シカと和解せよ   作:アラウンドブルー

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激闘の行方

 

 さて、今日のしかのこのこのここしたんたん二次小説【シカと和解せよ】は、日野南高校の校庭から物語を始めよう。

 

 バラエティ番組でよく見るような本格的なセットがいつの間にか拵えており、そこに前回戦うことになった虎視餡子とのこたんに加えこしたん、更に担任の鵜飼先生がいた。

 

 一体これは、何なのか。

 

 

「第2回、チキチキ! 虎視虎子王決定戦!!」

 

(なんで!? 第2回って何!?!?)

 

 

 怒涛の如く沸きあがる歓声。そう、シカとヤンデレの決着はこしたん限定クイズで決めることになったのだ。司会進行は鵜飼先生が務める模様。

 

 

「まずは選手お2人のご紹介ですっ」

 

「虎視虎子の妹にして、強烈無比のシスコン! 更に更に、血の繋がっていない兄がいるとも噂されるクールビューティ! その名も……虎視餡子ちゃん!!」

 

「この世界、私とお姉ちゃんとお兄様以外いる意味あります?」

 

「何!? 何なのこれ!?!?」

 

 

 こしたんは全く理解することができていなかった。

 

 

「続きまして、シカ部所属シカ! 鹿乃子のこさん!!」

 

「シカせんべいのために頑張ります!」

 

「聞こえてない!?!?」

 

「そんなお2人に迫られる虎視さん! 今のお気持ちは?」

 

「い、意味が分かりません……というか、私より建御くんの方がまずい状況にあると思うんですが彼は何処に…………」

 

「非常に楽しみということですね!」

 

「私の声は届いていますか……?」

 

 

 そう、この場には哀れな勘違い男・建御命の姿が無かった。この意味不明な状況をほったらかしにして帰る男ではないとこしたんは知っているが、現状は行方不明。

 

 

「気になる勝者への賞品ですが! 餡子ちゃんにはのこたんを奈良公園へ強制送還する権利! そして、建御くん専用のお世話セット!!」

 

 

 お世話セットと簡単に済ませてはいるが、賞品台には鞭やロウソク、ロープ、手枷、口枷、首輪などが置かれ、禍々しい雰囲気を放っていた。

 

 

「どう見ても拷問器具じゃないですか!!??」

 

「片やのこたんには、建御くん特製のシカせんべい100年分が贈られます!」

 

「アイツよく用意できたな!!」

 

 

 10年前から既に生産ラインは構築してある(by命)

 

 

「そしてそして……! 皆さん、長らくお待たせいたしました! 本企画のスペシャルゲストをお呼びしたいと思います!!」

 

「は、え? スペシャルゲスト?」

 

 

 バン! とライトが消え、ドラムロールが刻まれ始める。締めのシンバル音が鳴り響くと同時に、天から落ちてくる人影。スポットライトを浴びながら、顔を表に上げたその者こそ────

 

 

「────第1回虎視虎子王決定戦チャンピオン! 建御命くんです!!」

 

「シカと和解せよ、さすれば道は開かれん」

 

「チ、チャンピオン!? 本当に第1回行われたの!?!?」

 

 

 凛とした眼差しを観衆に向け、建御命は決めゼリフのような何かを言い放った。

 

 

「建御だ!」

 

「日野南高校の魂!」

 

「そうだ……シカ部の正義は彼にある!!」

 

「「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」」

 

「えっ、ちょ、なになに!? この大歓声!?!?」

 

「流石はお兄様ね!」

 

「シカせんべい……」

 

 

 会場のボルテージは最高潮。しかしそんな様子を見ても命は一切動じることは無かった。

 

 

「本日はお越し頂きありがとうございますっ! 早速ですが前チャンプ、今回の決定戦についてお聞かせください!」

 

「ええ、中々面白い対戦カードが揃ったと思いますね。餡子は前大会で戦ったことがありまして、接戦を繰り広げました。相当に強く、2年経った今は更に磨きがかかっていることでしょう」

 

「きゃっ♡ そんなに褒めてもお世話に気合い入れるくらいしかできないわ!」

 

「あ、餡子もこんなバカ企画に出てたの!? ていうか気合い入れるな命に何する気だ!!??」

 

 

 餡子は頬を両手で挟み、嬉しそうに身体をくねらせている。一方のこしたんは、実妹がこんな訳の分からない企画に以前も出ていたことを今初めて知り驚愕。

 

 更に、あの拷問器具を前にして妹がこれ以上何をするつもりなのかを考え、震えた。

 

 

「のこたんの方は初参加ですが、シカマイスターの俺でも想像がつかない能力、生態を兼ね備えておりますので率直に言って未知数! どちらが勝ってもおかしくはないかと」

 

「な、なんかこっちは割と普通なコメントだな……」

 

「んもう、たけみんったら……恥ずかしい…………」

 

「どこに恥ずかしい要素あった!?」

 

「チィッ!!」

 

 

 餡子こわっ、と鬼のような眼差しでのこたんを睨みつけ舌打ちする実妹を見て、こしたんは震えた。

 

 

「はい、ありがとうございます! では、そんな2人に虎視さん同様迫られる今のお気持ちを聞かせてください!」

 

「餡子への賞品である奈良公園へ強制送還の権利とお世話セット。のこたんへのシカせんべい。どちらも丹精込めて作ったものですので、勝者には大切に使っていただきたいですね。それはそれとして、ベストバウトを期待しております」

 

「お前があの拷問器具まで作ったの!?!?」

 

「貴重なコメント、ありがとうございますっ! ちなみに本企画は司会進行をシカ部顧問の鵜飼が、そして解説役は」

 

「シカ部副部長、シカマイスターの建御が務めさせていただきます」

 

「ここ暇人しかいないんですか……?」

 

 

 そしてついに、第2回虎視虎子王決定戦の幕が切られた。餡子とのこたんはそれぞれ席に着き、自然体で第一問に備える。

 

 

「第1問! 虎視さんが毎晩……」

 

 

 餡子による早押し。鵜飼先生が問題を読み終える前に、回答ボタンが叩かれた。

 

 

「フフフッ……『虎視さんが毎晩寝る前にしていることは何?』答えは、部屋にあるぬいぐるみ達とお話ししてからお休みのキスをする!」

 

「正解!」

 

「やめてええええええ!! 何この問題!? 何私のプライバシー晒してるの!?!?」

 

「今の問題は前大会でも1問目に出題されましたね。流石は餡子、素早い」

 

「前大会って本当何!? 私まったく知らないんですけど!!」

 

「ちなみに解説させていただきますと、最初が猫の猫美、次が犬の犬田、3番目がクマの熊蔵、4番目がウサギのミミちゃん、5番目がブタの豚之助といった順番が基本ですね。稀に3番と4番が入れ替わることがあるそうですが」

 

「流石は前チャンプ! 博識ですね!」

 

「なんで命……建御くんはそんなに詳しいの!?!?」

 

 

 更に詳細にプライバシーが暴かれ、挙句の果てにスクリーンにこしたんが猫のぬいぐるみとキスするシーンが映し出される。こしたんはプライバシーと抗議するが、観客は映像に釘付け。こしたんの好感度はうなぎ登りだった。

 

 

「続いて第2問! 虎視さんは今……」

 

 

 反撃と言わんばかりの、のこたんの早押し。先手を取られた餡子は悔しげに舌打ちをして睨みつけた。

 

 

「『こしたんは今ノーブラか?』正解は、ブラトップなので実質ノーブラと言える」

 

「だから何その問題!?」

 

 

 じっと、観客から好奇の目線に晒されるこしたん。思わず身体を抱き寄せてしまう。

 

 

「正解!」

 

「そ、そんなの見てみないと分からないじゃない!!」

 

「では、証拠の映像……の前に、建御くん! 貴方に問題です! これよりお見せする映像では、虎視さんは何色のブラトップを着用しているでしょうか!?」

 

「ピンクです。清楚で通っているこしたんですが、やはり可愛い物好き。それは下着でも同様」

 

「やめてェェェェェ!!」

 

「正解です! では、映像をご覧ください!!」

 

 

 映し出される映像。先程のキュート一辺倒なものから一転、今度はアダルティを感じさせるヌード映像が観客の前に晒された。健全な高校生たちは頬を紅潮させ、スクリーンから目を離すことができなくなってしまった。

 

 

「やめてやめてやめて!! さっきと言い、なんでこんな映像持ってるのよー!!??」

 

 

 ぴょんぴょんと飛び跳ねて、必死にスクリーンを隠そうとするこしたん。建御命は平然とした表情で腕を組んでおり、それを見たこしたんはイラっとした。

 

 

「第3問!」

 

「もう帰っていいですか!?」

 

「虎視さんがこれまで付き……」

 

 

 再びのこたんの早押し。

 

 

「『これまで付き合ってきた男性、もしくは女性は合わせて何人?』正解は0!!」

 

「いや、いるかもしれないじゃない!!」

 

「ダウト。いないが正解です」

 

「た、建御くん!?」

 

 

 苦し紛れのこしたんの発言をバッサリと切り捨てる命。

 

 ここで、不正解の音が鳴り響いた。

 

 

「残念、不正解です! 『虎視さんがこれまで付き合ってきた男性、もしくは女性は合わせて0人ですが、何故0人なのでしょう? 60文字以内で理由を述べよ』!」

 

「虎視虎子王決定戦初心者は引っかかりやすい罠ですね。のこたんめ、早まったな」

 

「そこ深堀する必要あります!? ていうかこの企画に初心者なんてないでしょ!?!?」

 

 

 回答権を失ったのこたんを後目に、余裕の態度で餡子はボタンを叩いた。

 

 

「『周囲の人が交際を始める様子に影響され、初恋のお兄様に以前よりも想いを募らせるが、自分からアタックできない拗らせ女子だから』」

 

「正解!」

 

「ジャスト60文字か。流石は餡子、見せつけてくれるじゃないか」

 

「ガチ考察やめて……! なんで命はそんなに平然としてるの……!?」

 

 

 実は想いを寄せらていることを知ったと言うのに、命は眉ひとつ動かすことは無かった。そろそろコイツをマグマにぶち込んでも怒られないと思う。

 

 その後もこしたんのプライベートの問題が次々と出題され、のこたんと餡子の戦いは一進一退の攻防が繰り広げられた。

 

 数時間経ち、時刻は夕方。のこたんと餡子のポイント数はお互い98000000。観客は白熱の接戦に興奮し、片やこしたんは真っ白に燃え尽きていた。

 

 

「どんだけ私のプライバシー暴いてんのよ…………」

 

「……こんなの絶対おかしいわ!! なんでシカごときがお姉ちゃんの情報をそんなに!? 何か裏があるに決まっているわ!!」

 

「それは本当同意…………」

 

「餡子。これが、今のお前のレベルということだ」

 

「お、お兄様!? ……ハッ! そ、そうか! お兄様はそいつに改造されシカと規格統一化されて、IoS(シカのインターネット化)により相互間でお姉ちゃんの情報を共有できるようになったんだ!! シカのツノはその情報を受信するアンテナで、お兄様はデジタルシカ社会を実現する先兵になっているんだわ!!!!」

 

「お姉ちゃん、妹が言っていること何一つ理解できないよ…………」

 

「はっきり言わせてもらう、お前頭おかしいぞ。IoSだのデジタルシカ社会だのがあるわけないだろ、常識的に考えて」

 

「お前が常識を語るなよ……頭おかしいのはここにいるヤツら全員だろ…………」

 

 

 哀愁漂うこしたんのつぶやき。当然、その言葉が誰の耳に入ることは無く。

 

 

「もうこうなったら実力行使よ! シカからお兄様を解放して、お姉ちゃんとお兄様は私が守るッ!!」

 

 

 餡子は取り出したスイッチを押した。すると、ミサイルのごとく何処かから一斉に大量のクナイが校庭へ発射された。ターゲットはのこたんただ1人。

 

 

「結局こうなったらクイズの意味無くね……?」

 

 

 罠はまだあると勝ち誇る餡子だが、

 

 

「フッ、この程度でのこたんは倒れんよ」

 

「ッ! なん、ですって……!?」

 

「餡子! あれを見てみろ!!」

 

「えええええええええ!?」

 

 

 そこで餡子が目にしたものとは、肉体を骨ごと変形させ全弾避けているのこたんだった。

 

 

「何なのよこのシカ! 大人しくやられなさいよ!!」

 

 

 カッとなった餡子は懐からもクナイを取りだし、マシンガンばりに投げ続けるが、それも全て交わされる。餡子の様子は、例えるなら格ゲーで意味無く弱ボタンを連打する初心者のようだった。

 

 

(疲れた……このドサクサに紛れて、家に帰るか)

 

「この害獣ッ! ────あっ!?」

 

「ッ! 虎子!!!!」

 

 

 餡子が最後のクナイを投げようとしたその時、先程の爆撃で破壊された舞台の瓦礫に足を取られ、照準がズレた。

 

 のこたんへ向かうはずだったクナイは、帰ろうとしているこしたんの元に突き刺さる────ことなく、のこたんがその身を盾にして守った。だが、その結果として彼女の胸にはクナイが突き刺さり、力無く倒れた。

 

 静まり返る観衆。鵜飼先生はもちろん、激昂していた餡子さえも言葉を失っていた。

 

 

「鹿乃子!!」

 

「のこたんッ!!」

 

 

 こしたんと命が一斉に駆け寄る。

 

 

「おい、鹿乃子!」

 

「こしたん……なんだかとっても、眠いんだ…………」

 

「何を言ってるんだ! しっかりしろ鹿乃子!!」

 

 

 かすかに目を開けたのこたんだが、その命は風前の灯。こしたんは必死に身体を揺するが、眠りにつくように目が閉ざされていく。

 

 

「のこたん……これ、お前が食いたがってたシカせんべいだぞ…………100年分どころじゃない、お前が望むならいつだって、いくらでも作ってやる……! だから、目を開けてくれ……!!」

 

「たけ……みん…………あり、がとう…………」

 

「「鹿乃子!! /のこたん!!」」

 

 

 のこたんの、鼓動が止まった。

 

 

「おい、なんでだよ……勝手に付きまとって、勝手に部活作って、勝手に人の事巻き込んだくせに……なのに、ああ……! 私は、お前といるのが楽しかった! だから、シカ部をお前や命と盛り上げて、いっぱい青春して…………なのに、なのに……私の前からいなくなるなよォ────ッ!!」

 

 

 天を仰ぐこしたん。命は涙を必死に堪え、敬礼をしていた。最後の最後までシカとして、人として魂を輝かせた彼女に感じたのは、『尊敬』の二文字だった。

 

 運命のシカと、もっと一緒にいたかった、シカ色の日々を送りたかった。そういった後悔、無念はあったが、それ以上に彼はのこたんを尊敬していた。

 

 生涯こしたんと命は、のこたんを忘れることは決して無いだろう────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【鹿乃子のこ-死亡-】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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