怠惰主義のユースティティア 作:亜宇羅、慈涯死露
一歩一歩と城へ近づく。
その度に、プレッシャーは増していく。
「……。見られてるな」
「そうだね」
入り口の前にたどり着いたフリーレンたち。それじゃあいくよ、フリーレンのその言葉とともに彼らは魔王城の内部へと侵入する。
「――我らの城へようこそ、と、言うべきなのだろうな。本来は」
扉を開けた先、そこで待ち受けていたのは三人の魔族だった。リュグナーを筆頭とするアウラの配下たちである。
「だが、お前たちは招かれざる客だ。命が惜しければさっさと消えろ」
「断る。私たちはアウラを倒すためにここに来た」
「アウラ様はとても寛大なお方だ。お前たちがすぐにでも去るつもりなら逃がしても構わないと、そうおっしゃっている」
「どの口が。魔族の言葉なんて信用できない」
「ほう? お前がそれを言うのか、フリーレン。アウラ様から過去に二度も見逃された、他ならぬお前が」
「……」
「ふっ、まあいい。私とてこんなくだらない問答をしたい訳ではない。……お前たちに去る意思がないというのなら、全員この場で殺すまでだ」
そう言うとリュグナーは自らの手首を噛み切った。彼のそばにいた二人、ドラートとリーニエも臨戦態勢に入る。
それを受けてフリーレンたちも得物を構えた。
一瞬たりとも油断できない状況。果たして勝つのは魔族か、それとも人か。ぴんと張りつめた空気の中、それぞれが目の前の標的へねらいを定め、そして――
「――お前たち、かかれ」
「――みんな、作戦通りに」
ついに両陣営による戦いが始まったのだった。
■
「――で、俺の相手はお前ってことか」
「そのようですね」
「七崩賢、懈怠のアウラ様が配下、
「一級魔法使いにしてフリーレン様の弟子、フェルンです」
「へえ……。ま、せいぜい愉快に踊ってくれよ! 死ぬまでな!」
「どうでしょう。ダンスはあまり好きではありませんので」
■
「あなた、結構やるね。少しは楽しめそうだ」
「そっちこそ。武器がころころ変わるのはいったいどんな手品だ?」
「これが私の魔法。言っておくけど、降参するなら今のうち。あなたに勝ち目はない」
「へっ、そんなのやってみなきゃ分かんねえだろうが」
「……愚かだな。七崩賢、懈怠のアウラ様が配下、
「戦士アイゼンが一番弟子、シュタルク。本物の武ってやつをお前に教えてやるよ」
■
「さて、そろそろこちらも始めるとするか。人間、お前の名前は?」
「フリーレンたちの旅仲間、僧侶ザイン、もとい僧侶アゴヒゲ」
「……ふざけているのか?」
「いや、至って真剣だ」
「……そうか。七崩賢、懈怠のアウラ様が配下、
「おお、こわい。こりゃ一筋縄じゃいかなそうだ」
■
城内のあちこちで激しい戦闘が始まっている最中、ただ一人、フリーレンだけは別の場所へと向かっていた。彼女が目指しているのはこの城の最上階。かつては魔王がいた場所であり、そして今は、おそらくかねてからの敵がいる場所。
覚悟を決めて扉を開けるフリーレン。やはり、やつはそこにいた。宿敵との三度目の対峙を果たした彼女は、忌々しげにその名を呼ぶ。
「アウラ……」
さも当然のように我が物顔で玉座に腰かけている彼女は、気怠げな様子でこう返した。
「あら、今度は随分と早い再会になったわね、フリーレン。それで――私を殺す算段はついたのかしら?」
懈怠と葬送。今日、二人の長きに渡る因縁に決着がつく――。