タフ外伝 OTON『宮沢静虎、ゴッサムに出張する。』   作:スローダンサー

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静虎とバットマン、手を組む!

「何故私を助けた?」

 

 愚問と思いつつもバットマンは聞かずにはいられなかった。静虎はマスクの奥にあるバットマンの心情を読み取り答える

 

「私が助けたいと思ったので」

 

 その言葉に傲慢や驕り、後ろめたい負の感情は何一つない。ただ当然のように言い放った

 

「…………そうか、ありがとうセイコ」

「いや、私はタイガー・ロビン」

「…………フッ、そうだったなタイガー・ロビン」

 

 バットマンは差し出された静虎の右手を掴み、立ち上がる。彼らの目の前にはまだまだゴースト・ドラゴンズが集まってきた

 

「いたぞぉっバットマンだ!」

「隣のやつは誰だ?」

「バカっ、ロビンだろ?!」

「いやあんなおっさんだったか?」

「どうでもいいぞぉっ、やってしまえっ!! バットマンとそれに味方する奴は皆殺しだぁ!!」

 

「沢山いますね…………いつもこの数を?」

「いや今日は殊更に多い日だ。だが…………大したことはない。今宵はあなたと私で『ダイナミック・デュオ』だからな」 

 

『ダイナミック・デュオ』、バットマンと初代ロビンが活動した最初期に呼ばれた名前である。静虎はその名前の意味は理解していなかったが、何処となくしっくりきた

 

 バットマンと静虎は走り出す。この狂宴を終わらせるために!! 

 突撃するゴースト・ドラゴンズのギャング達。だがバットマンと静虎はそんな数に怯むことはないのだ

 

 バットマンは腰のユーティリティ・ベルトに手をやり、何かを取り出す。それは青い手榴弾の形をしたガジェットだ。全力で走るギャングの足元に転がす

 

キュイィン、バシュッ

 

 小さな破裂音がギャングの耳に届く。すると懸命に動かしていた脚がびくともしない。脚が凍りついているのだ! 

 

フリーズ・クラスター! 手榴弾の中には大量の凍結剤が含まれており起爆することで周りの空気を氷に変えるのだ。常人の力でこれを破ることはできない

 

「クソ、動けねぇ!」

 

 その叫びを上げたギャングは静虎のパンチによりノックアウト、簡単に気絶! ジャングルをかける虎のような動きは歴戦のギャングを震え上がらせた

 

「うああああああ」

 

 

 悲鳴をあげながら殴られ、気絶するギャング達! だが彼らの動きを長く阻害することはできなかった

 

「あれなんだかあったけぇぞ」

「見ろよ! 足元の氷が溶けてく!」

「空だ! 鳥か? 飛行機か?」

「いやあれは…………ファイアフライさんだ!」

 

「よお、バットマン! 元気にしてか? 隣のやつは…………見たことねぇロビンじゃないか!」

 

 

ファイヤーフライ

 本名ガーフィールド・リンス。火に魅入られた放火犯。最新ジェットパックを盗み出し、空を飛びながら炎を放つ危険人物。ファイアフライかファイヤーフライかは議論の分かれるところである

 

 

「私はタイガー・ロビンだ!」

「…………へっ! その訛り日本人だなっ! バットマンも観光客使うほど人手不足なんかよ!」

「余計なことを言うなファイヤーフライ」

 

 バットマンはバット・ラングを空中に飛ぶファイヤーフライ目掛けて投げる。しかし両手で持った火炎放射器の熱によりドロドロに溶けてしまった

 

「今日はいい火だ。コウモリの丸焼きに虎の照り焼きを食えるなんてな!」

 

 ファイヤーフライは静虎とバットマン目掛けて火炎放射器を向けた

 

ボアッ

 

 火炎の球体がばら撒かれ発射される。バットマンと静虎は雨のように降りかかる火炎玉を必死に避けるしかない

 

「ヒャハハハッ! 皮はパリパリ北京ダック、中はジューシーローストチキン!」

 

 好き勝手ばら撒く火の玉は当然ギャングどもにも降り注ぎ、どんどん火柱が立っていく

 

「ぎゃああああ」

 

 悲鳴を上げるギャング達

 

「仲間じゃないんですか!?」

「奴は火に魅せられている。議論のできる奴じゃない」

 

 静虎の嫌悪感満載の驚愕をバットマンは一刀両断した。しかし静虎の顔は晴れない。その慈愛をバットマンは好意的に見ている

 

「タイガー・ロビン。早くやつを倒さねばならない。これ以上被害を広げないためにだ」

「わかってます! しかし空を飛んでいる相手をどうしたら?」

「私に策がある。奴の注意を引いてくれ」

「了解しました!」

 

 バットマンと静虎は二手に分かれる。その様子を空から見ていたファイヤーフライはどちらを先燃やすか思案していた

 

 その時、ファイヤーフライは自分の体勢が崩れているのを感じた。下から突風が吹いているのである。今日の天気は晴れ、風一つないはずだ

 

「一体どこから?!」

 

 ファイヤーフライはその原因を簡単に見つけた。静虎である! 野球のピッチャーのように全身を振りかぶり、ファイヤーフライに突風を放ったのだ

 

「覇生流・風当身ッ」

 

 灘神影流と祖を同じとする武術、覇生流に伝わる秘技だ。その術理は渾身の力を込めて風を起こす単純明快な物。しかし静虎クラスの武術家ならば突風の塊を引き起こし、敵を乱すことは容易である! 

 

「この野郎っ!!」

 

 ファイヤーフライは静虎の方へ突撃してくる。近距離で火炎放射を出すつもりか! だが高度を下げたのが仇となる

 

ヒューッ、ガキンッ

 

「なにっ」

 

 ファイヤーフライの困惑。体が動かない。ジェットパックにグラップネル・ガンがガッチリと絡み付いており、前にも後ろにも進めない

 

「くそっ」

 

 焼き切ろうとグラップネル・ガンの紐に火炎放射器を当てたが…………それは致命的な隙だ

 

「虎腿蹴(タイガーシュート)!!」

 

 静虎が飛び上がる。高いジャンプでファイヤーフライに届く。不可視の蹴りが脳を揺らす。意識を刈り取られ、ファイヤーフライは地面に叩きつけられた! 

 

「バカなファイアフライさんがやられた?!」

 

 先ほどまで応援していたギャングは及び腰になって散り散りに逃げた! 

 

「よしでは次に行くか」

 

 バットマンはファイヤーフライを拘束すると、静虎にグラップネル・ガンを渡した

 

「使い方はわかるか?」

「何度も見てますからできますよ」

「よし、では行くぞ!」

 

 バットマンと静虎はビルの隙間を練ってゴッサム・シティの闇を駆け抜けた

 

 ◇◇◇◇◇

 

「きゃあっ!?」

「待てよベイビーっ遊ぼうぜぇ!」

 

 薄暗い路地裏、金髪の少女がゴースト・ドラゴンズのギャング達に追いかけられている

 

 年に不相応な豊満な肉体を隠した普段着は端からビリビリに破かれている。彼らに襲われたのだ

 

「一緒に楽しいことしようゼェ!」

「もう逃げられないねぇ!」

「俺のマグナムはすごいぜっ! ヒーヒー言わせてやるよ!」

「離してっ!」

 

 金髪の少女はギャングの1人をビンタする。赤く紅葉晴れしたギャングは逆上した

 

「なめんなメス豚ーッ!! ファックされたいだけだろぉ!!」

「おとなしくしろい!!」

「だ…………誰かたすけてぇ!?」

 

 哀れ手足を押さえつけられ下着を破かれてしまう

 

「待てよお前ら。一番先は俺だ」

「あ、あなたは?!」

 

 警官の格好をして蛇のマスクをつけた男がギャング達を制止させた

 

「くくく、ありがたく思いな。俺のご機嫌なマグナムをお前の貝柱にぶち込んでやる」

 

 ズボンもパンツも下ろし、金髪の少女にのしかかろうとする警官ギャング。恐怖と絶望に金髪の少女は目を瞑ってしまった

 

「はうっ」

「うぎゃあ」

「うわあああ」

 

 大きな衝突音、コンパクトな打撃音、そしてギャングの悲鳴。何か様子が変だ。金髪の少女、『カーラ』は目を開けた

 

 そこにはこの街で最も有名な闇の騎士とこの街で最も有名だが全く見たことないサイドキックが立っていた

 

「あ…………あっあ…………」

 

 先ほど感じた恐怖と救われた希望により感情がグチャチャで言葉の出ないカーラ。その様子を静虎は見て、スーツの隠しポケットから自分が来ていたスーツを取り出し、彼女の身体を隠した

 

「ゴッサム市警のジェームズ・ゴードンを頼れ。彼は信頼できる」

 

 バットマンはそう言うと隣にいるサイドキックと共にゴッサム・シティの闇に消える

 

 カーラはこのゴミためのような街に二つ光る星を見た気がした

 

 ◇◇◇◇◇

 

 1時間後

 

 バットマンと静虎はゴッサム・シティを走り回りギャングたちを叩きのめし続けた。そして、アルフレッドが特定した情報をもとに本丸へと辿り着く

 

「ここですか、随分と大きなビルですね」

「ゴッサム・シティ中の電波を乗っ取れる中で条件があったのはこのビルだけだ。キング・スネークはこのビルの49階にいる」

「49…………不吉な数字ですね」

「日本だと死と苦を連想させるからか?」

「そうですよ。随分とご存じで?!」

「フッ…………昔カラテを修行した。気もわかる」

「なんと! 才能がお有りですね! 何か一つ技を教えましょうか?」

「是非とも学びたいが…………今はあいつらを突破することを考えよう」

 

 バットマンは横を向いていた静虎に前を見るよう促す。ビルの入り口には2人の男がいた

 

 欧米人である。2人の格好はイタリア製の高級品。しかし服の違いがなければ男達の見分けがつかないだろう。2人は双子であった! 

 

「おい、ブルーノ! バットマンの隣の男に見覚えないか?」

「へっ、アンソニー! マスクをしてたって俺たちにはわかるぜっ」

 

ABブラザーズ

 アンソニーとブルーノの双子の暗殺者。100年の歴史を誇るイタリアの暗殺名家『ジュゼッペ家』出身。鬼龍の暗殺を失敗したのを契機に自らの身体の一部を改造した

 

 双子の両目は生ではない。あらゆる最新技術が詰め込まれた軍用サイバネティクスアイだ。索敵から戦闘形態にモードを切り替えた双子はバットマンと静虎に突撃する! 

 

「吹き飛べ、タイガー・ロビンにバットマン!!」

 

 ブルーノと呼ばれた男はロケットランチャーを持ち出し発射する! 静虎とバットマンは横に広がり、ロケットを避けた。しかし2人が避けた先には手榴弾がばら撒かれていた! 

 

「俺たちのAB・アイは行動予測機能もついているんだっ!」

 

 アンソニーと呼ばれた男は手榴弾に弾丸を撃ち込み爆発させる! この爆風をバットマンはマントで受け止め、静虎は身体を捻ることで回避

 

「なにっ爆風を避けやがった!」

「落ち着けブルーノ! 俺が決めてやるっ」

 

 アンソニーは静虎に殴りかかる! 腹目掛けた右フックを静虎はガードに成功したが、その予想外の重さに驚いた

 

「俺達は目だけがサイボーグじゃないんだぜぇっ」

 

 アンソニーの右手は機械! ブルーノの左手も機械! 鋼鉄の塊で殴ることで、静虎の肉体にダメージを刻んだのだ

 

「タイガー・ロビン!」

 

 バットマンはバット・ラングを投げることで静虎を援護。しかし複雑な軌道を描くバット・ラングをアンソニーは簡単に右手でとってしまう

 

「へっいったろ。行動予測機能があるってなぁ!」

 

 ブルーノは左手からミサイルを発射した! 辛うじてよける静虎とバットマン。だが、回避行動の彼らを狙い、アンソニーは右手を銃に変形させた

 

「死ねぇっ、タイガー・ロビン!」

 

 1発、2発、3発、4発。1秒の間に4つの弾丸が発射させる。バットマンが介入しようにも遠い。静虎のコスチュームはただの布、自分のスーツと違い、防弾じゃないのだ

 

「とったぁっ!」

「タイガー・ロビン!?」

 

 アンソニーの確信、バットマンの悲鳴。しかし両人の思惑は裏切られた。静虎は…………無傷! 彼の後ろには四つの弾痕が残っている

 

「灘神影流・弾丸滑り!」

 

 飛び道具の軌道を自らの表皮に這わせる灘新陰流の防御術。古流武術である灘新陰流が現代まで絶やさず残った有用性を示す技だ! 

 

「バカなぁっ?!」

 

 驚いたアンソニーの隙は行動予測機能を持ってしても攻撃が避けられないほど大きかった。目にも止まらぬ三連続パンチをもろにくらいアンソニーは気絶! 

 

「アンソニーっ!?」

 

 ブルーノは焦りと共にミサイルを連射し、爆破を見ることで気持ちを落ち着かせた

 

「…………フゥッ、俺はさっきのようにいかないぜっ!」

 

 爆風を避けやがった建物の影に隠れたバットマンと静虎。1人片付けたが、もう1人は近寄ることを許さなそうだ

 

「一体どうすれば…………」

「待てタイガー・ロビン、私に考えがある」

 

 悩む静虎の耳にバットマンは小声で策を授ける。それを聞き、静虎はうなずいて同意を示した

 

「提案してなんだが、危険な策だ。すまない」

「いいんですよ、バットマン。こんな所で止まってられません」

「そうか、頼むぞ!」

 

 先陣を切って飛び出したのはバットマンである! その指の隙間には大量のバット・ラングだ。バットマンの筋肉がしめ縄のように隆起し、ブルーノに対して複雑軌道を描きながら飛んでいく

 

「バカめがっ! その技は俺には効かん!」

 

 ブルーノのAB・アイが起動し、バット・ラングの軌道を予測、安全な避け方も計算させる。だが、ここでイレギュラーが起きた

 

「なっ、タイガー・ロビン!?」

 

 そう静虎がブルーノに立ち塞がったのだ! その広い肉体でバット・ラングを全て隠し、軌道予測を防いだのだ

 

(近すぎる! 俺まで爆風が来る!)

 

 ブルーノお得意の爆撃は自分の命まで勘定に入れてない。ならば静虎を殴るべく鋼鉄の左手を顔面に放とうとした

 

「灘神影流・奥義"弾丸滑り"!!」

 

 ブルーノの拳が当たることはなかった。バット・ラングが背中に触れた瞬間、静虎は弾丸滑りを行い、その全てをブルーノに命中させたのである! ギリギリまで軌道予測させなかったのが静虎とバットマンの勝因だ

 

「うあああああ」

 

 全身にバット・ラングが突き刺さったブルーノは悲鳴をあげ気絶! ABブラザーズに静虎とバットマンは打ち勝ったのだ

 

「傷ひとつない」

 

 バットマンは静虎のコスチュームを見る。服は愚かマントにすら切り傷はなかった

 

「私は守るのが得意ですから」

「灘神影流、侮れん」

「そうでしょう?」

 

 屈託のない静虎の笑顔にバットマンもつられて笑う

 

「しかしここまで有用だと何か一つ身につけたいものだな」

「この短期間で身につく技…………ありますよ」

「なにっ」

「ええバットマン、空手や気のことをわかってるんですよね? ならば少しだけならレクチャーできますよ」

「この際何があってもおかしくない。ぜひ頼む」

「そうですね…………ではこれならどうでしょう」

 

 ビルに入りエレベーターで49階まで向かうなかバットマンと静虎の会話は止まらない。水を得た魚とも言うべきか? どことなく共感していく2人は久し振りに出会した親友のようであった

 

 ◇◇◇◇◇

 

 エレベーターが止まる。『49階』と表示された表示を横目に2人は中へと入場した

 

 そこは殺風景な会議室である。蛍光灯によって照らされる大理石のように白い箱はゴッサム・シティの暗闇と対比して不気味だ

 

 窓を見ながら豪華な椅子に座る男を2人は見つける。場違いな赤色の椅子は回転し、男の顔を見せた。胸には蛇のタトゥー。キング・スネークだ! 

 口こそ笑っているが目には驚きの色が浮かんでいた

 

「キング・スネーク様は驚愕している。二つに! 一つはこんなにも早く事態を片付けてここにいること! もう一つはその隣にいるやつにだ」

「キング・スネーク、計画は妥協点くらいだが運はなかったな」

「ええ、バットマンとこのタイガー・ロビン、ダイナミック・デュオがいるからにはお前の悪事はもう終わりだ!」

 

 静虎の決まり文句を聞きキング・スネークは大声で笑う

 

「アハハハ!! お前、下手くそだな! キング・スネーク様はわかるぞっ! 初めて気取るから慣れてないだろぅ」

「そんな御託はいいキング・スネーク。もう終わりだ」

 

 キング・スネークの嘲笑をぶった斬って会話の主導権をにぎるのはバットマンだ。だがキング・スネークは指を一本突き立てると嫌らしく横に振る

 

「わかってないねバットマン。キング・スネーク様の計画はここまでじゃないぞっ」

 

 その言葉と共にバットマンと静虎は背後から殺気が飛んでくるのを感じた。息を合わせたかのように右左両側へと分かれる両者。彼らが立っていた地点には刀を振り下ろした何者かが立っていた

 

 男である。黒の戦闘スーツにオレンジの武器ポーチ、顔の全身を覆う仮面は黒とオレンジの色を真っ二つに分けた特徴的なデザインだ

 

デス・ストローク…………貴様もいたのか」

 

 バットマンはその男の名前を言った。しかしデスストロークと呼ばれた男はバットマンに反応を示さず、静虎を指差し言葉を発する

 

『お客さん』、俺の忠告聞いて姿隠すのはいい事ですぜ! だがなぁ…………こっちも仕事だぁっ、あんたを殺すよ」

 

 その特徴的な言い方と声から静虎はその正体を察した。自分をこの魑魅魍魎の箱へと連れてきた人物

 

ウェイド…………ウィルソンさん?! 

「違う、俺は『スレイド・ウィルソン』でさぁ!」

 

デス・ストローク

 本名スレイド・ウィルソン。世界一の傭兵と謳われる腕利き。武器は卓越した銃スキルと殺人古流剣術。




◇まさかの因縁……!?
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