私の名前は明日菜・K・スプリングフィールド。
旧姓、神楽坂明日菜よ。
麻帆良学園の卒業生で『白き翼』のメンバーの一人ね。
魔法世界ではちょっと有名かな……ゴメン、すごく有名。
今は二人の子供の母親で、麻帆良学園で教師をやってるわ。
「ただいま~」
部活の方も見てきたし、ということで愛する我が家に帰宅。
でも本当に慣れないわね、この家……
そういえば、私の旦那であるネギに沢山の奥さんがいる事はもう知ってるかしら?
そりゃあ……女としては思う所もあるけど……
みんな本気で好きなんだからしょうがないよね。
コホン
うん、とどのつまり家族が多いって話よ。
だから必然的に家も大きくなるわけよ。
大きさでいえばイインチョが昔住んでいた家くらいかな?
はっきり言ってデカいわね……
しかもこの他に別邸がいくつかあるし。
魔法世界にも別荘とか避暑地とか色々あるしね。
そりゃ慣れないわよね。
玄関がどこのホテルかってくらいあるし、メイドさんもいるし。
あ、ちなみにこのメイドさんはエヴァちゃんの別荘にいた人達よ。
今じゃああの別荘は使ってないし、いつまでもあの中に入れっぱなしもなんだからって。
それにしても、疲れたわね~。
教師の仕事も案外楽じゃないのよね。
美術教師だけどいちおう担任だからクラスも持っちゃってるし。
部活の顧問もしてるしねぇ。
十歳の時から教師やってるあいつもさすがって思うわ。
もちろん仕事は楽しいけどね。
なんたってやりがいあるし!
成長を見守るってのがこんなにも楽しくて嬉しい事なんて思ってもみなかったな。
これも全ては教師の道に進ませてくれたアイツのおかげね。
「おかえりなさいませ、明日菜さん」
「おかえりなぁ、アスナ」
そうこうしていると、子供達の面倒を見ていた茶々丸ちゃんと木乃香が出迎えてくれた。
茶々丸ちゃんは家じゃメイド長みたいな立場かな?
家事の全般を仕切っていて、子供たちの面倒を一番見ているみんなのお母さん的な立ち位置ね。
多分、一番子供たちから慕われてると思う。
私も頼りきりになってるから何も言えないわね……
でも、茶々丸ちゃんは子供を産めないのよね。
それを考えるとしょうがないのかな?
木乃香がいるのはむしろ珍しい方。
普段は麻帆良学園の校長をしてるから、かなり多忙な生活をおくってる。
関西呪術協会との橋渡し的なこともしているから大変そうだし。
私生活では二児の母。
二人とも将来は校長になるとか長になるとか言ってたっけ。
うちの子もそうだけど、将来が本当に楽しみね。
それにしても、二人の雰囲気がいつもより暗いわね。
何かあったのかな?
「お母さん……」
そして息子も一緒に出迎えてくれた。
パタパタと駆け寄ってくる姿に笑みがこぼれる。
「明日耶、ただいま~……ってあれ、明日香は一緒じゃないの?」
そういえばいつもなら一緒にお姉ちゃんの明日香も来る筈なんだけど。
どうかしたのかな……
すると木乃香が、
「それがなぁ」
「へ?」
「ちゃおりん!!」
急いで超のいる地下ラボに。
乱暴にドアを押し開けて中へと突撃。
さすがに今日という今日は私も怒るわよ!
「うわ、ごめんヨ」
「まだ何も言って無いわよ! それよりいったい何があったのよ!!」
いつも何かしら事件は起こすけど今回ばかりはさすがに大問題だ。
「それが、カシオペアが起動しちゃったネ」
「えと、確かタイムマシンだったわね……って起動したって?」
二十年前の文化祭で超がネギに渡したタイムマシンがそんな名前だった筈。
あれ? でもあれはもう動かないんじゃ……
「計測してみたけど、世界樹の魔力は転移するのに十分だたヨ。
使う気が無かったから計測していなかったのが仇になたネ」
超はなんだかんだでもう未来に帰る気は無いらしい。
離れたくない家族がこちらにいるのだから当然といえば当然ね。
そしてこっちで家族が出来て以来、世界樹の計測を止めていたそうだ。
ただし、文化祭の時のように魔力暴走しないように封印だけはしておいたという。
「今回はそれが逆効果だたみたいネ。
封印のおかげで魔力の発散がしきれずにどこかに魔力を溜め込んでいたみたいヨ」
しかも溜まっていた魔力量は、超が未来に帰る際に使った魔力量をはるかに超えていた。
それも数人まとめて時間移動できるほどに……
「そして子供達が倉庫から持ち出して起動させてしまた……
厳重に封印してあったんだけどネ、子供たちの才能の方が上だったという事カ」
一人は魔力探知に長けている天才。
だから簡単に封印されたカシオペアを見つけられた。
一人は微弱な魔力無効化能力は持ってる。
だから簡単に封印を解除出来た。
一人は天才的な魔力知識量がある。
だから簡単にカシオペアの操作法が分かった。
子供たちは両親から受け継いだ膨大な魔力を持ってる。
さらにはネギだ。
この膨大な魔力も合わさって、簡単にカシオペアが起動してしまった。
はっきり言ってメンバーが悪すぎるわね。
「結果、ネギ達は子供六人と一緒に過去に行ってしまったヨ。
二十年前のあの時代にネ」
ちゃおりんは反省しながらも懐かしそうにそう言った。
「そんな……」
私にとってはさすがに予想外だった。
まさか明日香だけじゃなく他に五人もなんて。
「でも心配ないヨ。向こうにはカティも一緒ネ」
「そっか、カティちゃんも一緒なんだ……」
エヴァちゃんの娘で子供たちの中でも最年長の一人が一緒なら少しは安心できる。
よくネギのサポートで一緒に仕事もしてるし、他の誰かが行くよりよっぽど頼りになる。
「だけどセイナも一緒ヨ」
「……それは大丈夫なの?」
セイナちゃんは刹那さんの一人娘。
しかも十数年かけてやっと手に入れた愛の結晶なのだ。
生まれるときは感動も一塩だったし、あまりの感激に涙も流しみんなで喜び合ったくらいだ。
ちなみに生まれなかったのは刹那さんが烏族とのハーフだから……などという理由ではなく、単純に運が悪かっただけ。
刹那さんが初々し過ぎて事に及ばないわ、事に及んでも最後まで行かないわ、最後まで行っても焦って抜けちゃうわ、抜けずに出しても安全日だったとか……ゴメン、下ネタ多いわね。
さすがに十年くらい焦らされたし、結局一番相手をしてもらってるのも刹那さんだし……羨ましくなんてないんだから!
とにかくそんなこんなで妊娠まで時間が掛かってしまったのが原因。
その最愛の一人娘が一緒だなんて……
「あまりに心配で刹那さん、熱が出て倒れてるヨ」
「全然大丈夫じゃないじゃん!」
「まったくヨ」
で、その本人はというと……
「セイナ~セイナ~……」
ベッドに横たわってうなされていた。
虚空に伸ばした手がそれはそれは悲壮感を漂わせている。
「完全に魘されてるわね……」
その周りには心配そうに他の子供達が居た。
「子供七人に囲まれて……まるで七人の小人と白雪姫ね」
「毒リンゴじゃなくてただの熱だけどネ」
笑い話にもならないけど……
「セイナ~セイナ~」
これははやくなんとかしないとダメそうね。
はあ……どうしてるかな、あの人は……
第1話 『 入居・家族・報告 』
「カティ、荷物はそっちにまとめておいてくれ」
「はい、お父様」
はい、ただいまお引越し中です。
カティには俺たちと一緒にこちらに来ていた鞄やらリュックサックやらバスケットやらを移動して整理してもらっている。
その他にも緊急用にと俺の影の中、魔法で作った特殊な空間にしまっていた予備の服やら食料やら魔法アイテムを取り出している。
整理整頓マナーの類はカティが一番優秀なのだ。
さすがはエヴァの英才教育。
たまに俺も叱られる……
「明日香、ベッド運び入れるから手伝ってくれ」
「ええ~、私でもそれはきついよ」
部屋の間取りを考えつつ家具の移動をする。
俺の部屋(予定)に追加でベッドを入れたいのだがさすがに一人じゃなぁ。
「咸卦法使っていいから」
「じゃあ大丈夫」
明日香は咸卦法を使ってパワーアップ。はっきり言って能力の無駄使い。
さすがは明日菜の娘だけあって才能はある。
なにげにタカミチに弟子入りしてるしね。
将来有望でお父さんもうれしいよ。
勉強も出来ると嬉しいんだけどね……
「僕は何したらいい?」
「聖那のベッドを組み立てておいてくれ。何時までも木乃葉に抱っこさせたままじゃ辛いだろう」
「うん、わかった」
トウヤは赤ん坊の聖那のために幼児用ベッドの組み立てをはじめた。
大人し過ぎるのは少し問題だが手先が器用。
のどかの不器用を引き継がなくてよかったのかな? いやあれはただのドジか……
でももうちょっと明るくなってくれ、頼むから……
「父様、ミルクどこや? 聖那がお腹すいたって泣いとるわ」
「それならカティの鞄の中だ」
「そか、わかったえ」
木乃葉は聖那をあやしながら手早くミルクを用意する。
子守の技術は兄姉譲り。母親の才能も引継ぎ妹弟の子守も得意となった。
木乃香みたいにたまに黒くならないでくれれば一番なんだが……
「う~~」
「夕暮は聖那と一緒にいてくれな」
「う~!」
夕暮はパタパタと木乃葉の側へと駆け寄っていった。
言葉があまり得意ではない夕暮。
舌足らずな所はやっぱり母親の遺伝かな?
でも頭はいいのはさすが俺達の子供といった所か。
好奇心旺盛すぎるのも遺伝かな……
「ふぁ~……」
「あれ、お眠かな?」
聖那はちょっと眠そうだな。
生え始めの白い髪が特徴的な娘。
よく見ると瞳は赤く、おかしなほど背中側の布が膨らんでいる。
正真正銘、刹那の娘だと分かる特徴だ。
たまに飛んでいくのだけは止めてほしい……
さて、片付けの続きをしますか。
ホテル暮らしからしばらくして、ナギ一同は学園長に用意してもらった住居へと移動していた。
麻帆良郊外にある古い一軒家。
学園長の所有物で昔は教職員の宿舎としても使われていたらしい。
元々宿舎だけあって部屋数が多くリビングも広い、さらには地下室も有りとかなりいい物件である。
だが最近では使用者は居らず完全に空き家と化していたとか。
使わないのも勿体ないし取り潰すかとも考えていたが、そこに偶然やってきたナギ一家。
それならちょうどいいと、この一軒家を借りたのである。
古いといっても造りはしっかりしてるしそれなりに修繕もされていたので住むのは問題無かったのは救いだろう。
「ふう、これで何とかなったかな?」
ただしそこは長年使われていなかっただけあって汚いのなんの。
掃除から始め、ガラクタの撤去、間取りのチェック、内装の確認、荷物の整理、選択、荷入れ。
ベッドやテーブル、椅子などは元々置いてあったものを流用。
魔法で破損など一部復元とかしたのは秘密だ。
結果半日使ってしまった。
「まだ細かい荷物の片付けは終わってないですけど、なんとか今晩の寝床は確保しました」
全員分のベッドを確保するのは大変だったが、そこは元宿舎。
見た目を気にしなければすぐに必要な数は集められた。
もちろんテーブルやタンスなどもだ。
ただ、娘たちの趣味に合わないので後日買いに行く事に決定したが……
予算はもちろん学園長持ち。
……という事はなく俺の個人予算より出します。
こう見えても結構持ってるのよ俺。
「部屋割りもまだだけどね」
「それは適当でいいだろう。とりあえずセイナは俺の部屋の方がいいだろう」
「私の部屋でも構いませんけど」
カティが申し出る。
一番のお姉ちゃんだけあって責任感もあり面倒見もよく、なにより一番下の妹なのでそれはそれは可愛くてしょうがないのだ。
「いや、これは親である俺の責任だからな。ちゃんと面倒見るよ」
「そうですか……」
ちょっと残念そうだが、こればかりは親である俺の仕事だ。
なによりこの子になにかあれば刹那に殺されヘフンゲフン……
「じゃあ私お父さんの隣りの部屋~!」
「ウチも~!」
「な、ズルイですよ、二人とも!」
さっきまでの雰囲気とは一変して部屋取り合戦が娘たちの間で勃発。
カティも明日香も木乃葉もお父さん大好きっ娘なのでこれは死活問題である。
てかなんで俺の娘は総じてお父さん子なの?
娘に手は出しませんからね!
法律変えられたってやるもんか!!
てかそんな簡単に法律変えるなあやか!!!!
未だにお前が総理大臣って信じられないよ俺!!
非常に日本の未来が心配になる。
あ、でも大抵のトップが身内だったわ。
むしろなんとかなりそう?
「大変だね、父さん」
「言ってくれるな、トウヤ」
こんな風景は日常茶飯事だ。
結局中立の立場のトウヤが隣りの部屋に決定。
カティとアスカ、コノハは二階の部屋へ。
まだ一人寝が出来ないユクと赤ん坊のセイナがナギと同じ部屋となった。
他にも部屋が一階に二つ、二階に四つもあるが、当面は物置に。(なんかフラグか?)
とりあえず部屋割りはこれにて終了。
時刻を見れば夕方。
「さて、晩御飯だが……」
ピンポ~ン♪
「っと、お客か?」
お客といっても来るのはだいたい想像が付く面子。
「ふぉっふぉっふぉっ、お邪魔するぞい」
「失礼するよ」
「ふん……」
「失礼いたします」
まぁ一人を除いて予想どおりのメンバーだな。
学園長にタカミチ、エヴァと最後に予想外だった彼女の従者である茶々丸だ。
まさか連れてくるとは思わなかった。
カメラのデータとかどうしようか?
……あとで考えるか。
「いったい何の用ですか、皆さんそろって?」
「なに、引越し祝いに蕎麦を持ってきたんじゃよ。一緒に食べんか?」
蕎麦か。
ちょうど晩飯をどうするか考えていた所だし、ありがたく頂いておこう。
「それはどうもありがとうございます。
では中へどうぞ」
「大爺ちゃ~ん」
「ふぉっふぉっふぉっ、元気じゃのう木乃葉は」
学園長が家に入るなり木乃葉が勢いよく飛びついた。
ひ孫に抱きつかれて本当にうれしそうな学園長……
鼻の下が伸びていたらヌッコロシている所だった。
「大爺ちゃんというのは?」
「タカミチか。曾御爺ちゃんって言い難いからそう呼んでるそうですよ」
「なるほど……」
ちなみに木乃葉が大爺ちゃんもとい学園長を前にすると決まってこういった演技をする。
長生きしてもらいたい気持ち半分と、お小遣いをもらうための半分と……
まあ子供ならしょうがないか。
自覚してやっていたらさすがに黒いけどな。
きっと自覚してやってるんだろうな……木乃香の娘だし。
将来が怖いよまったく。
学園長たちが持ってきた蕎麦をカティが茹でることに。
人数が多いので茶々丸もお手伝い。
「茶々丸さん、お皿を取ってもらえますか?」
「はい」
茶々丸にしては珍しくほとんど隣か後ろで見ているだけ。
カティの動きが熟練され過ぎていて手を出し辛いのと、やはり畏縮しているのだろう。
なにせカティはエヴァの娘なのだから……
どうしたらいいのか分からない様子の茶々丸を見てカティは笑う。
「ふふ、でもおかしいですね。見た目は変わらないのに、やっぱり違う」
「何が違うのですか?」
「経験、かな? やっぱり20年の差は大きいって事ですよ」
未来ではカティの方が見ているだけという事の方が多い。
今とは逆の立場だ。
それだけ未来の茶々丸は経験し成長しているということだろう。
初々しさを感じる今の茶々丸が妙に可愛らしく見えるカティであった。
「そうですか……」
「気にしないでいいですよ。これから培っていくものですから」
「はい、お嬢様」
「やっぱりそう呼ぶんだ」
ちなみにカティの事をお嬢様。
他の子は基本ちゃん付けで呼んでいる未来の茶々丸であった。
やはりマスターの娘というのは彼女にとって大きな存在のようだ。
所変わって居間。
学園長達がテーブルでなにか話をしているため、エヴァと明日香はソファーに座ってテレビを見ている。
「す~……す~……」
「何で私が面倒など見なければいかんのだ」
そんな中、エヴァは何故か眠る聖那を抱っこしていた。
「ゴメンね、マスター……じゃなくてエヴァさん。私だと眠ってくれないのよ」
「まったく……」
木乃葉は夕暮を連れて部屋に行ってしまったし、トウヤはトウヤで本を読んでいてこっちに来ない。
結果、明日香が聖那の面倒を見ていたのだが……
どうも聖那は明日香相手だと駄々をこねてしまうのだ。
単純に相性の問題かもしれないが、子供好きな明日香としてはちょっと悲しいところ。
というわけでちょうど一緒にいたエヴァにお願いしたのだ。
「そういえば、今、私の事をマスターと呼んだな」
「うん、向こうだとエヴァさんから魔法を教えてもらった子はみんなマスターって呼ぶようにって言われてるよ」
「つまりお前は私の弟子だったという事か」
「そういうこと。でも何人かはお婆ちゃんって呼んで怒られてたわよ」
「それは当然だろう」
年齢の事はなんだかんだで気にしているエヴァであった。
「ははは。でも、やっぱりエヴァさんだと安心するみたいね、聖那」
「私なんかの腕の中にいるのにな……」
聖那はエヴァの腕の中でそれは穏やかに眠っていた。
そんな姿を見てエヴァは自然と優しい笑顔になる。
「……私も、昔はこうやってエヴァさんに抱かれて眠ってたらしいよ。
トウヤもカティ姉も、夕暮も木乃葉もね。
もちろん他の子も一度は抱いてもらってるんだ」
カティを産んだ事で、未来のエヴァは母性に目覚めた。
以降、誰かに子供が生まれれば率先して手伝いに出向き、いろいろと出産の手助けをしてきた。
時には産婆の真似事までしてみせたっけ。
なぜか一家内で『エヴァに出産を見届けてもらえば安産になる』というジンクスまで生まれたが……
マジで全員安産だったのだ。
いつのまにか麻帆良学園内に神社まで出来ていて、安産の神様として祀られていたくらいに。
ちなみに作ったのは真名。
お守りもバカ売れだよとは彼女の談。
神様使って金儲けはダメだぞこの守銭奴。
それはともかく、エヴァは子供たちに最上級の愛情を注いでいた。
もちろん理由もあるのだが……
とにかく、エヴァは自身の子であるカティと同じように、他の子にも愛情を注いでいたということだ。
「……そうか」
その話を聞いたこちらのエヴァは、そんな未来もあるのだなと、少し羨ましそうに呟くのであった。
「出来ましたよ」
そして蕎麦がゆで上がった。
声を聞いてみんなが食卓に集まる。
元宿舎だけあってこれだけの人数が居ても問題無い大きさのテーブルがあって本当によかった。
「う~」
「わ~い」
「ふぉっふぉっふぉっ、おいしそうじゃのう」
ついでに茶々丸が持ってきた野菜や海老で天ぷらまで作っていた。
あの短時間でこれだけの人数分の食事を作るとは、カティ恐るべし。
「だてにあの人数の中で育ってませんよ、お父様」
「それもそうか。向うの方が人数よっぽど多いしな」
昔と違って全員がそろう事が少なくなったとはいえ、一つの家に数十人は常時いるのだ。
一度の食事の量はとんでもない。
「さあ、みんな席に座って座って」
「マスター、私が預かります」
「そうか、悪いな」
食事の必要がない茶々丸がエヴァの代わりに聖那を抱く。
その手つきはとても優しく、表情の少ない茶々丸でさえ微笑んでいた。
さて、全員そろった所で、
「では、いただきます」
「「「「「「「いただきま~す」」」」」」」
礼儀正しくが基本な一家です。
「うん、おいしい」
「よい茹で加減じゃ」
蕎麦はもちろん好評。
学園長、かなりいいとこの蕎麦を用意したな。
手作り程じゃないがかなりうまいぞ。
「カティは一番のお姉さんだけあって家事も万能だからな」
「いえいえ、教えてくれた人達が凄いんですよ」
「本当よね~」
超包子の料理長である四葉を筆頭に料理が得意な面子全員から手ほどきを受けたのだ。
うまくて当然である。
「茶々丸さんも私の家事の先生だったんですよ」
「そ、そうなのですか?」
「今じゃりっぱな保母さんで、子供達全員のお母さんだ」
「は、はあ……」
そんな姿を想像出来ない茶々丸は困惑するばかりである。
食事もあらかた終わり、団欒の時間となった。
すると学園長、
「さて、今日ここに来たのはナギくんに頼まれていた要件についてじゃ」
「お父様、学園長殿になにか?」
「ん? お前たちを学校に通わせようと思ってな」
「「「「はい?」」」」
さすがに予想外な発言に驚く子供たち。
「カティは女子高等部だ。高音もいるから心配ないぞ。
明日香は女子中等部だな。3-Aだからみんなと一緒だぞ」
「ちょ、聞いてませんよお父様!!」
言ってないのだから当然である。
「なんで? どうして?」
「学業を疎かにするわけにはいかないからな」
学力が落ちてたりすれば未来に帰ってから怒られるのは必然なので納得する子供たち。
だがカティは勘でなんとなく気づく。
これが本心では無いと……
「本音は?」
「お前たちは目立ちすぎるから生徒でもやって隠れ蓑にでもしろ」
「言い切りましたねお父様」
分かっていたとはいえ呆れるカティ。
カティは半分とはいえ真祖の血を引いているのだ。
うまく隠しているとはいえ気づく者は気づいてしまう。
それならば誤解されて敵対されるより、最初から味方に引き込めるなら引き込もうと考えた結果だった。
身近に正義を自称する者がいて、そいつが大丈夫だと言えば他への信用にもなるだろうという算段でもある。
そこでちょうどよく自称正義の高音がいる女子高等部があったのだ。
高音・D・グッドマンは魔法生徒の中でも上位の実力者で、尚且つ後輩にも慕われている人物でもある。
味方に出来るならした方がいいだろう。
うまく行けば後輩もまるごと引き込める。
まぁ真面目過ぎるので、早めに懐柔しないと後々収拾つかない事態になりそうだし。
なんだかんだで面倒くさいんだよなぁあの人。
「まぁ……あの人でしたら一直線に攻めれば早々に引き込めそうですが……」
遠回しに攻めるのではなく、真正面からはっきりと言えば彼女はちゃんと答えてくれる。
なんだかんだで純粋なのも彼女の良さの一つなのだ。
「私もかぁ」
明日香はもちろんA組の護衛のためだ。
俺も守るが、全員を守れるかと聞かれると難しいと答えてしまう。
なにせ問題児ばかりの集まりなのだ。
協調性があるようでバラバラに動くから対処が難しいのだ。
ならば明日香に一反を任せようと考えたのだ。
それに年齢的にも明日香はちょうどいい。
偶然にも15で一緒だしな。
「僕はどうすればいい?」
「トウヤは学校だな。多分共学になると思う」
さすがに女子中等部に入れるなんて馬鹿な事は出来ないししない。
学園長なら嬉々としてやりそうだけど、さすがに子供の情操教育に悪い。
……いや、俺の存在つか家庭事態が既に環境に悪い気もするけど。
とにかく、普通の学校生活を送ってもらいと思うのは俺の本心だ。
あとはトウヤにはもう少し引っ込み思案なところを直してほしいという意味合いもある。
「ウチはぁ?」
「木乃葉はすまないが自宅学習だな。夕暮と聖那のお守を任せた」
「ちょっと残念やけど、ウチはかまへんよぉ」
理由は簡単。
俺が仕事をしている間、家を留守にするからだ。
もちろん聖那と夕暮を連れて行く訳にはいかない。
そのための護衛でありお守だ。
防衛や結界といったモノは木乃葉の得意分野でもあるしね。
「うむ、それではOKじゃな?
書類は後日届けるぞい」
「はい、頼みます」
「あ、それとナギくん。
明日なんじゃが、22時に世界樹前に来てもらえんかの?」
「夜にですか?」
「うむ。
出来ればカティくんや明日香くん、トウヤくんにも来てもらいたい」
「……顔見せか」
「そうじゃ。
明日そこで麻帆良学園に居る魔法関係者達と会ってもらいたいのじゃ」
どうやら早々に問題事は起きるようである――
だいたい一話が一万文字前後になるように更新したいと思います。
設定一部公開。
名前:神楽坂明日菜
年齢:35
仕事:中学教師 担当科目:美術 担任 美術部顧問
子供:娘と息子一人(明日香15歳・明日也10歳)
備考:母親としての自覚が芽生え、昔では考えられない程女性らしくなった。
ただし今でもネギとはたまに喧嘩をしてしまう。
家事は得意ではないが簡単な料理程度であれば作れる。
基本的には何事もおおざっぱ。
ネギに迫ったのは中盤組。家族愛や姉弟愛よりも愛情が勝った結果。
「他の子ともしてるし、別に私が行ってもいいわよね」とは本人談。