夏の終わりに夏祭りに行く話。

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第1話

夏がそろそろ去りますね。

 テレビの画面の中で、女性の天気予報が言っていた。

 

 “夏祭り行かない?”

 “夏祭り? この前行ったくね?”

 “違うやつ。隣町で、次の土日にやってるやつ。この前のやつより大きな祭りで、花火が綺麗で有名らしい“

 “あぁ! それね。いいじゃん行こうよ”

 “俺も行く”

 “じゃ、決まりね!”

 “詳細は後で送るから、確認しといてよ!”

 

 グループチャットで行われた会話に適当に返事をした。夏が去る気配なんて全くない外では蝉がうるさく鳴いていた。部屋の中では冷房をガンガンに効かせていて涼しい。

 夏がそろそろ終わるなんて微塵も感じない。外に一歩でも出れば暑くてたまらないだろうに。

 

 なんとなくだが、夏が終わるのが寂しかった。服屋に売ってる服は秋用、冬用すらもある。夏物はセールで安く買えるようになった。

 ただ、夏が終わりそうなものは人間が作り出したものばかりで、外の暑さなんかはまだまだ夏は続くんじゃないかと思わせた。それでもやっぱり時間は過ぎていくようで、朝のニュースで伝えられる最高気温はだんだんと下がっていった。

 

 

 夏祭り当日。天気は良く風は少ない、花火がよく見えそうである。浴衣を着ていくのも良いと思ったが、夜になると冷えるようになったのでやめた。

 隣町まで自転車で行くのは流石に億劫で、電車を使うことにした。普段は自転車で登校しているので、電車に乗るのは久しぶりだ。

 

 駅に着くと、もうすでに一緒に行く約束をした二人は待っていた。

「ちょっと、遅くない?」

「悪い。でも待ち合わせ時間には間に合ってるぞ」

「五分前行動は基本だろ? 学校で散々先生に口うるさく言われてるのに忘れたか?」

「以後気をつけま〜す」

「それ反省してない奴の台詞だから」

 二人とも浴衣は着ていなかった。俺だけ着てきて浮くなんてことがなくてよかったと少し安堵した。

「ほら、早く切符買って。電車来ちゃうよ」

「何駅まで?」

「三六〇円の切符買っとけ」

「サンキュ」

 慣れない手つきで切符を買い、改札に吸い込ませた。三分ほど待ったところで電車が来た。電車に乗ると、浴衣の人がちらほらといた。

 

 祭り会場はまぁ混んでいた。ここら辺の地域では最後の夏祭り、それに花火も有名である。そりゃ混むわけだ。

「私、りんご飴食べたい! そこで買ってきていい?」

「どうぞ。 おれイカ焼き買ってくる。お前は?」

「俺は……そうだな、あそこでフライドポテト買う」

「おっけー。じゃあ買ったらあの電柱の下で待ち合わせね」

 彼女はそう言うなりりんご飴の旗が掲げられている屋台へと行ってしまった。

「はえーなあいつ。ま、おれも買ってくる」

 彼も歩き出したので、俺もポテトを買いに行くことにした。

 

 無事に買いおえて電柱の下へ行くと、まだ誰もきていなかった。熱々のポテトを一人で摘んで口に入れた。

 夏は終わる、とか夜は冷える、とかそんなことを言ってもまだ暑い。じわじわと日光ではない暑さが体を包んでいた。目の前を歩く人々は扇子で仰いだり、ハンディファンを使ったりして暑さを凌いでいる。俺も何かしら持ってくるべきだったな、と反省した。

「お、お前早かったな。待たせたか?」

 イカ焼きを片手に彼が声をかけてきた。

「いや、全然。大丈夫」

「そう? あいつはまだか」

「まだだろ。りんご飴の屋台、結構並んでたしな」

「おれそんなとこまで見てないわ」

 お前凄いなーとケラケラ笑っていた。

「お待たせー。ごめんね、りんご飴混んでてさー」

「全っ然。おれなんて今来たばっかだぜ」

「俺も、全然待ってない」

「ほんと? ありがと」

 彼女は少しだけ反省を滲ませていた顔から、反省の色を消した。ころころと表情が変わる彼女は見ていて面白い、とだいぶ失礼なことを思った。

 

 それからいろんな屋台を回った。美味しそうなものを見つけるたびに並び、面白そうな屋台があるたびに並んだ。射的なんかは特に面白かった。絶対当ててやると意気込んだ彼は見事全てはずし、その後にやった彼女が景品をゲットしたのだから。笑ってしまった。それはもう、息ができないくらいには。彼には怒られた。

 

「そろそろ、場所取りするか」

 射的を外した彼が言った。

「そうだな。場所取りは早い方がいい。河川敷の方へ行こう」

「私も足が疲れてきたし、ちょうどいいと思う」

 射的で手に入れた、どこで使うんだよと言いたいオモチャを抱えた彼女が同意した。

 

 河川敷にはもうちらほらと人が集まりかけていた。まだ花火が始まるまで四半時以上あるというのに。それでもまだ場所は十分にあるので、花火がよく見えるであろう場所を探した。目の前に木がある、なんて場所は絶対にダメだ。せっかく早めにきたのだからいい場所に座りたい。

 

「ここ、よくない?」

 少し高くなっていて、花火がよく見えそうだ。こんなベストポジションよく残ってたなと思った。

 この場所を見つけた彼が、カバンからレジャーシートを取り出して地面に敷いた。靴を脱いで三人で横並びになって座った。

 

 どうでもいい話をしていると、どうやら時間になったようだった。気づけば周りにはたくさんの人が集まっていて、ざわついている。みな携帯や腕時計で時間を確認し、空を少し見上げてアナウンスを待った。

 空は暗く、それでも祭り会場の明かりで星はあまり見えない。

 

 あ!

 

 誰かが、声を上げた。声に釣られて上を見上げる。一筋の小さな光が空に上がった。

 

 

 空に、大きな花が咲いた。

 刹那に消える火の花が、暗い夜空を照らして咲いた。

 

 次々と咲いては散っていく花を見て俺は思うのだ

 「あぁ、夏が終わる」

 と。


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