例えばこんな従姉殿   作:紅シズク

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あっけない退場

それから、ハリーとハーマイオニーとついでにネビルは息をひそめてホグワーツ生活を送る日々が始まった。

ハーマイオニーは授業であまり積極的に発言しなくなり…むしろ積極的に発言して点数を積み重ねた方が贖罪になる様な気はしたが、黙っておいた…ハリーと私の議論も目立たない様に談話室の端っこで小声でするようになった。

 

試験の一週間前、ハリーと私は図書館から寮への帰り道、クィレル先生が何者かに脅迫されている現場に通りかかった。

「…クィレル先生が石を諦めたのか、石の守りの仕掛けを漏らしたのかどっちでしょうね」

「わからない…でも状況が動いたのは確かだ…その、スネイプ教授が石を狙っている側だった場合、守りが一枚はがれた事になる…先生方は互いに守りの魔法の内容を秘密にしているとは思うけれど…ね」

私とハリーは誰もいない教室で顔を見合わせた。

 

翌日の深夜、ハリーとハーマイオニーとネビルとついでにマルフォイの罰則が実施された…深夜徘徊の罰則が門限後に行われるとは中々皮肉が効いている。

いつになるかわからないからベッドに行けとロンに入ったが彼は聞かずに談話室に残り…私はベッドで寝た。

 

「アイリス、起きて、アイリス」

「ああ、お帰りなさい、ハーマイオニー」

「ちょっとついて来て」

寝起きの私はベッドから引っ張り出されると階段を下りて談話室にやってきた。

談話室では真剣な顔のハリーと半分寝ているロンが待っていた。

「おはよう…って時間には少し早いわね、ハリー」

「そうだね、アイリス…今晩、僕らは罰則で禁じられた森に行ったんだけれども…」

と、語り出すハリーとハーマイオニー…話を纏めると、『死喰い人の主』らしき何者かが禁じられた森に潜んでおり、ユニコーンの血を啜っていた、という事らしい。

「『死喰い人の主』とスネイプ教授かクィレル先生が繋がっていたんだと思う…

そして、10年間命にしがみついていたけれども『死喰い人の主』は限界に近づき、賢者の石を欲した…そしてそれを待つためにユニコーン迄襲った…

繋がっていたのがクィレル先生だとすればそう心配する必要はない…『死喰い人の主』は衰弱していく一方だ…賢者の石をもたらす筈のクィレル先生はもう折れたのだから。

でも、逆だと事態は恐ろしい状態に見える…もし何か行動するならば、スネイプ教授が『死喰い人の主』とつながっていると考えて動いた方が安全だ…と思う。

ケンタウロス達の言う火星が明るい、の解釈もスネイプ教授が『死喰い人の主』とつながっていると考えた方が合うように思う。

ケンタウロス達の星占いには詳しくないけれど、魔法族の占いと同じなら火星は争いを象徴するからね…それを強調して、かつ読み間違いを祈ったという事は…たぶん…」

ハリーが言いよどみ、私を見る。

「『死喰い人の主』が戻って来て再び戦争が始まる、という事?」

私の答えにハリーは頷いて答えた。

「ええっと、『死喰い人の主』…って『例のあの人』の事?」

ロンが恐る恐ると言った様子で確認をする。

「そうだよ」

ハリーが肯定するとロンは先ほどのハリーの推理がいかに恐ろしいモノだったかという事を理解した様子でぶるぶると震えた。

「…でもマクゴナガル先生がおっしゃっていたわ、占いは魔法の中でも不正確な分野だって」

ハーマイオニーが恐ろしい運命を否定する材料を口にする。

その後、私達は空が白み始めるまで議論を続けた。

結論としては、ダンブルドアがいる限り、なんかとなるだろう、という希望的観測にすがるような雰囲気で、少しは寝なければ、と言う私の意見が通って私達はベッドに潜り込んだ。

 

 

 

「思っていたよりずーっとやさしかったわ。1637年の狼人間の行動要領とか、熱血漢エルフリックの反乱なんか勉強する必要なかったんだわ」

「それはそうよ、ハーマイオニー。進級試験がそんなに難しかったら留年者が続出するわ」

さんさんと陽の差す校庭に繰り出していく生徒の群れに混じって私達はそんな会話をしていた。

ハーマイオニーは試験の答え合わせをしたいと言ったが、ロンがそんなことをしたら気分が悪くなると主張した為、まずは散歩をしよう、という事になった。

私達は湖畔で木陰を見つけ、寝転んだ。近くではジョージとフレッドとリー・ジョーダンが大いかの足にちょっかいをかけていた。

ロンがハリーに試験が終わった喜びについて語っている隣で、私はハーマイオニーの難しかった問題の答えについて話していた。

 

「フクロウよ、こんな時間に珍しいわね」

ハーマイオニーが言った。

「そうね、ホグワーツ宛のフクロウは朝食の時間に配達されるから…何か急ぎの要件かしら」

暢気にそんな事を言っているとハリーが立ち上がった。

「…ハグリッドに確認しないといけない事が出来た」

「どうしたんだい、ハリー。何を確認しないといけないって?」

「ハグリッドが卵を手に入れた夜の事だよ!もっと早く気付くべきだった!」

ハリーがハグリッドの小屋に向かう途中に語った事は、要するに(ハグリットにとって)都合がよすぎる、という事だった。もしかして、ハグリッドは口車に乗せられて何か情報を漏らしたかもしれない、という事をハリーは考えていた。

聞き取りの結果は黒だった。ハグリッドは誰とも知れない相手に酒をたんまり飲まされてドラゴンの飼育ができる事を示す為に音楽を聞かせれば三頭犬が眠ってしまうと喋ってしまっていた。

コレで、ハリーの腹は決まった。色々と拙い事が露見しようと、ダンブルドア先生に面会して(スネイプ教授が黒だった場合)最低でも3つの守り(ハグリッド、クィレル先生、スネイプ教授がそれぞれかけた物)が無効化されていると伝えなくてはならない、と。

私達は城に戻り、校長室に向かおうとした。そこで校長室の場所を知らない事に気付き、とりあえず職員室に向かおうかという事になった。

「そこの四人、こんな所で何をしているの?」

その時、大量の本を抱えたマクゴナガル先生が現れた。

「ダンブルドア先生にお目にかかりたいんです」

ハーマイオニーが言った。

「ダンブルドア先生にお目にかかる?理由は?」

「ええっと…ここでは言えません」

ハリーが言った。

「ダンブルドア先生は十分前にお出かけになられました。

魔法省から緊急のフクロウ便が来て、すぐにロンドンに飛び発たれました」

マクゴナガル先生が冷たく言った。

「ダンブルドア先生がいらっしゃらない!?何とか連絡を取る手段はありませんか?今すぐにでもお知らせしないと!」

「ポッター。ダンブルドア先生は偉大な魔法使いですから。大変ご多忙でいらっしゃる…ですが、貴方がそこまで言うのであれば、内容次第では私がフクロウ便を出しましょう。

魔法省に着いた時にご覧になるでしょう…さあ、ダンブルドア先生に何をお知らせしたいのですか?」

つまらない用事であったら許さない、といった表情でマクゴナガル先生が言った。

「実は…その、先生…『賢者の石』の件なのです…」

マクゴナガル先生は抱えていた本をばらばらと床に落としたが拾おうともしなかった。

「どうしてそれを…?」

「先生、僕の考えでは…いいえ、僕は知っているんです。ス…いえ、誰かがいや、『石』を 盗もうとしています。どうしてもダンブルドア先生にお話ししなくてはならないのです」

マクゴナガル先生は驚きと疑いの入り交じった目をハリーに向けていたが暫くして、口を開いた。

「ダンブルドア先生は、明日お帰りになります。あなたがたがどうしてあの『石』の事を知ったのかわかりませんが、安心なさい。盤石の守りですから、誰も盗む事はできません」

「でも先生…」

「ポッター、二度同じ事は言いません。

四人とも、外に行きなさい。せっかくの良い天気ですよ」

マクゴナガル先生はそう言って本を拾い、去っていった。

「スネイプ教授が『死喰い人の主』と繋がっていたんだ…三頭犬を突破する方法はわかったし、他の守りも突破する方法か十分なヒントを得ているに違いない!ダンブルドア先生が留守になったのが偶然か、スネイプ教授の手によるものかはわからないけれど…何より、時間が無いはずだ。『死喰い人の主』はユニコーンの血なんておぞましいモノに頼らなくてはならない程に衰弱しているんだから!」

「やあ、こんにちは」

スネイプ教授がやけに愛想よく挨拶をしてきた。

「諸君、こんな日には室内にいるもんじゃない。

少なくともこんな所でひそひそ話をしているのを見られたら何か企んでいる様に見える…グリフィンドールとしては、これ以上減点される余裕はない筈だろう?夜間徘徊などもってのほかだ。

もっとも、寮杯をスリザリンに贈呈してくださるというのであれば喜んで受け取るがね」

そう告げてスネイプ教授は大股で職員室の方に歩いて行った。

「…どうするべきか…とにかく、スネイプ教授と四階の例の廊下を見張らないと…」

「…夕食の時間まで、スネイプ教授を拘束しておくくらいならやっては見るけれど」

私はそう言った。

「イヤ…それより決定的瞬間を見つけて他の先生にお知らせした方が良い…スネイプ教授を見張る組と四階の廊下を見張る組に分かれよう。

廊下には僕とロンが行く。スネイプ教授の見張りはアイリスとハーマイオニーにお願いしたい」

その後、役割分担に若干の議論があったが、結局ハリーの提案通りになった。

 

そして私はスネイプ教授の研究室にいた。

何があったかと言うと、職員室を見張っていた私達はスネイプ教授に見とがめられた。

咄嗟に、ハーマイオニーがフリットウィック先生を待っていると告げたため、スネイプ教授がご親切にもフリットウィック先生を呼びに行ってしまった。

去って行こうとするスネイプ教授に私は、私はスネイプ先生を待っていた、と言ってしまい、研究室に連れてこられたのである。

「私はハリーに疑われているようだな」

「そうね、ものの見事に…私はまだ信用されているようだけれども」

スネイプ教授が扉を施錠し、防音魔法をかけるなり、私達はそんな会話を始めた。

「…ならばこう、ブレーキをかけるとかできんのか?」

「かけていてこれ。ダンブルドア先生が留守になるまではクィレル先生が『死喰い人の主』とつながっていて、石を守ろうとスネイプ教授に屈服した可能性も考えていたけれど、ね。

一番危険な脅威に備えるべきだからって、スネイプ教授が石を狙っていると想定して行動しているわ」

「それで一年生が何とかできるという傲慢さが奴らに似ていて好かん…お前やペチュニアから聞くハリーの様子からはもっと聡明だと思っていたのだが」

「それ以上に、ハリーはグリフィンドール生だった、という事でしょうね」

そう言いながら紅茶を飲んだ私は違和感を覚えた。

「…盛った?」

「安心しろ、眠り薬だ。明日には目が覚める…放っておけばお前も禁じられた廊下に忍び込む気だっただろう?」

「…そうね、きっとそうしたでしょう…ね」

そう答えた私の意識は遠のいていった。

 

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