おかしい、話が全く進まないぞ。
「そういや緑谷も雄英志望だったな」
ついに来たかこの時が。
一回目の時に中学時代のトラウマとして脳裏に焼き付いている出来事。
クラスメイト全員に爆笑され、勉強できるだけではヒーロー科に入れないと否定されたんだ。
今思うと笑われて当然だと思う。
確かに生徒の進路希望を暴露する先生と、人の進路希望を笑うクラスメイトのモラルが低いのは揺るぎない事実。
だけど僕は、一回目の僕は。
オールマイトに入試までの期間で鍛えてもらっても、実際の試験で1P仮想敵すら破壊できなかったんだ。
自分なりに筋トレすらしていないモヤシだった一回目の僕が笑われるのは当然だよね。
クラスメイト達のモラルが低いのは揺るぎない事実だけど。
けれど大丈夫。
今の僕は、一回目を思い出した僕なら笑われても耐えられる。鍛えてきた日々が僕を支える柱となっているのだから。
さあ腹に力を入れろ。
いかな衝撃だって耐えてみせるぞ。
「まあ緑谷だしな」
「無個性だけど、きちんと鍛えてるし」
「むしろ同じ高校じゃなくて良かったぁ」
アレ?
なんか前回と反応違うような。
「同じ高校に進学希望。これってもしかしてイズクからの告白?」
「違うと思うわ勝己。単に最高峰目指してるだけでしょ。他科とも併願してるみたいだし」
同じ学校に進学希望したら告白となる。そんなまさか一回目の僕は知らないうちにかっちゃん(♂)に告白していたなんて(錯乱中)。
「ま、無個性でもグラウンドをならす整地ローラー持ち上げてスクワットするパワーがあればヒーローになれるだろ」
試しにやったら出来たからつい。
しかし今回は無個性なのは変わらないのにヒーロー科を目指すことをクラスの皆から肯定されている。やっぱり日頃から鍛えているって知られているからかな。なら否定された一回目は本当にダメダメだったんだなあ。
「ごめんイズク。今日は皆と寄り道してから帰るね」
「幼馴染だからって毎日一緒に帰る必要はないし、毎回伝える必要もないからね!?」
下校時刻。
今日はどんなトレーニングをするか、自作のサポートアイテムの為にリサイクルショップでジャンク品を探すか、それとも朝のヴィラン事件とシンリンカムイとマウントレディのデータをまとめるか悩んでいると、かっちゃんから今日は一緒に帰れないと告げられた。
「彼女を拘束しない彼氏の鑑」
「違うからっ!?」
二人で話す時は前回みたいに粗暴な口調にならないんだよねかっちゃん。
そして彼氏彼女ではないです。
「ごめんね緑谷。でも勝己といると変なナンパとかに絡まれないからさ」
「折寺のゴールデンボールボンバーの悪名は伊達じゃない」
かっちゃんと一緒に寄り道予定の女子二人からそんな風に言われる。
このかっちゃんはヒーローを目指す強い女子生徒ということでクラスどころか学校全体の女子から頼りにされている。
またナンパの類の対処は、ヒーローが駆けつけるほどの案件じゃないからか目の前を通り過ぎない限り助けを求めることもできない。
だから必然的に女子は自衛を求められているんだよね。ナンパする輩はヒーローの見回りルートとか細かくチェックしてたりするし(今日日スマホ一つであっさりわかる)。
なお折寺のゴールデンボールボンバーというかっちゃん(♀)の悪名は、そんな悪質なナンパ連中を返り討ち(正当防衛)しているうちに付いたらしい。
「寄り道するのはいいけど気をつけてね。朝もヴィランが現れたしさ」
前回のかっちゃんはヘドロヴィランに襲われた。けど一緒に帰るクラスメイトが違うし、寄り道のルートも違うだろうから大丈夫かな?
「「そんな気遣いがモテるんだよ緑谷」」
え、普通に心配しただけなのに。
「待って二人共私のイズクが誰にモテてるかちょっと教えて場合によってはオハナシが必要かも知れないから詳細な情報を」
そして君のじゃないよかっちゃん。
瞳孔を開きながら問い詰めるかっちゃんとハイハイとあしらいながら教室からでる女子達。
なあかっちゃん、前回のノート爆破から雄英受けるなと脅してワンチャンダイブまで畳み掛けてきた君は何処に行ったんだい?
前回とは違い過ぎるかっちゃんに、僕は少し寂しさを感じ、感じ、感じたりはしなかった。
前回、自殺教唆してるじゃん。
「帰ろ」
なんで彼と友人だったんだろう。
一回目のかっちゃん(♂)を思い出すたびにそんなことを考える自分がいたりする。
唐突だがサポートアイテムの話をしよう。
ワンフォーオールを継承しないでヒーローになる為に必要なことは肉体を鍛え上げること。それと同じくらい有効的な物はサポートアイテムだ。
実際に抹消の個性持ちであるイレイザーヘッドこと相澤先生は、戦闘向きではない個性を鍛えた体術にサポートアイテムの捕縛布で補っていた。
ならば個性が無くても戦闘力ならば得られるということなのだ。
かといって八百万さんのようなお金持ちでも轟君や飯田君のようなヒーロー一家でもない僕にサポートアイテムを用意できる筈もない。市販されている自衛用のスタンガンの類も高いし性能もたかが知れている。
そこで僕が用意したのは、頑丈な風呂敷だ。
たかが大きな布一枚。
されど携帯に便利なそれは無限の活用法がある。
防具としては優秀。
マタドールのように突進をいなすこともできる、ルミリオンがしたように相手の視界を遮れる。頑丈な布であれば礫くらいからなら身を守れる。
イレイザーヘッドの捕縛布のように捕らえることもできるし、捻じれば紐のように使える。
割けば包帯として治療できるし、担架を作るのにも使用でき、結んで張れば雨露だって防げる。包んでしまえば荷物だって運べる。
トドメに手に入りやすいのだから携帯しない理由がないくらいだ。
と長々と風呂敷の素晴らしさを語ったわけだけど、その理由は。
「離しやがれクソガキがぁぁ!!」
「どうしようコレ」
帰り道にマンホールから飛び出してきたヘドロ状のヴィラン。それに身体を包みこまれる前に風呂敷で防ぎ、キツく縛り上げているからだ。
また遭遇しちゃったな。
前回はオールマイトのテキサススマッシュで気絶してたけど意識があるせいでジタバタ暴れている。
「えいっ」
拳による風圧で気絶させるなんてできないから、とりあえず自衛用のスタンガンを押し当てる。流動的な肉体でも電撃なら効くかな?
「アバババ」
うし、効いた。
後は警察に連絡かな。
「もう大丈夫だ少年!!」
ん?
「私が来た!」
下水道から拳を突き上げマンホールを吹き飛ばし彼はそこに居た。人々の為に自らの身体を省みず無理をしてまで駆けつけてきた。
僕とかっちゃん。
いや、ヒーローを志す誰もが憧れる存在。
平和の象徴と呼ばれる英雄。
ナンバー1ヒーロー、オールマイトが。
そして僕、緑谷出久にとって。
救ってくれて、見出してくれて、鍛えてくれて、導いてくれて、期待に応えられなかった存在。
再会の喜びと、それ以上の申し訳なさが僕の全身を駆け巡る。
その衝撃はセカンドの変速の反動に匹敵するくらいの痛みだ。
「オールマイト」
「今にも泣き出しそうな少年、私が来たからにはもう安心さ」
その変わらぬ笑みを見て思うのだ。
僕はアナタと関わる資格なんてありません。
それでも、アナタとワンフォーオールを託される誰かと共に戦うことを許してもらえますか?
決して口にできない思いを抱え、失敗した継承者と平和の象徴は再会したのであった。
緑谷出久
日頃からの努力をしていて変にオドオドしていない。さらに運動に関してもトップな為、無個性だけどヒーローになれそうと思われている。ジャンプ漫画の世界は空気にプロテイン含まれてるっぽいから鍛えたら強くなれる。
整地ローラースクワットには全員が引いた。
風呂敷
緑谷出久のメインウェポンにして万能具。
一応ジャンク品を弄ってサポートアイテムらしきものを作成したが、オールマイトを見ればわかるように身体能力で事足りる。
かっちゃん(♀)
彼女を拘束しない彼氏にトキメイた(彼女視点)。
友人二人。
ツッコミ役は爆豪ちゃんの前の席の黒髪眼鏡。もう一人は適当で。
ヘドロヴィラン
スタンガンは気絶しちゃう。
オールマイト
アレ、この少年ってスタンダールが勧めてきた見所ある子のような?