例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

24 / 38
ホグズミード村と嵐の中のクィデッチ

10月に入ってしばらくすると、ハリーはクィディッチシーズンが始まった。昨年の優勝でウッドも少しはおとなしくなっているかと思いきや、二連覇を狙って例年通りの猛練習をするつもりらしい。

そしてしばらくしたある10月中頃の晩、談話室のお知らせにホグズミード週末のお知らせが張り出された。

初めてのホグズミード週末はハロウィーンの日らしい。

「そう言えば、僕、ホグズミード村に行けるんだろうか」

クィディッチの練習から帰って来て、そのお知らせを見たハリーは思い出したようにそう言った。

そう言えば、ハリーのホグズミードへの外出の可否はダンブルドア校長に預けられているのであった。

「そう言えば、そんな事を言っていたわね…まだ聞いていなかったの?」

「うん、すっかり忘れていた…ダンブルドアの事だから大丈夫だとは思うけれど…」

「でも…個人的にはブラックが捕まるまではハリーは安全な場所にいるべきだと思うわ」

ハーマイオニーが少し後ろめたそうに言った。

「人気のない所に行くつもりはないし、楽しんでも油断するつもりはない、大丈夫だよ」

ハリーはそう答えた。

その時、ハーマイオニーの飼い猫、クルックシャンクスが蜘蛛の死骸を咥えてハーマイオニーの膝の上に飛び乗った。

話題がクルックシャンクスの事に移り、ロンはスキャバーズが自分の鞄にいるから近づけるな、と言った。

そして少しした後、唐突にクルックシャンクスはロンの鞄に飛び掛かった。

ロンはクルックシャンクスを鞄から引き離そうとするが離れない。

むしろ、鞄を振り回してスキャバーズを放り出す結果となった。

スキャバーズとクルックシャンクスの追いかけっこが始まった。

結局、スキャバーズは無事ではあったが、ハーマイオニーとロンの間に深い溝が生じた。

「…クルックシャンクスを買った時に、スキャバーズは男子寮、クルックシャンクスは女子寮、って言ってなかったかしら?」

「…そうね。クルックシャンクス、あんまり寮を出てはだめよ?」

私の思い出したような言葉にハーマイオニーはクルックシャンクスにそう言い聞かせていた。

 

ハーマイオニーとロンとの険悪な空気は晴れないまま、少し時間が立った。

ラベンダーの飼い兎が狐に殺された事に関する占いの解釈について、ハーマイオニーの無神経な言葉などもあったが大した問題ではない。

で、変身術の授業の後、ハリーはマクゴナガル先生にホグズミード行きの可否について聞くつもりだった。

丁度、マクゴナガル先生は許可証についての話を皆にした。

ネビルの許可証について…ネビルはなくしたと言ったが、実際は直接先生に提出されていた…の話の後、ハリーが進み出た。

「あの、マクゴナガル先生、僕のホグズミード行きの許可の件ですが…」

「ああ、ポッター…ダンブルドア先生は貴方がホグズミード村に行く事は特に問題ないとおっしゃいました。ただし、危険な場所や人気の少ない場所には立ち入らないようにと私から条件を付けさせていただきます」

「ありがとうございます、マクゴナガル先生」

「ただ…その…できれば、ではありますが、ハグリッドと一緒に行動してほしいのですが…」

それが本当の条件らしかった。

「…ええっと、ペチュニア伯母さんは来ないですよね?」

「…あの子の情報網からすればホグズミード週末の日を見逃す事はないでしょう、秘密でもないですからね…休みが取れれば…と言うか外せない別件で縛りつけなければ駆けつけてくるはずです。そして、ホグワーツには在野の魔法使いがホグズミード村を訪れる事を禁ずる権力はありません」

ハリーはがっくりと肩を落とした

 

そうして訪れたハロウィーンの日、私達は気分を高揚させて朝食に出かけた。

皆、ホグズミード村で何をするか、相談をしている…そういう私も、その一員であるのだが。

私達は玄関ホールでハグリッドと待ち合わせてホグズミード村観光に出かけた。

で、感想はというと…まあ、楽しいが別に観光は一度でいいかな、ダイアゴン横丁とは違った趣はあるが、という感じである。書店がないのはマイナスであるが、必要ならフクロウ便で取り寄せられるご時世であるのでそこは評価外とした。なお、私はダイアゴン横丁の方が好きである、アイスクリームパーラーでサンデーを食べられるならば。

尚、ハリーは三本の箒のバタービールが気に入ったらしく、甲乙つけがたい、と言っていた。

ハグリットは漏れ鍋と三本の箒、それと私達を連れてはいけないがホッグズ・ヘッド・イン、いずれも違った趣があって好きだ、と言っていた。

母は…来てはいたが、合流はしなかった。厳密には、ホグワーツを出てから帰るまで、ずっと私達を尾行していた様子であった。

とても楽しい宴会の後、事件が起こった。

『太った婦人』の肖像画が切り裂かれたのだ、それもシリウス・ブラックに。

その晩、ホグワーツ生は全員大広間で寝る事となった。

 

翌日から、ハリーに対する監視が強まった。

先生方は何かにつけてハリーの近くに誰かがいるようにするし、パーシーは番犬のようにハリーの傍にいるし…マクゴナガル先生に至っては、前学期にジニーが秘密の部屋にさらわれたと知った時と同じくらい暗い顔でハリーを呼び出したらしい。

そして、クィディッチの練習中止を打診したが、結局はマダム・フーチの監督を条件に練習を認めたとの事である。

 

「で、ドラコ・マルフォイに薬を煎じてあげないの?」

父とのお茶会で、私はそう言う話題を持ち出した。

父の腕前なら、『仮に』ドラコ・マルフォイの訴えが事実だとしても数日で治る。

ヒッポグリフの爪に、三頭犬の様な毒はない。

「…マダム・ポンフリーの見立ては『傷自体は治っているが、それでも痛む事が無いわけではない』だそうだ。こちらが恥ずかしくなるほどに、あまりにしらじらしいので私もそう提案したのだがな?あの子は断ったよ」

「それって、父さんの面子的にはよくないんじゃないの?」

「よくはない、が、彼の父であるルシウス先輩には手紙を出したのでやんわりと諭す手紙は届いている事だろう…恐らく、次のクィディッチの試合が終わった頃には『治る』はずだ」

「…全く…父さんがネビルを例に皆の前で叱ったにもかかわらずそんな調子か」

「まあ、色々としがらみもあるからあれが限度だな…狡猾ではあるかもしれないが、ネビル・ロングボトム並の失態と陰口をたたかれてもそれを実行できる精神力には感嘆する」

父はあきれたようにそう言った。

そこから話題はネビルの指導について移っていった。

 

「…ところで、アレってトリカブト系の薬みたいだけれども、誰かに毒でも盛る気?というか、聞いていいやつ?」

「…聞いてはいけない事になっているやつ、だな。まあ、聡いお前の事だ、すぐにわかる」

退室間際にそんな会話をして、私は父のオフィスを辞した。

父…いや、スネイプ教授が言った言葉の意味は数日後にわかる事となった。

それはクィディッチの試合…グリフィンドール対スリザリンからグリフィンドール対ハッフルパフに切り替わった試合の前日の事だった。

『闇の魔術に対する防衛術』の授業にルーピン先生ではなく、スネイプ教授が現れ、ルーピン先生の代わりを務める、と宣言した。

ルーピン先生に対する嫌みの後、楽しそうにスネイプ教授が行った授業内容は人狼について、だった。

それで私はピンと来た、あの薬は脱狼薬か。そして、その薬を服用する人狼はルーピン先生だ、と。

過去に何かあったのか、純粋に人狼に対する差別意識か、あるいはほかの理由かは知らない。だが、スネイプ教授はルーピン先生が人狼だと気づかせたくてわざわざ人狼について講義をしたのだ。

そして最後に、スネイプ教授は人狼についてのレポートを羊皮紙2巻書くように、と命じて授業を締めた。なお、スネイプ教授の授業は随所に挟まれる嫌味を除けばわかりやすいモノではあった。

 

翌日の土曜日、クィディッチの試合が嵐の中行われる事となった。

まあ、嵐ごとき、『些細な理由』でクィディッチの試合が中止になるとは考えていなかったが。

でも、私は寮の談話室か図書室でのんびりと過ごそうと思っていたのにもかかわらず、ハーマイオニーに引きずり出された。その際のやり取りを簡単に記すと次のようなものである。

「こんな嵐の中、クィディッチ観戦とか狂気の沙汰だわ」

「こんな嵐の中、ハリーは試合をするのよ!応援してあげなきゃ!」

という訳で、嵐の中、私はクィディッチ観戦をしていた。

途中、グリフィンドールチームがタイムアウトを取った際にハーマイオニーがハリーのメガネに防水呪文をかけに行ったくらいしか、私は自身では何が起こっているのか理解していなかった。とぎれとぎれに聞こえてくる解説から状況を把握するしかなかった。

突如、競技場の空気が変わる…ディメンターに『吸われた』時と同じ感覚である。

杖を抜き、辺りを見回すとピッチに沢山のディメンターがたむろしているのがわかった。

同時に、何か…ハリーが落下してきているのを知覚した。

私がハリーに杖を向けた時、ダンブルドア先生がピッチに飛び込んだのがわかった。

私はダンブルドア先生にハリーを任せる事にして、ディメンターに向けて守護霊呪文を行使した。

銀色のもやが飛び出してハリーの落下地点を守る。直後、ハリーがゆっくりと地面に落ちて、ダンブルドア先生が行使した守護霊呪文がディメンター達を追い払った。

ハリーは医務室に運ばれ、私もそれに付き添った。

クィディッチの試合はハッフルパフがスニッチを取って終わっていた。

ハリーは少しして目を覚ました。

ハリーは試合の事を気にしていたがチームメイトたちが試合には負けた事を告げ、ハリーを励ました。

チームメイトたちがマダム・ポンフリーに追い出された後、ハリーにさらに辛い事実を告げる役目を私たち3人は負っていた…ハリーの箒、ニンバス2000の末路についてである。

ハリーの箒は暴れ柳に衝突し、粉々に粉砕された残骸をフリットウィック先生が先ほど届けてくれていた。

ニンバス2000の末路を知ったハリーは絶句し、より一層落ち込んだ。

その週末、ハリーは医務室で過ごす事になった。

色々な見舞客が来たが私達3人はずっと医務室にいた。

見舞客が訪れる合間に私達はハリーとディメンターについて話した。

ハリーは両親が『死喰い人の主』に殺された夜の記憶をディメンターに引き出されるのだと言った。

「…私達、指導者が必要よ、守護霊呪文を指導してくれる先生が」

「ダンブルドア先生…は無理だろうから、ルーピン先生に頼めないかな…何とかもやは出るようになってきたけれど、有体守護霊を出せないとディメンターを追い払えない」

「…守護霊呪文って?」

「ディメンターに対する殆ど唯一、有効な呪文よ、ロン」

ロンの問いにハーマイオニーが応えた。

「厳密には他にもいくつかディメンターに効果がある呪文はあるけれど、一番安全かつ効果的なのはそれね」

私はそれを捕捉した。なお、他にも効果がある、というのは悪霊の火などの強力な闇の呪文である。

「ペチュニア伯母さんの課題で練習はしていたんだけれど、難しくって…指導してくれる先生がいると助かるな、って」

ハリーがさらに説明を重ねた。

 

月曜日の早朝、ハリーは退院した。

遂に、怪我が『治った』ドラコ・マルフォイが冷やかしに来るという些細な事はあったが、ハリー『は』気にしていなかった。が、ロンが魔法薬学の時間にキレて材料であるワニの心臓をマルフォイの顔に直撃させて50点の減点を貰った。

その日の午後、闇の魔術に対する防衛術の授業ではルーピン先生が復帰した。

ルーピン先生はスネイプ教授の出した宿題を取り消して、おいでおいで妖精についての授業を行った。

その授業の後、私とハリーはルーピン先生に守護霊呪文の指導をしてほしいと頼むために残るつもりだったが、先にルーピン先生からハリーが呼び止められた。

「おや?アイリスは残らなくてもいいよ?放課後を楽しむと良い」

「あー私達、ルーピン先生にお願いがあって…先生の用事が済んだ後で良いので、少し話を聞いていただきたいんです」

「なんだい?君達のお願いというのを先に済ませてしまおう」

「僕達、守護霊呪文の練習をしているんですが、上手くいかなくて…ルーピン先生が年度初めのホグワーツ特急で守護霊呪文を行使されていたと聞いて…ご指導をお願いしたいんです」

「…なるほど、試合の件か…実は私の用事もそれなんだ。ハリーとその事について少し話がしたかった…一応聞いておくが、君達はディメンターについてどれくらい知識がある?」

「ディメンターについての知識…ですか」

私とハリーは顔を見合わせた。何処まで話すべきか、と。

「ええっと、ディメンターは幸福感をはじめとする前向きな気持ちを餌とする強力な闇の魔法生物で、守護霊呪文と『いくつかの例外』を除くほとんどの呪文に対して強力な耐性を持っています。彼らが幸福感を『吸う』と近くにいるヒトの最悪の記憶が引き出され、その程度に応じて精神的ダメージを受けます」

「そして、その特性からアズカバン監獄要塞で看守を務める事と引き換えに囚人を餌食にする許可が与えられています。過去に、そして現在もディメンターを使役する事についてはやめるべきであるという意見と必要悪であるという意見が交錯しており…その存在は積極的に肯定される事のない忌まわしい生き物です」

「よろしい。その通りだ。アイリスは幾つかの例外、と言ったがそれについて知識は?」

「悪霊の火を含む強力な闇の呪文の中には奴らの耐性を抜けるものがある、という程度です。ただし、死の呪文は相性として効果がない、または著しく薄い、とされます」

「その知識は何処から?」

「母が奴らについて知っておけ、と貸してくれた蔵書の中に記述がありました」

「成程…ペチュニアならばそう言う事も教えるか…で、あれば実質的に守護霊呪文のみが現実的な対抗手段である事はわかっているんだね」

「はい、耐えるだけならばともかく、退ける為の呪文でかつ僕達が習得できるであろう物に限れば…悪霊の火は危険すぎます…お願いします、先生。僕、連中に『最悪の記憶』を引き出されると『死喰い人の主』が両親を殺した時の記憶が浮かぶんです」

「ヴォルデモートにジェームズとリリーが殺された夜の記憶…」

ルーピン先生はそう呟いてハリーを抱きしめるようなそぶりを見せたが、思い直したようで手を引っ込めた。沈黙が場を支配する…

「…わかった、指導しよう…ただし、私はディメンターと戦う専門家ではないし…色々とやらなければならない事もある…指導できるのは来学期から、時々時間を取って、という程度になるだろう…それでもいいかい?」

「「はい」」

「だが、守護霊呪文を身に着けても過信をしてはいけないよ。有体守護霊を出せるようになってもディメンターと対峙しながらそれをするのは難易度が数段あがるからね」

「アーそれなんですが、先生…ボガートは使えませんか?僕がボガートと対峙したら多分、ディメンターに化けると思うんです」

「…なるほど、それは使えそうだ。用意できればボガートも用意はしておこう…では、よい放課後を」

そう言って片付けの終わったルーピン先生は私達に退出するように促した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。