例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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金の卵とダンスパーティー

12月上旬のある日、私はS・P・E・Wの活動に関連して厨房を訪ねたいというハーマイオニーに付き添い、夕食後の厨房にやってきた。

そこで私達は思いがけない妖精達に出会った…ドビーとウィンキーである。

どうやら、最近ホグワーツに雇われたらしい。ハーマイオニーは予定をキャンセルしてハリー達を呼びに行った。

私はというと、暖炉近くに設置された4人分のお茶の用意を整えられたテーブルで読書しながら3人を待っていた。

暫くすると3人がドビーに引率されてやってきた。

ドビーに話を聞くとドビーとウィンキーの二人は1週間前にホグワーツにやってきたらしい。そして、ドビーは週に1ガリオンと1カ月に1日の休みで働いているらしい。

その話の途中、ドビーが屋敷しもべ妖精らしからぬ発言をするたびに厨房の皆が引いていたが。

ハーマイオニーはそれを少ないと怒ったが、ドビーはダンブルドア先生が最初、週10ガリオンと週末を休みとするといったが値切ったのだといった。

ハーマイオニーはウィンキーの待遇について聞いた…が、それは間違いだった。彼女はむしろ典型的なしもべ妖精だったのだから。

ウィンキーはハーマイオニーの質問を侮辱と受け取ったらしく、自分は不名誉なしもべ妖精ではあるが給料をもらうほど落ちぶれてはいない、自由になったことを恥じていると主張した。

それからの問答はあまりウィンキーにはよくない問答であった。ウィンキーは明らかにクラウチ氏に対して忠誠を示し続けており、それはしもべ妖精たちの表情を見ても良くない事、であった。

ディークが囁いてくれた言葉によると、どうやらウィンキーが纏っている洋服はクラウチ氏が彼女に解雇通告として渡した物らしかった。普通は新しい主を見つけたしもべ妖精はその洋服を捨てるのが流儀らしかったが、旧主家との関係にすがりたいウィンキーは掟破りをしているようだった。

 

クリスマスが近づくとホグワーツの話題はダンスパーティーについてで持ち切りになった。

マクゴナガル先生からダンスを踊れと命じられたハリーは早々に私をパートナーに指名した。

曰く、だれを選んでもリータ・スキーターの餌食になるからそれに耐えられる強さがいる、という事であった。だが、公式にはそれをロンとハーマイオニー以外には話さずに相手が見つからなくてやむを得ずそうなった、という体を取ることになった。そうでなければ従姉弟同士の恋がどうのこうのという記事を書かれるから、と。

それとなく、ジニーをパートナーにしてはどうかと勧めてはみたが、前述の理由で…あがり症のジニーしかハリーは知らないので…拒絶したため、私は指名を受け入れる事とした。

 

一方、金の卵の解析はというと、キーキー音に周期性と言語らしき規則性がある事までは把握した。そこまで理解するのに精神力を相当もっていかれたが。

そこで、私達は魔法生物の言語に違いないと推定し、クリスマス休暇後半に図書館の言語学の棚を漁るというタスクを設定した。

なぜすぐにそうしないかというと…クリスマスに人前で踊るには練習が必要だろうと懸命にも判断した私達はマクゴナガル先生に頼んでダンスレッスンをしてもらう約束をしているためである。

そうして、マクゴナガル先生のレッスンにより、私達は一応人前に出せる程度は踊れるようになった、とご評価いただけるようにはなった。

そうして運命のクリスマス当日…朝食後、プレゼントの本を読みながら午前中は談話室で過ごした。昼食のクリスマスディナー後、午後から外に出てハリーとロンと他のウィーズリー兄弟は雪合戦に興じていた。わたしとハーマイオニーはそれを眺めながらお喋りをして過ごした。

5時になるとハーマイオニーは支度があるから、と部屋に戻るというので私も引き上げる事にした。

ベッドでゴロゴロしながら読書しつつハーマイオニーの支度…その過半をスリーク・イージーの直毛薬の使用に費やした…を眺めていた。

7時少し前になるとハーマイオニーの髪の毛も真っ直ぐになったので私も支度を始めた。とは言っても、ドレスローブに着替えて、軽く髪を結って、アクセサリー風の錬金術の作品…犠牲の石のブローチを含む…を隠さず身に着け、いつもはしない化粧を軽くしてお終いであるが。

そのままベッドに腰かけて読書の続きをしているとハーマイオニーが声をかけてきた。

「そろそろ良い時間よ、アイリス」

「そうね、じゃあ行きましょうか、ハーマイオニー」

すっかり美人になったハーマイオニーと共に私は談話室に向かって階段を降りて行った。

ハーマイオニーはパートナー…なんとビクトール・クラムである、皆に秘密にすることを条件に教えてもらっていた…との待ち合わせに向かって談話室を出ていくのを見送って私は談話室でハリーを待っていた。

「お待たせ」

少しするとハリーとロンが同室組と共にやってきた。

「じゃあ、行きましょうか」

「うん。ロン、また後で」

私とハリーはパートナーのパーバティを探すロンを置いて一足先に談話室を出た。

ハリーと玄関ホールにたどり着くとそこはとても混雑していた。

他寮の生徒をパートナーにした生徒たちの待ち合わせ場所でもあるので当然だが。

ハリーと群衆を観察しながら時間を潰しているとスリザリンの一群が地下からやってきた。

その先頭はマルフォイでパンジー・パーキンソンを連れていた。

さらに少しして、ダームストラングの生徒がカルカロフ校長に引き連れられて玄関ホールに入ってきた。その先頭はビクトール・クラムでその隣にはハーマイオニーがいた。

そうこうしているとマクゴナガル先生の声が響いた。

「代表選手はこちらへ!」

その声に従って私はハリーにエスコートされて人垣の間に出来た道を進んでいく。

マクゴナガル先生の指示に従って扉の脇に並んだ私たち…そしてハリーの視線がハーマイオニーをとらえて口をあんぐりとあけた。やっとハーマイオニーに気づいたらしい。

「こんばんは、ハリー!こんばんは、アイリス!」

「「こんばんは、ハーマイオニー」」

ハーマイオニーの挨拶に私達は応えた。

そして生徒たちが入場していく…そしてみながテーブルについたのち、マクゴナガル先生の指示に従って列になり、私達は拍手に迎えられながら入場し、普段は教員テーブルが置かれている辺りに設置された他のテーブルより一回り大きなテーブルに向かって歩を進めた。練習の甲斐あって、私達は胸を張って堂々と入場できたと思う。

審査員テーブルに近づくと、クラウチ氏が座っているべき場所にパーシーが、パーシー・ウィーズリーが座っているのに気付いた。

パーシーはハリーに目配せし、椅子を引いて隣に座るように促した。

という事でハリーはパーシーの隣に、私はさらにその隣に座ることとした。

「昇進したんだ」

席に着くなり、パーシーが言った。

「クラウチ氏個人の補佐官だ。僕は、クラウチ氏の代理でここにいるんですよ」

「クラウチさんに何かあったの?」

ハリーの問いに答えたパーシーの言葉を要約すると、クラウチさんはクィディッチ・ワールドカップからこちら、体調がよろしくないから、という事だった。

金色に輝く皿の近くに置かれたメニューを眺めているとダンブルドア先生は自分の皿に向かってポーク・チョップと言った。するとポーク・チョップが現れた。

今宵はオーダー式で行くらしい。ハリーと私は顔を見合わせてハーマイオニーの反応を見たがハーマイオニーは一瞬眉をピクリとさせたが抗議の声を上げる事はせず、注文をして、食事をしながらビクトール・クラムと話し込んでいった。

その様子に私とハリーは苦笑いを交わして思い思いに注文を出した…私はラムチョップを、ハリーはローストビーフを頼んだ。

周りの会話に耳を傾けながら、がっつかない程度に食事をして…ハリーは糖蜜パイをいつものように頼んだが…出番を待っているとダンブルドア先生が立ち上がり、生徒たちにも立ち上がるように促した。

ダンブルドア先生が杖を一振りするとテーブルが壁際に移動して広いスペースが出来た。

ダンブルドア先生はそれから、右手の壁際にステージを立ち上げドラム一式、ギター数本、リュート、チェロ、バグパイプを設置した。

いよいよ『妖女シスターズ』の登壇である。彼女たちが熱狂的な拍手でステージに昇り、楽器を手にした…そして演奏が始まる。私達は他の代表選手たちと共にダンスフロアに進み出て踊り始めた。

最初のスローな物悲し気な曲を踊った後、義務は果たしたと言わんばかりに私とハリーはダンスフロアを去り、ロンの座っているテーブルにやってきた。

「調子はどうだい?」

テーブルに着き、ハリーがバタービールの栓を抜きながら問うた。ロンは答えない。

ロンは近くで踊っているハーマイオニーとビクトール・クラムを睨んでいた。

ハリーは肩をすくめ、わたしも苦笑いをした。ロンのパートナーのパーバティはボーバトンの男子と踊っている様子だった。

曲が終わるとハーマイオニーがやって来て空いている席に座った。

「やあ」

「お疲れ様」

ハリーと私はそう言ったがロンは何も言わない。

「暑くない?」

「そりゃあ、あんなテンポの曲を踊っていたら汗ばみもするわ、ハーマイオニー」

「それもそうね…ビクトールが飲み物を取りに行ってくれたけれど、その必要なかったわね」

ハーマイオニーはカボチャジュースをコップに注ぎながら言った。

「ビクトール?ビッキーって呼んでくれって、まだ言わないのか?」

ロンが敵意をむき出しにしていった。

ハーマイオニーは驚いてロンを見た。

「どうかしたの?」

「そっちがわからないって言うんなら、こっちが教えてやるつもりはないね」

辛辣な口調でロンが言う。ハーマイオニーはロンをまじまじと見て、それからハリーと私に助けを求める様なまなざしを向けた。

ハリーは肩をすくめるばかりだったので、私は苦笑いしながら言った。

「ハーマイオニー、ロンは貴女が他校の生徒、それもハリーのライバルであるダームストラングの代表選手のビクトール・クラムとダンスパーティーに来たことが気に入らないのよ、そうでしょ?ロン」

ロンはプイっと顔をそむけたが否定しなかった。

「ロン、この試合は外国の魔法使いと知り合いになって、友達になることが目的の筈よ、スパイ行為をしている訳じゃあるまいし」

呆れた様子のハーマイオニーはそう言ってかぼちゃジュースを飲んだ。

「君がスパイ行為をしているつもりがなくても!相手がそうじゃないとは限らないじゃないか?あいつはカルカロフの生徒じゃないか。君がだれといつも一緒か、知っている…あいつはハリーに近づこうとしているだけだ―ハリーの内部情報を掴もうとしているか―それとも、ハリーに十分近付いて呪いをかけようと―」

ハーマイオニーはロンに平手打ちでも食らったような顔をした。口を開いた時、声が震えていた。

「言っとくけど、あの人は、わたしに只の一言もハリーの事を聞いたりしなかったわ。一言も―」

ロンはそれを聞いて矛先を変えた。

「それじゃあいつは、あの卵の謎を解くのに、君の助けを借りたいと思っているんだ!」

「例えそうだとしても、私、あの人が卵の謎を考える手助けなんか、絶対にしないわ!」

ハーマイオニーは烈火のごとく怒り、続けた。

「絶対によ!よくもそんなことが言えるわね―私、ハリーに試合に勝って欲しいのよ。そのことは、ハリーが知っているわ。そうでしょう、ハリー?」

親友二人の痴話げんかにしか見えないそれをハリーはバタービールを飲みながら聞いていたが話を振られてハリーは言った。

「ロン、僕はハーマイオニーの事を疑っていないし、ハーマイオニーがクラムと一緒に来たこと、僕、なんとも思っちゃいないよ。だからロンも落ち着きなよ」

しかし、ロンはハリーのとりなしもロンには届かなかった。

「行けよ。ビッキーを探しにさ。君がどこにいるか、あいつ、探しているぜ」

「あの人をビッキーなんて呼ばないで!」

ハーマイオニーはそう言ってパッと立ち上がった。

「あ、ハーマイオニー!もう…ロン、言いすぎよ。ハリー、会えたらまた後でね」

私はそう言って憤然とダンスフロアを横切るハーマイオニーを追った。

 

その後、私はハーマイオニーをなだめた後、ハーマイオニーを探しにやってきたビクトール・クラムに引き渡した。その後はダンスの申し込みを適当にあしらいながらハリーとロンを探した。

暫くして二人が大広間の片隅で何やら話しているのを見つけた。

「ハーマイオニーは?」

ロンが問う。

「もちろん、ビクトール・クラムといるわ」

そう言って私は人混みの方を指した。

ロンはその返事が気にくわなかったらしく、プイっと顔をそむけて面白くなさそうにして黙ってしまった。

「で、どうする?ハリー。あなたとならもう少し踊っても良いけれども」

「じゃあ少し踊ろうか。でもロンを一人にしたくないからここで」

「了解」

私はそう答え、何曲かハリーと踊った。その後は無言を貫くロンを連れて近くのテーブルに着き、飲み物を飲みながら錬金術の議論をハリーと交わした。

 

 

 

ダンスパーティーが終わったのは真夜中の事だった。

三人で玄関ホールに出るとハーマイオニーがダームストラングの船に帰るビクトール・クラムにおやすみなさいを言っているのが見えた。

ハーマイオニーはロンに冷たい視線を浴びせ、一言も言わずにロンのそばを通り過ぎ、大理石の階段を上って行った。

私達はその後をついて行ったが、階段の途中で誰かが後ろからハリーを呼びながら駆け上がってきた。

「おーい、ハリー!」

ディゴリー先輩だった。

「なんでしょうか」

ハリーはそう返事をして続きを促したがディゴリー先輩は私達に先に行ってほしそうな顔をした。

ロンは機嫌の悪い顔で肩を竦め、一人で階段を上がっていった。

「じゃあ、談話室で待っているわ、ハリー」

そう言って私もロンに続いた。

ロンは急ぎ足で進んでいたため、普通に歩いていた私には追いつけなかったが、談話室に上がるとハーマイオニーとロンが口論をしていた。

その内容はダンスパーティーでの口論の続きだった。

あきれ顔でその様子を眺めつつ、ハリーを待っているとハーマイオニーが最後の一撃を叫んだ。

「ええ、ええ、お気に召さないんでしたら解決法はおわかりでしょう?」

丁度そこにハリーが上がってきた。

「ああ、そうかい?言えよ。なんだい」

ロンが叫び返した。

「今度ダンスパーティーがあったら、他の誰かが私を誘う前に申し込みなさいよ。最後の手段じゃなくって!」

そしてハーマイオニーが踵を返し、女子寮への階段を荒々しく上って行く間、ロンは水からあがった金魚の様に、口をパクパクさせていた。ロンが振り返って私とハリーを見た。

「まあ、つまり―要するにだ―まったく的外れもいいとこだー」

そう言うロンに私とハリーは顔を見合わせて肩を竦めた。

 

その後、私はハリーと久しぶりに頬へのキスを含むお休みの挨拶をして寮の部屋への階段を上った。

部屋ではハーマイオニーが化粧を落として寝間着に着替えている所だった。

「ただいま、ハーマイオニー」

「お帰りなさい、アイリス」

尚、他のみんなはまだ歓談中なのか帰ってきていない。

「遂に言っちゃったわね、ハーマイオニー」

私がからかうとハーマイオニーは頬を赤くしていった。

「…ロンがあの程度で気づくわけないわ…」

そう、ハーマイオニーはロンに惹かれている、少なくともロンにダンスパーティーに誘ってほしかった程度には。少なくとも、ビクトール・クラムからの誘いを一度はちょっと待ってほしいと保留にした。しかし、ロンが自身の事をそう言う対象として眼中に入れていないと認識してビクトール・クラムからの誘いに乗ったのである。

それがロンの嫉妬を引き起こし、そしてハーマイオニーの他の誰かに取られる前に確保しろ、確保されてやるから、宣言に繋がったのだから面白い。

 

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