「じゃあ、手筈はいいか?」
「うん、問題ない。光が合図、だよね」
「ああ、あいつは一度俺の
「そうだね…。1分間。わかってるよね。」
「ああ、わかってる。必ずその間にやつらを行動不能にして見せる」
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身体の周りの光を吸収してできた闇から、身を乗り出すようにして相手の前に姿を現す。
光の量がそれほどではない坑道であったからこそできた手法。ほとんど練習なしだったが、うまくいってくれて助かった。
相手が『円』を使えないなら、と実行した奇襲作戦。このまとった闇が絶と同じレベルの隠蔽効果を与えてくれるかはわからなかったが、幸運は俺に味方してくれた。
想定通り、反射的に相手は目をつぶっている。胸元から、事前に準備しておいた鋭くとがった鉱石を取り出し、勢いよくその胸に突き立てる!
「っあぁ…!舐めるなあぁ!」
一瞬の怒号とともに、相手の腕から強力な念が放出され、3発の空間を切り裂く巨大な斬撃が発生する。
俺は腕で反射的にガードするが、衝撃で岩壁に叩きつけられる。持っていた鉱石が粉々に砕け、地面に落ちる。
岩壁には深い斬撃の痕が刻まれている。斬撃は男の元に戻ると、びきり、とひび割れ空に帰った。
「チッ!随分と思い切った真似をしてくれるじゃねぇの…。奇襲とはな。俺とあの筋肉が一緒にいる可能性は、決行前に考えなかったのか?」
答えることなく、俺はその足元に向かって蹴りを放つ。しかし軸足を、ねらったほうとは逆の足で蹴とばされ、体勢を崩す。そして、前のめりになった顔面に膝蹴りが直撃する。
ごきりといやな音が響き、鼻からぬるつく熱い感覚が広がる。視界が生理的に出てきた涙で一瞬ぼやける。
そしてそのまま胸元を蹴り飛ばされて、体が一瞬宙に舞い、落ちる。
「ぐぁっ…!」
「だがまあ、結果は変わらねぇ。どちらにせよお前らに待ってるのは「拷問」のみだ。指の先から少しずつ刻んで…。」
と、言葉を詰まらせる。相手の視線が俺の腕に描かれた、黒い入れ墨にくぎ付けになる。
そしてその表情が一瞬の困惑から驚愕、そして喜悦へと変わっていく。
「ハハッ!まじかよ!お前ら『インク』を使ったのか!?おいおい、それじゃあよぉ、この狭い坑道の、しかもお前らが移動したほんの狭い範囲に、確実にインクがあるってことじゃぁねえか!しかももとから大した量はねぇんだぞ!?よくもまぁそんなリスクのある行動をとったな!?」
「随分と嬉しそうだな」
「当たり前だぁ、戦う相手の馬鹿さを喜ばねぇ阿呆がどこにいる!?まあ、いい。両方生かして拷問しようかと思ったが、変更だ。お前は殺す。片方だけでもう十分だ。女を生かしてとらえよう。治癒ができるやつぁ随分拷問が楽しめそうだ」
「そうか」
俺は言葉を聞かずに、勢いよく相手に向かって駆け出した。
「残念だったなぁ、ちょうど時間だ…!」
相手の腕から一瞬の間もなく10の斬撃が出現し、俺を包囲するようにぐるりと刃が円形に並ぶ。
瞬間、空気が切り裂かれた。
空間を覆いつくす刃、刃、刃の雨。
体には無数の赤い線が走り、周囲に鮮血が舞う。
しかし俺はその豪雨を、おれはぎりぎりで避け続ける。薄く体にまとった光が、はねた血の粒の赤を壁に映し出した。
「ほお、随分としぶてえじゃねえか、てめえ。なるほどねぇ、探知用の光を体にまとって体に迫る刃を感知し、寸前で避けてんのか。なるほど面白い能力だな、だが・・・」
迫ってきた刃が肌に触れる直前で急激に軌道を変化させる。腕の肉が激しくえぐれ、血しぶきが舞う。
まだか、まだ発動されないのか…!もしや、先ほどの攻撃でやられている、なんてことはないだろうな…!?
「使っている当の本人の肉体が弱すぎる。感知できても動くまでの速度があまりにノロマだ。その程度じゃあ俺の刃から逃げられねぇぜ?
そして分かってると思うがなぁ、目で見たほうが精度は段違いにあがんだよ!」
斬撃が掬い上げるようにして俺の体を打ち上げる。胸の中で何かが折れる音が聞こえた。
洞窟の天井に打ち付けられた後に、空中で体中を刻まれ、落ちる。
「全身の腱を切った。反射的に念で首や心臓を守ったようだが、残念ながら無意味だったようだな。血と臓物をまき散らして、くたばれ。」
俺を見下ろす男と、その周りに浮かぶ10の斬撃。斬撃が勢い良く迫ってきた瞬間、俺は思わず目を閉じた。
そのそしてその瞬間―――俺の体から一気に何かが抜けていく感覚が広がった。
□■□■□■□■
強烈に打ち込んだ斬撃が、まるで激流に押し返されるかのようにして、動きを止めた。
「おい…?てめえ、なんだそのオーラ量は…!?」
ガキの体から、信じられないほど大量のオーラがあふれだしているのが見て取れる。その体は再びうっすらと光り始めていた。
相手が地面に手をつき、立ち上がる。傷ついていた箇所が、ボコボコと泡立つようにして治癒していく様子が、明らかに異常だ。
「が、あぁあぁああああああ!」
次の瞬間、空気が爆ぜた。
一瞬で俺との間合いを詰めたガキが、力任せに拳を振るう。
反射で2つの斬撃を束ねて防御するが、それをものともせず粉々に砕き、鳩尾に拳が深々と突き刺さる。
骨が折れる音が響くと同時に、そのまま壁に吹き飛ばされ、岩壁をぶち抜いてその向こうの穴へと吹き飛ばされる。
急所を突かれたことと、壁に打ち付けられた背中の激痛で、地面に体がついた瞬間にむせ、地面に赤い血を吐き出す。しかし、相手もその隙を逃しはしない。ガキの足が瞬時に足が頭を砕こうと迫る。
激痛が動きを邪魔する。間に合わない。
「おぉ、らぁ!」
刹那、斬撃を腕から放ち、その反動を利用して肉体を跳ね飛ばし、
そして宙で体を捻り、返す足で相手の顎を思い切り打つ。そのまま着地し、荒い呼吸で、体勢を整える。
相手はけりの衝撃でのけぞった頭を、ごきりと首を鳴らすようにして正面に戻す。
「はぁあっ!」
瞬間的に相手が加速し、追撃する。空気への衝撃が遅れて伝わり、今度は顔を思い切り打ち付けられる。
相手はそのまま思い切り体をひねるようにして、坑道の奥へと俺の体をその勢いのまま吹き飛ばす。
吹き飛ばされた瞬間、一度跳ねた体を、新たに出した斬撃を地面に突き立て、押しとどめる。口の中に苦い鉄の味が広がり、折れた歯を口から吐き出す。
「ハァ、ガッ、ハァアア…!強化…!あの女か…!まさかこんな隠し札をもってやがるたぁな…!だがなぁ、奥の手があるのは何もお前らだけじゃねぇんだよ…!」
坑道から遅れてやってきた8つの斬撃を合わせた、残る斬撃10個全てを、自身の体に集約する。
4つは両手に、6つは両足に。斬撃を最小限に縮め、まるで爪のように体から生やす。
放出系でも、念は体から離れれば次第に威力と強度が落ちる。
そのため、体に斬撃を装備することで、威力・強度を最大限に保ち、わずかな損傷は念で補い修復する。また、斬撃を強化した四肢で押し込むことで、威力のかさ増しも可能。
だが、この技の本領はそこにはない。肉体ではなく、斬撃自体を動かすことによる、目にも止まらぬ高速移動。それがこの技の真骨頂。
「どんなにてめぇの力が強化されようと、当たらなきゃぁ意味がねぇんだよぉ!」
四肢を地面につけ、獣のようにして疾走する。相手がこぶしを振り下ろしてきた瞬間に、相手のこぶしの勢いを利用して、縦に裂くようにして爪で掻き切る。
肉が裂ける慣れた感覚が手に広がり、相手の腕から血がたらり、と滴る。
相手が瞬時に裏拳で頭を吹き飛ばそうと迫るが、それよりも早く、俺は空気を切り裂き、一瞬で洞窟の壁を駆け上がり、相手の背後から首元を襲う。
どんなにつけられた傷が浅くとも、頸動脈を切られれば、出血多量で人は死ぬ。
だが、まるで目がついているように、ガキは俺の攻撃を避け、その目の前に飛び出した俺の腹を、打ち付けるようにして思い切り蹴飛ばす。
「がっ、ふっ…!」
飛ばされた瞬間、爪で宙を踏んで跳び返り、瞬間的に胸から腹にかけて掻き切る。しかし、それを想定していたかのように、ガキは胸を手で防御し、致命傷を防ぐ。
そうか、光による探知…!まだ続いているのか!おそらくそれに強化された体が加わることで、類を見ないほどの高速反応を可能にしているのだろう。
だが…!腕に刻まれた薄い傷を見る。
最初に発動した瞬間についていた傷しか直せないのか?それとも他に何か条件があるのか。どちらにせよ、傷自体はつけることが可能。
そして先ほどの感触…!内側までは強化はされてねぇ…!
「なら、こういうのは、どうだぁ!?」
瞬間、体を宙で反転させて、足を鋭く爪で搔っ切る。相手は間髪入れずに腕ごと蹴り飛ばそうとするが、わずかに肌に食い込んだその瞬間に、斬撃自体を伸ばして足を切り裂く!
「ぐぁ…っ!」
しかし、構わずガキも斬撃ごと俺の体を蹴り上げる。斬撃が砕け、宙に霧散する音と、ぼきりと俺の腕が折れる音が同時に響く。だが、狙い通りだ…!
おそらくこいつのこの異常なまでの強化には時間制限がある!最初から能力を発動していなかったのがその証拠だ…!
ならば斬撃が消えるまでの残り10秒間。最大限相手の機動力をそぎ、強化が切れるまでの残りの時間は逃げに徹する!
狙うはもう一本の足。それさえ切れれば相手はまともに動けなくなる。
「
一気に体を加速させる。空中を踏み、洞窟の中を縦横無尽に駆け回る。
そして、足を離れた2つの斬撃がそれを追う。威嚇にすらならないのはわかっている。
だが、思考の容量を少しでも避ければそれで十分。叩き落とすためには必ず多少なりとも念が攻撃箇所に集中する!ならばその瞬間に、必ず足を切り裂く!
そして、俺の目が相手の念が一瞬収縮する瞬間をとらえた。
今。瞬間的に体を翻し、上から切り裂くようにして足に刃を立てる…!
そして、その瞬間、目が「潰れた」。
瞬間的に相手の全身が輝き、視界が白で塗りつぶされる。目を焼くような光が、一瞬体の感覚を失わせる。
待て、地面はどこだ?今俺は落下しているのか、それとも宙をつかんでいるのか!?どちらにせよ…、まずい!
反射的に手から斬撃を放つ。しかし、それが砕かれる感触とともに、拳が俺の腕と肺をえぐり取った。
□■□■□■□■
まばゆい光が消え、闇の中、一人の影が立っている。
荒い息とともに、口からぼたぼたと血が流れ落ちる。
「ああ…てめぇ…随分とがんばったじゃねぇか…、褒めてやるよ…!」
短く切りそろえられた白髪には血が飛び散り、黒いコートは肩から先と脇腹ごとえぐり取られている。
しかし、男は生きていた。攻撃が当たった瞬間に、斬撃を装備した手を無理やり動かすことで、完全な致命傷を避けたのだ。
「だが、まぁ…!本当にここまでえぐられるとは、なぁ・・・!」
薄汚れた少女は地面に伏していた。理由はただ、「オーラ切れ」。
彼女を強化していた念能力の効果は「精孔の拡張」であって「オーラを外から補助する」物ではなかった。ただそれだけのこと。
全てのオーラが出尽くした以上、体を動かす力が残っていないのは当然のことだった。
「さて、じゃあ、もう・・・」
斬撃が全て破壊されてから8秒経過した。残った片腕にゆっくりと念を集中させる。
「てめえはここで…。」
9秒経過。腕をゆっくりと上に掲げ、首を狙う。確実に一撃で仕留めるため。一片の隙も与えぬために。
「死ね」
10秒経過。そして、念をまとった手が首に振り下ろさ…その首は断ち切られた
その刹那、少女が飛び起きた。その手には砕かれ、光を失った鉱石のかけらが握りしめられていた。
少女はその手を振りかぶり、首を狙って近づいたその顔に迫る。
(なぁっ…!防御…いや…攻撃…!)
一瞬の迷い。そして、男はそのまま攻撃することを選択した。少女の手が届くよりも早く、自分の一撃で終わらせられる、そう考えたためだ。
そう、
その一瞬が、勝負を分けた。
「が、は?」
噛みつき。
それは人が行使可能な、最も原始的で、獣に近い暴力。
そして、その一撃が、男の首筋の肉を、頸動脈ごと容赦なくえぐり取った。
瞬間、血が傷口から吹き出し、洞窟に赤い雨が降り注ぐ。鮮やかな赤が無機質な壁や地面に染み込んでいく。
血が霞となり、鉄臭い匂いがあたりに充満した。
「は、あ、ぅ」
男の肺から、絞り出すような音が漏れ出る。目が焦点を失い、くるりと回って白目をむいた瞬間、男の意識は断絶した。
そして、男は力を失い、地面の上に倒れ伏した。
月と太陽、対の星を背負った、獣と獣の同族殺し。その結末は、太陽の勝利ーーー。
分量もっと増やせたと思う反面、正直これ以上はダレるよな…という感覚もある。むずい
だいぶ読者数が減ってきているので短めにしました…。展開を加速させろ!
これからのことについて書きました
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=317934&uid=366068
感想、高評価よろしくお願いします!