子守先生■ギま!?【凍結】   作:再buster

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今回は色々と説明考察回、ぶっちゃけツマラナイ回。


裏でそれぞれが動き出す……



第13話:『チーム・親友・裏方』

 

「明白了、とりあえずやる事は理解した」

 

 修学旅行のはじまる数日前の事だ。

 夜、星空がうっすらと見える京都のとある山奥。

 そこに不似合いな複数の影があった。

 

 山歩きにはまったくむかないであろう一人の和装の女性と、彼女と対峙するように並び立つ軽装姿の三つの影があった。

 真ん中に立つ小柄で長く赤い髪を持つ影と、その両脇に立つ背の高い二つの影。

 

 どう見ても登山に来たなどという装備ではない。

 

「ホンマ、ちゃんと受けてくれるんでっしゃろなぁ?」

 

 対峙していた和装の女性の名は天ヶ崎千草。

 近衛木乃香の誘拐を企んでおり、修学旅行中に新幹線の車内や道中で色々と嫌がらせを仕掛けてきた張本人である。

 

 今回の誘拐は決して失敗が許されない。

 だというのに肝心の人員は自分を除けば、実力はあるだろうがまだ子供の三人のみ。

 はっきり言って心もとない。

 

 他の刺客は一昨日行われた麻帆良への襲撃に安易に参加し大半が負傷してしまっている。

 傭兵を雇うにも自分にはそれほどの伝手は無いし、そも誘拐だなんて聞いて首を縦に振る者もそうは居ない。

 

 人員が見つからないまま、最後のチャンスとも言える修学旅行が迫ってきている。

 

 どうしたものかと頭を抱えていたところ、偶然にもこの者達を見つけたのだ。

 何故か金銭に困窮しており、仕事の内容はえり好み出来ないのだと言う。

 ならば渡りに船と思い雇う事にした。

 

「女子中学生の誘拐だなんてこれっぽっちもやる気は不出だが、これも仕事だと除尽さ」

「そうだなぁ……そもそも飯代やら旅費やら色々と稼がなきゃならんからなぁ、仕事のえり好みなんて出来やしねぇよなぁまったく。

 嫌になるねぇホント、そこんとこどうよお嬢?」

「うるさいわよあんたたち、ちょっとは黙ってなさいよね。

 コホン、そういうわけでしてこの仕事、嫌々ながら受けさせていただきますわ」

 

 そして対峙する三人はそれぞれがどうも個性的な面子だった。

 

 一人は比較的真面目そうな男だがどうもおかしな返答が目立つ。

 もう一人は如何にも軽いノリでどうもふざけた印象を受ける。

 最後の一人は礼儀正しく答えはしたがどうも猫を被っているようだ。

 

 一癖も二癖もある人物を選んでしまったものだと内心溜息を付きつつも、人手不足なのだからしょうがないと千草は諦めていた。

 それに今はなによりも実力さえあれば問題無いのだ。

 性格なんて気にしていては仕事も出来ないと考え直す。

 

「……まぁ受けてくれるんなら良しとしましょ。色は付けさせていただきますよって気張って働いてや」

 

「それはそれは助かりますわ」

 

「ほな、これが前払い分や。話やと食事もろくにしとらんのやろ?

 当日動かれへんと困るさかいどこかでたらふく食うとええ」

 

 男の一人に封筒を手渡す。

 

 どうもこの三人、事情を聞いていたがここ数日まともに食事をしていないのだという。

 今のご時世でそこまで飯に困る者もそうはいないだろうに……

 

 しかも、千草から見てもこの三人は相当に実力があるように見えるのだ。

 魔力量や気も見ただけで多いと分かる。

 立ち振る舞いもふざけている様に見えるが軸はまったくと言っていい程ぶれていない。

 

 ならばこういった裏の仕事の一つや二つラクに出来る筈。

 

 そう考えたがどうせ答えは出ないだろうし、受けてもらった仕事さえちゃんとしてもらえればそれでいいと改める。

 

「お、マジかよ。見た目と違って気前いいなあんた」

「謝謝、面倒を掛けてすまない。護衛の件、しっかりと働かせてもらおう」

「がっつかないの。感謝しますわ天ヶ崎さん」

 

「頼みますよって」

 

 こうして千草の下にイレギュラーな三人が増えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第13話  『 チーム・親友・裏方 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ネギくん発見~」

「明日香さん……」

「あんたはナギの旦那の娘の……」

 

 ネギが旅館の廊下をカモを乗せて歩いているとそこへちょうど明日香がやって来た。

 どうやらネギの事を探していた様子。

 

「カアじゃなかった……神楽坂さんから伝言貰って来たよ~。

 近衛さんが寝るまでしばらく部屋に居るからってさ」

「分かりました、伝言ありがとうございます。

 あの……木乃香さんは大丈夫そうでしたか?」

「うん、ちょっと疲れてるみたいだけど大丈夫そうだったよ」

「そうですか……ならいいんですけど」

 

 するとネギは心配そうに俯いてしまった。

 

 露天風呂で木乃香が襲われた後、ネギと明日菜は木乃香から刹那との昔話を聞かされていた。

 

 昔、幼い頃に京都に住んでいたとき、周りに友達がいなく孤独だった事。

 大人達に連れられてこられた刹那が、自分にとってはじめての友達だった事。

 犬に吠えられたり、危ない時は何度も守ってもらった事。

 その後、麻帆良に来たりで離ればなれになってしまった事。

 中学に入り久しぶりに再会したけど、距離を置かれている事。

 

 きっと嫌われてしまったと思っている事……

 

 そんな話を、本当に寂しそうに語る木乃香の表情が印象的だった。

 

 

 その後木乃香は明日菜に連れられて部屋へと戻って行った。

 

 ネギはそれからずっと木乃香と刹那の事が気になっていたのだ。

 

「まぁ気落ちしててもしょうがないしさ、まずはやれることをやろうよ」

「はい、そうですね明日香さん」

 

 落ち込んでいても話は進むわけでない。

 なら何かしてた方がまだマシ、そう明日香は考えていた。

 

 ここで一つ言っておくと、実は明日香は今日起きる出来事をほとんど知らないでいる。

 これはナギの考えで、子供たちの成長を促したいという一念あっての事だ。

 

 未来では子供たちが矢面になって戦う場面は限られている。

 学園の警備や腕試しなど、基本的に父親たちが用意した舞台上で戦う事がばかりだった。

 

 故に、今のように子供が一人で考え行動するという事態は貴重なのだ。

 

 未来は平和である。

 

 だが、何も危険が無いわけではない。

 平和に堕落していい訳でもない。

 

 だからナギは今回の近衛木乃香の誘拐事件を利用して子供たちに少しでも成長してもらいたいのだ。

 

 

 まぁはっきり言って生徒の一人を危険な目に合わせようとしているし、関係の無い人間にまで危害が及ぶ可能性もある下法だが……

 

 ばれれば確実に怒られるし嫌われるかもしれないが……

 

 それでも、出来る事をしておきたいというのがナギの本音だ。

 

 最強と呼ばれたサウザンドマスターでさえ十年以上も封印され、未来の可能性では不死人に近い筈の自身さえ死んでいたという。

 ならこの先何も無く平和に生き続けられるなどという保証はどこにもない。

 

 だからこそ、出来る時に精一杯教えておきたいのだという。

 

 もちろん、近衛や他の生徒へのフォローは手を打ってあるのは当たり前なのだが。

 

 

「とにかく桜咲さんを探そうよ。

 話からすると別に木乃香さんの事を嫌ってるってわけじゃないんでしょ?」

「はい、露天風呂でも護衛をしているって言ってました」

「そっか……嫌ってる相手の護衛なんてする訳ないし、なんか理由があるのかもね」

「そうだといいんですけど」

 

 一先ず明日香は刹那を探す事を提案。

 部屋には居なかったので旅館のどこかに居るのだろうと歩き回る。

 

 するとロビーにて、玄関の上部に御札を貼っている桜咲を見つけた。

 

「何をやっているんですか刹那さん」

「ネギ先生ですか……これは式神返しの結界です」

 

 刹那が使っている式神返しの結界とは式神を結界内に入れないための術である。

 

 露天風呂で敵は猿の式神を使っていた事が判明している。

 さらに旅館内に侵入した形跡も無かった。

 つまり敵は外から式神を送り込んでいたということだ。

 

 そのため出入り口から式神が直接侵入出来ないように結界を敷いているのだ。

 

「あ、そういえば桜咲さん。お父さんからコレ預かってたわ」

「これは?」

 

 明日香はポケットから数枚の紙切れを刹那に手渡した。

 その紙切れには刹那にも見覚えのある文字が。

 

「認識阻害の札よ。さっき張ってた札って結界の効果だけで普通の人にも見えちゃってるから。

 間違って旅館の人とかがはがさないようにって」

 

 刹那が張っていた札は式神返しの効果しか持っていない。

 そのため旅館の人や他の生徒など一般人にも丸見えなのだ。

 

 ナギはそれを危惧して用意したのだという。

 

「うむむ」

「信用無いなら自分で書く? 言っておくけどお父さんの方が絶対に効果強いよ?」

「いいえ分かりました。ありがたく使わせていただきます」

 

 刹那も多少気にはなるようだが、ここは好意として受け取っておくようだ。

 受け取った札を見つめる。

 

「……ナギ先生は陰陽術にも長けているのですか?」

「んん? どうして~?」

「これだけの札を作れる人が術が得意とは思えなくて……」

 

 彼女から見てもその札は高度なモノだとすぐに分かった。

 もし知らされずに使われていたら自身でもきっと気づかない程に。

 それ故に、魔法使いを自称している彼が陰陽術にも長けているという事に驚愕してしまう。

 

「そうだねぇ、お父さんは博識だから。

 大概の術とか法とかは試したんじゃないかな?」

「そうですか……なら剣の方も?」

「うん、強いよ」

「なら一度、手合わせをお願いしてみたいですね」

 

 露天風呂では不覚を取ってしまったため、多少なりにもリベンジをしたいという気持ちがあった。

 それと同時にもし自身よりも遥かに強いのであればご教授願えないかという思惑も刹那は抱いていた。

 

「凄いですねナギ先生は、なんでも出来て」

「自慢のお父さんよ」

 

 父親を褒められてちょっと明日香は誇らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵のいやがらせがかなりエスカレートしてきましたね。

 このままでは実力行使も考えられるかと……」

 

 三人はロビー端のテーブルに移動して今後について話をする。

 

 敵の行動も最初は本当に嫌がらせ程度のモノだったが、先ほどでは猿の式神を使って誘拐までしようとしていた。

 次は直接の行動も考えられる。

 

「ネギ先生は優秀な西洋魔術師と聞いていたので、私はお嬢様の護衛に勤めていたのですが……

 思っていたよりも対応が不甲斐なく敵も調子に乗っているようです」

「あうぅぅスミマセンまだ未熟で」

「まぁまぁ桜咲さん。

 ネギ先生は魔法使いって言ったってまだ子供なんだから、しょうがない部分もあるって」

「ですが……」

「明日香さん……」

「でも次やったら知らないわよ?」

「明日香さーん!?」

 

 上げて落とす、明日香の好きな事の一つである。

 涙目のネギ。

 

「それはそうと敵についてね」

「あ、はいそうでした。

 敵はおそらく関西呪術協会の一部の者でしょう。

 呪符を使っていた事からも確実かと」

「蛙とかもお札になってたしね」

「ただ、術者だけであれば盾となる式神さえ倒せばどうとでもなりますが、問題は別にあります」

 

 術者は魔法使いと同じで詠唱中は無防備になりやすい。

 そのため魔法使いで言う従者の代わりに式神を前衛にする事が多い。

 

 もちろん対処が出来ている高位の者もいるがそれは少数だ。

 むしろそういった者ならばからめ手など使わずに最初から実力行使で来るだろう。

 だが今回の敵は猿の式神を使ったり嫌がらせをしたりで今のところ姿を見せては来ない。

 本人に直接の戦闘技術は無いと判断できる。

 

「問題とは?」

「関西呪術協会は我が京都神鳴流とは深い繋がりがあります。

 もし術者と協力されてしまえば非常に手強い事になるかと……」

「つまり術者の使役する式神にさらに凄腕の戦士が前衛に就く可能性があるって事ね」

 

 神鳴流の剣士は接近戦のエキスパートだ。

 これ以上に前衛に適しているモノもそうはいない。

 さらには古くから付き合いがあるために術師との連携にも長けている可能性があるということだ。

 付け焼刃のネギ達にとっては出来れば相手をしたくない厄介な敵である。

 

「え? じゃあ神鳴流ってやっぱり敵なんですか?」

 

 ネギはその話を聞いて驚く。

 刹那は神鳴流の出だがこちらの味方だと断言している。

 ならば同じく神鳴流も味方だと今まで思い込んでいたのだ。

 

「はい……彼らにとってみれば西を抜けて東についた私は裏切り者同然。

 ですが、私の望みはこのかお嬢様をお守りすること。

 何を言われたとしても、私はお嬢様さえ守れればそれで満足なんです」

 

 刹那の瞳はどこか寂しそうでありながらも強い意志を秘めていた。

 

「刹那さん……」

「姉さん……」

 

 ネギとカモも、木乃香の傍に居ないのは何か理由があるのだろうと察した。

 

 

 だがどうにもその瞳が気に入らない者がいたようだ。

 

「守れれば満足……ね。気に入らないなぁ桜咲さん」

「え?」

 

 明日香が刹那の発言を切って捨てる。

 

「ウチの家訓みたいなものだんだけどさ。

 自分を幸せに出来ないモノが他人を幸せになんてできないってのがあるのよ」

「自分を幸せに出来ないモノは他人を幸せにできない……」

 

 これは明日香の母である明日菜達が想う心情でもある。

 自分が幸せになる事を苦手とするネギのために、どうやったらアイツを幸せに出来るかと考えた明日菜達。

 ならばまずは自分たちがとことん幸せになってやろう。

 そしてその幸せをアイツに教えてやればいい、と。

 

 そもそも自分たちが幸せだって言えないのにアイツを幸せにだなんておこがましい、と。

 

 そう考えて作った家訓なのだ。

 

 

 明日香もこの家訓は好きだ。

 自分は不幸だ、幸せなんて無理だ、なんて考えている奴が誰かを幸せに出来るわけがない。

 だから、誰かを幸せにしたいなら自分がまず幸せになってやろう。

 

 かつて黄昏の後継と呼ばれ祭り上げられそうになった自分でも、今の私ははっきりと幸せだと言えるのだから。

 恩を返す意味でも、自分が望む相手くらいは幸せになってもらおう。

 

 そう考えていた。

 

「まぁつまり……あんたのその自己犠牲って感じの考えがムカつくのよ」

 

 守れればいいって、それで死んで木乃香が笑っていられるのかと。

 あの優しい笑顔の、包まれるような笑顔のあの木乃香お義母さんが、大切な親友である刹那お義母さんが死んで耐えられる訳が無い!

 

 だというのに肝心の桜咲は自分の身など気にしていない。

 あんたと同じように、木乃香だって桜咲が無事ならいいと思っているというのに。

 いや、一緒に幸せになりたいとさえ思っているのにだ。

 

 それでは木乃香が可哀想じゃないか。

 

 だからどうしても気に入らなかった。

 

「よし決めた!

 私が近衛さんも桜咲さんも守る、そして昔みたいに仲良しにしてあげるわ!」

「シルバーバーグさん……」

「明日香でいいわよ、その呼び方長くて嫌いだし」

 

 というか一瞬呼ばれて誰の事か分からなかったのは秘密。

 とにかく、まずは二人とも守ろう。

 そう考える明日香であった。

 

「では決まりですね! 3-A防衛隊結成ですよ!!」

「ネーミングセンス無いわねぇ」

「関西呪術協会からクラスのみんなを守りましょう!!」

 

 ネギの意志も同じだったようで、明日香の意見に乗るようだ。

 妙にはりきっているネギを見てちょっと不安になる明日香であった。

 

 

 

 

「でも、まぁいっか。

 みんなが幸せになれるように頑張るとしますか!」

 

 

 他人の事などどうでもいいと、家族以外どうでもいいと思っていた明日香が……

 

 

 ほんの少しだけ他人というものを意識し始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「木乃香殿が狙われたでござるか……」

 

 所変わって廊下の隅では、木乃香が寝たのを確認した明日菜と長瀬、そしてナギが今後について話をしていた。

 

 明日菜がこちらに居るのは単純に記憶が戻った事をネギに言っていないのが理由である。

 なんとなく接してかたが分からないというのが一番の理由だろうか。

 それに恩人であるサウザンドマスターとナギが似ているため安心するというのもある。

 

 なのでナギや長瀬と一緒に裏方として動くことを決めたようだ。

 

 長瀬の方はナギの依頼もあり協力している立ち位置。

 いざという時はネギの方に付くが、今はナギの傍に居た方が動きやすいためこちらに居る状態だ。

 あとは好意も多少なりにあるため、出来れば隣にいたいなとか打算もあったりする。

 

「そうよ、さっき露天風呂の方でね」

 

 兎にも角にもまずは木乃香の誘拐未遂だ。

 彼女の警備をどうするか話し合わないといけない。

 

「ならばさらに警備を固めた方が良いのではないでござらんか?

 茶々丸殿も居れば木乃香殿くらいなら完全に守れそうでござるが……」

「いや、無理に固めると力づくで来るかもしれない。

 戦力が足りていない以上は狙いを絞ってもらった方がかえってやりやすいさ」

 

 下手に守って逆に手薄となった関係の無い他の生徒を巻き込むよりは、木乃香一人を狙わせた方が守りやすいという判断だ。

 100%守れるならまだしも現時点では修学旅行中、全生徒を完全に守るなんて事は不可能だからだ。

 

 それに他の生徒を誘拐されて人質交換など申しだされては手が限られてしまうし、要らぬ魔法バレが起きてしまう可能性もある。

 

「もちろん、だからと言って木乃香に危害は加えさせないけどな」

「当然でござるよ」

「そうね、木乃香が怪我でもしたら修学旅行がしらけちゃうわよ。

 せっかくの思い出なんだから楽しく行かないとね」

「そうだな」

 

 明日菜は記憶が戻ってからはなにより思い出を大切にするようになっていた。

 いつか来る眠りの日までに、多くの思い出を残したいという気持ちの表れだろうか……

 

 それを知っているためにナギも明日菜の積極的な行動を止めていない。

 

「ともかく今晩の警備の割り振りだ。

 俺は旅館全体の見回り、教師だから動きやすいしな。

 長瀬は自室で待機しつつ連絡があれば動けるように頼む」

「あいあい、何かあったらすぐに動くでござるよ」

 

 ナギは教員であるため旅館内を巡回していても問題は無い。

 新田先生には生徒が悪さをしていないか確認してますとでも言えばいい。

 普段の行動を知っている彼ならきっとそれで納得してくれるだろう。

 

 長瀬の方はいざという時のために待機。

 イレギュラーが起きた時に動ける要員が欲しいのだ。

 

「明日菜は木乃香が一人で外に出ないように見張りだな」

「分かったわ。

 もし外に出るような事があればすぐに連絡する」

「よろしい」

 

 明日菜は同室という事もあり警備のメインだ。

 一緒の部屋に居る事で敵が、同じく部屋に居る宮崎や綾瀬、早乙女を狙わないようにするための抑止力となってもらう。

 

 するとナギは懐から紙切れを取り出す。

 

「これは連絡用の札だ。

 額に当てて念じれば俺と連絡出来るようになってる」

「携帯じゃダメなの?」

「長瀬は分かると思うが、気配を消さなければいけない場面で音が出る携帯はなぁ」

「そうでござるな。

 マナーモードでも静かな場所だとけっこう聞こえるものでござるよ」

「なるほどね。それにしてもこんなのも出来るんだ」

「確かにでござるな。先生殿は術師でもあったでござるか?」

 

「というか未来の刹那に教わった。

 こういった事はアイツの専門分野だったしな」

 

 東洋の術ともなれば刹那は特に詳しかった。

 木乃香も高校以降から正式に勉強をはじめたとはいえ、幼い頃から裏の稼業にいる刹那にはまったく敵わない程だったという。

 

 ナギも視野を広めるために色々と刹那に教わっており、ある程度であれば神鳴流の技も使えるようになっていた。

 とはいえ二ノ太刀だけはどうにもうまくいかず、なぜか服だけ斬るというセクハラ技になってしまっていたが……

 それで何度怒られた事か……

 

 とにかく簡単な札術であればナギも使える。

 さすがに式神は使えないが。

 

「なるほどでござるよ」

「桜咲さんてこういうのも出来るんだ」

 

 二人は興味深そうに札を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナギは二人に札を渡した後、旅館の屋上へと一人やって来た。

 ここなら見晴らしがいいため敵の動向が容易に確認できるのだ。

 

「今夜が最初の正念場か……」

 

 もちろん、玄関から出ていくネギ少年と彼とぶつかった従業員に扮した天ヶ崎千草の姿も見る事が出来た。

 記憶していた通りに事態は進んでいるようだ。

 

「これまでは俺の覚えてる状況とさして変わりは無かった。

 なら今夜中に木乃香は一度連れ去らわれる」

 

 だからあえて木乃香の警備を薄くした。

 

 長瀬や明日菜には知らせていないが、木乃香以外が狙われないようにするために他の部屋に結界の札を張ってまでだ。

 

「敵も天ヶ崎千草以外に近くに居る気配は無い。

 別働隊も少し気になるが俺の考えすぎだったか……」

 

 前回は気づかなかっただけで裏工作などをしている人員がいたかもしれない。

 そう思い警戒していたが、どうやらそれは杞憂だったようだ。

 嵐山には、天ヶ崎以外に怪しい動きをしている者は感知出来なかった。

 完全に単独行動だ。

 

「小太郎の言ってたとおり人員は最低限ギリギリしかいなかったってのは本当ってことか。

 それならそれでいいんだけどな」

 

 事件後に小太郎や関係者から聞いたのは、犯人は全員で四人しかいなかったという事だ。

 主犯の天ヶ崎千草。

 前衛役に月詠と犬上小太郎。

 そして天ヶ崎に力添えをする謎の新入り、フェイト。

 

 情報ではこの四人だけ。

 

「小太郎はこの時点では力不足、月詠さんも仕事だからという理由だけでやる気は薄い。

 フェイトも相手は格下だと侮っている。

 天ヶ崎千草も式神は注意が必要だけど完全な後衛タイプ。

 数で押せば問題は無い……か」

 

 前衛の二人は実力不足とやる気の無さでどうとでも出来てしまう。

 フェイトは本気を出せばラスボス級だが現時点では様子見といったところだろう。

 天ヶ崎は強力な式神を持っているがそれ以外は雑魚といっていいし、本人に戦闘力は無い。

 

 ネギ少年と他数名が居れば事足りる人数しか敵はいないのだ。

 実際に以前の時は実質戦力10人程。

 

 だというのにこちらは……

 

「娘二人にスイまで居て、どう考えても過剰戦力だよなぁ……」

 

 娘だけで前衛の相手は足りるし、フェイトと互角……というか圧倒出来る実力のスイまで居る。

 

 さらに記憶と違って足手まといにならない記憶を取り戻した明日菜と協力的な長瀬。

 サポートも出来る茶々丸まで同行してる。

 

 そこにナギまで参加したらもう……

 

 

「楽勝じゃないですかヤダー」

 

 なんて冗談すら言いたくなる。

 

 はっきり言って戦力差が出来過ぎてしまったのだ。

 これはさすがに考え込んでしまう。

 

 もちろん、他の生徒や彼女達への危害を考えれば相手が弱い方が助かるのだが……

 だがここまでだと逆に問題がありそうである。

 

 魔法使いへの憎悪が増えるだとか、東西の関係が悪化しないだろうかとか。

 そりゃもう後々面倒くさい事になりそうな気しかしない。

 

 

「こうなったらもう敵方に応援でも増えてくれないかなぁ」

 

 

 とか少し歯ごたえを要求したくなってしまってもしょうがないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 だがまさか、本当に強敵が増えるなんて事を、この時点では誰も知らないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけでいったん小休止的な内容でした。
次の混ぜると逆に長すぎるし、前後半もなんとなく嫌だし。
おかげで非常に難産でした。

さて、冒頭で登場した三人に関してはオリジナルでやらせていただきます。
まぁイメージしたキャラはいますがそれは次回以降で。

ちなみに勘違いしそうなのでヒントを、
この時点ではナギの居た未来から逆行して来た人物は居ません。
ナギファミリーとスイ、デュナミスのみです。

では、次話も遅くなるかもしれませんが頑張って書きます。
読了感謝です。
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