子守先生■ギま!?【凍結】   作:再buster

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今回は『大決戦!? エヴァンジェリンVSネギ・スプリングフィールド』を中止して、
麻帆良大停電祭を開催したいと思います。

というわけでエヴァさんの出番は少ないです。
エヴァ編最期なのにね!
ではドウゾ~


第8話:『停電・広域戦・水』

 

 

 

 

 

 

 うちの旦那たちが過去の世界へ飛んでから、こっちでは数日。

 

 連絡した家族はあらかた昨日までに一度この家へと帰ってきていた。

 

 中国や忍びの里など実家に帰っていた人。

 総理大臣として仕事していた人。

 会社の社長をしていてすぐに動けなかった人。

 アメリカにライブに行っていた人。

 報道の仕事で世界をまわっていた人。

 魔法世界に行っていた人。

 

 そしてなんだか綺麗な花畑にいて川の向こうにいる羽を付けた見知らぬ人に手を振ってもらっていた人。

 

「死んでませんよ!?」

 

 うん、この前まで寝込んでいた刹那さんで~すパチパチパチ~。

 やっと帰ってきたわよ、まったく。

 

「その節は本当に申し訳ありませんでした、明日菜さん」

「いいのよいいのよ。しょうがない事だし気持ちわかるからさ」

 

 私も自分の赤ちゃんがそうなったら同じようになってただろうしね。

 それに思い入れも一塩だし。

 あ、だからって明日香がいなくても大丈夫ってわけじゃないのよ?

 

 ただ、ちょっと長めの旅行に行かせたって感じかな……

 

 寂しくはあるけど、帰ってくるって分かってるから。

 

「私はまだ、慣れません……」

「だからそれは当たり前だからね。

 それに刹那さん、あの子が最初の子なんだし心配するのは当たり前だから」

「……そう、ですよね」

「今はさ、とりあえず私達の旦那さんを信じて待ちましょ。

 大丈夫よ、かならず無事に帰ってくるからさ」

「はい、明日菜さん」

 

 

「で、お話しはいいがなんでまた研究室にいるネ?」

 

「あ、ごめーん忘れてた」

「申し訳ありません」

 

 そう、今私たちはチャオリンの研究室で談話していたのだ。

 ゴメンね邪魔して。

 

「まったく、こっちはこの前の転送のデータまとめで忙しいというのにネ。

 なにか知らないがデータの一部に異常があるから該当データの添削だけでも大変なのヨ?

 ちょっとは手伝って欲しいヨ」

「それなら茶々丸さんの妹達が手伝ってるじゃない」

「それでも終わらないから文句を言てるのだが?」

 

「ハハハ、ゴメン」

「申し訳ありません」

 

「分かればいいヨ、分かれば……」

 

 さすがにちょっと邪魔しちゃったわね。

 

「それよりさチャオリン、向うって確か大停電が近かったわよね」

「……まったく。

 そうネ、時期的に考えてこっちの今日中には大停電になっている筈ヨ」

 

 向うとこっちじゃ時間にずれがあるからね。

 こっちで一日でも向うだと2、3日余裕で進むみたいだし。

 

 そっか、大停電か。

 

「大停電があるということは、防衛線がありますね」

 

 そう、刹那さんの言う通り防衛線があるのだ。

 

「当時の学園に張り巡らされた結界は電気を使った科学的な結界がほとんどヨ。

 使っていない物もあるけど少ないネ。停電になれば学園の防備は減り正しく丸裸。

 そこで活躍するのが学園内にいる魔法先生や生徒達ネ」

 

「ですから、大停電の時は綿密な打ち合わせをして敵襲に備える事になってます」

 

「今は別の打ち合わせも多いけどネ」

 

 

 まぁとりあえず、大変な事は起きそうよね。

 

 

 大丈夫かなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第8話  『 停電・広域戦・水 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、本日は麻帆良名物『大停電』にござい。

 

 学園内の電気設備の総点検のために一斉に学園内すべての電気を落とす事になっている。

 のはもちろん建前。

 

 どんな所でもそういった修繕点検は順番にやったり非常電源とかあるものだ。

 都市区画全てを一度に落とすなんて事はふつうしない。

 

 ならなぜするのか。

 

 それは学園結界だ。

 

 学園に設置された結界の大半は学園内の電気を使っている。

 光を使った結界、電子精霊、電磁結界などどれも大量の電気を使用しているモノばかりだ。

 しかもどれもが大規模。

 それら全ての総点検が必要なために、一度に全ての電源を落とす必要があるのだ。

 

 それ故の大停電。

 

 

 そしてそのために、大停電の間は学園内の結界がほぼ機能しなくなる。

 学園の防備の要の一つが消えるのだ。

 

 侵略者共には絶好の進攻機会だろう。

 

 

 ならば、その間の学園の防備は人の力こそが頼りとなる。

 魔法先生や魔法生徒による防衛線ってわけだ。

 

 

「というわけで、学園結界が消える瞬間を狙って敵が攻めてくる。

 彼奴らから学園を守り抜くのが今回の任務じゃ」

 

「まぁ俺らにとっては何度も通ってきた通例行事だな」

 

 もはや毎年恒例となってしまった行事だ。

 かれこれ20年続けている。

 

「やはり未来でも行っておるのじゃな」

「そりゃな」

 

 未来では学園長である木乃香による指揮の下、家族総出で対処していた。

 

 というか……実は色々と裏から手をまわして無理矢理に起こしていた。

 

 

 クルトに頼んで演習として新兵や経験の浅い兵を一部紛れ込ませたり、どこぞの盗賊団や傭兵を混ぜたり。

 魔法世界の生徒達の実習として呼んだり。

 

 もちろん侵略者側にだ。

 

 

 さすがに未来ともなれば俺や家族の名がそれなりに売れている訳で、はっきり言って侵略なんてほぼ起きない。

 学園結界が消えていても、やって来るのは盗賊というかコソ泥や、暗殺者という名のバカとかその程度。

 

 学園の安全を考えれば無いに越したことはないが、演習という意味でいうとこのイベントは結構おいしいのだ。

 だから相手側を増やして大規模な侵略戦に仕立て上げているという訳だ。

 

 当然、敵側にはそれを知らせない。

 麻帆良近くまで来て、自分達以外にも侵略者がいる、と初めて知るのだ。

 自分達数人以外にも大規模な侵略者達がいる、と知れば当然だが敵の士気も上がる。

 

 そうしてやる気を上げてもらっているのだ。

 

 なにせ、実際の数で言うと……

 

 麻帆良側とクルト&魔法学園派遣組に傭兵や盗賊団の応援組に、本来の侵略者を比率で言ってしまうと、3:4:2:1。

 麻帆良3に対して敵側7。

 でも実際は麻帆良+演習組で9に対して侵略者1。

 ぶっちゃけひどい比率である。

 

 

 そこまでしてなんでこんな事をやっているのかと聞かれると……

 

 

 やっぱり実践に近い演習というのはどこでも大切だという事だ。

 

 麻帆良側も子供達や魔法生徒の経験育成のために、クルト側も新兵の育成に大いに役立っているのだ。

 

 さらに盗賊団、といってもトレジャーハンターの類なのだが……それらや傭兵とは金銭による横の繋がりのために。

 なにせ情報だけなら結構なモノを持っているし、金さえ払えば確実に味方に付いてくれるのだから、繋がりはあって損はしない。

 

 そういった理由もあって、この侵略は未来でも大きなイベントとなっていた。

 

 

 

 そして俺達家族はそんなイベントに毎年参加しているのだ。

 

 はっきり言って……

 こんな統制も取れていないただ数だけの多い手勢など、雑魚でしかない。

 

 先ほども言ったが、向うでは新兵や経験の浅い兵とはいえ一つの軍隊を相手にしているのだ。

 連携のレベルでは雲泥の差だろう。

 

 というかこっちの連中に連携なんて頭は無い。

 自分が手柄を取ればそれでよし。

 もし他の輩が取るのなら。

 

 そんな連中の集まりなのだ。

 

 そして傭兵団や盗賊団もそれなりに大規模なギルドの連中だ。

 外道はしないとはいえ実力は高くそれなりに統制もある。

 

 こちらの奴らに比べるのも悪い。

 

 しかも頭でっかちで視野が狭いのなんのって。

 勝てて当然とか失敗するわけないじゃんプギャーとか、なぜか敗北を考えない連中ばかりなのだ。

 

 とは言っても数だけは多いのだ。

 準備は万全にしておくにこしたことはない。

 

 

 というわけで俺たちも全力でやります!

 

 

「さて……じゃあやるとしますか!!」

「了解ですわ」

 

 カティが髪を後ろで縛りポニーの形にしながら、

 

「任せといてよ」

 

 アスカが愛用の大剣(チャチャゼロからのプレゼント)を担ぎながら、

 

「問題無い」

 

 トウヤが眼鏡を仕舞って珍しくやる気を出しながら、

 

「はいな」

 

 コノハが笑顔で手を挙げて、

 

「うむ」

 

 デュナミスが静かに頷く。

 

 

 全員準備は万端、やる気満々のようだ。

 

 

 

 ならば――

 

 

「現在、学園都市の重要な守りである結界は完全にダウンしている。

 点検終了の2400までの間の防衛が俺達の今回の任務だ。

 達成時間までの間、学園の防備はゼロと言っていい。

 まずはなにより防御の底上げが必要だ」

 

 

 声を張り上げながら今回のイベントの全容を簡素にだが伝える。

 

 内容は拠点防衛。

 広範囲に渡る拠点の数々を的確に防衛する必要がある。

 どこか一つでも落とされれば負けという高難易度イベントだ。

 まず必要なのは防衛のための手順。

 

 

「現在、学園所属の魔法先生及び魔法生徒たちが各所にて防衛にあたっているがそれだけでは心もとない」

 

 

 防衛用の人員ははっきり言って少ない。

 全員合わせても100を超えないのだからしょうがないが……

 

 ならばまずは敵の進行を遅らせる事。

 つまりは時間稼ぎ。

 

 適役は……

 

 

「近衛木乃葉!」

「はいな!」

 

「木乃葉は広域結界を展開し侵入者の進路を限定しろ。

 敵の進行を出来るだけ遅らせるんだ」

 

「任せてぇな。ウチの結界術はホンマに凄いんやから」

 

 

 木乃葉は家族の中でも一、ニを争う結界術の使い手だ。

 戦闘系の技術に関しては難があるが、その分補助系の技能にはかなりの才能を見せた。

 

 それにしても……年長の子供達はなんかしら偏った技能持ちばかりだなぁ。

 

 逆に下に行けば行くほど万能な割に非力になるんだけどな……やっぱり偏ってんなぁ。

 

 

 

 次は敵の進行を遅らせ動揺させる事。

 連携が少ない分、隣にいる輩が倒されれば次は自分もと思い士気が下がるのは当然のこと。

 

 これに必要なのは単騎で動けてなにより奇襲、及び突撃戦を得意とする者だ。

 

 つまり、

 

 

「神楽坂明日香!」

「はい!」

 

「明日香は最前線にて敵の勢いを削げ。

 後方に流しても構わない、とにかく敵をかく乱するんだ」

「それが一番適任かな? 出来るだけ時間は稼ぐわ」

 

 

 前にも言ったが、明日香は長時間の戦闘は不得手だ。

 だから奇襲しすぐに移動、隠れて体力を回復しまた奇襲といったヒットアンドウェイ作戦が一番確実なのだ。

 それにあの性格である。

 敵を怯えさせるには十分過ぎる。

 

 ただ本人が自重してくれるかが一番の問題でもあるが。

 

 

 

 次はばらけた敵への対処だ。

 より広範囲を見渡せて、なによりいつでも冷静に対処が出来る者がベスト。

 

 それは、

 

 

「宮崎トウヤ!」

「はい……」

 

「トウヤは遊撃にて敵を各個撃破しろ。

 広い視野を持つお前なら戦線を維持することも出来る筈だ」

「まあね……やれるだけはやる」

 

 

 年長組一番の万能選手であるトウヤならば問題なくこなせる筈。

 それに熱くなりにくい性格だ。

 冷静に戦線を見極めることも出来るだろう。

 

 

 

 そしてなにより広域戦だ。

 各戦線、各防衛地点の状況など情報がなにより大事だ。

 

 これの適任は一人しかいない。

 

 

「カティ・A・S・マクダウェル!」

「はい!」

 

「カティは戦線の情報を逐一報告してくれ。

 お前の技能なら戦線の様子もすぐに分かるからな」

「楽な役回りな気がしますが……存分に役には立ちましょう我が父よ」

 

 

 精霊との親和性を考えればカティ以上の適役はいない。

 各地の精霊を監視として使って情報をまとめ上げるのだ。

 

 さらに精霊を介しての念話も使えるため情報戦ではかなりの実力を有する。

 とは言っても未来じゃ千雨や茶々丸がいるから負けるんだけどね。

 てかあいつらチートだし。

 

 

 

 で、肝心の俺の仕事だが。

 

 

「俺は木乃葉の魔力タンクだな」

 

「……君は戦わないのかね?」

 

 

 学園長がごもっともな質問を返す。

 そりゃ当然だな。

 

 戦力が欲しいと言っているのに肝心の俺が戦わないって言ってるんだから。

 

 

「千の雷を連発していいのならやってもいいが?」

「む……」

 

 もちろんそんな大規模魔法なんて使わなくても戦えますけどね。

 

 はっきり言えばやれないことは無い。

 だが学園側の連中にあまりいいイメージが無いと思われるためやめておく。

 

 あまりに高い実力を見せても逆にお前は何者だと不信感を抱かせるだけだ。

 親父と勘違いされても困るしな。

 

 

 

 というわけで、麻帆良大停電祭り、行ってみよー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、まさか……ナギくんの魔力を借りているとはいえ、一人でこれだけの大きさの結界を維持するとは……」

「木乃葉は補助系の技能に長けてるからな」

 

 

 学園長も驚いていたが、木乃葉は俺の魔力を使っているとはいえ一人で学園全体の三分の二をカバーする程の結界を維持しているのだ。

 年齢がネギ少年と同じという事を考えてもとんでもないことだろう。

 

 さすがは極東一の魔力量を誇る母を持つだけの事はある。

 最近は容姿の方もお母さんの木乃香に似てきたんだよな。

 黒い長い髪で大和撫子……というよりは日本人形って感じかな?

 

 

 木乃葉はウチの家族の中でも屈指の補助系特化型だ。

 回復はもちろん強化や支援、防御系の術式にも長けた補助のエキスパート。

 木乃葉がいるだけで戦闘の幅が広がるし長時間の戦闘も可能になるのだ。

 

 そのかわりに戦闘系の魔法は射手程度しか使えない、というか適正が無い。

 中位以上の攻撃魔法を使おうとするとどうしても集中が乱れて暴走してしまうのだ。

 単純に相性の問題ではあるのだろうが、これはさすがにどうしようもない。

 

 まぁ別に個人防御に集中すればあのフェイト達も使っていた曼荼羅のような多重高密度魔法障壁をさらに重ねて張れるし。

 さらに対障壁破壊まで付与出来るし。

 計算上は核攻撃の中心に居ても無傷どころか鼻歌うたって余裕とか……

 最悪は防御しておけば戦闘回避出来るチートキャラだからな。

 

 攻撃が出来なければ防御にステ降って結界で殴ればええやん、というラカンも真っ青な回答をして下さったお人です。

 

 

「じゃが所々穴があるようなんじゃが……」

「ああ、それはワザとだ」

 

「それな、ワザと穴を作っておけばそこを見つけた侵入者がしめしめって思て通るやん?

 でもって通ったそこに罠を張ってるんよ」

 

「しかもエグイ奴をな……」

 

「侵入者さん達の魔力搾り取って結界の維持に廻しとるんよ。

 侵入者も撃退出来て結界も強化出来る。

 一石二鳥やろ?」

 

「……」

 

 

 黒いよ木乃葉さん!

 学園長も絶句するレベルです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わってとある戦線の一つでは、

 

 

「ケッケッケッ……

 その程度なんだぁ……その程度でこの学園落とそうだなんて考えて来たんだぁ……

 安い頭もここまで来るとタダで転がしたくなるわキャハハハハ!」

 

 

 敵味方全員が引くほどに明日香が絶賛大暴走中。

 今も鬼の頭蓋を踏みつけながら高笑いをしている。

 

 既に服は返り血でドロドロ。

 獲物である大剣にも臓物やら肉片やらがこびりついている。

 もちろん鬼のである。

 

 術者の方はなんとか捕獲できている。

 おもに周りのメンバーのおかげで。

 

 

「……本当になんとかなりませんか彼女?」

「無理……」

 

 

 補佐役という貧乏くじを引いたのは高音・D・グッドマンと佐倉愛衣の二人。

 そして途中で合流したトウヤだ。

 

 とはいっても今は遠巻きから眺めているだけ。

 

 

「敵側には効果的に戦意を削いでいますけど……

 私達の方まで戦意落としにかかっているような気がしてなりませんわ」

「明日香の後衛をやるときはいつもそんな感じ」

 

 

 慣れないとただただ明日香の解体ショーを見せられ続けるだけなのだ。

 止めに入ると巻き込まれますのでお気を付けを。

 

 最悪は暴走状態に入った明日香の相手をしないといけないという強制イベントが発生する。

 

 

「……苦労してるんですね」

「うん……」

 

 

 さすがの高音も同情してしまったらしい。

 どうも高音のヘイトが少ないようだが、カティと同じクラスという事もあってうまくやっているということだろうか。

 

 

「きゃははははははは~!

 もろいよもろいよボロボロだよぉ。

 そんなもろくて壊れやすくてボロボロでぇバラバラでぇいったい何をさぁ奪いに来たのぉ?

 ワタシに聞かせてごら~んごらぁん、ねぇ、ねぇ、ねぇねぇねぇ?

 あ、ゴメ~ンきゃはは、鬼さんの口とアゴもうバラバラだったぁ。

 これじゃあしゃべれないな~い、あっははははははははははははぁ」

 

 

 

「愛衣さんが戦線離脱しました……」

 

 

 あまりの惨状に見ていた愛衣は耐えられず茂みの中へ。

 何をしているかは乙女の秘密という事でご配慮を。

 

 佐倉愛衣、アウト~!

 

 

「あれを見てはしょうがありませんわね……

 さすがの私もあれはグロイですわ」

 

 

 高音も口元をおさえている。

 表情も青く、かなりキツイご様子。

 どうやら彼女も限界のようだ。

 

 

「エチケット袋……いる?」

「なぜ常備しているんですか?」

「いつものことだから……」

 

「お借りします」

 

 

 トウヤから紙袋を貰い受けると急いで茂みの中へと消えていった。

 こちらも何をするかは内緒で。

 

 

「高音さん戦線離脱します……」

 

 

 高音・D・グッドマン、アウト~!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何をやっているのかしらね、あの二人は」

 

 

 こちらは麻帆良上空にいるカティである。

 

 精霊を使っての通信が可能なので魔法陣も無く空に浮かんでいる。

 

 

「はぁ……いつもの事とはいえ明日香はなぜあんな風になってしまったのでしょうか?」

 

 

 見えないが周囲に漂う精霊一同全員がカティを慰めていたりする。

 

 ちなみにカティは立っているのではなく、精霊達に座る形となっている。

 ぶっちゃけ女王様スタイル。

 

 周りにいる精霊が召使のように立ち並んでいる辺りまさにソレ。

 

 

「考え込んでいる時ではありませんでしたね……」

 

 

 いつまでも身内の問題で頭を考えている場合ではない。

 なにせ今も敵の襲撃は続いているのだ。

 

 作戦の指示を出すことが今のカティのやるべきこと。

 

 

「精霊・コンタクト。

 麻帆良全域のマップを表示してくだい」

 

 

 精霊達に命令を出し、各ポイントに配置した精霊からの監視データをまとめ上げる。

 表示するのは敵・味方の現在地。そして敵の魔力の流れだ。

 

 その全てを純粋精霊のみで行っているためカティ以外には感知されることのないという超ステルス性能だ。

 なにせ敵の真横にいたりするのに一切気付かれていない。

 

 余談だが相坂さよも同じ事が出来る。

 まぁ向うは本人なんだけどね、

 

 

 そしてカティはマップに表示された敵を発見した。

 

 

「西のA4地点でトラップを抜けた一団があります。

 高畑先生と瀬流彦先生はそちらの防衛に移行して下さい」

 

『了解したよ』

『すぐに向かいます』

 

「空いた穴にはそれぞれ龍宮生徒とガンドルフィーニ先生を」

 

『じゃあ私は高畑先生の抜けた方へ行かせてもらうよ。

 その方が近いしね』

『では私は瀬流彦君の方へ』

 

 

 近隣にいる人員を動かして敵の進路を塞ぎ、さらに後方の人員を動かして今後の対処も考慮する。

 やっている事はさながらチェスだ。

 

 

「北東B1の地点で子鬼が湧いてます。

 術者のトラップのようですので警戒して排除してください」

 

『分かりました』

 

 

 この戦場をチェスの盤上とするなら、正面しか見えない敵の陽動など陳腐な悪戯でしかない。

 

 

「南西E5からE6の地点で侵入者の影を探知。

 少数ですが手練れのようです。

 桜咲生徒と葛葉先生、迎撃をお願いします。

 C6地点から迂回すれば敵の後方に出れます」

 

『は、はい』

『気を付けて対応します』

 

 

 ならばこの盤上を制するのは私だ。

 守りきる。誰も、死なせはしない!

 

 

「救護班の方、北のA3地点付近で戦闘していた魔法先生から救護の要請です。

 軽傷ですが戦闘に支障が出るため一時後退したいとの事です。

 交代人員を向かわせますので救護者を連れて下がって下さい」

 

『す、すまない……』

 

『はい!』

『すぐに向かいますので気を付けてください』

 

 

 この場を任された限りは全力を尽くす。

 

 

「……西地点で交戦していた高畑先生と、瀬流彦先生の戦闘終了を確認。

 高畑先生はA1地点まで下がった後F4地点へ移動し追加人員と合流後……援護に参加してください。

 瀬流彦先生は念のためその場で一時待機し周囲の索敵をお願いします」

 

『分かった。瀬流彦君、任せたよ』

『はい。索敵開始します』

 

 

 帰ったら……セイナと一緒に、寝ましょうか……

 

 

「トウヤ……そこから二時の方向に敵の感……あり。

 狙撃は出来る?」

 

『問題無い……』

 

 

 

 

 

 

 

 明日香は高音さん達に任せてある。

 だから今の僕は一人、ただ戦闘に集中できる。

 

 敵の位置は姉さんから正確なモノを教えてもらった。

 狙撃も、龍宮叔母さんに習っていたから大丈夫。

 

 後はそれを自分がどれだけ正確にトレースできるかだけ。

 

 そして今日の僕はなにより絶好調だ。

 

 

「雷の射手・24矢……連弾・炎の射手・12矢……放て!!」

 

 

 雷の矢に合わせて炎の矢を追撃として放つ二段構えの射手だ。

 敵方はいきなりの攻撃で慌てるがさすがに致命的なモノにはならない。

 

 そもそも僕もこれで落ちるなんて思っちゃいない。

 

 だってこれは陽動だから。

 

 

「残念……今のは全部目隠しと陽動……

 正解はこれ」

 

 

 瞬動と合わせて術者の背後に移動する。

 全てはこの一瞬の移動を隠すため。

 

 そして術者の背中に手を添える。

 

 気付いてももう遅いよ。

 もうとっくに、僕の間合いだからさ。

 

 

「白雷掌!」

 

 

 お父さん直伝の技だ。

 ゼロ距離でしか威力が無いけど、耐性の無い相手になら十分すぎる。

 

 術者の意識を刈り取れば周囲にいる鬼は再起動をしているかのように一瞬動きを止める。

 もちろんだけど、そんな隙は逃す筈がないよね。

 

 

「……追撃」

 

 

 両手を周囲の鬼たちへと向ける。

 

 そしてこの術式は、あの超叔母さんが作った専用の術式。

 両手両指に魔法媒体の刺青を施した異形の技。

 

 

「装填術式拳壱乃型『雷の暴風』……

 轟雷連撃」

 

 

 範囲全てに雷が襲う。

 雷の暴風を両腕に付与して連続で攻撃する、無詠唱で使える僕の奥の手の一つ。

 

 後で再装填しないと使えない大技だ。

 

 あとは詠唱込で頑張らないとね。

 

 

 さて、そこで見ていた君たち、

 

 

「もちろん君たちも逃がさない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、子供たちが色々と活躍する中。

 あのデュナミスは何をしていたかというと……

 

 

「で、私はなんで子守なんだ?」

 

「他に適任がいねぇんだよ」

 

 

 ユクとセイナのお守をしてもらっていた。

 だって家に子供たち置いておくと心配なんだもん!

 

 それにお前は戦闘となればアレな姿に変身して戦うんだろ?

 

 変身したら完全に悪役だしな……変身しなくても悪役だけどな!

 

 タカミチの前にでも出してみろ。

 その場で最終決戦勃発するぞ!

 なにせ学園長以外に紹介してないから。

 

 学園長にも名前しか紹介してないから!

 

 

「心配なのは分かるのじゃが……どう見ても戦力になるであろう二人がほぼ観戦とはのう……」

 

 

 言いたいことは分かるけど、そこは大人の事情と受け取っておいてくれ。

 

 

 

 

「さて……向こうもそろそろ終わる頃だな」

 

 

 視線を麻帆良大橋に移す。

 

 そこではネギ少年とエヴァが魔法の打ち合いをしていた。

 下の方では明日菜と茶々丸がでこピンし合っている。

 

 うんうん、懐かしい光景だ。

 

 それに完全に手加減してるよなぁエヴァは。

 わざわざネギ少年と同じ数の魔法の射手で相手をするなんて。

 

 そして最後はこれまた同種の魔法の打ち合い。

 雷の暴風と闇の吹雪のぶつかり合いとなった。

 

 だが地力の違いもありネギ少年は押されてしまっている。

 

 

「通電まで時間あるし、エヴァお母さんの勝ちやね」

 

「いや、そこの学園長が手を打ってるから無理」

 

「ふぉ!?」

 

 

 でなければ復旧時間が早まる筈がない。

 

 最初に説明したが普通の作業じゃないんだ。

 そもそも早められるような作業じゃないんだよ。

 

 なら誰かが意図的に細工をするしかないじゃないか。

 そしてそんな事が出来る権限を持っているのは……

 

 

「知らないとでも思ったか?」

「……知っておるんじゃな」

 

 

 学園長くらいしかいない。

 まったく過保護な事で。

 ああ、それは人の事は言えないか……

 

 

「そりゃあね。

 だが、一度はちゃんとした敗北を知っておいた方がいいかもと思っただけだ……」

 

 

 天才だってもてはやされ過ぎてもな。

 なにせ最初の敗北はナギ、というかクウネルだしな。

 

 勝ちすぎても鬱な事にしかならない。

 

 

 さて、そろそろ時間だな。

 学園結界が復活してエヴァは再封印される形となってしまった。

 しかも今日は満月ではない。

 こうなってしまえばエヴァは普通の魔法使いと同レベルかそれ以下しか実力が出せないのだ。

 

 さすがにこれでネギ少年に勝つのは難しい。

 

 

「ああん結界が復活してもうたぁ!」

 

 

 気持ちは分かるが木乃葉よ。

 結界が復活しないと学園が危ないんだ。

 

 確かにエヴァが負けるってのも子供心にはなぁ……

 

 

 ん?

 

 何か違和感が……

 

 

「エヴァの落下のタイミングが早すぎる!?」

 

 

 記憶よりも落下のペースが速い。

 しかも橋からかなりの距離が出来ている。

 

 

「なんと!?

 ネギ君も絡繰くんも出遅れてしまっておる。

 このままじゃエヴァンジェリンが川に落ちてしまうぞい」

「それは不味いて。エヴァお母さんは泳げないんよ」

「ふむ……先ほどの魔法の余波で川が凍っているな。

 真祖ではなくなった彼女では、叩きつけられてたたではすむとは思えない」

 

「くそっ!!」

 

 

 なりふり構わず全力で飛び出す!!

 

 だが橋までは距離があり過ぎる。

 

 俺の全力でもこの距離は!

 

 くそ!!!

 

 

「間に合えええええええええええええええっ!!!!」

 

 

 必死に手を伸ばすが届かない。

 

 

 ネギくんも茶々丸もまだ距離が離れている。

 

 

 そして無常にもエヴァは氷漬けとなった川へ……

 

 

 

 

 駄目か……駄目なのか……

 

 

 

 エヴァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然の衝撃と浮遊感。

 

 わずかに残る意識の中、遠くにアイツの姿を見ることが出来た……

 

 

 アイツが来てから私の人生は変わった気がする。

 

 最初は旦那だとか、子供とか言われて困惑もしたが。

 最近では気が付けば微笑んでいる気がする。

 

 

 セイナは私が抱いてやると本当に喜んでくれる。

 私なんかに抱かれてあんなにはしゃぐなんてな……

 

 

 ユクは家に行くと真っ先に私を迎えてくれる。

 口足らずでたまに何を言っているか分からないが、嬉しいという事は私にも分かる。

 

 

 木乃葉は大人しいが、なんだかんだで甘えてきている気がする。

 私がセイナを抱いているとよくすり寄って来るしな。

 

 

 トウヤはよく分からん。

 だが私が居るときは自分の部屋ではなくリビングにいると言っていたな。

 

 

 明日香は逆に分かりやすいな。

 事あるごとに抱きしめに来るからなアイツは。

 

 

 カティはよく悪態を付き合っているがアイツもアイツで嬉しいようだ。

 なんだかんだで甲斐甲斐しくしてくれる。

 

 

 子供たちはみんなイイ子ばかりだよ。

 

 アレが将来生まれてくると思うと、それだけで気が早ってしまう。

 

 

 

 まったく、アイツが来てから私の未来は明るいとどうしても思えてしまう。

 

 

 なぁ、ナギ……世界は光ばかりだ。

 私には眩しすぎるくらいにな。

 

 

 なぁ、ネギ……私に未来を見せてくれてありがとう。

 私にも希望が、あるんだな。

 

 

 

 たとえそれが夢でもな――

 

 

 それだけで、私は今死んだとしても、後悔は無い――

 

 

 

 ああ、だからそんな顔をするな。

 

 

 茶々丸の事を頼むぞ、コイツは寂しがりやだからな。

 誰かが傍にいないとダメなんだ。

 

 なんだったら一緒に向うに連れて行ってやってくれ。

 きっとその方がコイツのためになる。

 

 

 

 ネギ……

 

 

 

 

 ああ、もう氷が目の前に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グニョ

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 するとどうしたことか。

 

 エヴァの眼下の氷が形状を変化させたのだ。

 

 まるでエヴァを掴むかのような巨大な手へと。

 

 

「痛ぅ……

 こ、これはいったい……」

 

 

 氷で出来た手は衝撃を吸収するかのように形を変えつつエヴァを抱き留めた。

 

 これにはさすがのエヴァも困惑していた。

 

 いったいなにが起きたんだ?

 

 

 

 

「危ないですよ?

 飛べもしないで氷の海に飛び込むなんて、死んでも知りませんよ」

 

 

 すると氷の中から一人の女性が現れた。

 

 身長は茶々丸くらいで、どちらかと言うとスレンダーな体格。

 顔は綺麗に整っているが表情が乏しい印象を受ける。

 

 そして髪は、月の光を反射する程に輝く美しい銀色。

 

 

 

「貴様はいったい……」

 

「え、私ですか?」

 

 

 

 眼下に見下ろすソイツを、俺はよく知っていた。

 

 

 まさかお前がいるなんてな……マジで予想外だよ。

 予告なんてしてなかったんだぞ?

 

 

 

 

「はい。

 そこにいらっしゃる彼の……

 アナタの愛妻であるスイ・セクストゥムですよ。

 本当に会いたかったです、旦那さま」

 

 

 

 まさかのフェイト亜種だよ。

 マジで誰が予想したよ?

 

 

 

 

 

 

 




というわけで予想外の彼女の登場です。
一切告知せずにやったった。伏線一個でマジでやったった。

これは以前投稿していた理想郷の感想欄で、彼女の人気が高かったのが登場の決め手となりました。
彼女の登場のおかげで次話の執筆難航中ですよまったく……
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