例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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報いに関する会話と血の付いたシーツ

そんな日常を過ごして月は2月になった。

ルーピン先生の特別レッスンの4回目の日、私達は完全なディメンターに化けたボガードを一人で押しとどめる事ができる様になっていた。

「駄目ね、どうしても有体守護霊に出来ない」

「高望みしすぎだよ、アイリス…13歳の魔法使いにとってはボガードが化けているとはいえ、ディメンターを押しとどめる事が出来るだけの守護霊を出せるだけでも大した成果だよ…ほらご褒美を用意してある、一緒に呑もう」

そう言ってルーピン先生は3本の瓶を取り出した

「バタービールだよ、保温してある。ホカホカではないけれどこれはこれで旨い…熱い日によく冷えたのを飲むのもいいんだけれどもね」

私達はルーピン先生が栓を抜いてくれたバタービールを直接のむ。

「…そう言えば、先生…今朝の日刊予言者新聞を読まれましたか?魔法省がディメンターにシリウス・ブラックへの『キス』を許可したという記事を」

「ああ…読んだとも…色々と思う事はあるが…なぜ、今、とは思うよ」

「そうですね、シリウス・ブラックは脱獄してから罪を重ねているわけではないですからね」

「でも…過去の行いだけで十分ソレに値するんじゃないかな」

「だけれども、それはシリウス・ブラックを捕縛して尋問してからでも遅くは無いはずよ…そして、過去の行いに対する報い、というには遅すぎる」

「わかっているよ、アイリス…でも…奴がした大量殺人と、裏切り…それを思えば…」

「…ハリー…君は…君達は何処まで知っているんだい?」

ルーピン先生が悲しそうな眼をして聞いた。

「伯母が話してくれました…と言うか、怒りの余り叫びました、シリウス・ブラックがポッター家の所在を忠誠の術で守り始めた直後にポッター家が…僕の家が襲われたって…そして、元々父とブラックは親友だったと知って…」

「そうか…だが、シリウス・ブラックは裁判を受けていない…故になぜ奴がジェームズを裏切ったのか、明らかではないんだ…」

「「えっ…?」」

「世の中には、覆し難い事実と罪にふさわしい罰があるのかもしれない…だが、私は…奴がなぜ裏切ったのか…それを知りたい…そう願ってしまうんだ…それが永遠に失われてしまうのは…悲しい」

「ちょっと待ってください、アズカバンでの終身刑が裁判なし!?即決裁判ですらなく!?」

私はその事実に叫んでいた。

「ヴォルデモート卿の没落でその配下たちが大勢捕縛されたからね…そう言う時代だった…さあ、もう夜も遅い…二人とも、帰りなさい」

会話を打ち切ったルーピン先生は会話に応じてくれる雰囲気ではなく、私達はバタービールのお礼を言ってグリフィンドール塔に戻った。

するとそこには合言葉を書いた紙をなくしたと入り口の守り絵画であるカドガン卿に訴えるネビルがいた。

私達は苦笑して合言葉…オヅボディキンズ…を唱えてネビルを通してやった。

「お帰り、ハリー、アイリス」

課題を片付けていたロンに近づくと、彼はそう言って伸びをした。

「やっと終わった…っと、課題を片付けてくるね、スキャバーズにネズミ栄養ドリンクを飲ませないといけないし」

そう言ってロンは課題と教科書類を抱えて男子寮への階段を上がっていった。

「座っても良いかしら?」

私はハーマイオニーに問うた。

「もちろんいいわよ…ハリーもね」

私達はハーマイオニーの対面に座り、ハーマイオニーは教科書類とレポートを脇に寄せた。

「ねえ…ハーマイオニー…いくつか教科を止めるかする気はない?これだけの課題にバックビークの弁護までしていては身体を壊すわ」

「そんな事できない!」

ハーマイオニーは私があり得ない事を云ったかのように反応した。

「確かに、ダンブルドア先生かマクゴナガル先生かは知らないけれど、色々手配して全授業に出られる様にしてくれた恩義に報いたいのはわかるよ?

でも、それならもう少し余計に使ってでも余裕を作ってもいいんじゃないかな…課題をする時間とか、休憩時間を取るとか」

「えっ…あ、貴方達、どうして…」

ハーマイオニーがそう言いかけた時、押し殺した叫び声が男子寮の階段を伝って響いてきた。

談話室に残っていた生徒たちは一斉にしんとなり、石になったように皆の視線がそちらを剥いた。

やがてそこからはロンが飛び出してきた…ベッドのシーツを引きずりながら。

「見ろよ!」

ロンが私達の座っているテーブルの所まで来ると叫んだ。

「ロン、どうしたの?」

「スキャバーズが!見ろ!スキャバーズが!」

私達が首をかしげているとロンはシーツの一点を示すようにテーブルに広げた。

そこには血の様なものがついていた。

「血だ!」

「スキャバーズがいなくなった!それで、床になにがあったかわかるか?」

「い、いいえ」

ハーマイオニーの声は震えていた。

ロンはハーマイオニーの目の前に広げられた古代ルーン語の翻訳文の上に何かを投げつけた…それはクルックシャンクスの毛に見える数本の長いオレンジ色の猫の毛だった。

 

ハーマイオニーとロンが言い争いを始めた横で、私とハリーは小声でいつぞやの様に、私はハーマイオニーの、ハリーはロンの味方をすると決めた。

まあ、状況証拠としてクルックシャンクス犯人説が限りなくありえそうな説ではあったが。

が、ハーマイオニーとクルックシャンクスの弁護と来たらバックビークの弁護並に難しいように思えた。

ロンが『忙しいのはわかるけれど、自分のペット位ちゃんと見張っといてくれよ!』という旨の発言をしている内に歩み寄ってくれればいいのに、ロンを挑発しているのか疑わしいような発言…『男子寮の全部のベッドの下を探したら』等というモノだから決裂が深くなるのである。

というか、私が『クルックシャンクスを信じたいのはわかるけれど、言い方ってものがある』という旨を告げただけでヒステリーを起こしかけた位、ハーマイオニーは切羽詰まっていた。

翌朝、私とハリーはこの件が長引く事を察してため息をついた。

しかし、ハリーはこれだけに関わっているわけにはいかなかった。

週末にクィディッチの試合が迫っていたからである。

新しい問題を抱えて頭がおかしくなりそうであろうハーマイオニーと何とか金曜日を過ごした私…『逆転時計』を使っているであろう事は予想がついて居る旨は告げた。それで、使用の隠蔽の共犯位してあげるから、と協力を申し入れた…は土曜日もハーマイオニーと共にいた。

ロンと…つまりハリーともかち合わない様に朝食を済ませて、スタンドに移動した私達は読書をしながら試合が始まるのを待っていた。

試合の途中経過は省くが…グリフィンドールが大差で勝利した。試合中に現れたディメンター…もどきにハリーは守護霊呪文を浴びせながらスニッチをキャッチしたのだ。

それに私とハーマイオニーは抱き合って喜んだ。その日の午後のグリフィンドール塔はパーティー状態だった…ハーマイオニーと私以外は。昼食を大広間でとった後、私達は図書室で課題を処理しながら夕食までの時間を過ごした。夕食に現れた数少ないグリフィンドール生であった私達は食膳に二人で乾杯した。

「「グリフィンドールの勝利に」」

そして、夕食を済ませて寮に戻った後、談話室の端っこの方で読書をしながら皆のお祝いムードを聞いていた。

「ねえ、二人とも試合には来てくれたの?」

「行きましたとも」

「行ったわよ、もちろん」

「それに、私たちが勝ってとっても嬉しいし、あなたはとてもよくやったわ。でも、私、これを月曜までに読まないといけないの」

「ええっと、ハーマイオニー、アイリス、こっちに来て一緒に何か食べないかい?」

「むりよ、ハリー。後、422ページも残っているもの!」

ハーマイオニーは少しヒステリー気味に言った。

「どっちにしろ…あの人が私に来て欲しくないでしょ」

そう言って、ハーマイオニーはロンをちらりと見た。

「スキャバーズが食われちゃってなければなければなぁ。ハエ型ヌガーがもらえたのに。あいつ、こいつ、これが好物だった」

ハーマイオニーはわっと泣き出し、本を抱えて女子寮に向けて駆け出して行った。

後をハリーに任せて私はハーマイオニーを追った。

ハーマイオニーは自身のベッドで泣いていた。

「あーえっと、ハーマイオニー?」

「私だって、クルックシャンクスがスキャバーズを食べちゃった可能性が高い事くらい、わかっているわよ!だからってあんな風に言わないでもいいじゃない!」

「それは…そうよね…」

暫くハーマイオニーからの愚痴を聞いていたが少ししたら落ち着いてきたハーマイオニーは読書に戻った。私も読書に戻り、普通に眠りについた。

その夜、騒ぎが起きた。男子寮の、ハリーやロンのいる部屋にシリウス・ブラックが侵入し、ロンが襲われたという事だった。その騒ぎで私は目を覚ました。

目を覚まして事情を詳細に聞くと、ネビルが一週間分の合言葉をなくしたのが原因で、それを手に入れたシリウス・ブラックがグリフィンドール塔に侵入できた、という事であった。

結果、カドガン卿はクビになり、ネビルはホグズミード休暇の権利は剥奪され、合言葉を教えてはならないとされ、吠えメールを受け取った。

まあ、そんな感じで気づけば私の誕生日は慌ただしく終わっていった。

結局、バックビークの弁護は繰り返された弁論準備会の結果、バックビークの弁護は事前に資料を配布した上でハグリッドに読み上げる感じで弁護してもらう方向で準備した。

弁論方針自体はドラコ・マルフォイの行為が自傷行為に等しかった、という理屈を捏ね上げた上で正しく飼育されたら危険ではない事を強調してブリーダーに預ける方向でハグリッドを納得させた。公正な審理がなされれば、という前提ではあるが、バックビークの助命自体は6割方叶うと信じている。うん、これだけやっても6割である。

「今度の週末はホグズミードだ」

談話室で課題とバックビークの弁論の最後の校正をしていたら、ハグリッドの小屋から帰ってきたロンとハリーが掲示を見てロンがいった。

「どうする?」

「そうだな。今回は留守番しているよ…忍び地図を研究材料にして遊んでいるよ」

「そうね、それが良いと思うわ」

ハーマイオニーが会話に入り込んだ。

「ハーマイオニー!えっとその…」

ロンが言いよどんだ。

「…えっと…その…」

ハーマイオニーも言葉が出ない。

「その…スキャバーズの事は残念だったわ…えっと…私はクルックシャンクスを信じている。でもそう思われるのは仕方ない事だと思うわ」

「うん…僕は君の猫がスキャバーズを食べちゃったんだと思っている、でも君が自分の猫を信じたい気持ちもわかる…うん」

その晩の会話はそこで終わった。しかし、確かに一歩ずつ、ハーマイオニーとロンは踏み込んだ。

 

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