えの間にスニーコスコープを挟む様にしまってトランクを閉じた。

それから、話題はホグズミード村の事に移っていった。

 

お喋りの話題も減ってきて、私とハーマイオニーが読書を始めて少しした頃、車内販売がやってきた。

サンドイッチ(漏れ鍋の厨房を借りてウィーズリーおばさんが作ってくれたもの)に合わせる飲み物とおやつを買った後、車内販売で何か買いたいかもしれない、という事でルーピン先生を起こそうとしたが先生は起きなかった。結局、追加で欲しいモノがあれば、運転士の所に来るように言って車内販売のおばさんは去っていった。

食後の読書を楽しんでいると、ドラコ・マルフォイ一行がやってきた。

彼はいつもの調子でウィーズリー家を馬鹿にしてロンを挑発したが、途中でルーピン先生に気付いて帰って行った。

 

ホグワーツ特急は北に進み、雨が激しくなっていく…それをBGMにして読書をしていた私達はホグワーツ特急が速度を落としているのに気が付いた。

「アレ?もうそんな時間?」

「いいえ…まだの筈よ」

読書を止めて様子をうかがっていると遂にホグワーツ特急はその動きを止め…突然がくんと止まった。そして少しした後、明かりが一斉に消えた。

私とハリーは再び杖を構え、無音呪文で幾つかの光の玉を宙に浮かべた。

何事だろうと騒いでいると、ネビルがコンバートメントにやってきた。

「ヒッ!僕だよ!ハリー!アイリス!」

咄嗟に私達はネビルに杖を向けてしまい、彼を怖がらせてしまったが。

「私、運転士の所に行って、何事なのか聞いてくるわ」

ハーマイオニーはそう言って立ち上がり、杖にルーモスで灯りを灯した。

「待ちなさい!」

突然、しわがれた声がルーピン先生の席から聞こえてきた。

振り向くと、ルーピン先生が目を覚まして、立ち上がっていた。

私達の灯した光にうっすらと照らされる目は油断なく、鋭く何かを警戒していた。

「席に戻って」

そうハーマイオニーに促すと自身はゆっくりとコンパートメントの扉に向かって歩を進めた。

先生が扉にたどり着く寸前、ドアがゆっくりと開いた。

そこにはオゾマシイナニカが立っていた。

それはマントを着た天井まで届きそうな黒い影だった。

「ディメンター…?」

ハリーがそう呟いた。確かに、その死人の様な存在はディメンター、吸魂鬼の特徴と一致していた。で、あれば魔法省の手勢のはずで、シリウス・ブラック探しの為の抜き打ち捜査か、コレは。

そう思い、一瞬油断した。そのタイミングでディメンターは何かを吸い込むような動作をした。

そして…私達は『吸われた』…マズイ、私達はまともにコレの相手をできない。

無駄だとはわかってはいても、私とハリーは守護霊呪文を唱えていた…まあ何も起きなかったが。

直後、ハリーが硬直して倒れこむ…寸前の所を私が支えた。正直、去年度の秘密の部屋での経験が無ければハリーは床に倒れこんでいただろう。

「シリウス・ブラックをマントの下に匿っている者はだれもいない。去れ」

しかし、ディメンターは動かない。先生とにらみ合うディメンター…ディメンターが手を伸ばそうとした。

「エクスペクト・パトローナム」

先生は守護霊呪文を唱えて守護霊を作り出し、それはディメンターを追い払った。

「…ハリーは無事かい?」

「あ、はい。気を失ってはいますが…リナベイト!蘇生せよ!」

私がハリーに気付け呪文を使うと少しした後にハリーは目を覚ました。

「ん…うーん?アレ?アイリス?って、ディメンターは!」

「大丈夫よ、ルーピン先生が追い払ってくださったわ。でも…」

チョコレートを持っていない。そう言いかけた時、パキッという音がした。

それは先生が大きな板チョコを割る音だった。

ああ。この先生は優秀だ…少なくとも、ディメンターに幸福を吸われた時は菓子…とりわけカカオの入ったチョコレートが効くと知っている。まあ、魔法薬学的にはもっと良いモノも作れるがカカオの入った甘い物(甘いココアか、ホワイトチョコ類を除くチョコレート)で今回程度の被害の対処療法には十分である。

「さあ、食べるといい。気分がよくなるから」

「ありがとうございます」

ハリーは例を言って先生から受け取ったチョコレートを食べた。

先生はそれを見て微笑むと私達にもチョコレートを配り始めた。

「先生、さっきのは何だったのですか?」

ハーマイオニーがそう聞いた。

「ディメンター、吸魂鬼だ。アズカバンのディメンターの一人だ」

先生はチョコレートを配りながらそう答えた。

「食べなさい、元気になる。私は運転士と話してこなければ。失礼…」

そう言ってチョコレートを配り終えた先生は通路に消えていった。

無言が場に満ちる…そして反応は二つに分かれていた。言われた通り、チョコレートを食べるハリーと私、それに困惑した様子でチョコレートを見つめている他の皆である。

「えっと…このチョコレートって…?」

ハーマイオニーが私達に問うた。

「ああ、ハーマイオニー、ディメンターに『吸われた』場合の対処療法にはちょっとした幸せと糖分と興奮剤が効果的なのよ…要するに興奮作用のある甘くて美味しいお菓子…チョコレートを食べるとかね」

私のその言葉で、みんなは配られたチョコレートを口にした。

皆が回復した頃、ルーピン先生が戻ってきて、後10分で特急が駅につくと告げた。

 

城前で若干のトラブル(マルフォイがハリーが気絶した事をネビルから聞いてそれをネタにからかおうとしてルーピン先生が来たのでやめた)があったが、私達は無事にホグワーツ城の扉をくぐった。その後、マクゴナガル先生にハリーとハーマイオニーが呼ばれ、離脱した。私とロンは二人の席を確保して組分けに立ち会った。

組分けが終わった頃、ハリーとハーマイオニーが合流した。

ダンブルドア先生の挨拶と連絡事項…ディメンターを受け入れている事、いざこざを…ディメンターを付け込ませる隙を作らないようにという事、教員の人事…ルーピン先生の着任とケルトバーン先生の退職・ハグリッドの着任について…を発表した。

その後、宴を楽しんだ後に、私達は寮に帰った。

「ハリー、守護霊呪文の練習…早期習得が必要よ」

「そうだね、アイリス。でも…独学だと難しいよ…まだもやすら出ないし」

「ルーピン先生にお願いできるなら、そうしましょう」

私とハリーはそんな会話を交わした後、それぞれの寮に引き上げていった。

 

 

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