今日の朝、ウォルターさんが野暮用で暫く外すと連絡が来た。それとレイヴンの面倒を見てくれと頼まれた。頼めるのはお前しかいないって言われたもんだから頭の中が頼られた嬉しさとなんで俺やねんっていう困惑で満たされた。*1
「どうせ海越えまでRaDの厄介になるだろうに…」
「おはよ。さ、支度してさっさと行くよ。」
は?え、…は?俺部屋の鍵ちゃんとかけてたよね?
「早くね?てかどうやって入った。」
「エア。」
「あ。」
そういえばエアは機械のハッキングとかめちゃくちゃに強いんだ。倫理どこいった?あと俺まだパジャマなんですけど。
「朝ご飯は作っておくから着替えて顔洗ってきな。」
「…はい。」
まるで母みたいなことを言って勝手にキッチンの戸棚を開き出すレイヴン。なんで調味料の場所まで分かってるんだよ!
『レイヴン、ジンメルは他の同年代と比較しても割と筋肉質であるようです。』
「エアがジンメルのことムキムキだって。」
「おい見んじゃねー!」
ちなみに、料理は普通に美味しかった。一体いつ練習したのだろうか…*2
『仕事を始めましょう。』
ここに来るのも2度目だな。初めはエアの存在はまだ知らなかったっけ。
ドーザーの攻撃をかいくぐり、奥のラミーが居る場所へと進む。
「なんだぁ、てめぇら。この無敵のラミー様とやり合おうってのか?」
「…」
「…」
無言で砲撃。
「ちょ、ま、待て、2人はずる…!」
武器が2つしかないコーラル酔いのAC乗りなど造作もない。ましてや2人がかりだから撃破まで秒読み。あっという間にラミーが沈黙すると広域放送でカーラが喋り出した。
『見てたよ、ビジターども。笑っちまうくらい瞬殺だったねぇ。そんなに急いでどうしたんだい?』
「私たちはグリッド上層に行きたいの。詳しい事はウォルターに聞いて。」*3
『!へぇ…分かった。案内してやろうじゃないか。ただ、相応の案内料は頂くよ。』
「げ、俺そんなに持ってないぞ。」
どれくらい預金あったっけ…と思い出そうとしているとカーラが笑い出す。
『フッ、アハハ!まさか正直に金を取るとでも思ったのかい!違うよ、1つタダ働きをしてもらうのさ。最近コヨーテスの連中が煩くてね。』
『ま、今日の所は帰りな。明日またここに来るといい。』
今回は平穏に行けたかな?弾薬費くらいで済みそうだ。財布に優しい仕事はいいぞ。修理費と弾薬費どっちも負担してくれるクライアントいないかな。*4
「…どっちにする?」
「何を?」
「帰るガレージ。」
「んー、こことの距離的に近いのはどっちだ?」
『直線距離でいえばレイヴンの方が近いようです。』
「じゃあウチかな。着いてきて。」
戦果はAC一機撃破したくらいとはいえ、およそ襲撃に来た後とは思えないフワフワした会話で帰路に着く2人と波形。
仲良くレイヴンのガレージに到着した2人。
「ご飯にしよっか。」
「そうだな。なんか作ろうか?朝のお礼に。」
「大丈夫。コレがあるから。」
冷凍庫から2つ何かを取りだした。それは…ハンバーグランチプレート!しかもミールワームでない純動物製のやつ!
「それ、惑星外から取り寄せた物だろ?高かったんじゃない?」
「金は腐るほどあるのよ。これくらいなんてことない。」
大量のCORMをウォルターに半ば脅しに近い感じで押し付けて買って貰ったらしい。お金持ち羨ましい…
「あ、ちょっと待ってて。」
料理を温めている間、レイヴンが退出する。トイレかな?
数秒も経たずに帰ってきた。手になにか持っている?
「はい、あげる。」
「急にどうしたって…イヤホン?」
「いいからつけてみて。」
見た目は小さめで普通だが…おっ、すげぇフィット感。俺の耳にピッタリ合ってる。
「うん、いいねこれ。ありがとう。」
『あーあー、聞こえますか?』
「!?」
え、すげぇ、エアの声が聞こえる。
「それね、エアの波形のみを受信して聞こえるようにしたイヤホン。勿論普段使いもできる。」
「なんでまたこんな凄いもの…」
「いちいち筆談とか電話挟むのめんどいでしょ?だからエアと私で作った。」
「あっさり言うけど世紀の大発明じゃん。」
『意外と仕組みは簡単ですよ。まず微量のコーラルを利用して私の音声波形を取り出し人が聞き取れる周波数に変換…』
「オーケーオーケーめっちゃ凄いのはわかった。後で聞こう。」
もう温め終わってるから早く食べたいのだ。いい匂いがして堪らん。
「いただきます。」
「どうぞ。」
「うめ…うめ…」
「おかわりもあるよ?」
「え!」
「ミールワーム製。」
「…いいかな。」
やはり星外の飯は美味い。大豊も美味いがそれよりももっと美味い。アーキバスは見習え。ドブと土じゃいあんなん。
食事を終え、シャワーを浴びた後そのままソファーを借りて就寝。同じ部屋の同じベッドで寝るのは勘弁してください。引きずり込まないで。
翌日、起きてから早速貰ったイヤホンをつける。
『おはようございます、レイヴン。昨日は残念でしたね。』
『次は拘束する?分かりました。私も何か策を考えておきます。』
聞いちゃいけない会話を聞いてしまった。これエアの波形は無差別に拾う感じか?
喉が渇いた、水のも。
「おはよう、レイヴン。」
「おはよう。丁度フィーカ淹れてるから飲む?」
「そうだな、飲もうか。」
さっきのこと黙ってていいのか分からん…!
『どうしましたジンメル?心拍数が少し上がっています。』
「…そんなことも分かるの?」
『はい、心拍数に体温、運動量や一日の消費カロリーも計測できます。』
「それいる?」
「いる。」
「えぇ…」
人のデータ見て何するん…
『それに、私の声であればどこに居ても聞けますので、基本外さないでおくと便利です。』
「素の人間の記録を集めてやりたいことがあるの。」
「素…ってことは将来大きく売り出すとか?」
「いいえ。まぁそれはいずれ…ね。」
「ふーん。とりあえずまたRaDのとこ行くべ。カーラから依頼があるんだろ?」
パッと朝食を食べ移動する。
『来たね、ビジター!早速だが依頼だ!詳細は送るから各自で確認しな!』
もう何かが始まってるらしくデータが直接送られてくる。工場内のパラサイトモジュール5機の破壊?
「場所は分かってるからジンメルは扉とかアクセスしてどんどん開けてって。」
「OK。」
中に入り、目の前に設置されているものをすぐさま壊すレイヴン。なるほど、アレか。
俺の仕事は露払い。狭い場所なら右肩の垂直ミサイルは死ぬが拡散バズーカは当てやすい。
そうして次々とMTを薙ぎ払って扉も片っ端から開けていく。
『残り2台です、レイヴン。』
『中々早いね、敵さんの進行状況は30%てとこか。よし、カウンターハックの準備でもするかねぇ。』
数分足らずで3台を破壊したのか。流石だな。お、1個見っけ。
『パラサイトモジュール全機破壊。』
『お疲れさん。こっちも相手のサーバーごとぶっこ抜いて全部使い物に出来なくしてやったさ。』
カーラもハッキング技術エグイな。エアと合わさったら最強では?オールマインドにも勝てるかも知れん。*5
『待ちな。屋外に敵性反応、対応してもらおうか。』
『ACが一機向かって来ています。』
レイヴンもいるし勝てないやつはいないだろう。
「あぁ!?てめぇはガリア多重ダムの…金魚のフンもいやがる。」
『相手はレッドガンのG5イグアス。識別名ヘッドブリンガーです。』
「企業のACが単身で何故ここにいる?」
「へっ、小遣い稼ぎにゃあ丁度いい、お前らをぶちのめしてその首持って帰ってやる。」
ベイラムは小遣い稼ぎでの出撃ってアリなん?緩いね。こいつはアリーナでもやった引き撃ち機体だし速攻で潰すのが1番。G4の方がもっと強かった。
『つまらない戦い方ですね…』
「チッ…耳鳴りが…!」
「大丈夫か?ダメなら帰るといい。」
「うるせぇ!俺は野良犬を倒すまでイモ引いてらんねぇんだよ!」
すると突如イグアスが横からプラズマの鞭で叩かれる。
「ぐっ!なんだコイツらは!背に腹か…おい野良犬とおまけ野郎、手を貸せ!」
「これはウォッチポイントで見たステルス機体?」
『奥にも2体います!』
何故かイグアスが集中して狙われる。構えていたシールドもついにオーバーヒートしてしまう。
「チィ…こんな所で…!」
「ふぅ、間にあった。まだやれるな?」
すんでの所でジンメルがイグアスの前に立ち、パルスアーマーを起動。守りつつガトリングを浴びせ敵のアーマーを剥がしてスタッガーへ。
「おまけにしてはやるじゃねぇか、まぁ、助かった。」
「良いってことよ。機体をぶっ壊して帰った時のミシガンが怖いだろ?たまに噂で聞くぞ。顔面が変形するまで殴られるとか。」
「お前もぶっ殺されてぇか!」
『意外と相性は良さそうですね、レイヴン。』
「そうみたいね。はい終わり。」
『全部片付けたみたいだね。コイツらはこっちで洗っておく。で、そこの首輪のついた迷い犬はどうする?』
「ケッ、今回は邪魔が入った、決着は次だ野良犬!」
あ、飛んでった。
「あいつになんかしたのか?余程気に入られてるようだが。」
「前ミッションで一緒になった時裏切ってG4ごとボコボコにした。」
二体を相手してなお一方的に立ち回れるのか…そりゃあ根に持つわ。
『さて、案内料も徴収したことだし、上層に連れてってやるよ。すぐ行くかい?』
「そんなに消耗してないし大丈夫だろ。俺は残りリペア2つ。」
「そうね。私もリペアは3つ残ってるし、行きましょう。」
『よしきた。まずは指定するリフトに乗りな。シンダー・カーラ特製ペアリフトにご招待だ。』
起動したリフトはぐんぐんと上昇していき、数秒で上層に到着した。
ACに乗ってるからGとか色々軽減してくれてるけどよく考えたら秒速数百メートルで動いてるんだよな。ACから降りたまま乗ったらぺったんこになるよね?
リフトの扉が開くと、入り組んだグリッドの施設と遙か上から照射される多数の赤いレーザーポインター。
『惑星封鎖機構のサテライトキャノンには気をつけてください。当然ですが補足されると高精度高威力で狙撃されます。』
「喰らったら一発スタッガーだから死ぬ気で避けてね。」
「安置とかないの?」
レイヴンが先導して進むので後ろをついて行く。グリッドの中に入りある程度進むと橋しかない場所に出る。
「マジでここ進むの?狙撃され放題じゃん。」
「避けるタイミングを教える。ピーピーピーピピピ ヒュン!ね。」
「あ?」
「だから、ピーピーピーピピピ ヒュン!このヒュン!の時にクイックブーストで避けれる。」
「いや全くわからん。あ、おい!」
アサルトブーストで先に飛んでいくレイヴン。俺を1人にしないで!置いてかないで!…あぁもう!
怖いので橋の下をゆっくり渡る。落ちたら終わりだけど乗っかれる部分あるから撃たれるよりはマシ。燃費あんま良くないからねこの子。
時折浮いてる敵を倒しつつどうにか渡りきる。しかしまだ安心はできない。
「やってやる…ヒュン!だろ。」
アサルトブーストを起動し一気に突き進む。…やべ、レーザーに触れちゃった!
COMが警報を掻き鳴らす。風切り音が聞こえたと同時に左にクイックブースト!しかし少し遅かったのかかすってしまい、垂直ミサイルが削り取られた。しかもかすっただけでAPが千と少し減少した。強すぎ。
だが奥の広場にはたどり着けた。
「私の言ってる意味分かったでしょ?」
「代償で右肩取られたがな。」
『新しい物を発注しておきますか?』
「いや、いいかな。この際だし違う物を試してみるさ。」
『面白いのを見させてもらったよ。さ、そこのカーゴにアクセスしな。』
『上から敵性反応!』
上からカーゴを押し潰して現れたのは真紅の火を噴く6脚の異形。
『そいつは…技研の遺産シースパイダーさ。ま、あんたら2人組なら勝てるだろう。』
『コーラルを動力に動いてます。コーラルを使用した武器の衝撃値は残留するのでスタッガーに陥りやすいです。注意を。』
「飯にドラッグ、お次は燃料に弾ときた。なんでもありかいコーラルは!」
脚の叩きつけを避け、懐に潜り込みひたすらガトリングを撃ち込む。
俺の右肩兵装はないが2人でしばいてるのでスタッガーは早い。レイヴンが胴体部分にパイルバンカーを撃つ。鉄杭が深く深く刺さり空いた穴からはポタポタと油とコーラルが漏れている。
「そ、空飛ぶ松ぼっくり…!」
『おいおい…飛んだよアイツ…』
全ての脚をピンと開き、脚先からブーストして空に浮かぶ。そのまま回転して攻撃してくる。すんでの所で避け、アサルトアーマーを起動。確かにコーラルの弾は痛く、中々に堅いがそれだけ。俺らに勝ちたかったらせめてもう一体連れてくるんだったな。
『敵機システムダウン、爆発します!』
『爆発するよ、退避しな!』
パイルバンカーやバズーカでベッコベコに変形したシースパイダーは勢いよく爆発。辺りにコーラルが広がる。
「コーラルが兵器に転用されるとはな…技研はとてつもないものを遺してるみたいだな。」
『該当するC兵器は他にもあります。ACにも搭載できる物もありますよ?』
「私持ってるからあげようか?」
「後で見せてくれ。気になる。」
『あんなものに巻き込まれるとは、災難だったね。もう1つあるからそれに乗りな。操作はこっちでやる。』
奥にもう1つ発見。少し狭いが2機分入れた。
「なぁ、そういえばこれどうやって移動するんだ?」
「…」
珍しく黙ってる。流石に疲れた?
『同情するが、誇りな。有人、しかもなんの加工もしてない人間を乗っけてこれを撃ち出すのはこれが初めての例だ。』
「は?有人?」
「あのね…これ…」
「……!…っ!止め、降ろしてくれ!」
『ックハ、もうロックは済んじまったよ。生きてたら後で感想を聞かせてくれ。』
徐々に速度が増していく。
『それじゃ、楽しいフライトを。』
射出。
「…ぅ お おお お お お おおぉぉ…」*6
あ、これ死━━━━━━
「おーい、起きて。死んでないよね?」
『気絶しているだけのようです。心拍数は少し上がっていますが。』
沈黙しきっているジンメルのACをパイルで優しくコンコンと叩く。
『意識不明、バイタル正常。電気ショック実行。』
COMがそう言い、コクピットからバチリと電撃が走る。
「!?…っ痛ぅ…」
『覚醒を確認。おはようございます。』
生きてる…うへ…視界がぼやついてる…
「どうだった?弾になった気持ちは。」
「あぁもう最高、二度とやりたくないね。」
海は越えた。ひとまず先んじて移動させておいたガレージに入る。
「死ぬかと思った〜」
椅子にどっかりと座りこみ、魂が抜けたように背にもたれ掛かる。しばらくすると、インターホンが鳴る。
「行ってこようか?」
「おねがい…」
『監視カメラより確認すると配達のようです。とても大きいですね。』
「あー、なんも頼んでないが…間違い?」
レイヴンが戻って来た。
「まだ開けてないけどACパーツだった。」
「えぇ…?カーラか?」
放置もなんだし格納してもらう。肩武器っぽい?型番は…JVLN BETA?オールマインドじゃん。ログハント溜まってたっけ?
「ねぇ、それ付けるよりコーラルミサイルにしない?」
「どれどれ、カッケェ…けどEN負荷オーバーで出れねぇや。無料だしこれにしとくわ。」
どうせあいつの事だから普通のミサイルじゃ無さそうだし、トレーニングで慣らしておかねば。ただ今はもう寝たい、死ぬほど疲れた。あれを体験してレイヴンがケロッとしてるのがもう流石としか言いようがないな。強化人間になれば耐久力上がるんだけどなーやりたくないんだよなー。
「レイヴンは第4世代なんだろ、俺も強化手術したらあれ耐えれるようになるかな。」
「別に無理してならなくてもいいんじゃない?私だって正直意識は朦朧としてた。なんかエアが喋ってるのは覚えてる。」
「次があったら違うやつにしような…」
『私は楽しかったですよ。』
エアはモニター越しに見てるようなもんだからね…そうだ、後でRaDに苦情送ったろ。
『あの坊や、ホントに感想書いて送ってくるとはね!フ、全く面白い!ックク、ヒィー!』
調べたら耐Gスーツ着て9.5Gくらいが限界らしいですね。
カーゴランチャーは明らかにそれ以上出てるのでジンメルくんはひき肉より酷い姿になってますが大丈夫ということにさせてください。一瞬で400km/hとか出るACに乗ってるんだからへーきへーき。
JVLN BETAは完全ランダム抽選の結果です。ここでもオマ公の好感度を稼ぐ男。