翌日曜日の朝、私が目を覚ますとハーマイオニーのベッドは空っぽだった。時計を見るといつもの起床時間から見て少し寝坊したようだ。
のんびりと身支度を整えて朝食に向かう途中、寮に戻るロンと出会った。
「おはよう、ロン」
「おはよう、アイリス…ええっと、ハリーは一緒じゃないの?」
「一緒ではないわ。特に予定も決めていなかったし…何か用事?」
「アーそう言う訳じゃないけれど…アイリス、本当にハリーは立候補していないよね?」
ロンが遠慮がちに問うた。
「私の知りうる限りは、立候補していないわね。ダンブルドア先生がハリーの名前を読み上げた時は、完全に青天の霹靂、って顔していたわ」
「だよねぇ…はぁ…僕、ハリーを疑っているんだ…そりゃあ、頭ではハリーがそんなことするわけない、って理解はしているけれど、もしかして、って思い始めると止まらなくて」
「なるほど?理解はしているけれど、納得はできていない、みたいな感じ?」
「そんな感じかな…うん。だから、ハリーと顔を合わせると感情的になっちゃって…ハリーのいう事を信じられなくて…昨日、ちょっと口喧嘩をしちゃったんだ。だから、今ちょっとハリーと顔を合わせにくくって…」
「そう…言っておくけれど、内心どうあれ、ハリーは自分が悪くないと思っている時は歩み寄ってこないと思うわよ。そう言うのは苦手だもの…仲直りしたいならロンから行くか、なにかハリーから歩み寄る機会が訪れるかしないと」
ハリーの性格からして、自分が悪くないと思っている時は譲歩しない。あるいは譲歩してでも仲直りしたいと内心思っていても、そうするのは苦手である。
「うん…わかっている。ありがとう、アイリス」
そう言ってロンは寮に向かって歩いて行った。わたしも、朝食を取りに大広間に向かった。
朝食後、図書室に行って本の借り換えをした後、私は談話室で読書をしていた。
すると、談話室が騒がしくなった…顔を上げるとハリーが帰ってきていた。
「アイリス、ちょっといいかい?」
「ええ、もちろん」
私は本を鞄にしまって、ハリーの後に続いて、談話室を出た。
ハリーが向かった先は図書室であった。そこにはハーマイオニーが本の山を作って待っていた。
本のタイトルから察するに、対ドラゴン戦の傾向と対策会議、と言った所か。
「だれが僕を三大魔法学校対抗試合に出場させようとしたのかは置いておいて、第一の課題対策をするべきだと思ってね。まずはペチュニア伯母さんの情報通り第一の課題がドラゴンだと仮定して、敵について知ろう」
ハリーがそう言って席に着いた。
軽く文献調査を行い、まとめた結果はドラゴンの種類ごとに多少の差異は有れど、ドラゴンの皮と鱗を呪文で貫くことはほぼ不可能、という高い防御力を有している一方、攻撃力という面では炎を吐き、強力な肉体から繰り出される爪と牙の攻撃をしてくるという強力であるが手に負えなくはない程度の攻撃力である事が再確認された。
「うーん…僕が、というか学生が使える呪文の範囲ではまともにドラゴンを攻撃するのは不可能、但し、その攻撃に対しては迎撃・防御の余地はあるという感じかな」
「後、ドラゴンに瞬膜があるかにもよるけれど、多分、目と口の中は相対的に防御力が劣ると推定されるわね…そこは皮に覆われていないもの」
「と、なるとローブを強化して炎と物理攻撃を防げるようにしておいて、目や口内を狙う戦術を取れば大分は戦えるかしら?」
「そうだね、杖のみを武器として、とは言われているけれど、ローブに防御魔法などをあらかじめ施しておいてはいけない、とは言われていないからそれはやっておくよ」
「でも、無防備ではないわ…ドラゴン自身の魔力と肉体の強靭さで失神呪文なんかは防がれるかも」
等と議論を重ねていった。
その結果、ある程度の傾向と対策はつかめてきた…が、肝心のハリーの長所を生かす方策はみつけられないでいた。
繰り返しになるが、ハリーの得意分野は飛行術(箒・自力飛行双方)と魔法薬学や錬金術…いずれも事前準備がモノをいう分野である。
唯一自力での飛行は補助具無しでも浮く位はできるがノロマでドラゴンの餌食になること間違いなしである。
最悪、バレたら減点される覚悟で飛行術の補助具の指輪を持ち込む方向で幾つかの戦術案を組んだ。
第一回ドラゴン対策会議はこのようにおわり、その後は夕食までハリーの戦闘用ローブの設計について相談する時間となった。
翌日からのハリーの環境はあまりよろしくなかった。
グリフィンドール生はハリーを不当に英雄視するし、他寮の生徒たちはハリーを汚い手段で代表選手になったとみなしていたからである。
どちらも、ハリーの精神状態を悪化させ、イライラがハリーの集中力を削いでいった。
おかげで、フリットウィック先生から呼び寄せ呪文習得について宿題が出る事になった。ハリーとネビルだけに。
その日の午後の授業は2コマ続きで魔法薬学だった。
普段なら楽しい魔法薬学の時間も、スリザリン生が寄ってたかっていつも以上に嫌味を言ってくるのでハリーにとってはストレス源と化していた。
その授業の前、トラブルが起きた。
その発端はスリザリン生のつけていた大きなバッチだった。
それはディゴリー先輩をホグワーツの真のチャンピオンとして応援する物だったが、さらに仕掛けがあった。
バッチを押すと文字が『汚いぞ、ポッター』に切り替わる仕掛けが付いていた。
ハリーを取り囲む様に煌めく赤いハリーを侮辱するバッチはハリーの怒りを買った。
ハーマイオニーがおしゃれね、と嫌味を返したが首謀者らしいマルフォイはバッチを差し出して一つ上げようか?と返した。
そこまではまあよかった。しかし、マルフォイはこう続けた。
「たくさんあるんだ。だけど、僕の手にいま触らないでくれ。手を洗ったばかりなんだ。『穢れた血』でべっとりにされたくないんだよ」
それでハリーの我慢の限界を超えた。ハリーは杖を抜き、マルフォイに向けて威嚇した…そう言う意味ではまだハリーは冷静だった。抜き打ちしなかった程度には。
その様子にほとんどの生徒が慌てて距離を取り、遠巻きにこちらを見ていた。
「ハリー!」
ハーマイオニーはハリーを止めようとしたが、マルフォイはさらに挑発した。
「やれよ、ポッター」
そう言いながらマルフォイも杖を抜き、落ち着き払って構えた。
「ここには、庇ってくれるムーディもいないぞーやれるものならやってみろー」
それがトドメだった。二人の間に火花が散った。
「アイリス、下がって」
「…殺しちゃだめよ」
私はハリーに促されてそう囁いてからハリーから離れた。
「デンソージオ!歯呪い!」
マルフォイが叫ぶと同時にハリーは失神呪文らしい呪文を2連射した後、盾の呪文を行使した。すべて無言で。
マルフォイの呪文は空中でハリーの一発目の呪文とぶつかり、干渉して互いに明後日の方向に飛んでいった。そしてハリーの二発目の失神呪文がマルフォイに直撃した。
一方、明後日の方向に飛んでいった呪文はハリーの失神呪文はゴイルに、マルフォイの歯呪いはハーマイオニーに直撃した。
圧倒的な結果に観衆が息をのむ…と、そこに低い、冷え冷えとした声が響いた。
「この騒ぎは何事だ?」
スネイプ教授の登場である。
スリザリン生が口々に説明する中、スネイプ教授はハリーを見た。
「マルフォイが、またハーマイオニーを穢れた血と侮辱しました。それで決闘になりました。結果は見てのとおりです」
ハリーが淡々と述べ、スネイプ教授が苦虫を噛みつぶした顔でマルフォイとゴイルを蘇生させている間に、
私はハーマイオニーに近寄り、呪いを中和した…が、下あごに迫るまで伸びた歯は元には戻らなかった。
「グラップ、念のため、二人を医務室に連れていきなさい。ほかに呪文に当たったものは?」
「マルフォイの呪いがハーマイオニーに当たりました!」
ロンが叫んだ。
スネイプ教授はつかつかとこちらに向かって歩み寄って来てハーマイオニーの歯を観察した。
「…医務室へ行きなさい。ほかのものは教室へはいりたまえ、授業を始める」
スネイプ教授がそう宣言したので、生徒たちはそれに従って教室に入り、授業が始まった。
解毒剤の調合実習の途中、グリフィンドール生のコリン・クリービーが教室の扉をノックして入ってきて、教壇まで歩いて行った。
「なんだ?」
スネイプ教授が問うとコリンは使命に燃えた顔で言った。
「先生、僕、ハリー・ポッターを上に連れてくるように言われました」
スネイプ教授が冷たい表情でコリンを見下ろして問うた。
「だれから?用件は?」
「バグマンさんです。バグマンさんが呼んでいます…代表選手を全員集めている様です」
「…いつまでに?ポッターは今、授業中だ」
「ええっと、できるだけ早く、です。先生」
スネイプ教授は一瞬考えた後、宣言した。
「よかろう。ポッター、聞いていたな?調合中の薬を片付け、荷物を纏めて行きなさい」
「はい、スネイプ教授」
ハリーはそう返して調合中の解毒薬を手早く片付けると、待っていたコリンと共に教室を出て行った。
「さて諸君、授業を続けよう…煎じている手を止めて焦がした愚か者はいないと信ずるが、もしどうしようもなく焦がしたものがいれば申し出る様に」
スネイプ教授がそう言うと、ネビルが少ししておずおずと手を上げた。
授業が終わり、医務室を訪ねるとハーマイオニーが歯の治療中だった。
マダム・ポンフリーにもう少しかかると言われて私は先に夕食に向かった。
大広間前でちょうど私はハリーと出くわした。
「やあ、アイリス」
「バグマンさんの用事、今までかかったの?」
「あーバグマンさんの用事…杖調べはすぐ終わったんだけれどもね?日刊予言者新聞の写真撮影に時間がかかってね」
ハリーと私はグリフィンドールのテーブルの隅で、二人で食事をしながら、ハリーの話を聞いた。
オリバンダー老が来ていて、代表選手の杖の調子を調べたという事である。ただ、気がかりだったのは日刊予言者新聞の記者、リータ・スキーターがハリーに関してでっち上げの記事を書こうとしているらしい点であった。
私は母にハリーから聞いた内容…自動筆記羽ペンでの事実に反する記述…を纏めてフクロウを飛ばした。
翌々日、母から私とハリー宛に、リータ・スキーターはゴシップ系の人気記者でかつ信ぴょう性が怪しい記事を書くタイプだとフクロウが返ってきた。今回は仕方ないが次からは警戒しろ、と。
しかし、その助言は遅かった。翌日の日刊予言者新聞がハリー特集とでもいうべき内容であったからだ。
その事を認識した瞬間、ハリーはわなわなと怒りに震え、新聞をぐしゃぐしゃにして灰にしてしまった。朝食の席で。
そのことはちょっとした話題になり、少なくとも、グリフィンドール生はハリーの前で記事について話題にする事は無かった。他寮の生徒は遠慮なく野次ってきたが。
「…呼び寄せ呪文ってどれくらいの距離で使えるのかしら」
ハリーの宿題をハーマイオニーと共に手伝っている際、私はふと浮かんだ疑問を口にした。
「理論上は無限大、でも実用としては…ここからなら城門くらいまでかしら?それがどうかした?」
ハーマイオニーが私の疑問に答えた。
「課題にこの呪文を使えないかな、って。箒や魔法薬の持ち込みが禁止されているなら課題が始まってから呼び寄せ呪文で箒や魔法薬を呼び寄せるのはどうかなって」
「それだ!」
ハリーが叫んだ。
「それだよ、アイリス!その手が使えれば戦術の幅が一気に広がる…極論、箒に乗ってドラゴンの口に眠り薬か毒薬を放り込めばそれでおしまいだ!最悪、ドラゴンが課題じゃなくてもファイアボルトがあれば大抵の敵は何とかなる!」
ハリーは一気にやる気を出して、その日の内に呼び寄せ呪文を習得した。
ハリーは準備に没頭する事で課題に対する恐怖心を誤魔化そうとしているようだった。
ハリーは一着のローブに対火・対物理防御力を高めるための処置を施しながら、いくつもの強力な魔法薬を煎じ、さらに呼び寄せ呪文の練度上昇に務めていた。
そうこうしている内に、11月24日…第一課題が実施される日が近づいてきた。
ハリーはシリウスおじさん…ハリーが代表選手にされた件で帰国している…との密会を11月22日の午前1時にセッティングしていた。
丁度その日、11月21日はホグズミード休暇が与えられていた。
気晴らしに私達は出かける事を選んだが、ハリーは頑なに透明マントを着ていくと主張した。
そして、実際その様にした。
しかし、ハーマイオニーはそのことが不満である様子だった。
『三本の箒』でバタービールを飲んでいるとハグリッドとムーディ先生を見つけた。
2人はこちらに気付かずに出て行きかけたが、引き返してきて声をかけてきた。
そうして、ハリーに、透明マントをかぶっているハリーにも声をかけた。
どうやらムーディ先生の見通す目は透明マントも無効化できるようだ。
そうして、ハグリッドはハリーに今晩の深夜0時に小屋に来るように言ってさって行った。
ダブル・ブッキングしかけたが、ハリーは行った方がよいと判断して深夜の散歩に出かけた。
私は談話室でハリーを待ち、万一シリウスおじさんとの会合に間に合わない場合の事情説明役を引き受けた。
だれもいなくなった談話室で一人過ごしていると時間ギリギリにハリーは帰って来た。
「時間ギリギリね、ハリー」
「でも間に合った…シリウスおじさんは?」
「今着た所だよ」
声のした暖炉を向くとシリウスおじさんの生首が魔法火にうかんでいた。
「…じゃあ私は寝るから…バレないようにね」
私はそう告げて、ハリーとシリウスおじさんの密会現場を後にした。
翌朝、ハーマイオニーとジニーの3人で朝食を取っているとハリーがやってきた。
ハリーは私達に話があると言い、パンとオレンジジュースだけで朝食を済ませ、同時にオートミールを食べ終えた私達を引っ張って校庭にやってきた。
そして散歩をしながら昨日あった事を全部話してくれた。
ハグリットはハリー…と、マダム・マクシームにドラゴンを見せた事、帰りにカルカロフ校長を見かけた事、シリウスおじさんと話した事…カルカロフが元死喰い人で彼を警戒しろ、といった事…などなど。
ドラゴンの件は予想通りだが、それをマダム・マクシームとカルカロフ校長が知ったのであれば代表選手はディゴリー先輩以外確定情報としてドラゴンと戦う事になると知ったであろう。第一課題がドラゴンである説がほかの噂と同程度にはホグワーツの噂で出回っているが皆が知っているのは不確定情報で噂である。
ハリーは日曜日を呼び寄せ呪文の仕上げに使った。
そして、月曜日の朝食時…ハリーはディゴリー先輩を見てはっとなり、何か考えている様子だった。
そして、ハリーはディゴリー先輩に課題の事を話すつもりだと確信できる顔で私達に先に薬草学の授業に行くように言った。
そしてハリーはその授業に大幅に遅れてやってきた。
どうやら、ディゴリー先輩にドラゴンの事を話す場面をムーディ先生に見つかり、先生のオフィスでドラゴン対策について聞かれたらしい。
ハリーは母からドラゴンの噂を聞いていてそれで時間をかけて対策を練っているので大丈夫、と答えたらしい。
そうして時間は過ぎ…火曜日の昼食、ハリーがマクゴナガル先生に連れだされて行った。
ハリーの準備は万端で、グリフィンドール塔の男子寮に置かれたファイアボルトには魔法薬をセットしたポーションベルトが巻き付けてあり、予備プランの飛翔の指輪もハリーは身に着けていた。
身にまとっているローブは当然、ハリーが一か月以上かけて仕上げた傑作だった。
「大丈夫かしら…」
ハーマイオニーが心配そうに言った。
「信じるしかないわ、信じましょう、ハリーを」
昼食を済ませた私達は競技場へ向かった…そして席に着いた。
試練が始まる…最初はディゴリー先輩の番だった。
ディゴリー先輩の戦術は端的に言えば囮作戦だった。
ディゴリー先輩は競技場の岩を変身術でラブラドールに変身させて囮にした。そしてドラゴンが犬に気を取られている隙に卵を…課題であるドラゴンに守られた金の卵を狙った。
結果は…小成功と言った所か。
結果的に、金の卵の奪取には成功したが、最後の最後でディゴリー先輩はドラゴンに火を噴かれて火傷を負った。
次はフラー・デラクール、彼女は最終的には魅惑呪文のような呪文を用いてドラゴンを眠らせた。
そして…いびきの炎でスカートに火がついてしまった。
フラー・デラクールは自分で消火して無事、卵を取った。
3番目はビクトール・クラムだった。彼はある意味、想定解をとった。
すなわち、ドラゴンの目を狙って結膜炎の呪いを行使した。それは悪くない結果ではあったが、ドラゴンがのたうち回って本物の卵をいくつか潰した。故に減点された。
そして最後…ハリーの番だ。
ハリーは開幕一番、呼び寄せ呪文を行使した。そして、それは成功した。
ハリーはポーションベルトを腰に巻き、ファイアボルトにひらりと乗った。
そして飛翔…ハリーが豆粒のように小さくなる。
急降下…ハリーはドラゴンの火炎放射を貫いて小瓶を一つドラゴンの口に放り込むことに成功した。
そしてハリー自身は急上昇して火炎放射を避けた。
勝負はもう決まった、後は何時ドラゴンが倒れるか、だった。あの巨体である…すぐに薬が回るとも考え辛い。
しかし、ハリーは果敢にも距離を取って時を待つという事をしなかった。
ハリーは、ドラゴンを牽制する様に飛んだ。そして、ドラゴンが火を噴く寸前に急降下して炎をかわした。
そこに尻尾が鞭のように飛び、ハリーをかすめた。
ハリーはローブのおかげで怪我はしていない様だが飛行が少し乱れた。
とは言え、ハリーは無事に離脱し、再びドラゴンの牽制を始めた。ヒラリヒラリと牽制するうちにドラゴンはしびれを切らし、遂に立ち上がった、卵から前足を離した。
ハリーはその隙を見逃さず、急降下して金の卵を奪い取り、上空に待避した。
ドラゴン使い達がドラゴンを鎮めに駆け寄ってきた…そしてその作業が始まる寸前、ドラゴンは眠りこけた。魔法薬が効いたのだろう。
ハリーが着地し、歓声が響いた。そして、わたしはハーマイオニーとロンと共に観客席を出て行った。
救護テントに転がり込む様に入った私達が見たのは、マダム・ポンフリーに診察されるハリーだった。防護呪文でも殺しきれなかった衝撃で軽い打撲を負っている様子だったが、あっという間にハリーの治療は終わったようだ。
ハーマイオニーがハリーを称賛する。そして…ロンが真っ青な顔で深刻そうにハリーに口を開いた。
「ハリー、君の名前をゴブレットに入れたやつがだれだったにしろー僕―僕、そいつは君を殺そうとしているんだと思う」
「気が付いたってわけかい?随分長いことかかったな」
そして二人の間に沈黙が走る…ハーマイオニーが心配そうに二人の顔を見る…そしてロンがあいまいに口を開きかけた時、ハリーが口を開いた。
「いいんだ、気にするな」
「いや、僕、もっと早く―」
「気にするなって」
ロンがハリーに笑いかけ、ハリーが笑い返す。それを見てハーマイオニーはワッと泣きだした。
「なにも泣くことはないじゃないか!」
「二人とも、ほんとに大ばかなんだから!」
ハーマイオニーは地団駄を踏みながら、ボロボロ涙を流し、叫ぶように言った。
それから、二人を抱きしめ、鳴き声を上げながら走り去っていった。
「よかったわね、ふたりとも。それじゃあ私はハーマイオニーについているから」
そう言って私はハーマイオニーを追いかけた。
その晩はパーティーだった。第一課題の終了を祝してホグワーツをあげての大宴会…ではない。あくまで厨房から貰って来たケーキや飲み物を囲んでのグリフィンドールの宴会である。
その宴会に先立って、ハリー達はフクロウ便をシリウスおじさん宛に出しに行った。宴会が始まると、話題は次の課題になった。そのヒントだという金の卵をあけてみる様に促され、ハリーは卵を開いた…すると卵の中は空っぽで、しかし大きなキーキー声の咽び泣きのような音が談話室中に響いた。
余りの騒音にフレッドがたまらず黙らせろ!と叫び、卵が閉じられた。
そして皆が口々に次の課題について憶測を述べ始めた。そうこうしていると、フレッドがハーマイオニーにジャムタルトをすすめた。ハーマイオニーが疑いの目で見ているとジャムタルトには何もしていない、と言った。そして、クリームサンド・ビスケットの方は別だとも。丁度クリームサンド・ビスケットにかぶりついていたネビルはむせて吐き出した。
そして話題はハーマイオニーがジョージにこの菓子類は厨房から貰って来たのか?と聞いた事をきっかけにハーマイオニーが主導するS・P・E・Wの事になった。が、すぐにその話題も打ち切られた。
ネビルが巨大なカナリアに変身してしまった事によって。それはジョージとフレッドの発明…騙し菓子に違いなかった。
「カナリア・クリーム!ジョージと僕とで発明したんだ―一個7シックル。お買い得だよ!」
その日の宴会がお開きになったのは深夜1時頃の事だったらしい。翌日の授業があるので私は11時頃に寝たが。