なんかピカピカ光る雑魚   作:鮪比基尼

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ちょっとオリジナル念能力感が強めです。実際成り立つのかな?これ


セイヤク×ト×ケイヤク

 

「動くな。指先一つでも動かせば、おまえたちの頭を吹き飛ばす」

 

暗闇から姿をあらわした俺の声が、目の前に立つ二人の男に届く。

 

岩壁の向こうにいたのは二人の男だった。片方は短く切りそろえた白髪、痩身に黒のロングコートをまとっている。その鋭い目には抑えきれない殺意が宿りつつ、わずかな驚愕も見て取れた。

 

もう片方は騎士風の鎧を身にまとった偉丈夫。その筋肉質な体はまさに戦士の象徴。頭に被ったヘルムの下から覗く目はにこやかだが、どこかその笑みには冷たさと不気味さが宿っていた。

 

俺は右手を拳銃のように構え、集めた念を移動させ、人差し指を発光させる。これはあくまで虚勢でしかないが、この場ではそれで十分だ。

 

「あぁ・・・?なんだてめぇ、いったいどこから湧いてきやがった?」

 

「だまれ、おまえらに質問する権利はない。質問は常にこちらがする。」

 

「あぁ・・・!?」

 

コートの男は口調を荒げるが、それでも体はピクリとも動かさない。口調の割に冷静だな、この男。

 

念には「相手が指示に従わなかった場合に、罰則を与える」というタイプのものが存在する。漫画で見た例だとウェルフィンと、あとおそらくノブナガがそうだ。そして、先ほど俺が言放った言葉は「動いたら殺す」ーーー。この言葉を聞いた瞬間、こいつらの「動く」という選択肢をほとんど制限できた。

 

念という用語だけ同じで、漫画の知識と実態はかけ離れている、なんて可能性も一瞬頭によぎったが、なんとか成功して良かった、と顔には出さないようにしつつ、内心胸をなでおろす。

 

ともかく、今俺は彼らに対し一時的だが俺は優位に立っている。この状況を利用して、こいつらから最大限情報を引き出し、()()()()()()()…。それが今俺がすべきことの全てだ。

 

「まず…。最初の質問だ。そう…。」

 

そして、俺が質問をしようとした瞬間、洞窟内に大声が響く。

 

「ふは、ふははははは!出会い頭に相手を脅迫するとは、少年、そのいきやよし!だが、甘い!甘すぎる!」

 

甲冑の男の大声が、体を震わし、俺の思考をかき乱す。甘い?何がだ?俺は何も間違った行動をとってはいないはずだ。

 

いやまさか…こいつカマをかけているのか?何か違和感に気づいて。

 

男は続ける。

 

「まず第一に、君が本来とるべきだった行為は「奇襲」であった!吾輩たちは君に気づいていなかったのだからね!仮に返答を強制する能力を持っていたとしても、それは変わらない!そして、その選択肢が真っ先に浮かんでこない時点で、君は殺しに慣れていない!」

 

な、と声が漏れそうになる。確かにそれは…そうだ。いや、だがそれは「殺しに慣れていない」からだけではない。俺がそもそも一切の攻撃手段を持ち合わせていないからだ。そのことはばれていない…ならまだやりようはある

 

「は、なら試してみるか?その的外れな推測が正しいかどうか。おまえらは今一歩も動けないが、俺はいつでも打てるぞ?そのでかい図体はいい的だろうな」

 

「ふはは!ずいぶん饒舌じゃないか!焦っているのかな?」

 

ち、と内心に湧いた焦りをかき消すように舌打ちをする。

 

「そして次に甘いこと、それはーーー。」

 

こふ、と、口に何かがせりあがってくる。それが何かを確かめる前に、体がぐらり、と傾く。

 

「相手の命を握った程度で、少しでも安心してしまっていることだ。」

 

血が地面に飛び散る。何が起きた?甲冑の男が右手にもった白刃を、気取った風にくるりと回して、収めるのを見た。

 

まさか、切ったのか?動いたら殺される、その事がわかっていたのに?

 

いやそもそも、こいつの間合いに俺は入っていないはずだ。騎士風の男と俺の間は3,4mは目算であるし、こいつはかけらも動いていなかった。なぜ攻撃が届いた?そういう発だとでもいうのか?

 

「ふははは!確かに相手の行動を制限するタイプの念は厄介だ!しかしだね、その判断基準は『君が動いたと認識したかどうか』、だ!であるならば、君が反応しきれないほどの速度で抜刀し、切り伏せればいい、それだけのことなのである!」

 

そんなーーー。無茶苦茶すぎる。あまりにも理不尽だ。

 

「おい…。てめえ勝手に動いてんじゃぁねぇ…!てめえ一人が勝手に死ぬならまだしも、俺にまで被害がかかる可能性がある方法を選ぶんじゃねぇよ…!」

 

「ふはははは!まあいいではないか!どちらにせよ、被害はなかったわけだしな!騎士として、真っ向から戦いを挑んできた相手に、正々堂々相対しない方が非礼である!」

 

「礼儀の話をしてんじゃねえよ…!」

 

まずい。こいつらは、まずい。想像の何倍も、こいつらと俺の間には超えがたいほどの壁がある。

 

焦りと恐怖の中、無意味な言葉だけが頭の中で反響する。

 

まずい、まずい、まずい。このままでは、殺される。死ぬ。

 

いやだ、こんなところで死ぬなんて。あぁ、なんで衝動に任せて動いてしまったんだ?俺は念を覚えたてのガキで、相手は暴力の専門家。勝てるわけがないじゃないか。

 

だが、そんな思考をよそに、死は如実に近づいてくる。嫌だ、嫌だ、こんな理不尽に負けて死ぬなんて。

 

 

 

 

 

だが落ち着け。

 

そう、だがこんな危険、()()()()()()だ。ならばあわてる必要も、動じる必要もまるでない。

 

十分に『溜め』は済んだ。ならば後は、放つだけだ。

 

銃の形をとっていた右手を、開く。

 

瞬間、溜めていた念が開放され、視界が光に包まれた。

 

 

□■□■□■

 

 

半死の少女を背負い、俺は隘路を駆け抜ける。先ほど放った光で、周囲の地形の把握はあらかた済んでいる。迷うことなどまるでない。

 

視界を潰したから、回復までには時間がかかるはずだ。そして、この複雑な道を迷わずに追いつくのは、奴らでもさすがに困難だろう。

 

特にあの騎士風の男は体格が大きいため、この狭さでは足止めを食らうだろう。しかし、完全に安心もできなかった。

 

「ともかく、いったん撒いたか…?」

 

いや、油断は禁物だ。もう少し、奥に進んだほうがいいかもしれない。

 

だがしかし、進んだところでどうなる?この坑道で今まで発見した出口は1つだけ。監視は容易だ。相手がそれを見逃すとも思えない。

 

「あぁあぁぁ・・・。どうすんだよこれ。完っ全にやらかした…。」

 

なんで衝動に任せてあの時突き進んでしまったのか。後から考えるたびに後悔しかわかない。

思考を止め、現実逃避をしたいが、背後でかすかに聞こえる少女の呼吸音が、否応なく俺を現実に引き戻した。

 

「あの…。ごめん、僕を助けてくれたばっかりに…。」

 

喉も潰れていたのか、多少濁った弱しさ弱しい声が背中側から響く。俺はそれに多少苛立ちを交えながら答える。

 

「謝るな。俺はあんたを助けようとしたわけじゃない。ただ、俺はあの場で動かないことができなかっただけだ。」

 

言いながら、俺の脳裏にあの瞬間が蘇る。奴ら二人の前に飛び出す前、確かに見た。この女のおられた小指が、逆に折れ曲がり、元の形へと戻っていくのを。あの場で時間を稼ごうと動いたのは、治癒する時間が稼げれば、より逃げるのが容易になると考えたからだった。

 

おそらく自他を治癒する念能力なのだろう。事実、この女を担いで歩いているだけで、先ほど胸に受けた深い傷がふさがっていくのを感じる。

 

しかし、俺の傷に比べて、この女自身の傷の治りはかなり遅い。もしかすると、自己よりも他者の傷の治癒速度のほうが速いのかもしれない。

 

女の足はいまだ完全に治癒しておらず、何とか直した両腕を首に回し、おぶられていた。

 

「それで…。なんであんたはあいつらに追われてんだ?どう見ても普通の連中じゃねえ。表の世界とは無縁な奴らだ、あいつら。あんたもいったい何者なんだ?」

 

「それは…。言えない。言ったら君を巻き込むことになる」

 

「…。どちらにせよ、だ。言おうが言わなかろうが、隠し事を聞かれたうえで、敵対した俺のことをあいつらは許さないだろう。だったら今は、少しでも情報が欲しい。仮に少しも話さないなら、俺も穏便ではない手段に出ざるを得ない。」

 

「…。わかった。ただ、話せるのはあいつらが何者か、となぜ追われてるのか、それだけだ。僕が何者か、それを話すことはできない。」

 

随分と…秘密主義だな。いや、仕方ない部分はあるのか。相手からしても、突然出てきた身の上の分からないガキに、全ての事情を話すわけには行かないだろう。

 

「ああ、理解した。ただ、お前も俺に何者か聞くな。これでイーブンだ。

それで、アイツラは何なんだ?盗んだのは…確か『インク』とか言ってたか?」

 

「そうだね。『インク』…。話す前に確認しておきたいんだが、君は『死後の念』って知ってるかい?」

 

「・・・まあ、最低限はな。強力な念が、使い手の死後も残り続ける…、ってやつだろ?」

 

岩壁を両手で掴んで、勢いをつけて段差を乗り越えながら答える。死後の念。なぜその言葉がいま出てくるんだ?

 

「そう、それだ。そして、『インク』はある念能力者が念で作り出したインク壺が、死後の念として残り続け…。そしてそれに継ぎ足されたインクに特殊な効果が宿ったものなんだ。」

 

「物体に宿る…、操作系、もしくは念で作り出したってことは具現化系か?」

 

「そうだね、おそらく。()()()()()()()()()()。あのインクが持つ効果は「制約の共有」。きわめて希少な、特質系の能力だ」

 

 

「は?」

 

思わず振り向きそうになる。

 

そんなことが可能…いや、ありえない話ではない。特質系の中には未来を予知するものや、念能力そのものに干渉するものもあった。そういったものと比べれば、決して不可能といえるものではないのかもしれない。

 

だがーー

 

「そもそもだ。制約を共有することに何の意味があるんだ?仮に共有したとして、その制約に対する個々人の価値観なんてバラバラだろ?それに、仮に相手を縛ることが目的なら操作系でそれっぽいものを作ったほうがよっぽどいいんじゃないか?」

 

俺の疑問に少女はよどみなく答えた。

 

「いや…。それがそんなことはないんだ。操作系の能力に自分からかかることは、やはりリスクも高いし、非常に覚悟もいるんだよ。例えば、昔危険な操作系にかからないように、事前に「精神を多少高揚させる」、という念能力を何人ものハンターが受けたことがあったんだって。

 

ただ、結果は全員がその能力を持った能力者を中心とした軍隊に様変わり。どうやったのかはシンプルさ、あとから「自身の能力の対象となっている人物を、自在に操ることができる」という能力をつけたしただけ。それだけで簡単に操作ができてしまうんだ。だから、純粋な操作系の能力で「他者と交渉する」ための道具を作るのは極めて困難なんだ。」

 

少女は少し息を整えて続けた。

 

「けれど、この『インク』は違う。操作系としての能力は特質系の能力を発動させる、いわば電池の役割以外を果たさない。それに死後の念であるがゆえに、いじられる危険性も少ない。それゆえに、念を「他者との交渉の道具」として使うことが可能なんだ。

 

そして、「制約」は念そのもののマスタールール、それゆえに制約の「報酬」、もしくは破った「罰則」を指定しておけば、それが起きる、というのはほぼ絶対なんだ。そして、先に「報酬」か「罰則」、どちらかを先に決めておけば、個々人の価値を読み取り、制約が妥当な重さの罰もしくは報酬を指定してくれる。ゆえに、契約時に嘘を吐かれる危険性、および裏切られる可能性が極端に減るんだよ。

 

無論、それだけだと足りない部分もあるから、文書の文面に工夫をしたりして、いろいろ調整してるみたいだけど・・。

 

で、僕が今、『インク』の流通を仕切っているマフィアの下っ端に支給されていた『インク』を盗んだのが、追われてる原因かな。」

 

なるほど…。確かに言っていることは筋が通っている。これは多分この世界で俺にしかない視点だと思うが、「漫画」としても制約による「報酬」や破った時の「罰」が必ず起きるのは納得だ。「念」と「制約」はHUNTER×HUNTERという漫画の中核を占める概念だ。それに対する処理が適当であったら―――。たとえば、クラピカの「旅団以外を攻撃すると死ぬ」というような制約が、例えば律する小指の鎖( ジャッジメントチェーン)の先の剣を簡単に抜けば対処できる程度のものだったならば。

 

その時点で作品全体が陳腐なものに様変わりしてしまうだろう。

 

ゆえに、この話には納得できた。しかし、疑問がある。

 

「だがなぜ、それを盗んだんだ?どう考えても相手にケンカを売っているだろう、それは。事実殺されかけていたじゃないか」

 

「・・・盗んだ理由には、僕の出生も多少かかわっているから、詳しくは言えないけど…。この土地を守るためにどうしても必要だったから、かな。今『インク』の元締めであるマフィアーーーイン・ジー家は今、『インク』を利用して権力や支配を強化するために、多数の契約を結んでいるんだ。そしてその影響で、この山々は奪われた。それが純粋な「操作系」で、多数の人間が精神に異常をきたしていたり、もしくは念にあてられて多数の念能力者が生まれていたりしていたなら、ハンター協会やほかの組織も表立って動くんだろうけど…。

 

「制約の共有」レベルだとそういった影響はほとんどないらしくてね。事実、野放しの状態なんだ。

 

だから、僕がやるしかなかった。『インク』を使って、正当な契約を結びなおさせるでもいい、もしくは外部に売ると脅し、交渉材料にするでもいい。危険は高いけど…。もはやそれにすがるしかなかったんだ。」

 

彼女の言葉には、確固たる決意がにじんでいた。

 

すこしだけ、今まで感じていた苛立ちが薄まる。決して彼女も理不尽をただ受け入れていたわけではなく、俺と同じで、理不尽に抗い、前に進むための選択をしてきたのかもしれない、と。そう感じることができたのが理由かもしれない。そう思うと、自身の胃の中のむかつきが、少し収まるような気がした。

 

「…そうか、じゃあなおさらここを乗り切って早く脱出しないとな。なぁ、さっきいたところの近くの出口以外に、ほかに出口がないか知ってるか?できればあいつらが知らなそうなところで。」

 

「そうだね…。うーん、もともとこの坑道は、天然の洞窟をさらに掘り進める形で作られていたはずだから、出口はいくつかあると思うんだけど…。何分今いる場所がわからないからね。案内するのは、ちょっと難しいかな。」

 

「いや、十分だ。」

 

出口が複数あるなら、待ち伏せされるリスクは低くなり、相手が直接戦闘しにくる可能性が高くなるだろう。そうなれば罠を張るなり、ゲリラ戦をするなり、手段は無数にある。手がわかれば、多少なりとも対策はとれる…はずだ。

 

「なぁ、ところであいつらの念能力が何かわかるか?片方は明らかに強化系みたいだけど、もう片方、特にコートの――――」

 

「危ない!」

 

一瞬のうちに、俺の首が彼女の手で後ろに引っ張られ、のけぞるようにして後ろに転倒する。

いきなり首を絞められたせいで喉が詰まって息ができなくなり、激しくむせる。

 

「ごっ、ぁ、なん・・・!」

 

そして、ふと、自身の額から、何かが流れている感覚が伝わる。汗かと思い、ふと触れてみたが、指先に触れたものは厚く、ねっとりとした液体だった。これは…血。

 

間をおいて理解する。俺が気づく間もなく、高速で迫ってきた何かが、額の皮をかすめたのだ。

 

「なに、が…!」

 

とっさに眼に念を集中させ、周囲を見渡す。そして、俺は瞬間的にその場から飛びのいた。

 

先ほどまで自身がいた場所に斬撃が突き刺さり、土煙が舞った。

 

「これは…今、俺たちは…。念の攻撃を受けている!」

 

そして、新たに飛び交う3つの斬撃が俺たちを襲った。

 

 

 




戦闘は次回にやります。襲われたときのセリフが想像できなくてなんかジョジョ風になった…。

死にかけていた少女の能力

精霊の息吹(サインオブスピリット)
自己および周囲の人間の治癒能力を高めることができる。本来は息を媒介に周囲の人間を治癒することが可能だが、強力すぎるため、手で触れることを発動条件と偽っている。
重症になるほど念の消費量は多く、他者を治癒する場合は、相手の痛みを共有してしまう。連続して使用すると、使用者自身の体力が激減し、過剰に免疫が低下する。
体がちぎれた時は、体の部位が残っていればちぎれてからさほど時間がたっていなければつなぎなおすことはが可能。完全な欠損は直せない(部位を生やしたりはできない)。
自己よりも他人のほうが治癒速度が速い。
森の中であると威力が増大する。
また、死者は直せない。

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