子守先生■ギま!?【凍結】   作:再buster

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さて今回はある意味準備回。
ナギが色々と手回しをしていくお話しです。




第7話:『訪問・真祖・忍者』

 

 

 

 

「俺の名前はナギ・シルバーバーグだ。

 これからよろしくな、先生くん」

「あ、はい」

 

 

 自分自身との握手というものは、思っていたよりもずっと不思議な感覚を覚えた――

 

 ネギ・スプリングフィールド。

 俺の本来の名前であり、同時に目の前に立つ少年の名前でもある。

 

 

 ありえない筈の出会い。

 そんな出会いに不意に笑みがこぼれてしまう。

 

 だが、少年は俺が誰かなんて理解しえないだろう。

 

 認識阻害の眼鏡を着用し、微かな魔法でさらに認識をずらしているからおかしいとさえ思わない。

 たとえ、父親であるナギにどんなに容姿が似ていようともだ。

 

 そもそも目の前の人間が、未来の自分だと誰が想像するだろうか?

 

 ……いや、きっとそんな輩は存在しないだろう。

 

 出来るとすれば、それはあの天才の超鈴音くらいだろうから。

 

 

「うむ、ナギくんには君の補佐として副担任になってもらう。

 彼女達はこれから進路の事もあるからのう、熟練の者が付いて補佐をした方がよい。

 では二人とも、よろしく頼むのう」

「はい学園長先生」

「任されよう」

 

 熟練、という言葉。

 十歳の頃から数えて二十年近く教師をやっていればそれなりの年数だろう。

 

 先生としてどうあるべきかだとか、新田先生や他の先生方にいろいろと聞いてはきた。

 だが聞けば聞くほどに、まだまだ自分が未熟だと思い知らされることばかりだった。

 

 だから俺はまだまだ教師としては半人前であり未熟だ。

 

「それじゃあ付いて来てください。教室に案内しますね」

「それは助かるな。では学園長」

 

「うむ、頑張ってのう」

 

 未熟だが……俺にもそれなりに教えられることはあると思っている。

 

 だから少しづつでも教えていこう。

 この、さらにまだ未熟な……もう一人の俺に。

 

「というわけだ。何かわからない事があったらなんでも言ってくれ、力になる」

「はい、その時はお願いします」

 

 俺と同じように進んでほしいとは思わない。

 なんだかんだで泣かしてきた人は多いし、苦労も掛けていると自覚している。

 

 救えた数は多けれど、泣かした数はさらに多いってな。

 

 出来る事なら、平穏無事な世界に進んで欲しいとも思うが……

 

 

 まぁ、俺が無理だったんだ。

 

 そこらへんは諦めておこう。

 

 

 せめて……後悔だけはしないようにさせてあげたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本日より3-Aの副担任を務める事となった、ナギ・シルバーバーグだ。みんなよろしくな」

「転入してきた明日香・シルバーバーグです、みんなよろしくね」

 

 久しぶりに見る3-Aの教室。

 向うじゃ改築やら改装もあったりで、こことは大分様変わりしちまったからな。

 変わってないのは外観くらいか?

 実を言うと、案内が無ければ迷子になっていたくらいだ。

 

 それにしても、まさかもう一度ここで、この教室で教師をやれるなんてな。

 

 ホント、涙が出そうだよ。

 事故とはいえ、この教壇に立てた事だけは感謝したいくらいだ。

 

 そしてもちろん、この教室にいるのは俺の知る彼女達だ。

 初めての教え子であり、何物にも代えがたい仲間たちであり、人生のパートナー達だ。

 まぁパートナーと言っても、俺以外の人と結ばれた人ももちろんいる。

 数は圧倒的に俺の嫁の方が多いんだけどね。

 うん、ゴメンナサイ。

 

 それにしても、こう見てみるとやっぱり全員若いなぁ………言ったら嫁たちに殺されそうだけどな。

 ああ見えて地味に5歳年上って事を気にしてるのが多かったから……エヴァは、置いてくことにする。

 というか俺より年下っていたっけ?

 

 

 そして恒例とも言える質問タイムは、予想していたまま朝倉がすることに。

 ネギ少年よ……頼むからもう少し考えて人選してくれ。

 

 将来を知っている分、アイツの情報網はマジで怖いんだ。

 敵にまわしてはいけないTOP5の一人だぞ。

 

「お二人は同じ苗字ですけど?」

「親子だな」

 

 最初は順当な質問。

 別に隠す事でもないからここは素直に言う。

 

「ほうほう……ってマジ?」

「マジ……とはどういう意味でだ?」

「だって若すぎません?」

 

 ああ、そういうことか。

 俺って親父に似て老けにくいんだよな、何故か。

 あの馬鹿親父は五十過ぎてるくせにいまだに三十前かと間違われてるしなあの馬鹿親父は(大事な事なのでry)。

 

 この前なんて高校生に逆ナンされてたな。 (お父さんもナンパされましたby娘)

 その後母さんに殴られたけど。 (お父さんも奥さん'ズにしこたま殴られましたby娘)

 土下座までして謝ってたっけ (お父さんも土下座しましたby娘)

 

 そういえば明日香が生まれたのは俺が1●歳の時だっけ?

 『エヴァちゃんとは産んだのに私とは駄目なの?』と押し切られたっけなぁ……

 しかも当たりも早かったし。

 

 あ、涙が……

 

「え、ええと……趣味は?」

 

 話を逸らしたか……ここいらへんの危険察知能力は高いな昔から。

 さすがは世界で一番空気が読める女。

 

「紅茶と研究」

「身体を動かすことかな?」

 

 紅茶はガキの時分から好きだったな。

 今は、昔と違ってストレートで飲む事の方が多くなったけど。

 ちなみに好きな銘柄はオスティアンとあやかがマジで作りやがったヤツだ。

 庭でこじんまりと作っているのかと思ったら魔法世界で大々的に造ってやがったと知った時は頭が痛かったな。

 

 あと、コーヒーも飲むぞ?

 あれはあれでいいもんだしな。

 

 研究の方は魔法関連だな。

 なんだかんだで未開の地とか多いから新しい探索魔法とかは特に需要がある。

 まぁつまり特許を増やしてんだな。

 子供たちのためにも貯蓄しときたいし。

 

 ん? アンティークの趣味はどうしたって?

 今まで集めたのは倉庫行きだな。

 子供が手を出すと危ないモノも多いし。

 新しく集めるにしたってなぁ……ぶっちゃけ集めるのにお金使うくらいなら貯金した方がいいって思うようになったし。

 というか中途半端な骨董品買うより墓守の神殿を漁った方がよっぽど高い品が出る。

 趣味としてやるにも今更なんだかなぁって感じだな。

 

「好きな食べ物を教えてくれる?」

「妻の手料理」

「さっそく惚気!?」

 

 もちろん茶々丸のことだぞ?

 なにせ五月から直接指導してもらったくらいだしな。

 あとさよやアキラ、鈴音もうまいな。

 

 ちなみに明日菜はいまだに料理はイマイチだ。

 一度負けてはいられないって練習したが結局うまくいかなかったようだ。

 

 他の奥さんも何人かは完全に諦めてるな。

 せめてもの救いは毒物を作る事だけは無くなったことか。

 いちおう食えるモノにはなるし……味はともかく。

 

「お母さんが作ってくれたパンケーキとか好きかな?

 お父さんの淹れてくれる紅茶も好きだし……

 おばさまの作ってくれたお菓子も大好き」

「……明日香さんは甘いモノが好きと」

 

 それでも明日菜は娘のためにとパンケーキだけは頑張っていたっけ。

 ホットケーキミックスを混ぜて焼くだけだけど……

 

「部屋は?」

「お父さんが家を借りたから家族一緒に住んでます」

「寮じゃないんだ」

 

 学園長から譲り受けた家は比較的エヴァの家と近い所に位置している。

 おかげで結構な頻度でエヴァが入り浸っているな。

 

 エヴァの表情から察すに、家族の中では聖那が特にお気に入りの様子。

 抱き上げて優しく微笑む姿はカティが生まれた頃を思い出させる。

 

 

 生徒には住所は秘密にしておこう。

 集まられてもちょっと問題があるしな。

 

 朝倉なら調べてでも家に来そうだが……

 

 

 

 

 こうして再びの麻帆良教師生活がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第7話  『 訪問・真祖・忍者 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前話でも言っていたがエヴァの家へとやってきた。

 出迎えが無いのを知っているので問答無用で中に入る。

 勝手知ったる他人の家。

 鍵の開け方から侵入方法までなんでも知っているのだ。

 

「まったく……少しは片付けくらいしろよな」

 

 俺の家とエヴァの家は比較的近いと語っていたが……

 実はけっこう距離がある。

 

 そもそもエヴァの家の周囲は森で囲われており、一番近い建物である大学の校舎でも数百メートルあるのだ。

 そして俺の家は大学の校舎よりにある。

 

 近いと一言に言っても、向う三軒隣とかそういう距離ではない。

 

 まぁ距離の話は別にどうでもいい。

 

 

 エヴァの家。

 ログハウス調の建物はとてもファンシーでエヴァの見た目にとてもマッチしている。

 

 そして家の中はこれでもかと人形が並んでいた。

 それは足の踏み場も無い程に……

 

 茶々丸が掃除とかしている筈なんだけどな。

 マスター権限で散らかしてるとか無いよな?

 

「お前はそれだけを言いに来たのか?」

 

 そして家主であるエヴァが若干不機嫌な顔をしながら二階から降りてきた。

 

 実は俺とデュミナスの二人、今回訪問するにあたって連絡の一つも入れていないのだ。

 そりゃ連絡も無しにいきなりきたら誰でも不信に思う。

 

 しかも隣にはこんな見るからに怪しくて警察に通報しちまった奴がいるのだから。

 

 ……警察には魔法使って誤魔化してたけどな。

 

 

「んな訳ねぇだろ?」

「ぬあっ!?」

 

 そんなエヴァの不機嫌などまったく気にせずに、エヴァの肩を掴み、無理やりに額と額をくっつける。

 決して頭突きでは無い!

 

 エヴァは突然の事であたふたしている。

 が、俺の想っていたより真剣な表情に大人しくされるがままに。

 

「少しだけ体温が上がってるな。やっぱり風邪の初期か……」

「なっ!

 ……って、知っているんだったな。まったくやりにくい」

 

 若干顔を赤くしながら俺から距離を取るエヴァ。

 本人も多少なりに自覚症状があったのか本当にやりにくそうにしている。

 

 授業の最中から少し違和感があったしな。

 花粉症のせいで風邪か分からなかったんだろうな。

 

「そう言うな。とにかくベッドで休め」

「……ち」

 

 何かと文句の一つも言いたい所だろうが、心配してくれている事は理解しているようで大人しく従ってくれた。

 従わなかったら魔法で強制的にも寝てもらうことになってたな。

 

「今日は茶々丸は帰ってこないからな。俺が面倒を見る」

「なに?」

「メシは食べられるか?

 栄養は取っておいた方がいいからな」

「……問題ない。が、貴様は作れるのか?」

「いちおうな。台所借りるぞ」

 

 茶々丸の所在についてエヴァは聞こうとしたが……

 俺の事だからそれも把握しているだろうとエヴァは即判断し諦めたようだ。

 彼女に何か危険があれば俺が動くだろうと思っての事だ。

 

 そしてエヴァは言われたとおりに二階のベッドへと戻る。

 

 

 

 

 確かにエヴァの思考どおり、茶々丸とカティ、ネギ少年の動向を俺は全て把握していた。

 

 把握したうえで、少年の危行を見逃した。

 魔法が危険なモノという事を少しでも自覚して欲しかったというのが一つの理由だ。

 

 それと同時に家族の誰かが助ける可能性も考えていた。

 

 悪い言い方になるが、俺は茶々丸を利用して家族の精神向上を狙ったのだ。

 

 事実、カティは怒り、茶々丸を守った。

 カティの精神向上。そして茶々丸は無事だった。

 

 俺にとって満足のいく結果といえよう。

 

 

 もちろん誰も助けなかった場合の事も当然ではあるが考えてはあったが……

 

「にしても、昔の俺は後先考えなさすぎだなぁ」

 

 ガキだったと言われればそれまでだが、誰も止めなかったのも問題だ。

 

 監視もいるだろうに、誰もが見て見ぬ振りをしていた。

 子供だからと、英雄の息子だからと何も手を出さなかった。

 ましてや叱りもしない。

 注意することもせず、何が間違いかも悟らせもしない。

 

 自分で考えて決める。自立を促す。

 聞こえはいいかもしれないが、あの子はまだ十歳の子供だ。

 

 親や周りの大人たちが叱って当然の年齢だし、まだ自由にしていていい歳だ。

 自立なんてもんは中学入ってからでも遅くはない。

 

 だから、俺は責任を持って後で両方を説教しようと決めた。

 

 例えそれが自己満足と言われようともだ。

 

 子供を叱るのも大人の責任ってね。

 

 

 

 

 

「……ところで、貴様は何者だ?」

 

 かなり忘れ去られているがデュナミスも一緒に来ている。

 俺が一階のキッチンで調理中、あいつはエヴァの所で話し相手になる気のようだ。

 変な事するなよ。

 

「はじめまして真祖の姫君よ。

 我はデュナミス……かつて『完全なる世界』の大幹部だったモノだ」

「なに?」

 

 エヴァも少しではあるがその存在は知っていたようだ。

 

 かつてナギ・スプリングフィールドが戦った敵。

 魔法世界を滅ぼそうとした大悪党。

 今現在もタカミチやクルトが追いかける怨敵。

 

 それが目の前にいて驚かない方が無理というもの。

 

「とはいっても昔の……いや、今の話だったな。とにかく今の我はあやつの義兄であり、家族だ」

「つまり貴様も未来から来たということか」

「そういうことだ。しばらく厄介になる故、よろしく頼む」

「また面倒な奴が増えるのか……」

 

 ただでさえ娘やら旦那やら現れて困惑しているというのに、さらに面倒くさい者まで増えるのだ。

 これでさらにまだ増え(ry

 

 もはやため息しか出なかった。

 

「あんま義兄弟だとか認めたくないけどなぁ。

 ほら雑炊だ。一人で食べられるか?」

 

 そんな話をしている間に俺特製の雑炊は完成。

 味は奥さんと子供たちのお墨付きだ。

 

 教えてくれたのは五月だけどな。

 

「当たり前だ!

 人を病人呼ばわりするな、そもそもまだ病気ではない」

 

 ちなみに娘たちならば嬉々としてお願いしてくる。

 フーフーしてくれてアーンも既望とかな。

 なんなら口移し既望とか……誰に似たのやら。

 

 けっして俺では無いという事だけは言わせてもらう。

 

「それもそうか。

 ほらよデュナミス、お前の分だ」

 

 デュナミスにも同じ皿を渡す。

 

「我の分だと?」

「さっきの話だと食事は取ってないんだろ? それに昨日の晩から今まで食べて無いしな」

「……そうだな、ありがたく貰おう。毒は入れていないだろうな」

 

「あ、忘れた」

 

 

「せいっ!!」

 

 デュナミスの強烈な正拳が強襲。

 

「なんの!!」

 

 が、余裕で回避。

 

 

「人の家で暴れるな馬鹿ども!!」

 

 

 まったくもってその通り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなかおいしかったよ」

「うむ、馳走になった」

 

「はい、お粗末さまでした」

 

 二人の食器を片付ける。

 どちらも完食で俺も満足。

 さて、今日は茶々丸も帰ってこないし、少しだけ家事をしておくか。

 

「……私は寝るぞ」

 

 食後、俺が持ってきた風邪薬を飲むとさすがにエヴァの眠気も強くなる。

 

「ああ、その前に俺達の血を吸っておけ。回復は早まる筈だ」

「我のもか?」

 

「……ふん」

 

 血を飲めばその分回復も早くなるのは吸血鬼であるため十分理解しているので、エヴァは素直に血を吸う事に。

 二人の腕に牙を立て血を啜る。

 

「い、いったいなんなんだ!?

 貴様等の血は!!!」

 

「何ってなぁ?」

「ふむ?」

 

「ナギは濃度が高すぎて一口飲んだだけで一気に魔力が回復したぞ!?

 貴様の血は味としては不味いが魔力的な相性が高すぎる。

 いったいなんなんだ貴様らは!」

 

 幾多の戦場を超えて強くなり続けた俺の魔力は量が増やせない分その魔力濃度を増やしていった。

 さらに闇の魔法の影響もあり俺の魔力は魔力としての質が尋常で無い程に高いのだ。

 

 そしてデュナミスは闇属性の魔法を得意としている。

 単純にエヴァの属性と相性がいいのだ。

 

「まぁ……これでも魔法世界では十本の指に入る実力者だしなぁ」

「うむ」

 

 というより全世界合わせても確実に上位に入る実力者だ。

 ぶっちゃけ二人で麻帆良滅ぼせるんじゃね?

 

 普段やってる事は子供のケンカだがな。

 

「さて、俺達は下のソファーを借りるよ。

 何かあったら呼んでくれ」

 

 俺とデュナミスはエヴァの寝室を出て階段を下りていく。

 

「ふん、勝手にしろ…………ありがとうな」

 

 

「何か言ったか?」

 

「なっ!? べ、別に何も言ってないわ!!」

 

「そうかそうか、なら下に行ってるぜ」

「ふん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エヴァ」

 

「なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういたしまして」

 

 

「……ふん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タオルケットを勝手二拝借してきてリビングのソファーにてそれぞれ眠る。

 図体がでかい分デュナミスの方は狭そうではあるが。

 

「こちらの時代の彼女とも、なかなか仲良くやっているようじゃないか」

 

「そりゃね。

 俺のいた世界では家族に囲まれて幸せにしているけど、こっちのエヴァは茶々丸が居ると言っても、まだ独りだ。

 だから少しでも、今の内に他人を信用出来るようにってね」

 

「かつて築いた虚勢はいつしか自身を完全に覆い隠す程に強固となり、自身で気付けない程に本心を深く沈めてしまった……か」

 

 

 エヴァは吸血鬼として迫害されていたため、人をまず信じようとはしなくなった。

 人を信じれないから人を遠ざける。

 寂しいよりも、人に近づいて自身の心が傷つく事を恐れた。

 寂しい気持ちを隠すために強気でいた。

 

 ずっと強気でいたがために、いつしかそれが当然となった。

 

 そしていつしか寂しいという気持ちを忘れてしまった。

 

 

 俺の父であるナギがその寂しいという気持ちを思い出す切欠となりそうだったが……

 

 親父は呪いで遠ざけてしまった。

 

 たしかにエヴァに光の道を進ませるには手っ取り早い方法だったかもしれない。

 

 だがそれがさらに彼女の防壁をより強固としてしまった。

 

 そして約束の日になっても男は帰ってこなかった。

 

 好きになった人にも裏切られた。

 

 

「彼女にとってみれば、人に裏切られるという行為はトラウマそのもの……か」

 

「そうだな」

 

 

 彼女は今、自身ですら気づかないあいだに作り上げた牢屋の中にいる。

 その牢がある限り彼女は決して外に、光の世界に出ないだろう。

 

 

「だから俺が少しでもその牢を壊す手助けをしたいと思ったんだ」

 

 

 未来では、カティが生まれた事で外の世界へと出る事が出来た。

 カティのためにも出る必要があったんだ。

 

 カティにまで、愛する娘にまで同じ境遇にはしたくなかったから。

 

 

「それに今ならカティも明日香もいるしな」

 

 

 なにより今は彼女を信じている子供達がいる。

 彼女を裏切らない子供達がいる。

 

 

「あいつらがいれば、エヴァもきっと進んでくれるだろうさ」

 

「我らと同じように、光の世界へか……」

 

「ああ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まったく、勝手なことばかり言いおって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明朝の事だ。

 

 エヴァはまだ眠っている。

 もともと目覚めが良い方では無いので、起こされるか自分で起きてくるまではそのままだ。

 

 だから気にせず俺は目を覚ましてエヴァの家を出る。

 

 

 デュミナスは気付いているが、俺が何も言わない事を察してそのままソファーで寝たふりをしている。

 俺に付いて来るより念のためエヴァの護衛をするって感じかね。

 悪態は付くが、信用は出来る奴なんだよな。

 

 

 そして俺は音も無く、とある場所を目指して移動する。

 

 

 

 

 

 麻帆良郊外に存在する森。

 

 都心からもそう離れていない筈だというのに、先がほとんど見えないほどの広大な森。

 熊まで出没するというなんとも謎の森。

 

 そして俺たちが最初にやってきた場所。

 

 

 そこに俺はやって来た。

 

 

 目的は岩場の上にいるであろうアイツと接触すること。

 

 

 

 

「いい天気だな、長瀬楓」

 

 

 そう、目的は長瀬楓との接触だ。

 

 

 

 ネギ少年らが茶々丸を襲撃した翌日、ネギ少年は逃げるようにこの場所へと飛んできた。

 だが杖の操作を誤り木に引っかけ墜落した。

 そこで休みの間修行と称してこの森に来ていた楓と遭遇。

 

 楓の助言を受けそのまま彼女のテントで一泊。

 

 

 そして先ほど、そのネギ少年が杖で通り過ぎるのを確認してから、岩場の上に設置されたキャンプへと着地する。

 ここに、土日の休みを利用して修行に来ている長瀬楓がいる。

 

 

「これはこれは先生殿。

 こんな場所で会うとは奇遇でござるな」

 

 

 気配で気付いたのか楓がテントから出てくる。

 身支度は済ませているようで、今の彼女の姿は忍装束だ。

 隠す気あるのかこのダメ忍者。

 

 

「そうだな……長瀬は修行か?」

「そんな所でござるよ。で、先生殿は何用でここに?」

 

「我がクラスの担任がどこで何をしているのか確認をね」

 

「そうでござったか。ご苦労でござるな」

「まったくだ……」

 

 

 あたりは一瞬にして静かになった。

 俺と長瀬、二人の雰囲気とは裏腹に周囲は冷たく凍りつく。

 

 

「ところで先生殿は……ネギ坊主の味方でござるか?

 それとも敵でござるか?」

 

 

 長瀬にとっては当然の質問だろう。

 教師が赴任してくるにはそもそも可笑しな時期だからな。

 進級があるからといえ、新任の教師をいきなり副担任に置くなど普通に考えてナイナイ。

 生徒とのコミュニケーションやらストレスのケアとか必要だってのにいきなし知らない教師を押し付けられてもなぁ。

 

 

 それもあの少年が教師として正式に担任になって直ぐなのだから。

 

 さらに言えば、彼女は俺自身の実力も多少なりに気づいている。

 それは他の裏に属している生徒も同じだ。

 とは言っても感じ取れているのは上辺だけのモノ。

 隠行はお前に教えてもらったんだよな、楓。

 

 

 そして今の行動だ。

 ネギ少年の同行を確認したうえで今ここに居る。

 

 はっきり言って少年の監視と言われても何も言えん。

 

 

 まったく、答えによってはマジで戦う気だな、こりゃ。

 冗談の一つも言えそうにない……

 

 少しばかり冗談で場を和ませようかと思ったが。

 ここは真面目にしておくか。

 

 

「中立だ。敵になる気はないが、率先して味方になる気もない」

 

 

 間違った事をしたら怒るだろうが敵対はしない。

 だからといってそう簡単に手助けもしない。

 

 どっちつかずが現在の方針だ。

 

 

「ふむ……それはそれは。

 拙者の勘では味方だと思ったのでござるが」

 

 

 ありゃりゃ?

 いきなり雰囲気変えてきやがったよ。

 さっきの敵意はブラフの方だったか。

 

 にしても勘とはいえ気づかれてるとは、俺もまだまだだな。

 

 

「勘ね。

 どうしてそう思ったんだ?」

「ネギ坊主を見る目でござるよ。まるで父親のようでござった故に」

「ははは、父親か。まぁ家に子供が多いからな、そのせいだろう」

「大家族でござったか。そういえば明日香殿も娘でござったな」

「そうだな、アイツとは仲良くしてやってくれ。ああ見えて親友は少ないからな」

 

 

 なんせ病んでるし。

 

 いちおう超とエヴァの診断では自己防衛の部分が大きいらしいけどな。

 というかかなりの過剰防衛だな。

 

 トウヤは自閉へ、アスカは他傷へ。

 方向性は真逆だがどちらも自己を守るためだ。

 

 ほとんど俺の責任だ……悔やんでも悔やみきれんな。

 

 

 そしてそんな性格のために、友人はヒドく少ない。

 アスカは上っ面は仲良くしているように振る舞うが、その裏ではまったくの無関心と言っていい。

 トウヤはそもそも友達作らんし。

 お父さんマジで心配です。

 

 だからと言って俺に友達の作り方を聞かないでください。

 村でも魔法学校でも友達作った事無いし、大学だと友達作ってる余裕なかったし。

 小太郎を参考にすると殴り合いしか出てこないからな。

 見本にすらならん。

 

 

「それはもちろんでござるよ。

 しかし、先生殿は秘密が多そうでござるな」

 

「秘密の塊だからな」

 

 なにせ学園長やエヴァ以外に真実なんてほとんど口にしてないしな。

 禁則事項とかほざいて情報出してないし。

 

「塊でござるか。それは是非暴きたいでござるな」

「お前が協力してくれるというなら話してもいいぞ?」

「協力とな。いったい何をすればいいのやら」

 

 意外と乗り気だな。

 俺自身もそれなりに信用はされているって所か?

 

 

 そう、今回ここに来たのは協力者を作るためだ。

 

 さすがにクラスの護衛を明日香一人では心もとない。

 だからそばに居られてある程度自由に動かせる手駒が欲しかったのだ。

 

 娘たちやネギ少年のそばにいる人物となると、生徒の誰かを巻き込むのが得策と考えた。

 そしてその中で、口が堅く、実力のあるものとなると、龍宮か長瀬のどちらかだろう。

 

 龍宮は金優先で懐に優しくないので長瀬にしてみました~。

 足長もいいけど未来で魔法世界と旧世界合わせて孤児院100件建築とかマジやりすぎ。

 

 フェイトと合わせたら世界に孤児がいなくなるレベルです。

 良いことだけど程ほどにしましょう。

 

 利権問題とか後の就職先とか色々大変なんです。

 

「なに……少しばかりネギ少年のためにね」

「ほう、ネギ坊主の。してその内容とは」

 

 内容次第では協力する気満々ってか?

 そういうことなら本気で協力してもらうとしますか。

 

「なら耳を貸せ」

「あいあい」

 

「ゴニョゴニョゴニョ」

「ほうほう」

 

「で、ゴニョゴニョニョ」

「なんと」

 

「というわけだ」

 

 まぁ内容は勝手に想像してくれ。

 ネギ君の今後に起きるであろう事件と可能性を軽く教えただけだし。

 

「はっはっはっ、それを聞いてしまっては協力するしかないでござるな。

 いいでござるよ、協力するでござる」

「そうか」

 

 当初の予定よりもすんなりと協力してくれたな。

 もう少し用心深いと思っていたが……いや、単純に信用されたと思った方がいいか。

 

「それで一つ聞きたいのでござるが……先生殿は何者でござる?」

 

「何者か……これでどうだ?」

 

 長瀬は口が固い。

 秘密をばらす事は無いだろう。

 

 ならばと眼鏡を外す。

 

「! ……そっくりでござるな。

 なぜ今まで気づかなかったのかおかしいと思う程に」

 

「これは認識阻害の効果がある眼鏡でな。かけている間は俺の姿が呆けて見えていた筈だ」

 

「なるほど、それを使ってごまかしていたでござるか。

 しかしそっくりでござるな。ネギ坊主の縁者でござるか?」

 

「縁者では無いな。少年と俺とは線で繋がることはありえない」

 

 なにせ重なった点だからな。線で繋ぎようがない。

 

「ありえない……でござるか?

 ふむ……先ほどの言葉は……そこから察するに……線では繋がらぬ者……

 なるほど……これはまいったでござるよ、はっはっはっ」

 

 は?

 こいつマジで気づきやがった……

 

「俺は今お前がなぜ勉強出来ないのか疑問に思ったよ」

 

「はっはっは、これとそれとは違うでござるよ。

 それにしても……そこまでたどり着けたのでござるか……拙者の眼に狂いは無かったでござるな」

「なんかお前にそう言われると照れくさいな」

 

 隠したくても、どうしても笑みがこぼれてしまう。

 一時期とはいえ目指した人からそんな言葉を聞いてしまえばさすがの俺でも表情は隠せない。

 素直な言葉だからこそ、嬉しくてしょうがないのだ。

 

「……」

 

「どうした?」

「男前でござるな、本当に……」

 

 長瀬の頬が若干赤い。

 ああこの顔は未来でよく見る種類の顔だわ。

 

「魅了の呪いでも掛かってるんじゃないかと思うわ、マジで」

「ぷっ……それだけ男を上げたという事でござろう。さぞや奥さんも目が離せぬでござろうに」

 

「30人ちかくいるから目が離れる機会が無いがな」

 

「はい? 30人ちかくって……本当ですか先生?」

「驚きすぎて口調が逆におかしいぞ」

 

 さすがの楓でも驚くか。そりゃ当たり前だわな。

 だって俺でも驚くレベルだし。

 

「おっとっとこれはこれは。

 しかし本当でござるか?」

 

「本当だ。外壁を埋められるどころか外壁全部攻めてきやがったよ」

 

「英雄色を好むとは言うでござるが、先生殿の場合は周りも好んだということでござるな。

 モテる男は辛いでござるなぁはっはっはっ」

 

「誰がうまいことを……ちなみに中にお前もいるからな」

 

「それは想像していたので驚かんでござるよ」

「むしろそこは驚いておけ!」

「無理でござるな。

 これでも拙者はネギ坊主にも、先生殿にも少なからず好意を持っているでござるからな。

 他の者がその輪にいて拙者だけいないとは考えにくいでござるよ」

「まったく……本当にお前には勝てないよ」

 

 未来じゃあ未だにからかわれている事の方が多いからな。

 勝てるのは戦闘と床の上ってコラ!

 

「して、未来の拙者は幸せでござるか?」

 

「幸せそうだぞ。

 というか全員幸せにしてる」

 

 じゃなきゃ今の状況でやっていけるわけがない。

 

「それを聞いて安心したでござるよ、先生殿」

 

「そうか……」

 

「そうでござるよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ俺はそろそろ行くわ。お前も明日の授業には遅れるなよ」

 

 今日は日曜の朝。

 さすがにもう一泊なんて事はしないと思うが、念を押しておく。

 

「わかっているでござるよ。

 先生殿も心配性でござるなぁ」

「これでも副担任だからな、生徒の心配くらいはするさ」

 

「元担任でもあるでござろう?

 拙者たちに教えるのはこれで二度目……どんな気持ちでござるか?」

 

 たく……いきなり真面目モードになるなよな。

 

 お前のそういうところ……本当に助かってるよ、楓。

 

「なんか複雑だな。

 でも、ちゃんと区別はしているつもりだ。

 だからお前も心配せずに普段どおりにしてろ」

 

 そう言って俺は娘たちにするように楓の頭を優しくなでていた。

 

「///……本当に女誑しでござるな、先生殿は……」

 

「今のは癖だ。子供たちにしてたもんでな」

 

 出来たら褒めるように奥さんたちに言われているせいか、出来た子の頭を撫でて褒める、もしくはあやす癖がついてしまった。

 

 今の俺って結構身長が伸びたから、今の楓の背だと撫でやすいんだよなぁ……

 

 ホント、治さんとマズイ。

 

「なら気を付けた方がいいでござるよ。

 あまりしてるといい加減手裏剣の一つでも投げたくなってくるでござるからな」

 

 うん、奥さん達にも同じこと言われた。

 

「わかったわかった。

 じゃあマジで行くぜ。

 またあとでな」

 

「あいあい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拙者も気を付けないと本気で惚れてしまいそうでござるな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんとか次話を投稿OKまでもって行けました。
戦闘シーンが多いので面倒くさかったです、あとは手直しして。

その次はまだ微妙な所です。
今回みたいにイベントを複数重ねると簡素な内容になりやすいので、もしかすると分けるかもしれません。

でも時間は掛けたくないというジレンマ。理由は次を見ればなんとなく察し。

とにかくちょっと駆け足になっているので解消してみようと思います。

では読了感謝です。
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