今回はネギが原作と枝を別った原因ともいうべき事件を。
少し、昔話をしようと思う……
十三歳当時の俺。
ちょうどこのくらいの時期、少し思うことがあったんだ。
魔法なんて無くてもいいんじゃないかって……
だって麻帆良学園以外に住む人は魔法なんて使えないし、知らないし。
そもそも必要性ってあるのか?
あれば便利だけど無くても困らないし……
まぁ……魔法使いとしての存在意義について考えたわけだ。
俗にいう中二病とかそんな感じ?
というか多感な時期。
とにかく悩みまくったわけだ。
……今となれば別に気にしなくていい事なんだけどな。
俺は既に魔法使いなんだし。
使わなければいいだけだし、魔法世界に行くときは必要だし。
要は自動車の免許とかと一緒。
車に乗るときには必要だけど、車が無ければあまり意味の無いモノ(身分証明としては使えるけどね)。
ようは使いどころって話だ。
「お~いネギ、いるか~?」
「なんか聞こえたけど無視無視」
でも当時は悩みまくった。
そりゃあ悩んだ。
もしかすると人生で一番悩んだかもしれないくらいに悩んだ。
まぁ……そんな事を考えていたのが原因か……
マスターの別荘でついついお酒を飲んで……
俺はマスターに当たり散らしてしまった。
なんだかんだでストレスとか不満とか溜まってたのかねぇ。
で、結果……
エヴァに慰められました。
うん……
つまり……
やっちゃったんだ。
「なんだいるじゃねえか。
ん? 魔法記録球に向かってなに話してんだ?」
「アナタが死んでも理解出来ない事ですから回れ右してお帰り下さい」
「ぬあっ!!? ヒデェ!!!」
後で聞いたらエヴァの策略もあったらしい。
お酒に薬仕込んで、茶々丸は別荘に入れず、魔法まで使って……
エヴァに聞いても理由までは教えてくれなかったけどね。
後々のどかに聞いたら、なんていうか……
親父を諦めたいって気持ちと、俺に好意を感じている戸惑いとがあって、どうするかと迷っている所に俺登場。
しかも悩みまくってて微妙に子犬っぽかったとか、女心がくすぐられたとか、なんというか……
とにかくその時点でエヴァとの恋愛ポイントがMAXになったわけだ。
でも俺の年齢もあるしエヴァ自身の事情もあるしで、結果襲う形となったわけらしい。
エヴァもいっぱいいっぱいだったようだから、色々と察してやってくれ。
しかも大当たり。
奇跡か、エヴァは無事に妊娠したのだ。
別荘にあるエヴァの部屋で、ベッドに腰掛ける彼女から「赤ん坊ができた」と言われた時は……
意味が分からなかったね、うん。
というか理解できなかった。
そもそも子供を作るとか、結婚とか、そういった事は一切考えていなかったのだ。
というかあいつらが高校卒業するまでに答えを出すとかなんとかそっちの方もいろいろ考えていてテンパっていたんだから妊娠とかそんなんムリムリ。
てかそもそも俺その時13歳。
精通は比較的早めだったとはいえそもそも誰かとそんな事するなんてすら考えてませんでしたよ、はい。
というか俺の年齢的にアウトだかんね?
最近は経験も早いっていうけど俺は教師でもあるんだからね?
常識くらいありますよそりゃ。
13で教師やってる時点で常識言うのもバカバカしいんだけど。
まぁ、襲われそうになった経験ならいくらでもあるんだが。
というか今後そんなんばっかになるけど。
それがいきなり子供が出来ましただぞ?
いくら多感してるとか精神年齢が高いとか言われたって。
マジで子供な当時の俺にはそんなん無理無理無理。
どうやって理解しろってのさ。
「あやつが泣きながら私の所に来たぞ、いったい何があったのじゃ?
ん、記録球を使っておるのか? ということは日記か」
「はい、そうですよ。でも恥ずかしいのですみませんが一人にしてくれますか?」
「そうかそうか、うむ。
私も経験があるからな、よく分かるぞ。では邪魔をしたな」
「ありがとうございます」
とにかく、しばらく呆然としていた気がする。
その間は何をしていたのかすらも覚えてないくらいにね。
一か月くらいしてやっと、父親かぁとおぼろげに考え始めた。
まず父親ってなんだろう?
一番に思い浮かんだのは当然、親父であるナギだ。
だが俺にはナギに何かしてもらった記憶は杖の事とかしかない。
はっきり言って役に立たない!!
他に父親というと魔法先生たち。
でも、聞くということはエヴァの妊娠がばれるということだ。
面と向かって聞けるわけがない。
あの当時はまだエヴァへの不信感とかそこらへんが色濃く残っていたしな。
ならばと図書館島で本を読み漁った。
父親になるとはどういうことかとか、産みの苦しみとか、出産のハウトゥー本まで読んだっけ。
読んでいるウチに、俺はある人を思い浮かべるようになっていた。
それは新田先生だ。
厳しくも正しく教え子たちを導く。
悪い事をしたらちゃんと叱り……子供たちの自主性をなにより重んじる。
まるでその姿は父親のようじゃないか。
そう、この時から新田先生は俺の人生の先生となったのだ。
「おいおい、アイツと俺で態度が違いすぎるだろうが!!」
「どうして違うのか、一度胸に手を突き刺して考えてみてください」
「胸に手を……って死ぬだろうが!!?」
「ちっ」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん、ネギが黒いよぉぉぉぉぉぉぉ!」
「まったく……うるさいなぁ」
少しづつ父親としての在り方を考えながら、俺はエヴァの事が気になっていた。
エヴァは真祖と呼ばれた吸血鬼。
六百年も生き続けてきたから人生経験も半端ない。
だが、その中でエヴァさんは出産を経験しただろうか?
いや、無い。
ある筈が無い!
気づいた俺は、急いでエヴァの元へと走った。
「マスター!」
「ふん、貴様か……何の用だ」
何を言えばいいのか分かる筈がない。
だって俺はその時まだ子供だったから。
父親になるけど、まだ経験の足りない子供だから。
最良の言葉なんて出る分けも無い。
ましてや俺自身に、誰かを心から心配しそれを言葉にするなんて技能……在る筈がなかったから。
だから俺はただ、その時その場で思いついた言葉を言った。
心から思った、俺の本音を口にしたのだ。
「マスターが不安ならずっとそばにいます。
子供が不安なら僕が守ります。
だから……一緒に産みましょう」
ってな。
一緒に産みましょうってなんだよ?
産むのはエヴァだぜ?
ぶっちゃけバカじゃないの俺?
でも、その言葉を聞いたエヴァは泣いた。
はじめて見るかもしれないってレベルで泣いていた。
やはり不安だったようだ。
産む事よりも何よりも……
これから生まれてくる子供が、自身と同じ道を進んでしまうんじゃないかと。
子供が、自分のように迫害されるんじゃないかと。
だけど俺の言葉を聞いて、子供には味方がいるんだと改めて認識したらしい。
そこからは早かった。
まず別荘に必要な荷物を持ち込み出産準備。
エヴァはその間、別荘の中で待機してもらう。
そうすれば外では十数日で、中では十月十日。
妊娠の事をばらさないためにはどうしても必要な手段だった。
もちろん俺も出来る限り別荘に行ってエヴァから不安を取り除く努力をした。
さすがにそんな事をしてれば情も強くなるし想いも募る。
まるで新婚の夫婦みたいな状態だったな。
絵図らはともかくな。
ぶっちゃけどっちも見た目子供だし。
「むぅ……また私の所に泣きついてきおったぞ。
本当に何をしたんじゃ、ネギ」
「五月蠅くて日記の邪魔なんでお帰り願いました」
「そうであったか……
日記とはあまり人に見られたくないモノだからな。
その気持ちは分かるぞ」
「はい……」
「む? おお、私も邪魔であったな!
……すまぬな、私ともども邪魔をせぬよう言うておく故、許してくれ」
「その気持ちだけで十分ですよ」
「そうか……ではな」
出産は俺の学んだ技術と、茶々丸とその妹たちに手伝ってもらった。
茶々丸に教えるのはどうかとも考えたが……茶々丸もエヴァの家族なのだ。
ならいっそのこと味方に引き込む事にした。
最初の茶々丸の慌てっぷりはさぞおもしろかったが……
いざ出産の時。
真祖とはいえ身体は子供なのだ。
それはそれは辛そうだった……
出来ることなら変わってやりたかった。
だけど、エヴァはこれは私の仕事だって強く手を握り返して来た。
ああやっぱり女性は強いんだなって再確認したよ。
無事に生まれて、自分の子供を抱いた時は感動で泣いたっけ。
エヴァと一緒に抱き合い、生まれて来てくれてありがとうと言った。
産んでくれてありがとうと言った。
……親父と母さんもこんな感じだったのかなぁ?
ちなみに名前はカティに決まった。
俺の名前から取るのは難しいからと、エヴァの名前からキティを貰った。
名目上は戦災孤児。
俺が見つけてエヴァに預けた形とした。
それでも多少怪しまれはしたけど、なんとか言いくるめた。
でもきっと、学園長にはバレていたと思う。
でなけりゃもっと何かしらの抗議とかあったと思うし……
「うおぉぉぉぉぃ、アイツにまで怒られちまったじゃねえか」
「そのまま太い木の枝に縄を掛けて首を吊って下さい」
「お前ホント黒いぞ、マジで!」
「……はいはい、すまぬなネギ」
「ぬお!? いつの間にいやがった!!?」
「今度こそ、くれぐれも邪魔をせぬよう躾ける故、許してくれ」
「はい、お願いします」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」
以降はエヴァの家にて育児だ。
はっきり言ってこれはかなり難しかった。
育児経験なんてあるわけも無いし。
なにせ俺は親父に育てられた経験すらも無いのだから……
もうこの時には、親父は英雄かもしれないけど、父親としては底辺だ!
って考えるようになってた。
うんうん、あんなのは最低の親父ですよ。
子供の傍にいてやれないなんてただの言い訳ですよ。
何が理由があろうと子供のためにならなければダメですよ。
だから尚更、カティには愛情を注いだ。
カティのために、出来る事はなんでもした。
一緒に散歩に行き、ご飯を食べさせて、遊んで……
勉強もしたし、お絵かきもした……
かけっこをして、鬼ごっこをして……
滑り台で遊んで、砂場で遊んで、ブランコで遊んで……
おままごともしたし、人形劇もしたし、昔話を読んであげたりもした……
悪さをしたら叱って、良く出来たら褒めて……
悲しいことがあったら一緒に泣いて、楽しいことがあったら一緒に笑った……
朝起きたらおはようって言って、夜寝るときはおやすみなさいって言って川の字で眠る……
すべて……
俺が両親から受けられなかったモノだ。
自分が娘にしてあげて、はじめて気づいた。
俺はどれだけ……独りだったんだって……
独りでいようとしてたんだって……
独りでいなきゃいけなかったなんて……
もう俺にとって……ナギはただの駄目人間でしかなかった……
大切な事はあったかもしれない……
大事な事があったのかもしれない……
それでも……
自身の子供を蔑ろにしていい理由にはならない。
それが親の責任だと、俺は思う。
だからカティ……
俺は君を見守り続ける。
親として、家族として、君の傍で見続ける。
君を、嫁に出すなんてまだ考えられないけど……いつかその日まで、俺は守るよ。
エヴァと一緒に……
それが、俺の責任だ。
それから約二年して嫁さんと子供がさらに増えたのは……
また別の機会にな!
「誰が駄目人間だ!!?」
「アナタの事ですよクソ親父!」
「よ~し、その喧嘩買った!!!」
「五千六百円で売りますので即金でお願いします」
「え~と、千円札五枚に……って誰が払うか!?」
「ちっ」
「うおぉぉぉぉぉ、マジでむかつくぞこの餓鬼! いったい誰の子だ!?」
「アナタだという事は全否定したいですね」
「俺だってお前みたいな子供いらんわ! 昔はあんなに可愛かったのに……」
「親父も昔は格好良かったのに」
「俺は今だって十分格好良いわ!!」
「え? マジで言ってるの……引くわぁ」
「なんかムカつく程に可哀想な目で見てやがる! こんな風に育てた覚えねえぞ」
「育てられてないですよ」
「うお~~~~~!!!」
「最近……本当に楽しそうにナギイジメをするのう。
無理にでも私の手で育てるべきじゃったな……
……さて、そろそろ止めるか」
今日もスプリングフィールド一家は平和です。
番外はさすがに文字数増やせんw無理!
エヴァと結ばれてカティが生まれた事で原作とは大きく違う道をネギは歩き始めました。
そしてもう一つの理由もあってハーレムの世界へと。
もう一つの理由についてはまた別の番外で。