例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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満月の夜に

楽しいクィディッチシーズンが終わったら今度は試験シーズンである。

ハーマイオニーに対する支援もしつつ、(占い学以外は)いつも通り、上の下位の成績程度の成績をとれただろう。占い学?アレは完全にセンスと信心が大事な教科なので…まあ、合格はしたと思う。

そして…バックビークの再審理は失敗した。透明マントでハグリッドの元を訪ねよう、という事になったが、透明マントの定員の都合、4人全員ではいけない。で、私は城に残る事になった。

しかし、日没を過ぎても皆は戻ってこなかった…暇を持て余した私はスネイプ教授を訪ねる事にした。

そこでスネイプ教授は何かの薬を用意していた。

「…ソレ、脱狼薬ですよね?ルーピン先生の」

「左様…あの危険生物は今夜の分の薬を飲みに来ていないので持って行ってやろうという訳だ…エヴァンズも同行するかね?」

それは、スネイプ教授の嫌がらせであるように思えたが、同行する事にした。

しかし、ルーピン先生のオフィスは空であった。

「奴は何処に…むっ?」

机の上には忍び地図が正体を現わしたまま広げられていた。

そして、ルーピン先生が暴れ柳の秘密通路からホグズミード村に移動しているのが見られた。

「…アイリス、お前は寮に戻りなさい」

「いいえ、私も行きます、父さん」

「議論している時間はないか…だが、危険だぞ」

「はい、わかっています」

という事で私と父は暴れ柳の元に向かった。その傍には透明マントが置かれていた。

「これは、ハリーの?」

「…はい、恐らく…ハグリッドを訪ねてから戻ってきていません」

「急ぐぞ」

父は杖を振って暴れ柳に何かをして静かにさせた。

「今のは?」

「ああ、暴れ柳は特定のコブを刺激すると静かになる…急ぐぞ」

長い道を進むと古い屋敷の様な場所に出た。

「叫び屋敷…奴め、まさか古巣にシリウス・ブラックをかくまっていたとは」

階上から話声が聞こえる…

「アイリス、コレをかぶって離れて着いてきなさい。私に何かあれば城に戻ってダンブルドアに見聞きしたことを直ちに報告する様に」

「うん、わかった」

足音を立てない様に慎重に歩を進める…そして…

「これは…これはいったいどういう事だ!ペティグリュー!なぜここにいる!いや、なぜ貴様が生きている!」

父が踏み込んだ部屋の中にはハリー、ハーマイオニー、ロン、ルーピン先生、シリウス・ブラックの他にネズミのような男がいた。

「裏切り者はシリウス・ブラックじゃなかったんです!僕の両親の…ポッター家の秘密の守り人はピーター・ペティグリューだったんです!」

ハリーが叫んだ。

「なん…だと…いや…しかし…ピーター、一応聞いておこう。なぜ、貴様が生きている」

「いや、えっと、その…」

「よろしい、レジリメンス」

父が読心術を行使した。そして…

「…アバダ・ケダブラ」

「エイビス!」

父の行使した『死の呪文』をハリーがエイビスで鳥を出して邪魔をした。

「ハリー!何故邪魔をする!」

「スネイプ先生!いえ、セブルス叔父さん!こいつの為に手を汚さないでください!こいつは偽りの名誉を奪われてアズカバンに収監されるべきです、あなた達が手を汚す必要はない!」

「…よかろう…そのようにしよう…で、だ。ブラック、貴様の狙いはこいつか?その為に今更脱走して来たのか?違法アニメーガスの薄汚れた黒犬よ」

「っ!なぜそれを…いや、ピーターの記憶を読んだ時か…チッ」

「あの…色々と分からない事があるんですが…と言うか、セブルス『叔父さん』…?」

と、ハーマイオニーがおずおずと手を挙げた。

「あーえっと…スネイプ先生はアイリスの父親なんだ」

「何!?おまえが父親!?」

「それも、アイリス・エヴァンズの!?えっ…ペチュニアとくっついたのかい!?」

「何!?」

シリウス・ブラックとルーピン先生が驚愕する。

「…その話は後だ。ピーター・ペティグリューを連れ出してその罪を明らかにせねば…行くぞ」

そう言って父はピーターを引っ立ててホグワーツに戻ろうとする。

私は色々と疑問点を話し合う一行の後ろを透明マントに包まって着いて行った。

そして…ハリーとシリウス・ブラックの会話が、シリウスがハリーの名付け親である事に至った。

「誰かに聞いたかもしれないが…私は君の名付け親でもあるんだよ」

「ええ、知っています」

「つまり…君の両親が、私を君の後見人に決めたのだ。もし自分たちの身に何かあればと…もちろん、君が祖父母とペチュニアと従姉…アイリスと言ったか…と幸せに暮らしている事は知っているが…その…考えてくれないか?私の汚名が晴れたら…もし君が…別の家族が欲しいと思うなら…」

「ええっと、僕は今の家族に満足しています」

「そう…だよな」

シリウス・ブラックが残念そうに言った。

「でも…貴方とも家族になれるならば嬉しいです。セブルス叔父さんもペチュニア伯母さんも忙しい…と言うかペチュニア伯母さんは公的にはシングルマザーで、ほとんど家に帰ってこないし、セブルス叔父さんは基本的に家には来ないので」

「そうなのか!?」

「ええ、詳しい理由は聞いていないですが」

「おい、セブルス!どういうことだ!」

「…今、話す事ではない。というか、貴様に関係ある事ではない」

「いや、私はお前の甥御の後見人だ、関係ある」

等という会話になっていったが。

しかし、そんな幸せな雰囲気は見落としていた事実によって吹き飛んだ。

校庭に出た後、ルーピン先生が満月により変身したのだ。そして、その混乱に乗じてピーター・ペティグリューが逃走した。

「くっ…ブラック!貴様はペティグリューを追え!奴がいなければ貴様の汚名は晴れん!」

「し、しかしお前達の証言があれば…」

「人狼のルーピンと元死喰い人の私、それに子供たちの証言だけで魔法省が公式見解をひっくり返すわけがなかろう!いいから行け!真の裏切り者を逃がすな!そうそう、貴様の裏切りの汚名が晴れた後できっちり違法アニメ―ガスの咎を告発してやるからな!」

「…了解した、リーマスに噛まれてリーマスの傷になるなよ!」

シリウス・ブラックはそう言って犬に変身して闇の中に消えていった。

「フン!言われずとも!ハリー!グレンジャー!ウィーズリーを連れて城に逃げろ!足手まといだ!吾輩はルーピンを森に誘導する!」

「で、でも」

「いいから行け!」

そうして、ハリー達も去っていった。

「アイリス!まだいるならばお前も逃げろ、そしてダンブルドアに事態を報告してくれ!」

「わかったわ」

そうして私もこの場を去る事とした。私は透明マントをかぶったまま、飛翔の指輪をはめて空に舞い、城に向かって飛んだ。

そして玄関ホール前に降り立った時、ダンブルドア先生が城から飛び出してきた。

「ダンブルドア先生!父が!スネイプ先生が一人で人狼になったルーピン先生を森に誘導しています!あと、シリウス・ブラックは裏切り者ではありません!ピーター・ペティグリューが裏切り者です!」

透明マントを脱ぎ棄てて叫んだ。

「…わしは急いでディメンター達の侵入に対処せねばならん…が、君の話も聞かねばならん様じゃな!玄関ホールで待っていておくれ、できるだけすぐに戻る!無論、スネイプ先生も助ける!」

そう言って駆けていったダンブルドア先生はしばらくして戻ってきた。

気絶した一行…ハリー、ハーマイオニー、ロン、そしてシリウス・ブラック…を浮かせ、出血した父を連れて。

「父さん!?」

「しくじった。急いでペチュニアに例の薬の治験対象が出来たと知らせてくれ…それで伝わる」

「すまないが、わしは皆を医務室に連れていかねばならん。ペチュニアに急ぎフクロウ便を出して欲しい」

「はい、わかりました」

という事で私は急ぎ城のフクロウ小屋に行き、母に宛ててフクロウ便を2通続けて出した。

1通目では父が人狼にかまれた様子で、例の薬の治験対象が出来たと言っている事を走り書きして急いで出した。その後、今晩見聞きした事を簡単にまとめて追送した。

そして医務室に向かうと父が応急処置を受け終わり、聖マンゴ病院に向けて煙突飛行ネットワークで移送される所だった。

「父さん!」

「アイリス。先日、ペチュニアが人狼症の発症阻止薬を開発した所だ。それが効けば人狼にならずに済む…安心しろとは言えんがそう悲観するほどでもない」

父はそう言って私の頭を撫で、炎の向こうに消えていった。

「さて、アイリス…君は寮に戻って眠ると良い」

「ハイ…えっと、その、シリウス・ブラックはどうなりました?」

「残念ながら、現状、無罪を証明する事は難しい…よって、彼には逃亡生活に戻ってもらう事にした」

「そう…ですか。これからその手配をされるのですね」

「いいや、もう終わっておるよ…まあ、ファッジ大臣がおられる中、おおっぴらにやるわけにはいかなかったがの…そうじゃのう?ハリー?ハーマイオニー?」

そう言ってダンブルドアはベッドで布団をひっかぶってこちらを見ていた二人に微笑んだ。

2人が何かをしたのだろう…それは後日聞く事にして、私は寮に戻る事にした。

そして、翌朝の日刊予言者新聞のシリウス・ブラックとバックビークの逃亡記事で私はなにがあったのかを悟った。ハーマイオニーの逆転時計を使ってハリーとハーマイオニーがバックビークを助けてシリウス・ブラックを逃がしたのだろう、と。

そして、その日の朝の内に父の、スネイプ教授の不在が知れ渡った…聖マンゴ病院に入院しているという事も…発表はされていないがホグワーツ中の噂になっていた。

加えて、ルーピン先生が辞任したことも朝食の席で発表された。

私は医務室のハリー達を訪ね、昨夜、それぞれがした事をすり合わせた。

ハリー達は昼食を医務室でとった後に退院した。

その足で私達はルーピン先生…いや、ルーピン氏を訪ねて色々と話をして、別れを惜しんだ。

ルーピン氏は父を噛んだ事で処刑されるかもしれないその運命さえ受け入れている様子であった。

ルーピン氏がオフィスを去るのをダンブルドア先生と見送った後に、私たち4人はホグズミード村に行かずに校庭で過ごした。

翌朝、母からのフクロウ便が届いた。

父の治療の初動は上手くいっており、経過観察と服薬の為、次の満月迄は入院が必要だが、どういった存在になるかはともかく、満月の度に人狼になる様な事はないはずである、という事である。最も、父はその薬の副作用で相当苦しんでいるようだが。

それから、学期が終わるまでの1週間の間、私はあの夜に有体守護霊を出せるようになった…逆転時計で逆行した際にそれを使って自分たち自身を助けたらしい…ハリーに教わって守護霊呪文の練習を行って、辛うじて有体守護霊呪文を行使できるようになっていた。

その苦労は、城内に飛び交う無責任な様々なうわさから私を遠ざけてくれた。

 

試験の成績が発表され…結果は予想通りだった…学年末の宴が行われて私達の3年生生活が終わった。

寮杯はクィディッチの優勢もあって、グリフィンドールが三年連続獲得できた。

 

帰りのホグワーツ特急内で、ハーマイオニーは驚愕の…ある意味妥当な決断を私達に告げた。

既に放棄した占い学と共にマグル学をやめ、逆転時計を返した、という事である。

午後の遅い時間になって、フクロウが私達のコンパートメントにやってきた。

それはブラック氏からハリーへのフクロウ便だった。

手紙には、無事に隠れ家を見つけてバックビークと共に隠れている事、ホグワーツから離れた所でマグルに目撃される事でホグワーツの警戒を解く予定である事、ファイアボルトは13回分の誕生日プレゼントとして贈ったがびっくりさせてしまってすまなかったという謝罪、そして、スキャバーズがいなくなった償いにこのフクロウをロンに飼ってほしい、という事が書かれていた。

ロンは、その小さなフクロウをクルックシャンクスに見せてアニメーガスでない判定を貰ってから飼う事にした。

 

まだ、正式には警戒態勢が解かれていない為、クリスマス休暇の時の様に漏れ鍋まで護送された後に母の姿現しで私たちはコークワースの家に帰宅した。

漏れ鍋への移動中、ロンが私達をクィディッチのワールドカップに誘ってくれた。

そして…自宅で祖母のディナーにありつく前に、私とハリーは父の病状を聞いた。

新しく開発され、父に投与されている薬は、人狼症が体になじむ前…具体的な時間は不明だが…に飲み始めると人狼症の原因となる魔法的要素を体が拒絶し、排出するのを助ける薬であるとの事である。その過程で非常な苦しみを伴うが、理論上の最良の結果を得られれば、人狼症が完治する上に、人狼症に対する免疫もできるらしい。が、既に体に人狼症が馴染んだヒトに投与すると激しい拒絶反応のみを与える毒薬となる薬でもあるらしい。

そんな薬を一週間強、飲み続けている父は相応に衰弱しているが、人狼症の原因となる魔法的要素は順調に排除できているとの事であった。

それから1週間くらいかけて…父の治療の為、時間をとられていたので…母は私とハリーの話を聞きとった。

ハリーがトレローニー先生の予言を聞いた段では本当なのかと何度も確認をとっていた。

そして…裏切り者がピーター・ペティグリューだったという事も母は受け入れた。

加えて、ハリーが持ち帰った忍び地図を見て、『懐かしい物』を見た、と言った。

「これ、母さんも知っているの?」

「ああ、それは『マローダーズ』…ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、ピーター・ペティグリューの4人…と私の合作だ。私はアッシュという名で署名した」

「でも…父さん達って闇の魔術に関する事を毛嫌いしていたんじゃ…ペチュニア伯母さんって、学生時代から闇の魔術にどっぷりだったんでしょう?」

「まあ、それはそうだ。だが、闇の魔術から身を守るためにそれの知識自体は求めていた…教員は毎年変わるしあまり質のいい先生は少なかったからね。それで、リリー経由で私に声がかかったんだよ…で、その縁で作り上げた当時の私達の傑作だ」

母はそう言って懐かしむ様に遠くを見た。

「あ、セブルスには秘密だよ?私がアッシュという名で商人まがいの事をしていたのは知っているからできれば見せないで欲しい」

「手遅れ。力押しで挑んで侮辱されていたから」

「それは…奴らしくないな?」

「叔父さんは、正攻法は僕達の権利だから少し力押ししてやろう、とか言って…」

「成程…」

母はあきれたような様子でそう言った。

 

その後、1週間ほどして、シリウス・ブラックが国外逃亡した、というニュースが飛び込んできた。さらに数日して、英国魔法省は我が家周辺に敷いていた特別監視網とハリーへの護衛の派遣を撤収させた。

コレで私達は闇の魔術関連の研究を再開する事ができる様になった。

母が念のため『掃除』した後に『犠牲の石』の試作品を試した。

実験用のネズミに犠牲の石を取り付けた板を括りつけて母がアバダ・ケダブラをかけた。

殆どのネズミはアバダ・ケダブラをかけられたにもかかわらず、生きていた。

が、同時に魂が欠損している様子で異常行動が見られる個体も多かった。

「…ダメね、呪文の威力は弱まっているけれど、魂の保護が不十分みたい」

「だが、これは大きな進歩だよ、アイリス」

「その通り。ちょっと屠畜場に忍び込んで魂石の量産態勢は整えてあるから、犠牲にする魂の量を増やせないか試してみよう」

という事で私達は嬉々として実験を重ね…ハリーの誕生日を迎える頃には動物実験レベルでは十分に機能する『死の呪文』への対抗魔法具、『犠牲の石』が完成した。

動物実験の結果、身に着けているだけでも一定程度の効果は発揮されるという事実も発覚した。

まあ、安全を期すならば盾の呪文との同期か物理盾に装飾しておいてそれで防ぐのが好ましいが。

で、問題はこの発明をどうするか、である。

『死喰い人の主』復活の予言を信じるのであれば、早急に量産体制を整える事が好ましいのだが…

「アイリス、『犠牲の石』についてだが…私はマグルの屠畜場に出資して正当な方法で魂石の量産体制を整えて『犠牲の石』に加工する事業を考えている。加えて、犠牲の石の製造法も特許公開してライセンス料を取る…当然、それらの利益はお前達にも配分する。もし、二人がそれでも良いというならば、任せてもらっても良いかな?」

「アイリスの発明だからアイリスの意思次第で。僕はペチュニア伯母さんの案に不満はない」

「念のため、先行試作品を親しい人に配ってはおきたいけれど、原則としてはそれでいいわよ」

「承知した。では魂石が確保でき次第、ネックレスか何かに加工して配ろう」

という事になり、犠牲の石については一度、私の手を離れる事になった。

無論暇があれば改良研究などをする予定ではあるが。

 

 

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