その日の授業は色々な意味で酷かった。
まず、最初の授業は占い学…移動に非常にてこずった…のはまだいい。
紅茶の葉を読む事で今学期を費やすと言われた…まあいい。
マグルの占い師もよく使う話術トリックめいた謎めいた予言の数々…もいいだろう。
香まで使って催眠・暗示強化の場を整えている…そう言う授業だ、性に会わないがいいだろう。
ハリーにペテンともいえる死の予言をした…許しがたい。
まあ、そんな授業だった。
次はマクゴナガル先生の変身術…これはよい。占い学のトレローニー先生の授業の後遺症でアニメ―ガス(動物もどき)変身の実演をほとんどの生徒は見逃したがその後に、占い学とトレローニー先生批判に近い内容をマクゴナガル先生が述べたのにはびっくりしたが。
で…ハグリッドの『魔法生物飼育学』は…うん。
教科書を私とハリー以外だけも開けなかった事…まあ、割と私達も苦労したので仕方ないと言えなくもない。
スリザリンとの合同授業である事…まあ、もめごと率は上がるが我慢である。
ハグリッドをして『とっても痛い鍵爪』を持つヒッポグリフを最初の授業の教材にした事…うん、3年生の最初の授業にしては高難易度すぎやしないだろうか。注意事項を守れるおつむと能力が全員にあるわけではない。
案の定、やらかした生徒がいた。
ドラコ・マルフォイがヒッポグリフを侮辱し、腕を切り裂かれた。
ため息をついて私はマルフォイに応急手当てをした。
とは言え、余計な事をしてマダム・ポンフリーの仕事を増やすのもアレなので暴れるマルフォイを失神…もとい眠らせて止血しただけだが。
ハグリッドはマルフォイをひょいと抱えると全速力で城に向かって駆けていった。
私達生徒はそれに続いた。
「まったく…普段偉そうにしているマルフォイが大失態ね…三年生にもなって一年生のネビルと同じ失敗をしたわ」
「なんだと」
「だってそうでしょう?先生の注意を聞き落として禁忌を犯して医務室送り…ネビルが最初の魔法薬学でやったのと同じ事よ」
なお、実際のネビルは同様の失敗をしようとしては誰か…大体は私やハリーやハーマイオニー、ペアのシェーマス、時々スネイプ教授…に止められるのがライフワークだが。
そんな正論パンチを喰らって、スリザリンの連中のハグリッド批判のトーンは小さくなっていった。止まったわけではないが。
で、その夜はハグリッドを励ましに行った。正直言って、ハグリッドは解雇されるほど悪くない…悪くはないのだが…ヒッポグリフの方の運命は…あまり良くないように思えた。
マルフォイは逆恨みの計略が明らかになったのは木曜日の魔法薬学の時間の事だった。
授業に大幅に遅れてやってきたドラコ・マルフォイはわざとらしい演技で傷の後遺症がいかに長引いているかをアピールした後、グリフィンドール生の作業スペースの近く…私達と共同の机に場所を取った…が。
「フム…マルフォイ、君は今日の実習は見学していなさい」
材料の下ごしらえを私達にさせようとする嫌がらせを仕掛けようとした所でそう、スネイプ教授に言われた。
「君は授業の前半の理論的説明も調合手順も注意事項も聞いていないし、その腕が原因で事故が起こっては大変だからな」
「…はい、先生」
スネイプ教授にそう言われては引き下がるしかなく、マルフォイは鍋を片付けた。
…が、マルフォイは私達に絡むのを止めなかった。
色々と挑発をしてきたし、傷が長引いている…スリザリン生以外からは影から指さして笑われているのでだが…事を理由にハグリッドをクビにしようとしているとも仄めかした。
最終的にはシリウス・ブラックをハリーが自分の手で追い詰めないのか、と挑発してきた。
「…何が悲しくてシリウス・ブラックの願いを叶える隙を見せてやらないといけないんだい?マルフォイ。確かに、奴は両親を裏切り、『死喰い人の主』に密告して間接的に殺した仇だ…だからこそ、奴には僕自身を見る事もできないまま惨めに死んでほしい…自分自身で手を下す価値はないよ」
そうは言ったハリーだが、その目は機会があれば自分の手で打ち倒し、ディメンターに引き渡して廃人にしてやりたい、と書いてあったし、なんならお前も巻き添えで死んでくれればなお嬉しいと読み取れた。
死の呪文に込めるに相応しい憎悪を唐突に向けられたマルフォイはたじろいだ。
「さて、そろそろ材料は加え終わっただろう。薬を煮込んでいる間に片付けを済ませておくように…その後、瓶に詰めて提出する事」
そこでスネイプ教授の指示が飛び、マルフォイの口撃は中断された。
その後、スネイプ教授は一つ一つ検分しながら縮み薬の提出を受け入れていった…が。
「…ロングボトム。これは何だ」
「ち、縮み薬です、ス、スネイプ先生」
本来、緑色であるべき縮み薬は何故か紅色をしていた。
「…一つや二つの失敗ではこうはならんぞ、ロングボトム…ポッター!」
「は、はい!」
「いつも通り、ロングボトムを監視していたと思うが、ロングボトムの調合の失敗点を述べよ」
「…全て、でしょうか」
「無論、君が把握している事は全てだ。」
「…ハイ。まず、下ごしらえについて、
萎びイチジクの汁を絞る際、皮を剝かないで絞っていました。
また、雛菊の根の刻み方も丁寧ではありましたが成果物は不揃いだった様に思います。
芋虫の数は5匹と正しいですが、頭を除いて使っています。
ニガヨモギは…煎じてよく混ぜてはいました、煎じ過ぎで焦げていましたが。
ヒルのしぼり汁の所で教科書を見ていたので多分、4匹分用意しています。
ネズミの脾臓も1つでいい所を4つ準備していました。
毒セリも大量に…1本で十分なのになぜか1束用意していたように思います。
手順については…精彩に欠ける、程度の物は除きます。
まず、萎びイチジクの汁を温める際に火が強すぎでしかも激しく混ぜていました。
雛菊の根、芋虫の輪切り、煎じたニガヨモギを加えるのは正しくできていましたが…ネズミの脾臓を加えずに暫く煮てからネズミの脾臓を加え、その後、よく混ぜずにヒルの汁を全量…4匹分加えていました。
その後、毒セリを刻むのを忘れていたらしく、急いで刻んでその時、指を少し切って血が混入しています。
で、煮込みすぎた薬に血の付いた毒セリの粗みじんを加えてよく混ぜた後にぐつぐつ煮るべきところを高火力で…ボコボコ煮込んでいました」
「…なるほど、コレはロングボトムの血が混入した故か。よろしい」
そう言ってスネイプ教授はネビルの『縮み薬』に向けて杖を振った。
「コレは酷い…まあ、どれだけ酷いかは後で実演するとして…次の者」
全員分の薬を提出させた後、スネイプ教授は皆の前で実験用のネズミにネビルの作った薬を一滴飲ませた。
するとネズミは体のあちこちが様々な毒々しい色に変わりながら無秩序に縮んでいき、豆粒くらいのサイズになるとモクモクと煙を上げた。
当然、ネズミは無秩序に体のサイズが縮む事により途中で酷い断末魔を上げて死んだ。
「なんとも悍ましい毒薬だな、ロングボトム…コレを君のヒキガエル…トレバーだったか…に飲ませたらどうなる事だろうな?」
スネイプ教授に言われてネビルは震えあがった。
「吾輩は無意味に毒薬をペットに飲ませるような真似はせん。しかし、そうする事で君が少しでもましな調合ができるというのであれば、それは意味のある事であるように思う」
ネビルはスネイプ教授の言葉にガタガタと震えている。
「そもそも、だ。君は手順を完了させる前に何かおかしい、と気づかないのかね?
その時点で吾輩か同輩に助けを乞う事を何故しないのだね?
少なくとも、縮み薬はあらかじめ下ごしらえを済ませておける薬だ。
下ごしらえ終えた時点で誰かに確認してもらうという事を何故しないのだね?」
ネビルはスネイプ教授の言葉に口をパクパクとさせてはいるが何も答えない。
「まあ、間違っていたら誰かが止めてくれる筈、と君が思うほど、甘やかした我々の責任もないとは言えん…私はポッター、エヴァンズ、グレンジャーの三人には君の為にならんから、事故が起きる程の間違い以外、自分からは手を出すな、乞われて手助けするとしても助けすぎるな、と事前に言い含めておいた。
今まで以上にきちんと手順を確認し、不明点はよく確認して実習を行うように…わかったかね?」
ネビルは黙って頷いた
「よろしい。
ロングボトムのみならず、全ての生徒諸君に改めて申し上げる。
魔法薬学は…否、ホグワーツで教えられるほぼ全ての学科には程度の違いは有れど、危険を伴う事があるという事を忘れない様にして頂きたい」
スネイプ教授はそう言ってこの日の魔法薬学の授業を終えた。
「君達、スネイプの言いなりになってネビルを見捨てたのかい?」
授業の後、ロンがそんな事を言い出した。
「前学期の終わりの方はネビルが僕達に頼りっきりで調合をしていたのは事実だし、試験では手助けできないからね…スネイプ先生が言う事にも一理あるかと思って従ったんだ」
「そうね、ネビルの為だと言われて納得したから従ったのよ、ね、ハーマイオニー」
そう言って私は真後ろにいるはずのハーマイオニーに声をかけたが、答えない。
振り返るとハーマイオニーが消えていた。私達は不思議に思いつつ、辺りを見回す。
その間にも他の生徒たちが大広間に向かって私達を追い抜いていく。
その中には、むすっとした顔のドラコ・マルフォイとその一味が含まれていた。
恐らく、スネイプ教授の最後の言葉が自身に向けられていたことに気付いているのだろう。
「あ、ハーマイオニーだ」
そうしていると、ハーマイオニーが少し息を切らせた様子で階段を上がってきた…相変わらず重そうな鞄…全教科の教科書を詰めている様である…を持ち、もう片方の手で何かをローブの中に押し込んでいる。
「どうやったんだい?」
ロンが尋ねた。
「なにを?」
「君、ついさっきは僕らのすぐ後ろにいたのに、次に見た時は階段の一番下に戻っていた」
「え?…あ、ああ…私、忘れ物を取りに戻ったの。あっ、あぁあ…」
ハーマイオニーの鞄が破れていた。
私達はハーマイオニーが鞄を魔法で直している間、本を持つことにした。
「…ハーマイオニー、予習するにしても、全教科の教科書を持ち歩くのはやり過ぎだと思うわよ?私達が言うのもなんだけれども」
私とハリーも授業と関係ない本を常に複数持ち歩いているのであまり大きなことは言えない。
「え、ええ、そうね…今日のお昼は何かしら、美味しいモノがあるといいんだけれども…お腹ペコペコよ」
ハーマイオニーは直った鞄に教科書を詰め治すと、そう言って私達を追い抜いて大広間に向かって行った。
「ハーマイオニーって僕達に何か隠していると思わないか?」
ロンがそう問うた。
「…そうだね、調査はまだやっていないけれど、言動から察するに複数の授業に同時に出ているかのような事を言っているから…それ関係かもね」
「そうね…幾つか手はあると聞くけれど…現実的にあり得るのは砂時計かな」
「逆に、3年生が手を出せる手段だと僕はそれしか思いつかない」
「なんの話?」
「ハーマイオニーも大変ね、って事よ」
首をかしげるロンを尻目に私達も大広間に向かった。
尚、そこではハーマイオニーがまるで一食ぬいた後の食事かの様なペースで食事をしていた。
その日の午後、『闇の魔術に対する防衛術』の授業にルーピン先生は遅れてきた。
教科書と羊皮紙と羽ペンを出して、読書をして待っているとルーピン先生がやってきた。
ホグワーツ特急で見た時よりも多少健康的な…と言ってもいまだによれよれではあるが…ルーピン先生は実地訓練をすると宣言すると私達を連れて職員室に向かった。
途中、ガムを鍵穴に詰めているピーブズと遭遇した。
ピーブズは先生を馬鹿にする歌をうたったが、ルーピン先生はニコニコしたままだった。
そしてガムを鍵穴から覗いておくように言ったが、従うピーブズではない。
そこで先生は逆詰めという呪文を行使して鍵穴に詰められたガムをピーブズの鼻の穴に移した。
鼻の穴にガムを詰めたピーブズは悪態をつきながら去っていった。
そんなトラブルもありつつ、たどり着いた職員室にはスネイプ教授だけがいた。
「ん?ああ、そう言えば三年生の実習をするのだったな…騒がしくなりそうだ」
「見学されますか?」
「いや、結構…ルーピン、君がどのような授業をするかという事に興味が無いと言えば嘘になるが、静かな場所で考えたい事があるのでな」
そう言ってスネイプ教授は立ち上がり、私達の横までやってきた。
「そうそう…アレはヒッポグリフほど危険ではないが、事故など起こさない様に気を付ける事だ」
スネイプ教授はルーピン先生にそう言うと職員室を去っていった。
その後、ルーピン先生は私達を職員室の奥の衣装ダンスの所まで連れてきた。
その中にはボガート、まね妖怪が入っているらしい。
先生は私達にまね妖怪が何なのか、問うた。
ハーマイオニーが一番に挙手し、当てられ、完璧な答えを返した。
ボガートは対峙した存在が一番怖いと思う事を再現するお化けである。
確かに、一人で対峙すると危険ではあるが、監督者付きでこの人数であれば大して危険ではない。
事実、ルーピン先生は私達がとても有利な状況にいると説明し、ハリーにその理由を答えさせた。
「ボガートが複数の存在と同時に対峙した場合、その恐怖の対象が異なっていたならば何に化けるかに迷い、大抵は中途半端な変身をします」
ルーピン先生はその答えを肯定すると、かつて見た滑稽な半身ナメクジの事を話し、ボガートと対峙する為の呪文を私達に授けた…『リディクラス、ばかばかしい!』である。
そして、その呪文に力を与える方法を説明した…リディクラスはボガートをさらに変容させる呪文で、恐ろしいモノをさらに変身させる事で笑いに変える術である。
そして、私達に最も恐ろしい物を思い浮かべさせ、それを滑稽にする術を考えさせた。
私の最も恐ろしいもの…『死喰い人の主』も怖かったが、恐らくは完全に闇落ちした母と敵対する事か。
で、それを滑稽にする…ウェディングドレスでも着せて赤面させてやるか。
等と考えていると実習が始まった。
まず、ネビルが対峙してスネイプ教授に変身した。
スネイプ教授に化けたボガートはネビルの呪文でネビルのおばあさんの服装に変身した…皆、大爆笑である。
その後、先生の指名に従って何人かの生徒がボガートと対峙する…途中、ルーピン先生がハリーの前に転がり出た足無し蜘蛛状態のボガートを引き寄せて水晶玉…の様な何かに化けさせてゴキブリにするという事があったが、それ以外は特筆するべき事もなく、ボガートは退治された。
その後、先生がグリフィンドールに加点して授業は終わった。