子守先生■ギま!?【凍結】   作:再buster

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今回は待ちに待った超の被害者ゲフンゲフンが登場します。
さて、みなさんの予想は当たるかな?

ではどうぞ~



第6話:『家族・長女・精霊』

 

 

 

 

「なんでよりによってアンタが来やがったんだ?」

 

 

 我が家のリビング。

 ここに昨夜、麻帆良へとやって来た人物がいた。

 

 

 前回、いち早く感知し現場へ急行するとそこには……

 

 ボロボロの姿となった黒ローブの男が倒れていた。

 

 

 そのまま埋めて見なかった事にしたかったが、ちょうど運良く目を覚ましやがって未遂に終わった。

 

 その場でトドメを刺してもよかったのだが……むしろトドメを刺せばよかったなぁと今は後悔しているが。

 

 しょうがなくも本当にしょうがなくも家に連れ帰り今に至る。

 

 

「まったく……我が聞きたいわ」

 

「お茶やえ~」

「ありがとう、木乃葉くん」

 

「で、アンタは茶を飲みに来たのか?」

 

「……そんな訳はなかろう?」

 

 

 そんな理由だったら翌日の燃えるゴミの日に直接収集車にぶち込んでやる。

 持って行ってくれなかったら無理やり袋に詰め込んで再度捨ててやる。

 それでも駄目だったら焼却炉に押し込んでやる。

 

 燃えそうにないな、コイツ。

 

 

「無理やりとはいえ荷物を持たされている」

 

 そう言いながらどこからかケースを取り出す。

 自分はボロボロになってもケースだけは守りきるとか……

 

「まずはこの携帯だ。

 向こうからの連絡を受けられるよう改造が施された専用の物だそうだ。

 受信能力を強化しているのと、お前たちのいる時代と現在地を向こうに送信する機能がある」

 

 渡された携帯はどこからどう見ても既存のモノそのままだ。

 スマフォでなく折り畳み式なのは時代に合わせた結果だろう。

 

 だが性能はまったく違う。

 いわゆる擬態だな。

 

 ちなみにこの携帯は受信用なのでこちらから未来にかける事は出来ないそうだ。

 それと定期的に未来の現在地のデータを送信しているらしい。

 

 送信できるならこちらから電話くらいさせろ!

 

 

「今はまだ大丈夫だが、時間が経てばそれだけズレが生じる。

 正しくお前たちを迎えにくるのに必要なモノだそうだ。

 大事に使ってくれと念を押されている」

 

「アイテムの説明を受けてる暇があるならその間に逃げろよな」

 

「説明を受けている時には既に箱の中だったのだ……」

 

「すまん……」

 

 

 とりあえず携帯は影の中にでもしまっておこう。

 

 

「うむ、こちらのトランクには認識阻害の装備がいろいろと入っているそうだ。

 容姿に問題のある君たちにはちょうどいいだろう」

「助かるな。

 学園長から借りた分だけだと心もとなくてな」

 

 メガネなどは学園長から借りたモノに俺が魔法で改良を加えたものだ。

 とはいえ効果はそれ程高いわけじゃない。

 なにせ元々のメガネは魔法世界でも一般的に売られている程度の品物なのだ。

 

 その点で言えば鈴音の作ったモノは強力だな。

 未来技術が使われてる時点で強力に決まってるな。

 

 

 トランクの中には眼鏡にマスク、イヤホン型から装飾品、服各種と大量に入っていた。

 あからさまにトランクの容量よりも多い気がするが気のせいか?

 うん、気のせいだ。気のせいだとも。

 

 間違っても『四次元トランク~』などというメタな代物ではない筈。

 

 

「ふむ、これは明日香くん用の札だな。

 こっちはトウヤくんと木乃葉くんのための予備の魔法媒体だ」

「ああ、渡しておく」

 

 明日香の札は前に明日香自身が説明したとおりだな。

 魔法媒体は緊急でこっちに来たせいで装備が足りないだろうと用意してくれたモノらしい。

 

 実際にトウヤは指輪くらいしか持ってないし、木乃葉も杖を一本しか持ってきてない。

 メインの装備を考えると心もとないな。

 

 俺は素手でも行けるんだけどなあ……

 息子たちはそうはいかないか。

 

 

 ん?

 俺の杖はどうしたかって?

 

 あの親父からもらったバカでかい杖だったら娘の一人に譲りました。

 相性で言えば俺よりもあの娘の方がいいしな。

 

 まぁ……大事に使ってくれてるならいいさ。

 

 

 

「で、なんでアンタなんだ?」

 

 別にお前じゃなくても良かったと思うんだが……

 むしろお前じゃない方が俺的にも読者的にも嬉しかったと思うんだ。

 

 ここらで美人な女性メンバーの追加だ~とか。

 奥さんの一人がなんと逆行してきたとか。

 

 その方がうれしいと思うんだ正直な所。

 

 というか誰がお前だと予想するよ?

 メタな所、感想欄にも無いんだぞお前の名前。

 むしろ新旧そろってカスリもしないって……どんだけ予想外なんだよお前は。

 

 人気投票だと確実に低いだろ。

 後期だと人気投票やってないから実際の所知らんけど。

 

 

「自分の旦那よりも弟の方を心配したアイツのせいだ」

「ネカネ姉さん……」

 

 なんでコイツと結婚したのか今でも本気で聞きたいんですけど姉さん。

 

 

 とにかく、話によれば……

 

 鈴音が急いで組み上げたタイムマシンはさすがの急ごしらえだけあって安全性に問題有りの代物になったそうだ。

 時間は超えられるが相当のダメージが予想されると。

 

 奥さん'ズや子供たちでは危険すぎる。

 

 なら頑丈な人に頼もうということで最初に白羽の矢が刺さったのが『紅の翼』のメンバー、つまり親父たちだ。

 だが親父たちはなんだかんだで仕事で忙しいとの事。

 というかそんな有名人をそっちに送り込んだら確実に面倒な事になると。

 

 ならばと魔法世界連中に頼むことに。

 

 電話したらタイミングよくネカネ姉さんが出て、ちょうど暇してるからと言われて無理やり魔法転送で研究室に直行便。

 

 意味が分からないまま茫然としていたこいつを無理やりタイムマシンの中に押し込み物品の説明スタート。

 

 そのまま何をするかも何処に行くかも教えてもらえずにそのままスイッチON。

 

 で、現在に至る、と。

 

 

「だからあんなにボロボロだったのか……」

「さすがの我もアレは死ぬかと思ったぞ」

 

 そのまま死んでくれてもいいんだけどなぁ……

 むしろ今殺すか?

 

「でもなぁ、向うの連中を呼ぶなら呼ぶで調や焔がいるだろ?

 あいつらだって十分に頑丈だろうに。

 というかフェイトとか寄越せよ。

 ぶっちゃけそっちの方が役に立つ」

 

 五人娘なら見栄えがいいし、そも花がある。きっと読者も喜ぶだろう。

 最悪フェイトでもアイツの知識があれば助けになる。

 

 なんでお前なんだ?

 

「あの娘達は妊娠中だ」

「また増えんのかよ……人のこと言えないけど」

 

 何を隠そう……というか予想道理だと思うがフェイトもハーレム築いてます。

 というか気が付いたらそうなっていたそうだ。

 やっぱりどこでも女は強し……

 

 というか栞さん? 普通にアナタは重婚してますよね?

 俺とフェイトの両方の子供いますよね?

 一人だけリアルに『完全なる世界』の夢を達成してますよね?

 

 彼女に関してだけはマジで失敗したかもしれん……

 

 ああ、ちなみにそのフェイトは?

 

「あやつは魔法世界で政治家をしているからな。

 普通に忙しいのだろう」

 

 そういえばそうだったな。

 フェイトはまさかの政治家です。

 

 よく選挙勝てたな。

 あれか? 孤児を助けたりしてたのが良かったのか?

 

 まぁどちらにせよ頑張れクルト。

 お前の胃痛はもう限界だ!

 

 後で胃薬送ってやるからなぁ……いつになるか知らんけど。

 

「でもデュナミスさんが来てくれてほんま嬉しいわ」

 

「そう言ってくれると我も嬉しいよ木乃葉くん」

 

「だって子供らしか家におらへんといろいろと面倒なんやもん、勧誘とか」

 

「……」

 

 ……一瞬マジで涙が出たぞ。

 木乃葉も母親に似てなかなかに黒いからなぁ。

 

 

 

 うん、ぶっちゃけコイツはデュナミスだ。

 

 元「完全なる世界」の幹部だった男。

 読者に忘れ去られた予想外男。

 作者が電波受信によりぶっこんだ男。

 女性キャラにしておけばよかったとマジ後悔!

 

 現在はネカネ姉さんと結婚し二児の父、こう見えてもラブラブな所がムカつく。

 

 元「完全なる世界」一同の保護者兼監督、兼イジリの対象。

 

 家族内もう一人の魔法の師匠、にして子守。

 

 ぶっちゃけ認めたくないが俺の義理の兄、いつか消滅させてやる。

 

 

「最後に余計な言葉が多すぎると思うのだが」

「気にするな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第6話  『 家族・長女・精霊 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結構なお手前で」

 

 

 私はスプリングフィールド家の長女カティです。

 先日よりこの麻帆良学園の高等部へと編入させて頂きました。

 

 クラス内に高音さんがいたりして珍しくも少々戸惑いましたが……まぁあの学園長の事。

 きっと何か悪い思惑があってのことなのでしょうね。

 愉快犯か……味方に引き込むためかは知りませんが。

 

 して、件の彼女の方ですが。

 とりあえず今は静観している状態といった所でしょうか?

 様子見ですかね、特に何かしてくる様子はありませんでした。

 正義の魔法使いか疑ってはいるようですがね。

 

 特に私の方で何かしなければ問題は無いでしょう。

 

 ですがそれも、吸血鬼である事がバレれば違うでしょうけどね……

 

 

 ちなみに女子校ですので転入に際し特に大きな騒ぎとかはありませんでした。

 まぁ何名かの方に『御姉様』と呼ばれましたが、いつもの事と諦めました。

 

 未来ではこれでもミス麻帆良コンテストの優勝常連ですから。

 男性方や殿方はもちろん女性の方にも人気なんですよ?

 

 その時にはお母様に盛大にざまぁ!と指を指して言ってやりました。

 だからといってお父様に泣きすがるのは卑怯です。

 

 

 話がそれました。

 

 

 

 そして今はと言いますと。

 俗に言う部活動見学をしております。

 対外的にどこかの部活に所属しておいた方がいいと担任の方が仰っていたので。

 

 とはいっても短期間の在学になるでしょうから所属する気はまったくありませんとお断りはしました。

 ですが最低限見学だけはしておかないといけないということだそうで、今回は未来でも大変お世話になっている茶道部の見学に。

 

 もちろんエヴァさんや茶々丸さんもいます。

 

 作法ですが、お母様はかなりの日本通でしたので、特に厳しく教わっています。

 スタイルのせいで着物が着づらいのが難点ですが(胸が大きく腰にくびれがあると着物が型崩れして不格好になるらしい)。

 ええ、お母様はその時も敵意の目をしていましたね。

 

 そういえば私が成人したとき用にと母が一着用意しているそうです。

 

 もちろん父から聞いた話ですよ?

 

 母は私に隠しておいてその日になったら驚かせるつもりとの事。

 

 

 その日が待ち遠しいですね、いろいろな意味で。

 

 

 それにしても……本当にお上手ですね、茶々丸さん。

 

「ありがとうございます、お嬢様」

 

 茶々丸さんも着物が似合いますね……違和感無いのが怖いです。

 

「どうだ茶道部は?」

「設備が本格的なのは未来も過去も変わらずですね。これもエヴァさんが?」

「そうだ。学園長に言って作らせた」

 

 いったいどれだけの費用がかかったのでしょうか、本当に疑問です。

 学園長様には後で一包ご用意しておきましょう。

 

「お前さえ良ければいつでも来い。

 歓迎くらいしてやる……」

 

 ……はい。

 ちょっと驚きです。

 

 まさかお母様の口からそんな言葉を聞くことになるとは……

 

 少しは私のことを認めてくれたということですかね?

 やっぱり嬉しいですね……

 

 頬が赤くなっていないか心配です。

 

「さて、それでは私は少し用事がありますのでここで失礼します」

「そうか……」

「それではお嬢様、お気をつけて」

 

 少しエヴァさんが寂しそうなのが印象的ですね。

 娘と認識してもらえているという事でしょうか?

 

 向うの母を知っている分、少しとまどいますね。

 

 後は茶々丸さんですが、やっぱり仕えているという感覚が拭えませんね。

 難しい事でしょうが、出来ればもう少し砕けた付き合いをしたいと思います。

 

 

 さて、二人に別れを告げて私は用事をすませることにします。

 とは言ってもただの頼まれごとですけど。

 

 はい、妹の木乃葉に買い物を頼まれているのです。

 

 さすがは家庭的な木乃香おば様の娘だけあって十歳にして家事は完璧。

 もちろん買い物だって目利きを使いこなして良い買い物をします。

 

 ですが体力と力はごく普通の少女でしかありません。

 とどのつまり大量に買って帰る事が一人では出来ないのです。

 

 本来であれば、まだ十歳なのですから誰かが一緒に付いていくものなのですが、それぞれ用事があるため難しいのが現状。

 

 というわけで安売りしているモノだけメモしてもらい私が代理で買いに行くことになったというわけです。

 ちょうど帰り時間頃にセールも始まるので好都合ですね。

 

 メモの内容は……

 牛乳4本にキャベツが3にんじん6に玉ねぎ8、お米が10㎏に味噌が2、醤油2本に油2等々……

 いったいどれだけ買わせるつもりなのでしょうか?

 

 というか何日分ですかこれは?

 

 まぁハーフとはいえ吸血鬼な私にはこの程度の荷物どうということもないんですけどね。

 

 

 

 

 

 一通りの品を買い終わりスーパーを出ます。

 

 両手に6袋……さすがに多いですね。

 

「木乃葉に頼まれていた買い物も終わったし、早く帰って聖那と遊びましょうか……」

 

 聖那は一番の妹だけあってとても可愛い。

 癒しの効果でも持っているのか一緒にいるとすごい癒されるんです。

 

 急いで帰って癒し分を補給したい。

 

 そしてなによりお父さまに抱きつきたい!

 

 

「ん?」

 

 ふと立ち止まる。

 

「風の雰囲気が変わった。

 ……なるほど……」

 

 嫌な気ですね。

 どうやら良からぬ事が起きるようです……

 

 

 

 

『……お嬢様……』

 

 

 

 荷物をスーパーのコインロッカーに預け全力で走る。

 身体能力は吸血鬼のそれです、魔力も気も使わずにかなりのスピードを出せます。

 

 そしてここは麻帆良学園。

 例え人並み外れたスピードで走っていても、おかしいとも思われないのは本当に助かります。

 

 人ごみを避け、飛び越え、壁を蹴り、橋を越えて再び走る。

 

 

 

 そして、急いで駆け付けてみれば最悪の現場に遭遇しました。

 

 この時代のお父さん、ネギ少年が今にも茶々丸さんにトドメを刺そうとしている瞬間でした。

 

 

 バランスを崩し、逃げ場を失った茶々丸さん――

 

 杖を振りかざし魔法を放つネギ少年――

 

 

 

 ……お父さんはこれが起きる事を知っていました。

 

 ですが起きる事象を崩せば、その先の未来でよからぬ乱れが生まれる。

 最悪な未来を引き当ててしまう事もある。

 そう言って手を出す事を良しとはしませんでした。

 

 不干渉。

 

 もちろん私自身も今の今までは見て見ぬふりをするつもりでいました。

 

 でもこれは駄目。

 

 ネギ少年の放った魔法には、明確な攻撃意思と威力が込められている。

 

 例え自ら軌道を逸らしても、既に間に合わないほどに……

 

 

 これが私たちが来た事による『ズレ』なのですか?

 

 

 

 

 なら……

 

 

 私は全力を持ってその『ズレ』を捻じ曲げる!!

 

 

「強制誘導!! 対象『光の十一矢』・標的・上空二十メートル!!」

 

 私の言葉と共に、ネギ少年の魔法は今までの軌道を一切無視し、まるで意思を持つかのように上空へと向けて飛び去った。

 

「え? え? え!?」

 

 ネギ少年は意味が分からないといった様子。

 

 当たり前の事。

 自分の意思とは関係なく魔法が軌道を変えたのですから。

 

 そんな事は本来起きえない事……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カティはエヴァとネギの娘だ。

 

 吸血鬼としての高い身体能力と、二人の膨大な魔力量を受け継いだ鬼才。

 確かに真祖の娘として忌み嫌われる事もあったが、それ以上に期待はすさまじく大きかった。

 

 『最強の魔法使いの再来』『希代の英雄』

 

 誰もが彼女の未来を喜んだ。

 

 

 

 だが、それだけだった。

 

 

 

 彼女は魔法使いとして大成し得ない。

 

 

 魔法使いが詠唱する時に必要な物は魔力と杖とされているが、実際には更に細かく分類される。

 

 自身の魔力総量、現在の魔力量、演算技能、意識量、イメージ力等――

 

 杖、杖の耐久度、杖の適合性、杖の魔力伝達量等――

 

 精霊、精霊との対話技能、精霊との相性、周囲の精霊の量等――

 

 これらが全て一つの魔法に関係していると言っていい。

 

 これらのウチ、劣る技能があればあるほど魔法の力は弱まっていく。

 最悪は行使することすら不可能なほどに。

 

 例えて言うなればタカミチだ。

 彼の場合は精霊との相性に問題があるのだろう。

 精霊とうまく対話出来ないために魔法がうまく使えない。

 

 

 ならカティは?

 

 術者は詠唱の際に、杖や自身の周りに精霊を介して魔法陣を作り上げる。

 呪文の詠唱に合わせ、巨大な魔法陣を描き上げて一つの魔法を完成させるのだ。

 無詠唱ではそれを頭の中で瞬時に行うという。

 

 だが、彼女は……魔法陣を描けない。

 完成のイメージは出来る。

 だがそれまでの過程が一切欠如してしまうのだ。

 

 それでは魔法陣は作れない。

 

 無詠唱でも、同じ事。

 瞬時に行っているとはいえ、順序というのは存在している。

 

 だが彼女は、その順序すらも欠如していた。

 

 魔法と言われれば、その瞬間に完成した形が出来てしまう。

 過程が存在しない。

 

 

 銃で説明しよう。

 本体が杖。

 弾丸一発が一発分の魔力。

 その弾丸が装填されれば魔法陣が出来る。

 引き金が魔法の発動、そして打ち出されれば魔法となって発射される。

 

 彼女の場合で言えば、装填が無いのだ。

 いくら弾丸があっても、装填されずに打てばただの空砲。

 

 つまりはそういうこと。

 

 

 彼女の魔法は発動しない。

 

 

 理由は不明。

 だが周りは、真祖の血のせいだとか、呪われた血のせいだと言って彼女を蔑んだ。

 

 魔法陣を直接書いて詠唱する方法もあるが、雷の暴風ですらかなりの大きさの魔法陣を必要とする。

 しかも一度きりの使い捨て。

 

 これでは効果に見合わない。

 

 

 彼女は――

 

 攻撃魔法を、魔法の射手の一矢すら撃てなかった。

 補助系魔法を発動させることすら出来なかった。

 回復魔法ですら。

 

 すべての魔法が使えない。

 

 彼女には既存の魔法が使えない。

 ならばと新しい魔法体系も考えられたが、何一つ実らなかった。

 

 なら純粋魔力で闇の魔法を使えばと考えたが、そもそも適正が無かった。

 

 彼女は、魔法という技術の全てに見放されていた。

 

 

 ならば身体能力であればどうだろう。

 吸血鬼の高い能力があれば……

 

 だがそれも結局のところ駄目だった。

 

 真祖故か、それとも彼女自身の問題か……彼女は気を感じ取ることが出来なかった。

 これでは自身の強化だなんて夢のまた夢。

 

 どれだけ努力しても訓練しても、気を操る事はできなかった。

 

 

 魔力による強化も、気による強化も望みは絶たれた。

 

 

 格闘技の才能があるかと聞かれればそれもまた皆無。

 

 剣も槍も彼女には使いこなせず。

 弓や銃も的にかすらせるのがやっと。

 

 武器の扱いも半人前以下。

 

 母親のような人形師の技術といった特殊な技能の才も無く。

 

 

 

 最早、全ての人間が、彼女には才が無いと言った。

 

 

 膨大な魔力量を持っていても……

 母から受け継いだ吸血鬼としての特性があっても……

 

 使えなければただのゴミ。

 

 彼女にとっては意味の無いモノとなっていた。

 

 

 

 非才の魔女……

 

 

 

 それが彼女に言い渡された名だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがある日の事だ、ネギとエヴァは驚愕することになる。

 

 

 とある広場の中心でカティは踊っていた。

 

 何も知らない者が見れば、ただ一人で踊っているだけ。

 どこかぎこちないが、そこは才が無い故。

 だが楽しそうに、本当に楽しそうに踊っていた。

 

 それは綺麗で、同時に……違和感を感じるモノであった。

 

 まるで誰かと踊っているかのように見えたのだ。

 

 

 しかし、この広場にはカティ以外には誰も存在しない……

 

 

 

 だが魔法使いにはその光景はさらに異常そのものだった。

 

 魔力の精霊たちがカティを中心にして集まっていたのだ。

 

 しかも量は世界樹の発光時と同等、いやそれ以上の数が集まっていた。

 

 

 精霊と相性の良い魔法使いは確かに存在する。

 そしてそういった魔法使いは決まって大成するとされている。

 

 当然だろう。

 精霊と相性が良ければその分魔法効率は上がる。

 上位の魔法もより短時間で習得し、魔力消費量も下がる。

 

 一つの属性でほんの少し相性がいいだけで魔法使いとしては才ある者と呼ばれるのだ。

 

 

 だが、そんな魔法使いでも、これだけの精霊を集める事は不可能だ。

 ましてや一人の人間が、たった一人の人間が世界樹を超える精霊を集めたのだ。

 

 これが異常と言わざるして何を異常と言うだろうか。

 

 

 そう、カティには一つだけ才能があった。

 

 それは魔法使いにとって最も得難く、最も欲される才能。

 

 彼女は生まれながらにして精霊に愛されていたのだ。

 

 しかも、ただ愛されているのではない。

 

 

 もはやそれは従属。

 彼女が願えば精霊は願いの通りに動き、彼女が導けば精霊はその通りに付き従う。

 

 

 たとえ別の魔法使いが操る魔法であっても、彼女は強制的に操れてしまう。

 先ほどネギの放った魔法を強制的に操って上空へと向けたのもこの技能のため。

 

 

 魔法使いの天敵にして、真なる意味で魔法使いと呼べる人物。

 

 

 現在過去未来において片手に足りる程しか現れなかった存在。

 

 

 それが彼女に与えられた唯一の才、『精霊の王』の才だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ない事をするのですね、少年……」

 

 ゆっくりとネギ少年と茶々丸さんの間に立つ。

 さすがに温厚な私でも、これは怒りたくなりますね……

 

 

「いったい誰だてめぇ!!」

 

 白い毛むくじゃらの化生が口をはさむ。

 邪魔ですね、私はそこの少年と話しをしたいのですが?

 

「黙っていなさい化生」

「なんだと!!」

 

「黙れと言っているっ!!!」

 

「!!!」

 

 白い化生は蹲り動けなくなりました。

 

 威勢が良くても所詮はオコジョ妖精。

 上位精霊ですら従わせられる私の言霊には勝てません。

 

 これで少し静かになりましたね。

 

 隣のお嬢さんは今の声を聞いて地面にへたれ込んでますが、この際そのままでいいでしょう。

 

「さて、なんでこんな事をしたのですか?」

「……だ、だってこうしないとエヴァンジェリンさんが」

 

 まぁ話の内容は父から聞いてほぼ知ってますが……

 

 とどのつまり、エヴァさん一人でも大変な相手なのにさらに従者がいては勝てるわけがない。

 だから先に従者を潰してしまおう……ということですか。

 

 定石としては正しいですが、今回は悪手ですね。

 

「そんな理由でご自分の生徒でもある彼女を殺そうとしたのですか?」

「こ、殺すって!? で、ででででも、茶々丸さんはロボットで」

「ロボットなら殺しても問題無いと?」

「そ……そんなことは……」

 

 ネギ少年はちらりと化生を見る。

 つまりその化生にやれと言われたということですね。

 

「そこの化生に言われたからといって、行えばそれはあなたの責任ですよ?」

「……う!」

「それとも誰かに言われた事なら自分には責任なんて無いと思ったのですか?」

「……うぅ」

 

 これ以上何も言えず俯く少年。

 いちおう悪いという事は理解しているようですね……

 

 なら私があまり言い過ぎるのもなんですかね。

 

「何が正しく、何が悪いのか、じっくり判断することですね少年」

 

 さて帰りま……

 

 

「そ、そこまで言わなくてもいいじゃない!」

 

 さっきまでへたっていたのに、まさかこのタイミングで発言するとは……

 

 っと、よく見れば明日菜おば様ですか。

 

 この人は昔からこんな性格なんですね……まぁ嫌いではありませんが。

 

「たとえ子供のしたことでも悪い事であれば悪いとしかるのは当然のことだと思いますが?」

 

 それが大人の務めであり親の役目だと思いますが?

 まぁいませんのでここは年長者としておきます。

 

「でもいきなり会ってそれは言い過ぎだと……」

 

 たしかに赤の他人がいきなり言う事でも無いですね。

 ですが、

 

「まぁ半分は私の個人的な腹いせですよ」

 

 

「……はい?」

 

 

「私の家族を気づ付けようとした凡愚にお仕置きをしようと思っただけですよ」

「か、家族って!?」

 

「彼女に家族がいることは可笑しいことなのですか?

 ましてやソレを他人であるアナタが不定していいことなのですか?」

「そ、それは……」

 

 ……これ以上は話す必要も無いですね。

 これ以上話せばいらぬ情報までわたしそうですし。

 

「今日は帰りなさい。

 それとも……この私と戦いますか?」

 

 彼女は首を横に振った。

 少年はほとんど動いてないけど、戦う意思は完全に消えている。

 化生は気絶してますね……

 

「賢明な判断です。

 では少年、また会いましょう……」

 

 そう言い残して私は茶々丸さんを抱きかかえてその場を離れる。

 

 

 

 

 

「お嬢様……」

 

「茶々丸さん、さすがに私もあれは怒る」

 

 

「え」

 

 茶々丸さんを下ろして面と向かって話す。

 さすがに今回の事は知っていたとはいえ許せません。

 

「あなたが死ねば私が悲しむ。

 父さんも、明日香も、トウヤも家族みんなが悲しみます。

 だから……だから死を容易く受け入れないで」

 

「お、お嬢様……ですが私は」

 

「いいえ、そんな事は関係ない。

 あなたは今ここに居て、私と話して、私に心配されている。

 例え機械でも、人間でも関係ない。

 私はあなたが絡繰茶々丸だからこそ、悲しむ」

 

 私たちを育ててくれたもう一人のお母さん。

 いつも笑顔を絶やさず、家族のために在ろうとした女性。

 自分の子供のように優しかった『人』。

 

「あなたの身体には変えがあっても、あなたの魂には変えはない。

 もし姿かたちが同じあなたがいても、魂が違えばもうそれは絡繰茶々丸ではない」

 

 だってあなたにはちゃんと心があるのだから。

 

 子供が産めないと、泣いたアナタがいるのだから……

 

「だから、簡単に死を受け入れないでほしい。

 ちゃんと足掻いて、そして生きてほしい。

 これは私のわがままかもしれないけど、それでも……

 私は茶々丸さんに生きていて欲しい」

 

「お嬢様……

 分かりました。

 私は死にません……お嬢様が存在する限り、いえ………お嬢様が望み続ける限りずっと」

 

「じゃあ私は絶対に茶々丸さんの死なんて望んでやらない。

 みっともなくても、生きて………いつか自分自身の幸せを見つけてね」

 

「はい、お嬢様」

 

 

 この時、茶々丸さんは……

 

 私の知るあの茶々丸さんのように、笑顔だった……

 

 

 

 

 

 

「さて、まずはその泥だらけをなんとかしないといけないですね」

「そうですね……」

 

 理由を聞いてみれば川で猫を助けていたとか。

 本当に茶々丸さんらしいです。

 

「それでは寮のお風呂を借りますか。高等部のならそれ程遠く無いですし」

「はい、お嬢様」

「隅々まで綺麗にしてあげるから」

「お、お嬢様……」

 

 ちなみに私にそっちの趣味は無い。

 ハルナおばさまのネタを拝借しただけです。

 

 何かと悪い事の現況になってますよね、あの人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木乃葉に買い物を頼まれていたのをすっかり忘れてしまい、怒られた事は言うまでも無いですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……俺はエヴァの家に行くから、あとは任せるよ」

 

 まったく……このオッサンのせいで時間をムダに使った。

 

「ふむ? なにか向こうに用でもあるのか?」

「風邪ひいてる筈だからな。看病に行くだけだ」

 

 この時期は魔力が弱まっているから真祖としての能力が使えない。

 ぶっちゃけ今のエヴァは一般人と対して変わらないんだよな。

 

 そのせいで花粉症にもなる。

 

 

 さらに記憶が確かであればネギ少年によって下着姿にされたおかげで風邪までひいている筈だ。

 いい加減歳なんだから健康には気を付けてくれよな。

 

 別に心配だからとかそんなんじゃ……

 

「ツンデレ乙、というのだったな」

 

「うるせぇ!」

「ぐぼはぁっ!!!!」

 

 ツッコミという名の魔力強化もした渾身の右ストレート。

 実にイイ一撃が決まったぜ。

 

「痛いぞ!」

「わりぃわりぃ」

 

 もちろん棒読み、謝る気ゼロだ。

 あっはっは!

 

「だが……真祖のひく風邪に興味があるな」

 

 おいおい、まさか付いて来る気か?

 

「お前は来なくて………いや、うん、お前も来い」

「なに?」

「どうせ顔見せは必要なんだ。一緒に来い」

「そうか、分かった」

 

 という訳でデュナミスも連れてエヴァンジェリン宅にレッツゴー!

 

「いってらっしゃ~い」

 

「留守は任せたぞ」

「はいな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?

 床が濡れとるわ。

 デュナミスさんお茶でもこぼしたんやろか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『番外にもならないおまけ(笑』

 

 

 とある魔法使いの家の一室にて――

 

「ん? エヴァなにしてんだ。箪笥の前でニヤニヤして……」

 

 家に帰ってみれば和室に置いてある箪笥の前でエヴァがなにやらしていた。

 妙に笑顔が気持ち悪い。

 

「おうネギか。カティの着物を新調したんだ」

「カティの? この前も新しいの作ってたじゃないか」

 

 高校の入学式用にって用意したばっかだぞ?

 

「今度のは今までの物とは比べられない程に豪華にしたんだ。

 あいつの成人式用にな」

「成人式ってまた気が早いな。あいつはまだ16だぞ?

 ……でもそっか、家族であいつが一番最初に成人式を迎えるのか」

「そうだな………ぅぅ」

 

「泣いてんのかエヴァ?」

 

「ぅぅう泣いてなんかいないやい!」

 

「ってマジ泣きじゃねえか!? ティッシュティッシュ!」

 

「ぅぅズピー………ぅ、うう」

 

 鼻をかませるがまだ涙は流れてる。

 

「まったく、いきなり泣きやがって……

 どうして泣いたんだよ?」

 

「……カティもいつか親離れをして、誰かの嫁に行くと考えたら……ぅぅ」

 

「いやいやいやいやマジで気が早いって。

 あいつまだ16だからね、高校生だからね。

 それ以前に相手もいないってのに」

 

「だが!! だが……いつかはそんな日が来るのだろう?

 結婚をして、子供を産んで……」

 

 そっか、エヴァもやっぱり寂しいか……

 

「そうかもな……

 でも、別にそれで家族の絆が切れるわけじゃねえだろ?

 誰かの嫁に行ったって、ずっと会えないわけじゃないだろ?」

 

「……でも」

 

「……本当に変わったなお前も………

 そうだな、もしそんな日が来たら……一緒に泣いてやるよ。

 お前が泣き止むまで、泣くのを飽きるまでずっとな……」

 

「……うん……」

 

「それで泣き終わったら、笑顔で送ってやればいい。

 じゃねぇと、アイツが笑顔で行けないだろ?」

 

「……うん……うん……」

 

「よし。

 でもま……今はとりあえず泣いとけ。

 そんな悲しそうな顔してちゃ、子供達の前にも出れないからな」

 

「……貸せ」

 

「ん?」

 

「……胸を、貸せと言っている」

 

「くくく、ああいいぜ。

 こんな胸で良ければ好きなだけ使え。

 さ、エヴァ……」

 

「ふん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、いつ撮ったんだ貴様ら……」

 

「旦那様に言われて隠れて録画モードを」

 

「茶々丸がたまたま近くにいたから念話で呼んで撮ってもらった。

 題して『娘に見せる! 母はこんなに可愛いんだぞ映像第35話 by結婚式PVヴァージョンその3』だ!!」

 

「無駄に多いわ!!!!!」

 

「ちなみに本編162巻と番外編54巻に特別編集verが全71巻、永久保存版が42巻に映画用が18作。

 さらに冠婚葬祭用にそれぞれ10本と俺個人の秘蔵版が108巻に未編集の映像がまだまだ2800時間分ある!!」

 

「捨ててしまえそんなもん全部!!!

 第一その内容の大半が私の恥じゃないか!!」

 

「だからこそ録画してあるんだろうがいつでも愛でられるように!!!!

 それに捨てるなんてもったいない!!!

 さらに保存用と観賞用と予備用と封印用ともしもの時のため用といつかのために用となんとなく用と脅し用とからかい用の計9セット+αがあるんだぞ!!」

 

「そんな大量にどこにしまってるんだ貴様はあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

『秘蔵版以外見ていいかわりに場所を貸してます byクウネル・サンダース』

『旦那さまに言われて衛星内に保管して宇宙に打ち上げてあるネ by鈴音』

『細分分割してネット上に厳重保管してあります by茶々丸』

『勝手に人の研究室の一部を物置に使いやがって byニイ』

『隠しファイルにしてディスクと外付けに入れておけってさ by千雨』

『ちょうど資料室の棚がまるまる空いてたんよ by木乃香』

『ネギが昔使っていた部屋に置いてあります byネカネ』

『いきなり倉庫を貸せと言ってきたから貸した byハジメ』

『倉を一つ整理して空きが出来たので by近衛詠春』

 

 

 エヴァよ、敵の大半は身内だ。

 

 

 

 

 おわり

 

 

 




さて、以前に理想郷で投稿した時はここまででした。
そして次の話までしか出来てません!
その後の二話分はまだ途中で、後は番外が一本ですね。
間に合わなかったら番外が先かなぁ?

とりあえず投稿が遅れないように頑張ってみます。応援してくれたら泣いて喜び喚きます。



カティに関しては劣化版エヴァにしてもおもしろみがないのでまったく違う能力にしてみました。
実は素では弱い子。
原作で言えば夏休み入ったばかりの古菲に負けるレベルです。
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