知り合いに作品を知られてから、新しい感想が全て知り合いに見えてきてます。
おぼろげな視界がだんだんと回復していく。光でまだくらんだままの眼をさすりながら、防御のために体中にまとっていた念をといていく。頭の中はまんまと逃げられたことへの苛立ちがあふれていた。
「クソガキが…舐めやがって…。こんなに警戒させといて、攻撃もしてこねぇとは…。まったく、平衡感覚が狂っちまってる…」
「ふむ、しかしあれ程忠告したのに 眼が潰れた隙に攻撃をしなかったとはな…。単純に覚悟が足りないというだけではなく、奴自体の攻撃能力もそれほどではないのかもしれんな。」
カルロスがつぶやくように言葉を漏らす。こいつはいつもそうだ。いつも飄々とした態度で、ふざけたことばかり抜かす。こいつは今起きたことを理解しているのか?1度ならず2度までも、隙をつかれて逃げられたんだぞ?
「おい、カルロス…俺だけで十分だ。俺はなめられて引き下がるわけにはいかねぇ。それにお前は信用ならねぇ。契約だか何だか知らねぇが、リーダーがやられたときも無反応でいやがって。俺がやる」
「ふは!ほほう、なるほど。確かに吾輩にとっては、この洞窟はいささか窮屈すぎる。ならば出口をいくつかつぶしておくとしよう。それではルノシス殿、ここは君に任せることとするよ」
「・・・ああ、わかった」
盗まれたインク。そして謎の念能力者。複数の能力者が絡んでいる時点で、何かの集団が裏にいる可能性が高い。単独犯でないことが濃厚だ。ここで一つ実績を立て、ボスにたてつく愚かな集団を見つけ、駆逐したとなれば、俺も処分を免れるかもしれない。この筋肉に手柄を譲っている余裕はないのだ。
「しかし 本当に 大丈夫かね?君の『円』は長距離まで探れないはずだ。待ち伏せされて先ほどの閃光で眼を潰されれば、次はさすがに殺しに来る可能性が高いぞ?相手も最低限、殺すための準備をしてくるだろうしな。」
「問題ねえさ。『円』なんてしなくても、奴らはまだそう遠くには行ってねぇ。坑道内の 地図は頭に入ってる。 それに今夜は半月、十分だ。ゆっくり、ゆっくり削いでいってやるよ」
「それでは、私は茶でも飲んで、君の戦勲を祈っていることとするよ。」
「クソ野郎、好きにしろ」
罵倒を放つと、少し呼吸を整える。脳裏に焼き付いた苛立ちという名の熱を、ゆっくりと腕に流し込む。
そして、俺は能力を解放した。
「
■□■□■□
3つの半円形の斬撃が、ジグザグと軌道を変えながら迫ってくる。
一つは回避し、 二つ目は片腕を念で纏って防御する。しかし、三つ目はさばききれず 、右足が裂けた。
「ぐあっ…!」
痛みに思わず声が漏れる。3つの斬撃は、すぐに足元を狙い、さらに追い打ちをかけてくる。
「くっ! 」
瞬間的にその場を飛び退き、そのまま走り出す。斬撃はそこらじゅうを飛び交っているが、すぐに追撃はされない。走る間に、ゆっくりと傷がふさがっていくのを感じる。
どうやら、相手は完全に俺たちを感知できているわけではないようだ。しかし先ほどの動きを見るに、斬撃自体に感覚があるのか、生物を切ったかどうかは感知できる。そんな感じだろう。そのため、命中率自体はさほど高くはなさそうだ。
しかし…。
「七つだと…!?」
新たに7発の斬撃が進行方向から迫る。慌てて再び手に念を集中させ、2つの斬撃を砕くが、砕いた瞬間に腕を切り裂くようにしてのこりの斬撃が押し寄せる。
手を反射的に引き、更に道を塞ぐように飛び回る2つの斬撃を抜け、走る。
何とか斬撃の嵐を抜けられた。強度はそれほどではないが、何分数が多い。それに軌道が複雑すぎて、気を抜くとすぐ切り裂かれそうだ。
背中から迫ってきた斬撃を、背負っていた女の右腕が砕く。
「痛っ!」
「くそっ!なあ、回復以外になにかこの状況で役に立ちそうな能力を持ってないか!?」
「残念ながら、持ってはいるけど、使ったら僕は動けなくなる!それでもいいなら!」
「くそっ!」
こいつを今使えなくするわけには行かない。四方を飛び回る斬撃に対処するには、どうしても俺一人では手が足りない。
「足はまだ治らねぇのか!?」
「残念ながら、あと1,2分はかかるね!」
「ーーーくっ!」
脳内を焦りが支配する。どうする、策は何かないか?ーーーそうだ。さっき
「おい!今から防御を捨てて全力で走る!お前は後ろの攻撃を捌け!数秒耐えればなんとかできる!」
「了解!」
一瞬の差が生死に直結する。分かれ道を下り、かける。斬撃が頬をかすめ、腕を切り裂く。
背中からは肉が裂ける音と、斬撃が砕ける音が響く。
「ーーー!もう、ちょっと、限界!」
「耐えろ!もう少しだ…!」
そして、俺はついに、その薄汚れた場所に到着した。
俺は絶叫する。
「ああああああ!!!!」
途端に、それらが勢いよく飛び立った。
大型のコウモリの群。
暗闇を飛ぶ買う彼らを、斬撃が瞬間的に切り裂く。逃げるようにして飛び立つコウモリたちを、斬撃は追い、切り裂いていく。
その混乱に紛れ、俺たちはその場を走り去った。
■□■□■□■□
「…くそっ!」
斬撃をかわして少し息を落ち着けられる程度の時間が過ぎたが、いつまたあいつが襲ってくるかわからない。周囲の静寂が逆に不安をあおる。体にべっとりと張り付いた汗まみれの服が、ゆっくりと体を冷やしていくのを感じる。
「なあ、さっきの続きだが…。奴らの能力に関して詳しい情報はないのか?」
「…わからない。ただ、騎士風の男は剣を媒介とした強化系だ。僕の知り合いのほかの強化系が、念で強化した腕ごと叩き切られてた。あと、斬撃を飛ばせるのか伸ばせるのかはわからないけど、3,4m圏内なら斬撃を届かせられるみたいだ。
ただ、あまり長距離には飛ばせないみたいだから、この斬撃はコートの男のものだと思う。」
斬撃を長距離まで飛ばし、操る能力と、斬撃を単純に強化する能力か。
「・・・斬撃でキャラ被ってんじゃねぇかよ。攻撃系能力2つでダメ押しすんじゃねぇ、こっちは一人でも厳しいんだぞ。」
「なんか言った?」
「いや、何も。」
「とりあえず、あいつらから逃げて、ここを脱出する方針で考えよう。見た感じ、君もまともな戦闘のできる発を持ち合わせてないんだろ?相手が悪すぎるよ」
「なあ、質問なんだが…。あいつら、マフィアって言ってたよな?ここにすぐ来れる人数はどのくらいなんだ?」
「そうだね…。15人、20人位は硬いんじゃないかな。作業員を含めばもっといると思う」
「…無理だな」
「え?」
「今はあいつらが人数を揃えてこないからいいが、揃えてきた瞬間俺等は人海戦術で捕らえられる可能性が高い。あんたは戦いに特化した能力がないし、溜めが必要な俺の技は連発できないしな。
出口が複数ある、って話だからさっきは多少安心したが、それでもさっき感知をしてもすぐには見つからないレベルの数だ。仮に何度も
なら、今が一番脱出に近いんだ。あいつらが、まだ本気で動き出していない今が。」
「だとしてもどうするのさ。戦って勝てる見込みがあるのかい?」
「ああ、可能性はある。なあ、あんたさっき言ってたよな?使える能力があるって。」
「それは…」
「しかもあんたはあれ程壊れた自身の身体を再生しても、まだ余るくらいのオーラ量を持っているのに、それでも「戦闘不能」になるほど重い制約がかけられてるものだ。それを使えばどうにかなるんじゃないのか?」
「…そうだね、できる可能性は、ある」
「なら、」
「でもだめだ。君のことが信用しきれない。」
「なんだと?」
「君は何者で、どこから来たのか。それがわからない以上、君を信用し切ることができない。僕の切り札は他人に依存するものだ。一族の命運がかかってるんだ、君が信用しきれない以上、切るわけには行かない。」
俺が何者で、どこから来たのか?
前世のことか?言っても信じられるはずがない。
今世のことか?俺自身この体の持ち主の経歴なんて何もわかっていないのに?
「無理だ。説明はできない。仮に俺がなんと言おうと、信用させられるだけの証拠となるものを、俺は持っていない。だがーーー。」
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両手に念を集め、斬撃を生み出す。
そして、それらを両方ともぶつけ合わせ、粉砕する。衝撃が体を打つ。
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10
よし、再装填完了。
一度に斬撃を出現させられる数の上限である12個を超えると、10秒間のインターバルが必要なのは、自分でつけた制約なのだが多少面倒だ。
その分操作性は格段に向上したが。
「さて、あのカス共はどこに行消えたぁ…?獣をダミーに使ったのは多少驚いたが…。」
人間と獣の肉の感触は全く違う。2度同じ手は食わねぇ。
まあ、あいつらもこの程度でやられるほどか弱くないことはわかっている。だが、この程度でも、心身を徐々に削るのには十分だ。
ゆっくり心を折っていこう。
突然、洞窟の奥から眩い光が放たれ、視界が明るくなる。
「アァ…?」
十中八九あの小僧の能力だ。だがなぜ自分の場所を知らせるような真似をした?
多少怪訝に思いながら手を軽くふり、斬撃を3つ飛ばす。すぐに何かが斬撃を跳ね飛ばした。
そして…これは。こちらに一直線に近づいてきている。
なぜ俺の位置がわかった?
いや、そうか。あのガキが一度も行き止まりで立ち止まることなく逃げ切れた理由がこれか。
「探知系…の念能力。今の光はその発動条件…かぁ?」
つぶやきながら、さらに斬撃の密度を増していく。そして、ふと気づいた。
ガキの速度が先ほどと比べても明らかに速い。
これは…。
「明らかに、別れて行動してるなァ。さて…どういうわけだぁ…?」
陽動か?片方が俺に向かって突進してきている間に、もう片方が隙を見てインクをとりにいく算段。
相手にとって最重要の目標は明らかにインクだ。明らかにたいした訓練されてねぇ鉄砲玉、命を落としても組織のために目的を達成する、そんな教育がされていてもおかしくはねぇ。
出口はあのクソ騎士が塞いでいるはずだが、漏れがある可能性も否めない。それを発見して出ていった可能性は十分にある。
だかまあ、それにしても…。
「早めにこいつを片付けて、もう一人を探すとするかァ。」
さらに6つ、斬撃を追加する。密度の増した斬撃が、敵の体を切り裂く感触が刃に伝わる。そして、その体が跳ね飛ばされ、地面に落ちる。
その体を何度も何度も切り裂いた。
「ぁあ…。この感触は女か…。しかし女を囮にして逃げるとは随分と外道じゃねぇの。」
そう呟きながら、ふと違和感を覚える。仮に陽動が目的ならば、探査をした人間がそのまま囮になる方が効率がいい。
見つかるのはわかっているのだから、もう片方が離れた場所から走り出したほうが、少しでも出口に近づく可能性があるからだ。
そして、出口をまだ見つけていないのに、陽動作戦を決行するとは考えづらい。
ならば、この作戦の目的は…
「ッ…!」
周囲を見渡すが、視界に映るのは暗闇だけ。何も感じ取れない。嫌な予感が全身を走る。冷たい汗が背中を走る。
どこからくる?少なくとも、視界にヤツの姿は見えない。
ならば…!
「…!『円』!」
そう、そして、敵の位置がわかった。
自分の目の前。
暗闇のなかから、影が形をなすようにして、少年はその姿を現した。
「なにィッ!」
瞬間的に『円』を引っ込め、手に念を集中させる。しかし、それよりも、数秒、彼の動きが速かった。瞬間、閃光がその場を覆った。
放出系
腕から斬撃を放出し、自由に操ることができる。斬撃の形状と強度、威力は月の満ち欠けにより変化する。新月が一番弱く、満月が一番強い。
斬撃の大きさは込めた念に依存する。
一度に出せる斬撃の総数は12までで、放出してから1分間は残る。12発全て出し切ると一旦クールタイムとして10秒間必要となる。
満月の時は斬撃を盾とし、放たれた念を吸収したり、斬撃を巨大化させて、そこから数の制約を無視して無数の斬撃を放ったり、斬撃に索敵能力を付与したりできる。
ちなみに能力名は好きな歌のタイトルから取ってます。ハーメルンの規約的にはタイトルはセーフらしいです。投稿してから焦った。
感想、高評価よろしくお願いします。