今回は買物編……と思ったらなんで居るお前ら!?
予想外の事が起きて主人公も大慌て!
さてどうなる?
ではドウゾ
「ナギ先生、よろしいでしょうか?」
とある日の放課後。
茶々丸に突然呼び止められた。
「ん? どうかしたか茶々丸……ってなんとなく要件は分かった」
「……え?」
何か要件があって呼んだのだろうと思ったが――その何かがすぐに分かってしまった。
なにせいつもと表情が違うのだ。
茶々丸は機械の体だから表情が少なく感情が読み辛い……だなんて誰が決めた!?
未来じゃ幸せそうに笑うし、子供たちがいたずらをすれば眉を吊り上げて怒るし、悲しい事があればちゃんと涙も流す。
照れれば顔が赤くなってしまいには耳まで真っ赤になるし、ネジを巻いている時なんて……とにかく分かりやすく表情が変わる。
むしろ表情の制御どうやってんだってレベルで多種多様な表情をするのだ!
何度『あれ、ガイノイドだよな?』って思ったと思っているんだ!?
これで子供が作れませんと聞いた時は本気で信じられなかったからな?
温もりあるんだぞ? 温かいんだぞ?
抱きしめると心音聞こえるんだぞ?
キスすると甘いんだぞ? 蜂蜜かと思うくらいに甘いんだぞ?
触れるとほんのり赤くなるんだぞ? キスの痕付くんだぞ?
感度高いんだぞ? むしろ高すぎるくらいなんだぞ?
濡れるんだぞ? 溢れ出るんだぞ?
S●●出来るんだぞ? ●●するときヒャンッとか言うんだぞ?
●ぎ声だって出すんだぞ? 可愛い声で●くんだぞ?
感じ過ぎると●●っこ出るんだぞ?
絶●するとビ●ン●クンて跳ねるんだぞ?
終わった後は温かいですってお腹さするんだぞ?
なのに妊娠機能は無いと?
さすがの超様でも生命を生み出す機能は作れなかったんだぞ!?
茶々丸がどんなに寂しそうだったか分かるか?
茶々丸がどんなに申し訳なさそうに謝ったか分かるか?
茶々丸がどんなに影で泣いたか分かるか?
茶々丸がどんなに他の子供たちを見て羨ましそうにしているか分かるか?
茶々丸がどんな気持ちで子供たちのお世話をしてるか分かるか?
おい分かんのかよ!!!
……うん、脱線した。
これでもかって脱線した、感じろ俺の茶々丸への愛!
どうか神様、彼女に子供を!!!
とりあえずだ、うん。
例え今のほぼ無表情な茶々丸の顔であっても、俺は何を言いたいのか理解出来るという事だ。
エヴァが呼んでるとか、猫の事とか、仕事の事とかいろいろと分かる。
そして今回は少しの緊張と心配の混ざった顔をしてる。
つまり……
「超鈴音が呼んでいる……だろ?」
茶々丸にとって俺が会うとマズいと思う人物って事だ。
「……イエス、ナギ様」
さて、いきなりの問題事に突入だが、いっちょやりますか!
第10話 『 買物・尾行・誕生日 』
突然だが、旅行と言えば何かと準備が必要なものである。
着替えにはじまりティッシュにハンカチ、タオルに洗面具、はぶらしに酔い止めはもちろんの事、カードゲームや絆創膏といったモノも是非用意しておきた。携帯を持って行くなら充電器も必要だし音楽プレーヤーを持っていくなら予備の電池だって必要になる。さらに男だったら髭剃りも欲しいし、女性だったらお化粧セットも必要になるだろう。
はっきり言って考えればキリがなくなってくる。
だがそれが旅行の醍醐味と言われれば納得せざるおえない。
なにより楽しいのだ。
旅行の準備とは一見大変そうではあるが、向うで何をしようとか、これがあれば楽しいだろうとか、これを持っていけば助かるだとか、そういったことを考えながら準備していると大変さよりも楽しさが上回るものだ。
特に子供などはあまりのワクワク感のために夜も眠れない程だろう。
そんなみんなが楽しみにしている旅行である。
そしてもちろんこの家族もまたそんな者達の一つである。
「ねぇカティ姉、アレなんてどうかな? どうかな?」
「私服で着るにしては少し派手過ぎますね。
動くことを考えるともう少し落ち着いたモノの方がいいと思いますよ」
「そっか~、じゃああっちのはどうかな?
ジーンズだし動きやすそうだよ」
「アレは薄手過ぎますね。
もし着るなら魔法でコーティングする手間がかかりますよ」
「うわマジ? じゃあどれがいいかなぁ~」
明日香とカティは原宿の街でウインドウショッピングを楽しんでいた。
目下の目的は修学旅行中に着る私服選びである。
明日香としては可愛くておしゃれなモノを選びたいようだ。
だが、向うで起こるであろう事件を知っているカティとしてはどうしても動きやすく頑丈なモノを選びたい様子。
なかなか両者の意見が合わないまま次へ次へと店を渡り歩いている。
ちなみに明日香は暖色系の明るい色を好んで選ぶ傾向にある。
なにより可愛さ重視で、フリフリだろうがリボンだろうが気にせず着こなしてみせる強者だ。
肌の露出は特に気にしていてチラリズムにはさらに入念に意識しているそうな。
胸元の露出は控えめで、わずかにブラが覗かせる程度に。太ももは強調し下着は見せずなおかつエロチックに攻め、ニーソックスなどで脚線美を重視。
がコンセプトなのだそうだ。
ズボンよりもスカートを、下は薄手で寒いなら上に羽織れ。冬だろうが関係なくセクシーさを追求するのだという。
カティは逆に寒色系の静かな色を選ぶ傾向だ。
大人っぽい演出で色気を出すことを忘れずに。肌の露出は控えめで、どちらかというと線でセクシーさを表現するようである。
そのためスカートよりも、線がはっきりと出るきつめのズボンを愛用している。夏場は短パンにストッキングと吸血鬼だけあって肌の露出には特に気を付けている様子だ。
本人曰く出来る女をイメージしており、綺麗さよりも格好よさを追求している感じである。
ちなみにゴシックは死んでも嫌だそうだ。
そしてそんな両者の間に挟まれてしかも腕まで組まされているナギとしては堪ったものではない。
「なんで女の買い物ってのはこんななんだ?」
「私に聞かれても困ります」
未来では散々デートと称して奥さん方のショッピングにつき合わされて来たナギである。
それでも女性の買物時間には慣れたものじゃない。
ましてや下着売り場なんて所に連れて行かれた日にはもう……
試着室の前に延々と立たされてドレが似合うとかこれなんてどうとかどっちが似合うとか……
どう答えれば正解なのかまったく理解できないのだ。
これがまだ一人ならばいい加減どう返答すればいいのか分かってくるものだが相手は残念なことに複数人。
毎回相手が違えば答えも違ってくる。
ましてやその日の気分で答えが更に変われば……
もう一度言うが女性の買物は理解できない。
「でもスイはそうでもないよな」
「私の場合は機能性さえあればいいのですが……」
スイの衣装選びは本人も言っているが機能性重視でデザインはあまり気にしていないようである。
シンプルと言えば聞こえはいいが大半は地味と答える選択だ。
だからとある理由が無い限りは買物に時間を掛けたりはしない。
「そんなこと言ってないでもっと可愛いの選ぼうよ!
私が選んであげるからさスイママ」
「そうですわね、この際とことん着飾ってみますか」
「え? え? え?」
なので誰かと買物に来た時は大抵今のように着せ替え人形となる。
見た目が大人しく、肌も白くてまさに人形といった美貌なのだ。
確かに着せ替えてみたい気持ちはよく分かる。
ちなみにだが、スイがなぜ今回の買物に付き合っているのかと言うと。
単純に着替えが無いのだ。
なにせ過去へ来たスイは着替えを持って来ていなかったのだ。
しかも学園都市内で探そうにもスイに合ったサイズの服はほとんど売っていなかったのである。
なぜならスイのプロポーションはまさに理想の体型で、まさに人形という内容だからだ。
身長175㎝でバスト92のEでウエスト65、ヒップ93と実は那波よりも理想の体型に近い。
というかどう考えても数値を弄っている。
そんな完璧な体型をお持ちであるがために生徒対象のお店がほとんどの学園内ではサイズが手に入らなったのである。
だから旅行の買物のついでにスイの服も探しに来ていたというわけである。
「あ、お父さーん!
私達もう少しスイママの服探してるから、どこかで暇つぶしててよ」
「そうですね、さすがに私達の買物に付きあわせ過ぎましたし。
それにスイお母様のコーディネイトをお披露目する楽しみもありますので」
「私の意見は完全に無視していますよね貴方たち……」
「分かったよ。
終わったらメールくれ」
「え、あ、ちょっと旦那様?」
どうやら二人は本格的にスイの着せ替えに入るようだ。
どんな衣装になるか少し楽しみであるが、今はひとまず解放された事を喜ぶ。
生贄にされたスイには後でデザートでも奢ってやろうと思うナギであった。
「とはいっても、暇を潰せと言われてもなぁ。
どこに行ったものか」
手持ち無沙汰になりどうしたものかと思案する。
このまま買物をするにしても特に必要なモノは無い。
だからといっておっさん一人でウインドウショッピングというのもなんだか寂しい気がする。
喫茶店でも探して待つのが一番か。
そう思い適当な路地へ入ろうとしていたら。
「おや、先生殿ではござらんか」
「長瀬か、珍しいなこんな所で」
ばったり偶然、長瀬楓とエンカウントしてしまった。
「なになに、拙者も買い物のために原宿まで来ていたでござるよ。
もちろん先生殿の姿を途中で見かけたから尾行していたわけではござらん」
「尾行してたのかよ」
どうやら麻帆良から出る際に長瀬に見つかっていたようだ。
そのまま買物のついでにと後を付けていたらしく、一人になったのを確認して合流してきて現在に至ると。
どうやらナギの周りはストーカーが多いようである。
「ストーカーではござらんよ」
「地の文にツッコむなよ。
で、どうせお前の事だから一緒に行こうとでも言う気だろ」
「もちろん先生殿さえ良ければご同行願いたいでござるな。
あ、別に奢って欲しいとかはないでござるから安心して欲しいでござる」
そう言うと後ろ手に持っていた紙袋を見せてくる。
どうやら買物の方は終わっているというアピールらしい。
「あっそ……
まぁ後で喫茶店ででも甘味の一つでも奢るわ」
大丈夫と言われてもそこは男であり大人である。
年下の女性と一緒に喫茶店に入って何も奢らないのでは示しがつかない。
「それは嬉しいでござるな。
ではご一緒に」
長瀬はすかさずナギの隣へ移動し腕を絡める。
そしてそのまま肩へと寄りかかるように体重を掛けてきた。
彼女の身長は181㎝と女性にしてはかなりの高身長で、大半の男性は彼女よりも背が低いということになる。
そしてナギはそんな彼女よりも背が高く、彼女でも楽に寄りかかることが出来た。
テレビのドラマなどで見るしぐさを真似てみたとはいえ、彼女自身すんなりと出来た事に内心では驚いていた。
自分でも積極的な行動だったため顔がどうしても熱くなってしまう。
顔を隠しつつ彼の顔を覗き見るが、表情も大して変えず、むしろまったくコイツはなどとちょっと呆れてさえいるようだ。
奥さんが複数いると既に聞いていた長瀬もこれにはちょっとおもしろくないと感じてしまう。
さすがに慣れずぎだろうとも思うが……
これ以上は自分の方が耐えられなくなると思い自重する。
長瀬自身、彼に対して多少の好意は持っているつもりだったが、このやきもち具合から察するにもうとっくに落ちているのではとさえ思ってしまう。
しかも呆れているとはいえ嫌がりはせず、むしろ歩きやすいように気を使ってくれてさえいる。
まったくもって手馴れている。
これでは積極的になった甲斐が無いというモノ。
(明日香殿と確かカティ殿でござったか……二人もやるせないでござるな。
これだけ迫っても微動だにしないのでは。
より積極的になるのも分かるでござるよ)
彼の体温を感じつつ、先ほどまで同じ行動をしていた二人を思い出す。
胸を押し付けて、しっかりと自身の体温を感じさせて、心音もはっきりと聞こえさせているというのに。
この男はまったくもって気にするそぶりすら見せない。
本当に娘や子供としか見ていないのだろう。
(本当に……おもしろくないでござるな)
未来で彼のそばにいるであろう自分を思い浮かべて嫉妬さえ覚えてしまう。
いったいどうやって彼を落としたのか是非ともご教授願いたいものである。
まったく……
「こうしているとまるでデートをしてるようでござるな先生殿」
「歳の差がありすぎるわバカ」
「でも見た目的にはちょうどよさそうでござるよ」
「言っとけよ小娘」
女泣かせな男である。
ならば……
気が付かないのか気づかないフリをしているかのかイマイチよく分からないが、どちらでも関係ない。
ならばとことん甘えてやろう。
恋人同士に見えようとも、たとえ親子に見えようとも、甘えることには変わりないのだから。
いつか帰ってしまうその日まで、自分にとって一番大切な人として甘えてやろう。
別れの日に泣いてしまわないように、未練を残さぬように――
しばらく長瀬に引っ付かれながら歩いていたナギであるが、どうも見たことがある人物がとある店先に居るのを発見する。
「おや、アレは木乃香殿に……ネギ坊主も一緒のようでござるな」
「なんであの二人が……ってああ確かアイツの……」
「知っているでござるか雷電」
「それ使い方間違ってるぞ」
あからさまに使うタイミングを間違えたボケは即刻投げ捨てて本題へと戻る。
昔の記憶から、確か今日はとある目的のためにネギ少年と木乃香は原宿に買物に来ていた事を思い出す。
何を買ったとか何を見たとかよくは思い出せないが、何が目的だったかははっきりと覚えている。
なにせ、ナギにとって忘れることが出来ない日でもあるから……
と考えていると長瀬がちょいちょいと指をさしている。
「どうやら拙者たち以外にも後を付けている者がおるようでござるよ」
どうやら他にもネギ少年たちを見つけた者がいるようだ。
確か記憶ではチアリーディングの三人娘が偶然にも遭遇していた筈である。
ちょっと勘違いして色々と妨害工作をしていたような気もするが……
「そういえばチアの連中が……ってなんでアイツがここにいるんだ?」
指された方向を見てみれば確かに怪しい人影があった。
だが三人じゃない。
どう見てもひとりだった。
木乃香とネギ少年から少し離れたお店の影に、なんと神楽坂明日菜を発見したのだ。
こそこそ隠れながら移動しているところを見ると二人の後を尾行している様子。
なぜ神楽坂がここに?
記憶ではチア組からの連絡を受けた雪広あやかと共にかなり遅れてくる筈なのだが。
どうやらここでも歴史の変化が起こっているようだ。
よく見ると周囲からかなり怪しい目で見られている。
声をかけないと通報されかねない状況のためさっさと合流することに。
「こんな所で何をしてるんだ神楽坂」
「ちょっと、ナギ先生まで!? それに楓ちゃんも!?
なんで二人までここにいるんですか!?」
むしろそれはこちらの台詞である。
「俺は完全に偶然だ。
娘たちと買い物に来ていてな……」
「拙者はそんな先生殿を尾行していたでござる」
結局尾行していたのかよ!?
などと大声を出せば向うの二人に聞こえてしまうため自重する。
「じゃあなんで先生は楓ちゃんと腕なんて組んでるんですか?
ネギよりも怪しいんですけど」
「娘にもこうされていたんだが……おかしいのか?」
どうやらこの男はマジで気が付いていなかったらしい。
むしろここまで平然とされていてはやっている方が恥ずかしくてみじめになる。
せっかく度胸をだして腕に抱き付いていた長瀬もこの発言には落ち込むしかない。
「この御仁、ぜんぜん拙者たちの気持ちに気が付かないのでござるよ……これで気が付かないとなるとどうアピールすればいいのやら」
「……うんゴメン。
さすがにちょっと同情するわ、私も二人のことは見なかったことにする」
「すまぬでござるよ……」
さすがに、女の方は頬を赤らめて熱い視線を送ってると丸分かりなのに、肝心の男の方はどこ吹く風でまったく気にするそぶりも見せないとなると、なんか非常に同情したくなった。
この男は鈍感とか朴念仁の類なのだろうか?
まぁ実際には奥さんが多すぎて常時アピール状態であったがために慣れてしまっているだけである。
今更、女性に腕に抱き付かれようが、肌の触れ合い程度のスキンシップでは何も感じないのだ。
……感じないでは語弊がある。
それくらいのスキンシップは常にあったという事だ。
幽霊なために常に背中に抱き付いていた奥さんも居れば座っていると膝の上に座ってくる奥さんもいたのだ。
むしろ過去に戻ってからスキンシップ減って寂しいなと思うような状態。
触れられてむしろ安心しているくらいなのだ。
ならなんでスイの抱擁を恥ずかしいと思ったのかと言うと……
さすがに裸同士の抱擁は恥ずかしいらしい。
それだけの密着度なのだそうだ。
ガンバレ長瀬!
そこまでやれば落とせるかもしれないぞ!
でもウチは18禁行為は許可しないからな!!
……散々言っている気はしなくもないけど。
話しが大分それた。
「先生の娘さんたちはどうしたんですか?」
「今は自由行動で女だけで買物してるよ。
着替えとか選ぶので相当時間使いそうだから俺は喫茶店にでも行こうと思ったんだが。
そしたら長瀬と会ってな」
「ご一緒させて頂けるという事でこうしていたしだいでござる」
「あっそ……じゃあなんで私に声なんて掛けたのよ。
そのまま喫茶店にでも行ってればよかったじゃん」
「さすがに怪しすぎて声を掛けずにはいられなかった」
「怪し!?」
「あとはあの二人が心配だから一緒に見守ろうと思っただけだ」
「心配って……やっぱり何かあるんですか?」
「いやいや、片方が先生とはいえ十歳の子供と中学生の女の子の二人だぞ?
原宿で買物だなんて普通に怖いだろ?」
よく考えてみてほしい。
小学生と中学生の二人で都会の真ん中で買物である。
普通に不良とか怖くないか?
怪しい人に連れて行かれないか不安じゃないか?
最近の子は大人びていると言っても限度がある。
これが心配にならずになにが心配と。
「それもそうだったわ……」
麻帆良に居すぎて感覚でも鈍ったのだろうか。
確かに傍から見ても心配になるのは当然だった。
その後は三人で気づかれないように尾行。
とは言っても周囲の気配なんて分かるわけも無く、どちらかというとポヤヤンといった感じの抜けてる……おっとりした二人である。
尾行は非常にラクであった。
だが、
「そういえば、先生は目立ちそうだから……
気づかれないようにこっちのサングラスを付けておいて下さい!」
神楽坂から見てもナギは顔が整っていてカッコいいのだ。
そんな美男子が隠れながら歩いていてはどうしても注目を浴びてしまう。
そのため彼女は念のために持っていたサングラスを取り出し、ナギが掛けているメガネを取ろうと手を伸ばした。
「って、おいちょっ!!?」
なぜサングラスなんてモノを持っているのかという疑問はこの際置いておこう。
とっさの事でナギも対応が遅れてしまった。
そして明日菜の手が眼鏡に触れる。
「……………へ?」
「ま、マジかよ……」
「なんと!?」
触れた瞬間、眼鏡に掛けられていた認識阻害の効果は消滅してしまった。
同時に自身にかけてあった魔法も全て消滅する。
いままで誤魔化してきた認識阻害の魔法は全て消え去り、完全に素の姿がバレた瞬間だ。
これではネギ少年に似ている事が神楽坂にバレてしまう。
どう誤魔化したらこの場を切り抜けるだろうか。
長瀬に助けを求めるべきか。
いやいっそこのまま逃げるか。
などなど一瞬の内に思案していく。
だが、肝心の神楽坂の反応は、ナギの予想していたものではなかった。
「……ナギ?」
「!」
ナギ。
今まで名乗って来たナギ・シルバーバーグという偽名を指しているにしては彼女のナギを見る瞳が違いすぎる。
まるで懐かしい人に思いがけず会ってしまったかのような、そんな瞳だ。
ならナギとは――
父であるナギ・スプリングフィールドの事か。
つまりそれは……
彼女が自身の顔を思い出してしまったという事である。
明日菜が困惑の表情を浮かべている。
それは当然の反応といえば当然の反応なのだろう。
今まで忘れていた記憶が一気に再生されているのだ。
きっと頭の中は混乱して何が何やら分からない状態になっていることだろう。
だがまさかこのタイミングで記憶を取り戻すなんて――
そんな悠長に考えている暇はどうやら無いらしい。
突然、明日菜が泣き始めたのだ。
声を押し殺す事も無く、周りの目などお構いなしに。
「ちょっ!? 突然どうしたのでござるか明日菜殿!」
「記憶がフラッシュバックしてパンクしちまったか……」
悲しい記憶が押し寄せてきて耐えられなくなったという事だろうか。
とにかく、周囲の視線も集まってきてしまっているため、ここは一度姿を隠す事に。
「いったん場所を変えるぞ、いいな?」
「……コク」
涙を流しながらも、なんとか頷いてくれたのを確認し、明日菜の肩を持って走り抜ける。
遠回りし、ネギ少年の見える逆サイドのビルの隙間へと移動してきた三人。
ナギはビルの影に隠れた所で認識を緩める魔法と防音の魔法を重ね掛け。
長瀬はネギ少年を見張れる位置について今だ泣き続けている明日菜を心配している。
涙を流し続ける明日菜を壁に寄り掛からせて、ナギはハンカチを手渡した。
しばらくの間、明日菜は無言で顔をハンカチで抑えていた。
いや、声を押し殺しているのか……
「以前はメガネを外しても違和感が残っていたでござるが……今は完全に消えているご様子。
いったい明日菜殿は何をしたのでござるか?」
明日菜を気遣い小声でナギに質問をする。
「明日菜は魔法を無効化出来る能力を持っているんだよ。
だから俺に触れた事で全ての効果が打ち消されちまった……
いつもならもっと用心していたんだがな」
「とっさの事過ぎて間に合わなかったと」
「そういうことだ」
普段であればそれとなく躱したり、話の誘導で反らすなどもしていたであろうが――いきなりの事で油断してしまっていたらしい。
あとは明日菜に触れられることを当たり前に思ってしまっていたというのもあるのだろう。
例えそれが過去の明日菜であったとしても……
十分程経っただろうか?
ネギ少年を見守りつつ二人は明日菜の回復を待っていた。
そして明日菜は涙を拭いナギを見る。
「とりあえず落ち着いたか?」
涙も収まり、呼吸もある程度整ったのを確認して声を掛ける。
「……うん」
「そっか……」
「ねぇ、聞いてもいい?」
「いまさら誤魔化したところで意味はないからな、好きなだけ聞け」
すでに神楽坂明日菜の記憶の封印は解けてしまっている。
理由は定かではないが、サウザンドマスター達と旅をしていた記憶も戻っているだろう。
泣いたことをふまえるとガトーの事も思い出しているかもしれない。
ここで誤魔化したところで、麻帆良学園にナギが居ると思われてはいらぬ誤解を受けるのは確実だ。
噂でも広がれば真っ先に疑われるのは身辺がはっきりしていないナギ達である。
最悪はその噂のせいで敵を呼び寄せてしまう事……それだけはあってはならない。
「ナギ……なの?」
「違うな……俺はネギ・スプリングフィールドの父親であるサウザンドマスター、ナギ・スプリングフィールドじゃない」
「じゃあ、なんでそっくりなのよ?」
「他人の空似だ」
「そんな訳ないじゃない!」
似ているだけの別人などという言い訳が通用するはずがなかった。
これがただの偶然ならばまかり通ったかもしれないが、狙ったかのようにその息子であるネギの近くにいるのだ。
誰だってそこになにかしらの関係性があると思っても当然のことである。
「それで納得してくれた方が俺としては好都合なんだけどな……」
「……私に知られるのは、迷惑だった?」
途端に明日菜の声が大人しいモノに変わった。
今にも泣きそうで、それでいて本当に申し訳なさそうなそんな声だ。
今までの明日菜とは違う反応だ。
「……正直なところ、出来れば知られたくはなかった。
お前たちにはあまり嘘は付きたくないからな、説明に困る」
「じゃあ聞かせて。アナタはダレ?」
「……」
真正面から真剣な瞳で見つめられる。
嘘など許さない、そんな瞳だ。
これではこれ以上変に誤魔化すのは無理そうだ。
「……もう一度だけ聞くわ。
アナタはいったいダレなの?」
「ネギ・スプリングフィールド。
二十年後の未来からやって来た、そこでショッピングしている少年の可能性の一つだ」
正直に話そう。
例え嘘だと思われても……
「……へ?」
「タイムマシンの事故で、この時代の麻帆良学園に飛ばされて来た迷子とも言うな」
「本当にネギ、なの?」
「ああ」
「信じられないわよ」
「そりゃ信じられないのは理解できる。
だが事実だ」
「じゃあ明日香って……」
「未来のお前の娘だ」
「マジ?」
「あいつも眼鏡を外せばお前にそっくりだよ。
性格は似てないがな」
「私の娘……」
「とはいっても可能性の一つだ。
もしかしたらネギ以外の誰かと結婚するかもしれないし、男の子を産むかもしれない」
この時点でナギと出会っているというだけで世界は既に分岐してしまっている。
同じになる可能性などまさに神のみぞ知る、だろう。
「どちらにせよIFの話だ。
あまり深く考えない方がいい」
「……ねぇ、そっちの私は幸せ?」
「ああ……」
「なら、納得しとく」
さすがにこれにはナギも驚いてしまう。
どうやら思っていたよりもずっと強い女らしい。
いや、そんな事はとっくに知っていたことか――
「でも明日香が私の娘かぁ……
今度会ったときどう接すればいいのかな?」
「今までどおりでいいだろ?」
「それが難しいんだってば!
……でも分かった。
先生の言う通りにそうする」
「意外だな」
「だって考えても意味無いんでしょ?」
「まぁ確かにな……
とりあえず今は、あそこにいる少年と木乃香の面倒でも見るか?」
「そうね」
そう言ってナギは明日菜の手を取り立たせる。
「まさか楓ちゃんまで知っているなんてね」
「ニンニン、少し前に教えてもらったでござるよ」
「なんで楓ちゃんに教えて他の人には教えないのよ?」
「拙者は護衛の任もあるでござるからな。
知っていた方が動きやすいと思ったのでござろう」
「護衛って……楓ちゃんもそっちの人なんだ」
「そっちというのがどういう意味かは分からんでござるが……
まぁ概ね明日菜殿が思っている通りかと」
「はぁ……まだ私が知らない事がたくさんありそうね」
「そうだな……とりあえずまた今度その説明はするとしてだ。
記憶に関してもしばらくはそのまま」
「え? 記憶を消しちゃうの?」
「記憶が戻ったことで悪影響があるならな。
まぁ多分大丈夫だとは思うが、可能性の一つとして考えておいてくれ」
「あまり考えたくないけど……悪影響って何があるの?」
「辛い記憶が多すぎて眠れなくなるとか、ふとした瞬間に涙が止まらなくなるとかな」
「あ……」
「明日菜殿の過去にいったい何が?」
「それは本人から聞いてくれ。
俺が話していい事じゃないからな」
「……そうでござるな」
「うん、しばらく……このままでいさせて」
「分かった」
その後は、概ねナギが覚えていた通りの転回となった。
いつの間にか尾行を開始したチア三人娘。
どういう事かと明日菜に電話が掛かってきたが、明日菜はただ買物に出かけただけとそっけなく答えていた。
記憶が戻った事で精神的にゆとりが出来たということだろうか。
さっきまでのストーカーっぷりは何処へやら。
「今は自分の事だけで手一杯になっちゃったってだけよ。
それに未来のネギが手を出してないなら何もなかったって事でしょ?」
「記憶が戻って落ち着いたのはいいが、強かにもなったな明日菜……」
「以前の純粋な明日菜殿が懐かしいでござるよ」
「うるさい!」
チアの三人は明日菜の協力が得られないという事で変装をして買物を邪魔することに。
二人が購入しようと考えたモノを横から奪い取り買っていく。
なんだかよく分からないモノを買っているが、アレがその後どうなるのか知っているナギとしては微笑ましくも思えてしまう。
「何をニヤけてるのよ」
「あ、いや……懐かしいなと、思ってな」
「……そっか。
あんたにとっては20年も前の事だもんね」
「あの頃に戻りたいとは思わないが……どうしても手に届くところにあると思うとな……」
「ネギ……」
それは明日菜も同じ気持ちであっただろう。
紅の翼のみんなと居た時代。
たしかに大変な事も多かったし、今みたいに幸せな時でもなかったが、楽しかったのだ。
ナギがいて、ガトーがいて、アルがいて、みんながいた――ああ、本当に楽しかった。
過去に戻りたいとは、思えないけども……もし目の前にあの光景があったなら――
きっと自分も手を伸ばしてしまいそうになるから。
だから、ナギの背中に額を押し付けるくらいしか出来なかった。
ネギ少年と木乃香の買物も落ち着き、二人は静かな広場の階段で休んでいた。
はしゃぎすぎたのか、ネギ少年は眠ってしまい、木乃香に膝枕してもらっている。
「何か言い訳はあるでござるか?」
「言い訳ある?」
「言い訳ってなに!? 俺寝てたからこの時の記憶無いんだけど!?」
「気持ちよさそうに寝てるよね。どうだったのかな?」
「だから覚えてねぇよ!」
当時は眠気の方が勝っていて何処で寝たかもどうして寝たかも曖昧だというのに!
そして木乃香はネギ少年が寝ている隙にキスをしようと迫る。
以前失敗した仮契約のカードが欲しいためのリベンジだ。
「あんな事してるけどどうなのよ!」
「そうでござる!」
「だから覚えとらんわ!」
「こ、ここここのかさん! ネ、ネギ先生を膝枕など!!!」
と、雪広の悲鳴にも似た叫びが木霊する。
それだけ予想外の光景だったのだろう。
微かに私がしてさしあげたいのにとか聞こえるが無視。
どうやら明日菜と長瀬に真相を追求されている間に雪広が合流したようだ。
すでにチアの三人も気づかれている。
「向うは尾行がばれちまったみたいだな。
俺たちも行くぞ二人とも」
「あちょっと!」
「待つでござるよ」
二人を引っ張り皆のもとへと駆け寄る。
「あれ、ナギ先生までおったん?」
「ああせっかく秘密にしてたのに……」
「バレてたって?」
「どういう事よ秘密にしてたって!」
「しゃあないなあ、こうなったら」
「はい、一日早いですけどしかたありません」
木乃香とネギ少年の二人はそう言うと明日菜の前へと歩み出る。
そして紙袋から綺麗にラッピングされたソレを取り出した。
「アスナさん、4月21日の誕生日おめでとうございます」
「へ?」
そう、二人は明日の明日菜の誕生日のためにプレゼントを買いに来ていたのだ。
ネギ少年は普段お世話になっている明日菜のために、どうしてもプレゼントを選びたく、木乃香に頼み込んでプレゼント選びに協力してもらっていたのである。
「これを知っていたのでござるな、先生殿」
「ああ、懐かしい記憶だよ」
やっと思い出したのか雪広も納得の表情。
むしろ完全に忘れていてこの後どうしようかと悩んでいる。
チアの三人は今まで買ったモノをプレゼントとして明日菜に渡していた。
いきなりの誕生日プレゼントに、明日菜も涙ぐんでいる。
「明日菜、ほらよ」
そしてナギも小さめの箱を一つ投げ渡した。
「え?」
「誕生日おめでとう、明日菜」
ナギもまた、ちゃんとプレゼントを用意していた。
ここで渡せなくても、長瀬に頼んで寮で手渡してもらえるように。
「あ……
ありがとう」
「うん」
忘れねえよ……お前の誕生日だけは……
忘れられるかよ――
『最高の誕生日プレゼントよ、ネギ!』
「僕は、何もしてませんよ」
麻帆良にある大きな病院。
その病室のベッドで、優しく微笑んでいる明日菜に、俺はそう答えた。
何も出来やしなかった。
ただ慌てまくって、誕生日すら忘れて、プレゼントなんて用意も出来なかった。
ただただ見守ることしか俺には出来なかったというのに。
「それでも、よ……」
でも明日菜は、それは嬉しそうに笑った。
今までで一番のプレゼントだと、本当に喜んでいた。
そんな明日菜が、とても綺麗で……なにより美しく見えて、見惚れてしまった。
「……明日菜さん、ありがとうございます!!」
「えへへ、どういたしまして」
でもな明日菜。
その日、プレゼントを貰ったのは俺の方なんだよ。
俺はその日、大切なモノを明日菜から貰ったんだ――
明日香という、掛けがえのない娘を。
娘達からメールを貰い、帰路につく。
長瀬には後日奢ると約束し別れた。
「……はは」
「どうかしましたか、お父さん」
隣にはいつものように娘達が腕を組む。
本当にいつもどおりの光景だ。
「ちょっと昔を思いだしてな……」
「昔……ですか?」
「ああ……」
随分と懐かしい事を思い出したものだ。
内容事態はあの後散々あってほとんど忘れていた筈なのに。
今ははっきりと思い出せる。
「明日香、ほらよ」
「え? あ、プレゼントだ!」
だから、つい、渡したくなっちまった。
「あ、でも……貰っちゃっていいの?
だって……」
「たしかに時間を越えてきちまったけどな。お前の誕生日な事に変わりはないだろ」
「そうですね、ハッピーバースデイ、明日香」
「おめでとうございます」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
「明日香……
君が生まれて来てくれた事に、感謝を」
明日菜……必ず、明日香をお前の下に帰すからな……
もうしばらく……待っていてくれ――
ちょっと前回と合わせて書き方を変えてます。
序盤はちょっとネタに意識を持っていきすぎて読みづらいかと思ったので、文章で内容を伝えようと思いました。
見づらかったり微妙だったらスミマセン。
ちなみに明日菜へのプレゼントはシンプルにシルバーの腕輪。
明日香には同じくシルバーのピアス。
どちらも魔除けの意味を込めて渡してます。
第二部は修学旅行編。
OP(タイトルより上)は麻帆良居残り組の話、本編(タイトルより下)は修学旅行と区切って進行するつもりですので応援お願いします。
今日は番外も投稿、20時を待て!