そのメイドラゴンの兄、聖皇にして   作:W297

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2話 聖皇の妹(まあ既にタイトルで言ってますが)

 

 …ルコア姉さんからトールがこっちの世界に来たということを告げられてから数日。

 

 俺は若干落ち着かない日々を過ごしていた。

 

 あれからというもの、ルコア姉さんからの連絡は入ってきていない。

 

 まああの人は基本的に向こうにいるヒトだ。

 

 こっちにもこれることは来れるが、向こうでの仕事もあるし。

 

 今の俺が出来ることは、ひたすら待つこと。

 

 ルコア姉さんにああいわれた以上、それを無下にする行動はできない。

 

「…はあ」

 

 俺はPCを打つ手を止めずにそうため息をつく。

 

「…ん、どうしたの或斗君?

 

 なんか最近ずっとテンション低いけど、何かあった?」

 

 隣の席で俺と同じようにPCを打ちながら小林さんがこちら側に顔を向けてくる。

 

 …まあ、それなりにボカシながら話していけか。

 

「いえ…、ちょっと最近妹と連絡が取れてなくて…」

 

「え、或斗君って妹居たの?」

 

 滝谷さんがそう言ってくるので「そうですよ」と続ける。

 

「可愛い妹ですよ、ホント。

 

 こっち来るときに分かれたんですけど、ちょくちょく連絡は取れてたんですよ。

 

 …ただ最近連絡すら取れなくなってて。

 

 久々に顔みたいな…って思ってるんですが」

 

「なるほどね…。

 

 そりゃ心配にもなるか…。

 

 って実家には連絡してないの?」

 

 小林さんはそう話してくるが、俺は「やりにくいんすよ…」と続ける。

 

「半分家出してそのまま就職しちゃったような感じなんでね…。

 

 あんまり帰りたくは無いんですよ。

 

 ここに入れたのも親がいろいろしてくれたってのはあるんですが…。

 

 ちょっと苦手なんですよね…」

 

「あー、分からんでもないわー…」

 

 俺がそう話していくと、小林さんは同感という表情を見せてくる。

 

「まあ、或斗君が大丈夫って思うことには始まらないんじゃない?

 

 或斗君結構しっかりしてるし、そんな或斗君の妹さんならきっと大丈夫だよ。

 

 その内きっと何かしら伝えてくれるはず」

 

「…ありがとうございます」

 

 俺は滝谷さんにそう返していく。

 

 …そんな中、俺の持っているスマートフォンが着信を告げてきた。

 

「…ちょっと、失礼します」

 

 俺がその場から離れ、改めて発信先を確認すると登録名には『ルコア姉さん』という文字が浮かんでいた。

 

「…もしもし、俺です」

 

『ヤッホー、ジーク君。

 

 トール君についての情報、僕にも届いたよ』

 

「本当っすか!?

 

 アイツは大丈夫なんですか!?」

 

 俺はそう聞くとルコア姉さんは『大丈夫みたいだよ』と続けてくる。

 

『さっきトール君から連絡が入ってね。

 

 どうやら今は元気に過ごせてるみたいだよ。

 

 大丈夫そうな声も聞こえてきたよ』

 

 ルコア姉さんはそのまま話を続けていく。

 

『…トール君、どうやら今は人間の家で一緒に過ごしてるみたいなんだ。

 

 さっき人間の衛生観念について聞かれたんだ』

 

「…人間と一緒に、ですか?」

 

 …正直、あのトールがである。

 

 トールは混沌勢所属であり、無意味に人間を嬲ったりはしない賢いドラゴンだが、人間自体は嫌っているはずだ。

 

 そんなトールが人間と過ごしている…、正直信じられない。

 

『うん、僕も驚いたんだけど『人間との生活は楽しいかい?』って聞いてみたら『はい』って答えてくれたんだ。

 

 別に声色とかからしても嘘ついてるようじゃなかったし、当面の間は大丈夫そうだよ』

 

「そうですか…」

 

 俺はそう言ってふうっと大きく安堵の息を吐く。

 

 …そんな中、俺の目にはどんよりと町を覆っていた雲が一気に消え去っていった。

 

 この魔力の量、間違いない、トールである。

 

 俺は一瞬言葉を失うが、改まってルコア姉さんに話していく。

 

「…今トールのブレスと魔力を確認しました。

 

 アイツが無事そうで何よりです。

 

 また今度、人間界について教えてやらねーと…」

 

『うん、今のそっちの世界は僕より君の方が知ってるだろうからね。

 

 いろいろと教えてあげたら?

 

 それと僕からも『ジーク君が心配してたから連絡入れたら?』って伝えておいたから。

 

 多分その内トール君から連絡入ると思うよ』

 

「分かりました。

 

 いろいろとありがとうございます、ルコア姉さん」

 

 俺が電話越しにそう感謝を告げて通話を終わると、俺はふうっと息をつく。

 

「…まずは、一安心かな」

 

 俺がそう呟くと、再び俺のスマホが着信を告げる。

 

「…はい、もしもし」

 

『…もしもし、あの…、お兄様ですか?』

 

 …この声、俺にとっては何回も聞いたことがあった。

 

「ああ、トール。

 

 無事だったようで何よりだよ」

 

『ええ…、何とか生き伸びれてます。

 

 今は人間の家にメイドとして住まわせてもらっています』

 

「…え、お前が?

 

 出来るのかそんなこと」

 

 俺がそう話すとトールは『大丈夫ですよ』と自信満々に答えてくれる。

 

『私はドラゴンですよ?

 

 人間に出来ることなんか簡単です』

 

「だと良いんだけど。

 

 …それとトール。

 

 お前今ブレス撃ったろ?」

 

『ええ、空が曇ってたので洗濯ものを乾かすために雲吹き飛ばそうかな…って』

 

 俺は「はあ…」とため息をつく。

 

「トール、また今度いろいろこの世界について教えてやる。

 

 後お前がなんでこっちに来たのかも聞きたいし、またどっかで会おうな」

 

『ええ、こちらこそです。

 

 お兄様、ご指導のほどお願いしますね』

 

 トールは俺にそう話してくるので、俺は改めて「トール」と告げる。

 

「…人間との暮らし、楽しめてるか?」

 

 俺がそう聞くと、、トールは『もちろんです!』と元気な声で返してきた。

 

「…なら良かったよ」

 

 俺はトールに向けてそう告げて通話を終わらせた。

 

 

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