二回目イズクとかっちゃん(♀)   作:規律式足

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 仕事が忙しいのと内容が詰まってしまいまして。
 



第6話

 

「毎年のこととはいえしんどいものだ」

 

 まだ朝日が街を照らす中、疲労困憊な男が自宅兼事務所への帰路についていた。

 彼の名は赤黒血染。

 オールマイトの元サイドキックにして、鮮血ヒーロー・スタンダール。その戦闘スタイルと救助活動よりヴィラン捕縛や罪を犯したヒーローの取り締まりをしていることから、ランキングは低いが実力は最上位とされる実力者だ。

 始発電車から降り、都市の中心部から大分離れた寂れた一角にある廃ビルのような事務所へと、出勤する人々と逆向きに歩いていた。

 発動型個性でありながらも鍛え抜いたことにより人外の身体能力を誇る彼がここまで疲労するのには理由がある。

 雄英高等学校一般入試実技試験。

 ヒーロー科ならではの戦闘込みのその試験は、倍率300倍という受験人数。雄英高校敷地内に用意された都市を模した施設にて、仮想敵のロボットを撃退する形式の試験は判定する側としてもとても大変なものだ。

 単純に敵ポイントの集計だけならそこまでではない、それこそロボットでもできる。

 だが、この実技試験の裏にして真の判定基準である救助活動ポイント。ヒーローにおいて重要な基礎能力は審査制ということもありとても手間がかかるのだ(なおこれで減点される不心得者も少なからず居る)。

 たかが十分の実技試験。

 それでも学生の将来に関わるソレを手抜きで審査などできよう筈がない。

 鮮血ヒーロー・スタンダールは常時雄英高校に勤める教員ではないが、対刃戦闘における臨時講師を依頼される事と、その現ヒーロー最高レベルの個人戦闘力と、本人の思想から毎年実技試験の審査に加わるのであった。

 

「緑谷出久と爆豪勝己は別格、なれど他の若者もまた粒ぞろい。今年の体育祭も楽しみだな」

 

 疲労はしても気分は高揚している。

 将来性のある若者達の姿は明るい未来への希望。デスマーチそのものの過酷な仕事ではあるが、毎年の楽しみでもあるのだ(見所のない学生ばかりだと暴れ出してミッドナイトによって鎮圧されるまでが毎年の流れ)。

 フフと笑い事務所の玄関をくぐった。

 

「帰ったぞ」

 

 事務所一階の応接室を通り過ぎ、二階の住居エリアへと入る。そこには住み込みの弟子であるトガヒミコが何やらいじくっていた。

 

「おかえりなさい、師匠ぉ。あ、朝ご飯はどうしますか?」

 

「朝食は雄英で済ましてきた。ランチラッシュの和風朝食は最高だな」

 

 昔ながらの日本の朝食。

 あれは準備にとても手間がかかるものだ。

 

「私はねえ、三段ホットケーキに生クリームとイチゴジャムをタップりかけました。美味しかったです」

 

「一人飯で好きな物を食うささやかな楽しみを否定する気はないが、朝食なのかそれ」

 

「いーじゃないですか。

 ところで師匠ぉ、今年はどんな感じでしたあ?」

 

 雄英高校の入試についてか。

 本来は話してはいけないことだが、弟子ならば平気だろう。

 

「緑谷出久と爆豪勝己は合格確定、だな」

 

 緑谷出久。

 あの少年がヒーローになる為の一歩を踏み出したか。なんとも感慨深いものだ。

 いずれそうなるだろうことはわかっていた。

 まだ「英雄回帰」を訴え、街頭演説を繰り返していた自分に唯一人真剣に向き合ってくれたあの日から。

「ヒーロー観」の根本的な腐敗に気付き、ヒーロー科高校を中退してから人々に自らの考えを訴え続けた。

 ヒーローとは利益を求める存在であってはならない。ヒーロー活動に演出や見栄えなど不要。自らを省みず人々を救うからヒーローなのだ。

 だがオールマイトにより治安の向上したこの国でその思想を理解する者はおらず、一笑に付されるばかりであった。

 もはや言葉に力はないと諦念し、自らの手で世を正そうと思いを固めつつあった頃に、幼い緑谷出久と出会ったのだ。

 彼は幼いが年齢にそぐわぬ聡明さで「英雄回帰」の思想に理解を示し、自身が納得できぬことに反論しだした。

 激しい、年齢的に大人気ない議論の果てに、俺の悩みは俺だけが抱えているものではないということを悟ることができた。

 最前線にて戦うヒーローならば、今の世の在り方を問題視しているのだと。

 理解を示す者との議論が新たな気付きを生むのだと。

 だから俺は、自らの始まりであるオールマイトを訪ね「英雄回帰」の思想を訴えたのだ(行動力の権化)。

 その結果、「君自身がヒーローとなり変えて見せるんだ!!」というオールマイトの言葉に感銘を受け、またサイドキックであるサーナイトアイの勧めもあり、彼らの下でヒーローを再び目指すことになった。

 それが鮮血ヒーロー・スタンダールの始まりなのだ。

 

「だったらイズク君は職場体験とインターンで呼びましょう!!絶対にウチに来てもらいましょうよ!!」

 

 過去を思い出している俺は弟子の言葉で今へと戻った。もとより希望はするつもりだが。

 

「緑谷出久はもっと日の当たる活躍をすべきではないか?」

 

 オールマイトのように華々しい活躍の場を与えるべきだと思う。ウチはアングラ系でありその仕事はあまり表沙汰にできないのだが。

 

「そんなことはいーんです。トガはイズク君に先輩という立場でいちゃつきたいだけなんです!!そして爆豪勝己ちゃんに見せつけてやるんです!!」

 

「オイ弟子」

 

 緑谷出久がオールマイトの個性を受け継ぐように説得する途中で知り合った、緑谷出久の幼馴染である才気ある少女。弟子であるトガヒミコは彼女に女として対抗意識を抱いていた。近い年齢の同性の友人が弟子にできることは師としては喜ばしいのだが。

 そしてパワハラ及びセクハラはやめろ。雄英高校から受け入れ資格を取り上げられるだろうが。

 

「幼馴染だからってズルいですよ。一緒に登校とか学校とかご飯とか添い寝とか」

 

 年齢的に最後のは大丈夫なのだろうか?親御さん公認なら良いのか?羨ましそうな弟子から紡がれる問題あり情報に冷や汗が流れてくるようだ。

 

「だからウチの事務所に来たらトガが爆豪勝己ちゃん以上のことを全部してあげるです」

 

 その言葉にサーナイトアイかグラントリノに緑谷出久を頼むことを俺は深く誓うのであった。

 個性カウンセラーからの紹介で弟子にしたトガヒミコが年頃の少女らしい行動をしている姿はとても微笑ましい。

 だが入れ知恵している輩が問題ありすぎて同じくらい心配になってくるのだ。

 

「明日は仕事だ。しっかり休んでおけ」

 

「はぁい師匠」

 





 雄英高校入試。
 まさかの全スルー。だって実力的に無双しかないので。ただ麗日お茶子ちゃんや飯田天哉君との出会いもあるから回想で書くかも。
 
 スタンダール。
 審査に参加して緑谷出久の活躍に大はしゃぎだった。ヒーローになった経緯についてはこんな感じ。行動力の権化過ぎる。時系列に関しては微妙ですがご都合主義でお願いします。

 トガヒミコ。
 担当した個性カウンセラーからの紹介で弟子入り。似通った個性を持つヒーローとの対話というのが最近のカウンセリングの定番。個性について悩んだり乗り越えた者達の言葉には重みがあるので。
 その過程で両親のヤバさに気付き、半ば引き取られる形で弟子入り。殆ど養子みたいなもんです。
 スタンダールの付き合いからネジレチャンとは親友同士。
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