祝勝会の数日後、ウォッチポイント・アルファにて強いコーラル反応を検知したと本部より通達があり、現在は深度2まで探査が進んでいる。
当然俺も調査隊に配備され、技研の遺した無人兵器と格闘して安全を確保する日々。そんな中、独立傭兵と解放戦線の2人組ACの伏撃を受け、ホーキンスさんが戦死、ペイターさんも機体が大破する大損害を喰らった。
…仕立て人は解放戦線の実質的指導者ミドルフラットウェルと……
でも、ホーキンスさんは…まだ受け入れ難い。これを機に俺はV.Ⅶに昇進した。ちっとも嬉しくないや。
「まだこんなとこに居たのか、ジンメル。」
「フロイト…さん。」
「そんなシケてる顔してたらシミュレータに誘いにくいじゃないか。」
「……」
泣き腫らした目でフロイトを見つめる。コイツ…
「貴方は…貴方は悲しくないんですか!?俺がここに居るのも、まだ生きてるのもホーキンスさんが誘ってくれたからなのに…!」
「まだ話したい事がいっぱいあったのに!今日の挨拶すら言えずに死んだ!この気持ちが分かるか!?シミュレーション馬鹿が!」
無意識に涙がまた溢れ出てくる。こんな事態でもシミュレーションに誘おうとするフロイトにカッとなって怒りを顕にしてしまう。
「っ……すみません。どんな処罰だろうが幾らでも受けます。」
「いや…いい。いいんだ。俺だってホーキンスの事は惜しく思っている。」
「そうだな…ここはひとつAC乗りの先達としての助言をしてやろう。戦う理由を見失うな。お前は真っ直ぐすぎる。隣で仲間が死んだらお前はそのまま止まらず進めるか?心は揺れず凪いでいられるか?」
「戦場で不要な感情は削ぎ落せ。ここからはそう温い戦いなんてないと思え。」
「判断力を研ぎ澄ませろ、躊躇は捨てろ、情けを掛けるな。コンティニューなんてできやしないから。」
はは、フロイトもこんなまともな事言えるのか…俺の戦う理由か…なんだっけな…
思い出せない。今は、今は仲間を守る為に戦おう。過去の追憶に耽けるのは終わってからにしよう。
「どうだ?俺も偶にはいい事言うだろ。」
「えぇ、お陰で少しは元気出てきたっす。」
調査の結果、最深部には棄てられた技研都市が眠っており、コーラルを吸い上げ、宇宙に放出するバスキュラープラントというのも残っていた。無人兵器を潰しに行ったメーテルリンクさんもレイヴンにやられ死んでしまった。俺はV.Ⅵになった。
そしてスネイルより独立傭兵レイヴンを捕えたとの報告があった。あのレイヴンが捕まるなんて…余程お得意の策を練り散らかしていたに違いない。脅威も居ない今、バスキュラープラントの建造を支えるため俺は技研都市の監視及び防衛に就いている。
「こちらV.ナイ…じゃなくてⅥジンメル。総員警戒を怠らないように。異常があれば直ちに報告する様に。」
『全区域に伝達!収容中の独立傭兵レイヴンが脱走しました!』
うっそぉ早すぎ!元の機体は使えないはず…ウォルターさんかRaDの頭目が仕組んだか!
「…すぐに向かう!レイヴンの動向は継続して報告してくれ!」
周囲に配備されたMTから全く通信が飛んでこない。目の前でレイヴンによって味方たちが爆発していくのを見た。あぁ…
「所詮は壊れかけのAC、悪いがここは通さないっすよ!」
「…貴方がいても何も変わらない。楽しかったけど…さよなら。」
時間を稼げ!1人でも味方を逃がせ!虚勢でもいい、奮い立て!
レイヴンの左手武装から放たれる弾に当たる。ダメージは無い虚仮威し!…ロックが合わない!?通信も…ジャミング弾か!これで皆を…!
「チィッ!」
レイヴンの足元にガトリングを撃ち込み、打ち上がる破片で目眩しを仕掛ける。追撃を恐れたレイヴンは後方にクイックブーストを吹かす。
すかさず追いかけてキックを当てる。左腕が壊れ、そのまま袋小路に追い詰める。
「ジャミングもない、火器のリロードは終わってない。大人しく捕まってくれればこっちとしてもありがたいんすけどね。どうします?」
「…撃つの?」
操縦桿を握る腕が震える。大きく息を吐き、キッとレイヴンを睨む。
「意気地無し。」
…銃口は力無く下を向いていた。横をレイヴンが通り過ぎる。
「ついさっきまで一緒に騒いだ友達を…撃てる訳ねぇだろ……」
固めた決意も今や波にさらわれた砂の城。
カーラの助けにより窮地を脱しガレージにて休憩するレイヴン。
『レイヴン、彼はあなたのことを友人だと言っていました。』
「うん、だから不要な攻撃は抑えてチャンスが来るのを待ってた。」
「彼だって立派な企業の戦士、ただ”何時か”が今日だっただけ。」
『そうですね…今は先に進む事だけを考えましょう。』
リロードは話してる間に完了してた。いつでもバズーカを叩き込めた。でも被害を最小限に抑える闘い方をした。随分と私も惚れ込んでしまっているのかもしれない。
さて…次はどっちにしようか。勿論スネイルは仕留めるけど。
『レイヴン、カーラより依頼です。確認してみましょう。』
もうすぐレイヴンは分岐点に立つ。誰も運命からは逃れられない。たとえ異物が混ざったとしても。
そしてカーラのハッキングによりザイレムが真の姿を見せ、大気が満ちた領域から飛び出し舞台は
あれから俺はレイヴンが脱出していくのを見る事しか出来なかった。スネイルにはしこたま説教されたけど正直何を言っていたかもう忘れた。
部下だって数名欠けた。MTの残骸の中、うずくまった姿勢のまま焦げた塊の手から、煤けた俺のファンクラブのバッジが転がり落ちてきた。なぁ…俺はどんな顔でお前を見ればいい?
なんて声を掛ければ良かった?
心に亀裂が走る音がした。
ザイレムがルビコン3の熱圏に到達する前、俺はスネイルより不明ACの撃破を依頼される。
標的はザイレムのラムジェットエンジンの横にいるらしい。俺は最期までアーキバスに就く事にした。そもそも裏切りの仕方わかんないし。
「スネイルの言っていた不明AC、あんたっすね?」
スリムなシルエット、軽量2脚とみて間違いないだろう。ただ、その姿と火器は初めて見るものばかり。
「まさか君がここまで来るとはね…アーキバスもとうとう人材が尽きたようだな。」
「その声は…ラスティさん!どうして…」
「今だから明かそう。私は解放戦線のスパイってやつだ。この星を守る為、ルビコンを脅かす脅威は誰であろうと見逃す訳にはいかない。当然企業に与する君も。」
「そんな…!」
「まぁ、退屈はしなかったよ。」
「ヴェスパー部隊個別ファンクラブ総会員数1位だったりレイヴンに頭ナデナデされて嬉しそうに赤面してたラスティさんは嘘だったんすか!」
「いや…あれは、まぁ…うん。」
「ンンッ、それよりだ。ジンメル、君が此処に立つということは私への挑戦と受け取るが?」
「あぁクソ、やってやる!俺はまだ死ねない、生きていたいんだ!」
オービットを展開し、ニードルガンを撃ちつつ急接近するスティールヘイズ。
っ!速い!スティールヘイズよりも機動力が上がっている!勝つ為には近寄らせないように動かなくては!
スティールヘイズが構えると、肩より2発の杭が襲いかかる。
「ぐおっ!?」
想定外の衝撃に揺らされるフラグメント。もうスタッガーゲージがこんなに蓄積している!
ダメ押しと言わんばかりに近寄ってアサルトアーマーを繰り出される。
「舐めんな!」
喰らった瞬間にこっちもアサルトアーマーを起動。チャージしたスタンバトンを突き立て、離脱。お互いにリペアを1つ使用。
「…やるな。流石は第1隊長のお気に入り。」
「なりたくてなった訳じゃ、ないんすけどね!」
着地際を狙ってレーザーショットガンを放つも避けられ数発当たるのみ。垂直ミサイルは相手の持つ機動力でほぼ当たらない。
ラスティが突如アサルトブーストで突撃。ガトリングで迎撃するも右に避け、視界から消える。*1
「!?消え…」
『右メインブースター、損傷。』
「メインブースターがイカれただと!?」
COMより伝えられる無慈悲な報告。推力は半減。どうにか動かそうとしても飛べない雛の様にその動きは覚束無い。
2発の杭でヘッドパーツが飛ぶ。くらい。
針の弾でガトリングが壊される。いやだ。
スライサーがコックピットに迫る。こわい。
死を恐れ暴れ回り、とうとうジェネレータが限界を迎える。
「はあっ…はあっ…!」
息が上がる。視界が滲む。死神の鎌はもう首先に触れている。あとは引くだけ。
実弾オービットのトドメでジェネレータに引火。爆発が連鎖する。
「あ…うぁ…みんな…ごめ…」
大きな爆発が起こり、ジンメルはボロボロのコアパーツごとルビコンに落ちて行く。
「さらばだ。君は無くすには惜しい良い後輩だったよ。さて…残すは……戦友か。」
君をここで待つ。1度敗北を喫したが、より高く飛ぶのはこの私だ。
この後、たった1人の独立傭兵による圧倒的な壊滅劇が繰り広げられ、
後世にまで語り継がれる2度目の悪夢。
オルトゥス戦、ジンメルによりラスティは少なかれ消耗してたので本来より楽に勝てました。