ベアッガイはビギニング版。
なおママッガイじゃなくていいの?と母親に弄られたが、本人がヘタレた。
被服控除。
入学前に「個性届」と「身体情報」を提出すると学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれる素敵システム。「要望」を添付することで便利で最新鋭のコスチュームが手に入る。
一回目の人生では母が入学祝いに手作りしてくれたのだが、今回は無個性ながらに本気でトレーニングに励んでいたことと、トレーニングによりすぐに服や靴を駄目にしていたこと、などの理由から最初からプロに任せる方針となった。その為コスチュームは一回目終盤のコスチュームをそのまま要望として出した。
ただガントレットなどは前回のように使うか分からないのであくまでデザインだけ。
なお、今回の母からの入学祝いはかっちゃん(♀)とお揃いのトレーニングウェアだった(爆豪家からは名前を彫られた万年筆)。
外堀ィィィッ!!
親公認という埋め立て作業の進む様を僕は天守閣から冷や汗をかきながら眺めるのであった。
「始めようか有精卵共!!
戦闘訓練のお時間だ!!」
オールマイトによるヒーロー基礎学開始の声。
「あ、イズク君!?カッコいいね!!」
「麗日さんも似合っているよ」
一回目のドキマギを感じるにはすっかり慣れてしまった麗日さんのコスチューム姿。
「要望ちゃんと書けばよかったよ。パツパツスーツんなった。恥ずかしい」
ミッドナイトによる伝説的コスチューム騒動から、女性ヒーローのコスチュームは割とこんなパツパツスーツが流行りだ。
ちなみにきちんと要望を書いた八百万さんは今着ているミッドナイトと同じくらいヤバいコスチュームより露出が多かったらしい。
かっちゃん(♀)も自宅で僕の前だとかなり薄着だったけど、八百万さんの羞恥心はどうなっているのだろうか。
葉隠さんに比べたら大したことないけど。
「ヒーロー科最高」
峰田君が良いもの見れたとススっと親指を立てる。年頃の男子としては深く同意するね。だが突如表情を一変させ、グリンとモビルスーツ、ベアッガイ、つまりかっちゃん(♀)を向けば額に青筋浮かべながら叫びだす。
「けどよぅそれに比べてテメェ爆豪なんだそのコスチュームはぁっ!!せっかくのダイナマイトボディが丸ごと隠れて台無しだろうがコラァ!!」
葉隠さんとは対照的な全身を完全に覆ったコスチューム。利点はいくつか想像つくけど、顔を売ることが大前提であるヒーローにしては珍しいタイプだ。
「それは峰田ちゃんみたいな人がいるからじゃないかしら?」
梅雨ちゃんによる冷静なツッコミ。
胸が大きくなってきてから周囲の視線とかウザがってたからなあ。
僕には見せつけてたけど(汗)。
「うるせえ串刺しにすんぞ(イズクは他の連中の過激なコスチュームに無反応。やはりマ、お袋の勧めた露出の多いヤツにしなくて正解だったな)」
ジャキンと手から鋭いツメを出すかっちゃん(♀)。そのギミックかっこいいな。
「けどさ爆豪、それで見えたりするの?」
デザインとしては普段着寄りな耳郎さんがそう尋ねる。飯田君以上のフルフェイス、というかキグルミみたいなもんだからね。
「そこら辺は大丈夫だ。このモノアイからきちんと見れるならな」
そっちがカメラなんだと前後に動くモノアイを見ながらベアッガイを知らない人達が驚く。麗日さんなんかはじゃあ両目はなんなんだろうと首を傾げていた。
「しかし、なぜそのようなコスチュームに?いえ、とても可愛らしいデザインだと思いますけど」
触りたそうにかっちゃんににじり寄りながら八百万さんが訊く。
かっちゃんはオールマイトに「授業は大丈夫ですか?」と尋ねる。
オールマイトも中々見ないタイプのコスチュームが気になっているようで「まだ大丈夫」と答えた。
「俺も最初は機動性優先する為に装飾品少ない薄手のパツパツコスチュームにしようとはしてたんだ(イズクに見て欲しかったし)。けどデザインを書いてる時にパ、親父が必死に止めてきてな」
((((普段はパパ呼びなんだ))))
「(イズクに)嫁入り前の娘がそんな肌の線を見せる格好しないでくれと泣きついてきたんだ」
「それは過保護では?」
「だよねえー」
「八百万と葉隠の場合は両親見たら止めるレベルだと思うけど」
八百万さんは要望をサポート会社が訂正したぐらいだしなあ。葉隠さんは、うん。
「ちょうど女ヒーローが救助者を抱えたら身体を弄られた、ってニュースもやってたからってのもあるみたいでよ」
「「「「「「ああー」」」」」」
救助にかこつけて狼藉働く不埒者は昔から一定数はいる。親としては愛娘がそんな目に遭うかもしれないことに耐えられないのだろう。
特に今回はかっちゃんが娘であるからか、父親である勝さんはかっちゃんのやりたいようにさせてるけど過保護なとこがあるから。
「このコスチュームならその点安心だからな」
いやベアッガイだから別の意味で触られそうだよね、子供とか絶対飛びつくって。
「それに利点もいくつかあるんだぜ。
全身を覆うから汗をかきやすい、爆破から皮膚を守ってくれる、機能も豊富、とかな」
かっちゃんの個性は、爆発する汗を操るというもの。爆破する両掌の皮膚は分厚くなっているけど他の部分はそこまでではない。だからコスチュームで覆うのも納得というわけだね。
「なるほどなー」
「オイラなんてモテるようにたなびくマントって書いただけだぜ」
「よく考えられてるんだな」
そして女の子だから可愛くベアッガイにしたのか。見る感じ重量ありそうだけど機動性はどうなのかな。
「説明感謝するよ爆豪少女!!コスチュームをどう改良するかはヒーローにとって一生悩む問題だ。かくいう私もアメリカ時代に何回壊して相棒を悩ませたか分からないくらいだからね!!試行錯誤する気持ちを忘れないようにね!!」
「「「「「はい!!」」」」」
「さて、それではヒーロー基礎学の授業を始めよう。ここは一般入試の実技試験で使用した演習場だが、今日は市街地演習ではなく、屋内での対人戦闘訓練さ!」
ヴィラン退治と言えば、ひったくり、強盗、喧嘩、などから屋外での戦いが目立つ。
基本的にヒーローはパトロール中に遭遇するか連絡を受けてその現場に駆けつけるからだ。
けれど統計としては屋内の方が凶悪ヴィラン出現率は高いとのこと。前回で戦った死穢八斎會のオーバーホールのような組織のリーダーをしてたりするからだろうな。
「監禁、軟禁、裏商売、このヒーロー飽和社会。真に賢しいヴィランは屋内にひそむ!!」
拠点を用意できる時点で規模が大きく、搦め手を用いるタイプはそれだけで厄介なんだよね。
「君らにはこれから「敵組」と「ヒーロー組」に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」
「「「!?」」」
「基礎訓練もなしに?」
「その基礎を知る為の実践さ!」
道場でも普通は基本的な身体の動かし方や、型稽古から始めている。
けれど一人一人がまるで違う個性社会にそのやり方は無駄のほうが多いみたい。
身体作りは必修科目の体育でやっているし、格闘技なんかは自主練でやってたよね。
「ただし今度はぶっ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」
そこからクラスメイト達の質問に対処しきれなくなったオールマイトがカンペを見ながら説明しだした。
状況設定は、
「ヴィラン」がアジトに「核兵器」を隠していて、「ヒーロー」はそれを処理することが目的。
勝利条件は、
「ヒーロー」は制限時間内に「敵」を捕まえるか、「核兵器」を回収する事。
「ヴィラン」は制限時間まで「核兵器」を守るか、「ヒーロー」を捕まえる事。
そしてコンビ及び対戦相手はくじで決める。
基礎を知る為の実践だからね。
というわけでコンビ分け。
一緒になったのは前回と同じ麗日さん。
他の組み合わせも記憶にある一回目と同じだった。この一回目と同じことが起きることが僕を悩ませている。知っているのだからもっと上手く対処できるのではないかと。
そして組み合わせ。
「最初の対戦相手はコイツラだ!!
Bコンビが「ヒーロー」!!
Aコンビが「ヴィラン」だ!!」
アレ?
かっちゃんと飯田君じゃなくて、轟君と障子君が対戦相手なのか。
さっきとは違い、こういった一回目とは異なるところが一回目の記憶をアテにできなくさせるんだよね。
「イズク君頑張ろう!!」
「うんそうだね!」
しかし轟君と障子君が相手か。
雄英生活始まって最初の戦闘訓練。
厄介過ぎる対戦相手に僕は気合をいれるのであった。
結果は僕と麗日さんの勝利。
今回はワンフォーオールを身体を壊すことなくほぼ完全な出力で扱えるから当然と言えば当然の結果だった。やっぱり強すぎる個性だよね。
「緑谷ぁ!!」
壁に叩きつけて気絶させた障子君と、殴られた腹部を押さえながら僕を睨みつける轟君。
一回目ではオールマイトに目をかけられているから宣戦布告をしてきた彼に、その血走った必死な目に、今の僕はどう映っているのだろう?
ヒーローに対するセクハラ。
普通にありそうな社会問題。
親御さんとしては許せないよね。
というかヴィラン襲撃時の峰田君。ラッキースケベでは許されない性犯罪。
ベアッガイコスチューム。
利点は皆も考えてみよう!
セクハラ対策と火傷対策が主な目的です。
戦闘訓練。
全カット。
鍛えたせいでワンフォーオールを完全に扱える、一回目の人生の戦闘経験と記憶がある緑谷出久に勝てる同級生はいません。
なおかっちゃんと飯田君は、葉隠さんと尾白君と戦った。ベアッガイのセンサーに葉隠さんはバッチリ映るのであっさり勝った。
尾白君はリコーダーからの爆破に驚いた。