デスマスターはかえれない ダイの大冒険奇譚   作:デスマス怒る

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今回ほぼほぼ捏造設定です。



3,バランの大冒険

乾いた音の正体はソアラによるバランへの平手打ちだった。

 

本来、竜闘気(ドラゴニックオーラ)は呪文を弾く他に、物理攻撃すらも弾き、それどころか直接攻撃してきた相手にダメージを与える刃の防御じみた特徴がある。

 

右手を振り上げたソアラを見て、バランは愛する妻を傷付けないよう自ら竜闘気(ドラゴニックオーラ)を納めたのだ。

 

「今だ、鎮静呪文(キアラル)!」

「わ、私は、すまない、エピロ、ソアラ。」

「どうも皆様ご迷惑をおかけ致しました。」

 

エピロのキアラルで落ち着きを取り戻したバランはソアラと共に頭を下げた。

 

「というわけで、おれ達はこれで。……瞬間移動呪文(ルーラ)!」

 

騒ぎを聞き付けた衛兵の走ってくるのに気が付いたエピロは夫婦二人の腕を掴まえ、ルーラを唱えた。目的地はテラン王国、王城前。

 

「これでおれ達は器物破損、迷惑防止条例違反のお尋ね者です。暫くベンガーナには近付かない方が良いでしょう。」

「すまないエピロ。」

「まぁ、しょうがないでしょう。ただ、船を借りるにも身元の証明が要りますから。」

 

城を守る兵士達は突如飛来した三人に警戒し、槍を構えたがその内の一人がエピロであることに気が付くと、構えを解いた。

 

エピロのしたためた紹介状を見せると、三人は直ぐ王の下へと通された。

 

テランの王フォルケンはエピロが訪ねてきたことに喜びを見せつつも、バランの事を聞いて直ぐそちらに全意識が向けられた。

 

「何と、(ドラゴン)の騎士様にお会いできるとは……」

 

その後、幾つか話し合いをし、フォルケン王はバランとソアラ、ついでにエピロの身元保証を証明する書類を発行することを約束してくれた。

 

 

謁見を終え、バランとソアラは客間に通された。

 

「無事でいてくれ、ディーノ。」

 

夫婦はただ、祈った。

 

数時間立ってエピロが客間を訪れた。その傍らにはベホマンもいる。

 

「良いお知らせです。ディーノ君は生きてます。」

「本当か!」

 

半ば椅子を蹴り倒すようにしてバランは立ち上がった。

 

「テラン王の知り合いにナバラさんという旅の凄腕占い師がい居ます。彼女がたまたまテランに帰ってきていたのでベホマンを拾いに行くついでに会いに行ってきたんですよ。」

「その占い師は、信用できるのか?」

「おれも占い師を修めた身ですからね、本物かどうかは分かります。彼女は間違いなく本物です。おれなんか足の小指にすら届かない。」

 

しかし、ここからが悪い知らせだ。生きているのは確実だが、何処に居るかは分からない、というのである。水晶玉にシルエットは映るのだが、モザイクがかかったようになっていて、場所がさっぱりわからないのだ。ディーノらしき人影にもモザイクはかかっているが、動いていることから死体ではないと判断できた。

 

なお。このような写り方はナバラにも初めてで、原因がわからないとのことだった。

 

「ディーノが……あの子が生きていると分かっただけでも嬉しゅうございます。」

「ソアラ……あぁ、そうだな。」

 

夫婦が抱き合って涙を流しているのを見て、エピロは客間を後にした。

 

その後、三人は一晩をテラン城で過ごした。身分証はその日の内にできていたが、ソアラの体調に配慮して一晩休むことを選択したのである。

 

フォルケン王はディーノが見つかったら親子三人でテランに移住しないかと夫婦に提案したが、バランは素直に心の内の人間不信を吐露し、フォルケンはじめ親切にしてくれたテランの人々を傷付けたくないから、と辞退した。しかし、ディーノが見つかれば、必ずまたテランに旅行に来る、とも約束した。

 

そうして身分証を手に、一行はベンガーナの港に向かったのである。

 

「エピロ、君まで付き合う必要もないのだぞ?」

「乗り掛かった船、おれの好きな言葉です。それに、沈没した船の人達も弔いたいですから。」

 

此度の件、彼にとってもいわば本業。死者を弔うのはデスマスターとして当然の事である。

 

確かにディーノは生きているが、かといって助かったのが多数派とは思えない。もしそうなら、船に乗っていた人はとっくに救助され、ディーノの行方も判明していると思われるのである。

 

彼は昨日の内にベンガーナの街の兵士詰め所に身分証を伴って訪れ、バランと揉めたことについて謝罪し、破損した石畳についても弁償をすませていたのである。

 

それどころか、今日の為に借りる船についても当たりを就けていたのだ。

そして事故の起きた海域の海図も購入し、その付近に存在する海流も調べてある。

 

「むーん。」

 

そんな有能エピロはいま、船室で溶けていた。船酔いである。鎮静呪文(キアラル)をかけても効果がなく、何度か船縁から嘔吐を繰り返し、弱りきっていたのだ。

 

ベホマンをクッション代わりに身体を預ける。彼の肌とベホマンの肌が触れたとこらか、ベホマンの持つ癒しの成分が染み込んで行く。これぞベホマズンエステ。エピロの決め細やかな肌の秘密であり、ソアラの火傷跡を治したのもこれである。

 

「バランさんもどうです~」

「いや、遠慮しておこう。」

 

エピロはすっかり気が抜けてふにゃふにゃになっており、恐るべし『ヒトをダメにするスライム(スライムベホマズン)』というところだった。流石に息子が見つかっていないのに気を抜く気はバランには無かった。

 

「あなたも癒されてはいかがですか?」

「ソアラ?」

 

先程から姿の見えないソアラはエピロの向こう側、ベホマンの背中にもたれ掛かっていた。

 

「あなたの身体、小さな傷が沢山あるでしょう?」

 

ヴェルザー一族との戦いで残った傷。特にヴェルザーの使う呪文は、暗黒闘気と同じく治癒を阻害する効果があった。

 

「冥竜王ヴェルザー……ですか。折角です、バランさん、聞かせて頂けませんか、あなたの冒険譚を。」

「分かった。他ならぬ恩人の頼みだからな。」

 

バランはソアラの隣に座り、ベホマンにもたれ掛かった。

 

「冥竜王ヴェルザー。恐るべき暗黒の力を震い、魔界の竜族の王に君臨していた。」

 

その吐息(ブレス)は地獄の業火と猛毒の霧。冥と名に付く通り、命を蝕む数々の技や呪法を身に付けていた恐るべき存在。死の言葉であるザキ系呪文はザキ、ザラキの他に滅魂呪文(ザラキーマ)まで修めていたという。

 

「この滅魂呪文(ザラキーマ)で命を奪われた者は魂をヴェルザーに囚われてしまう。それゆえ、ヴェルザーを倒さぬ限り蘇生が不可能なのだ。」

 

あるいは回復・治療・蘇生全ての上位に位置する秘呪文、極大命脈呪文(ザオリーマ)であれば囚われた魂を無理やりヴェルザーから引き剥がして蘇生が叶うかも知れないとバランは続けた。

 

「かつて私はヴェルザー封印の役目を持った天界の精霊達、そして私に忠誠を誓った三人の竜騎衆と共に魔界を旅した。だが、海戦騎はヴェルザーの滅魂呪文(ザラキーマ)から私達を守る盾となって死んだ。精霊達は極大命脈呪文(ザオリーマ)を試みようとしたが、その前に彼の遺体はヴェルザー配下のブレスで灰になった。」

 

いかにザオリーマといえど、ザオ系呪文には違いがなく、身体が無いのでは蘇生はできない。

 

「ヴェルザーには他にも恐ろしい呪文があった。恐らくエピロは名前を知っているのだろう。暗黒(ドルマ)系の呪文だ。」

「アストルティアでは主に賢者が使う呪文です。」

 

他には魔剣士も例に挙げられるが、かれらは生粋の魔法職というわけでは無いので、その得意呪文という認識は薄い。魔剣士は闇でもって闇と戦う正義の戦士。暗黒闘気を善の為に使いこなすアストルティアの職業だ。

 

「確かに、あの呪文を正しいことに使えるのは真に賢い者だろう。この世界の使い手はヴェルザー一族の者だけだった。」

 

この世界では全ての闇は悪と道義。ゆえにバランは闇属性を正義のために使うという話は聞いたこともなければ、そんな存在を目にしたこともなかった。昨日エピロが凍てつく波動の為に暗黒闘気を滲ませたときなど、少なからず動揺していた。善人としか思えないエピロが暗黒闘気を放つなど、と。

 

なお、エピロは光の闘気も使える。守護騎士(ガーディアン)として光の技を振るってきた経験もあるためだ。驚くことにベホマンも光の闘気を扱えるという。

 

暗黒呪文(ドルマ・ドルクマ)そして極大暗黒呪文(ドルモーア)。いずれも恐ろしい破壊力を持つ呪文だった。もはや重力と同等と言っても良いほどのエネルギーの奔流が、身体を内側から蝕むのだ。」

 

それらの呪文を用いてヴェルザー一族は外敵を排し、魔界の一角に君臨した。そして、その王者たるヴェルザーはより上位の呪文を身に付けていた。

 

「極大融合呪文……ドルマドンですね。」

「その通りだ。余りにも強すぎる暗黒エネルギーが為に如何なる呪文でも迎撃できず、むしろ取り込んで融合、巨大化するという恐ろしい呪文だった。スピード自慢の空戦騎が避ける術無く巻き込まれ、相棒のドラゴンと共に押し潰された。……その遺体は掌に乗る程のサイズにまで押し潰され、何処までが空戦騎で、何処までがドラゴンか分からない程に融着していた。」

 

そのレベルの損傷では当然、天界の精霊の蘇生呪文も効果は無かった。

 

「多大な犠牲を払いながらも、私達はとうとうヴェルザーの下に辿り着いた。しかし、ヴェルザーは追い詰められたと見るや、今度は黒の核晶(コア)という魔界の超爆弾を起爆したのだ。」

 

その爆発は、ヴェルザーの支配地域の大半を吹き飛ばした。陸戦騎によってバランと天界の精霊達は逃がされたが、彼自身はそのまま力尽きて爆発に飲み込まれた。

 

ヴェルザーもまた巻き込まれかけたが、持ち前の生命力が為に致命傷とはならなかった。

 

「だが、流石のヤツも支配圏を失ってはもとも子もないと思ったのか、私の抹殺の為に黒の核晶(コア)を使うことは二度と無かった。……私達は傷を癒すため、一度地上に退却した。ソアラ、君と出会ったあの泉で身体を癒していたのだ。」

 

その後、ハドラーの地上侵攻が進んでいるところを見て、ヴェルザーの前に片付けるかとも考えたのだが、凍れる時間の秘法を用いて魔王が封印されたのを感じとり魔界に戻ったのだった。脅威度で言えばヴェルザーの方が何倍も上なのである。

 

「私が地上で療養している間に、ヴェルザーは地上侵略の準備を進めていた。地上のすぐ下にある地下空間。魔界と地上とをつなぐそこに、前線基地を築いていたのだ。そしてそこが私とヴェルザーとの最終決戦の場所だった。」

 

最後の一撃はバラン渾身の必殺剣(ギガブレイク)、という訳でもなくただの一太刀だった。お互いに精も根も尽き果て、魔法力も闘気も枯れ、バランの最終戦闘形態化も解けてしまう程の死闘中の死闘の最後は、実にあっさりしたものだった。

 

バランの前に斃れたヴェルザーだったが、彼は不死身の魂を持つ。時間が立てば蘇ってしまう。

 

それを防ぐ為に、天界の精霊達は最後の役目を全うし、ヴェルザーの魂を石像に封じ込め、何処かへと追いやった。

 

そして役割を終えた精霊達も天へと還り、こうしてバランとヴェルザー一族との5年に渡る闘いは幕を閉じたのだった。

 

「その後、私は傷を癒すべく奇跡の泉を目指したが、辛うじて辿り着いたところで力尽き、そこをソアラに救われたのだ。」

 

もしも最終決戦の地が敵のホームグラウンドである魔界であったならば、バランは今頃生きてはいなかっただろう、と彼は締めくくった。

 

「ドルマドン……そこまでの呪文だったとは。……今度から連続ドルマドンを唱えるのが怖くなってしまいそうです。」

「連続ドルマドン……と言ったのか?」

極大融合呪文(ドルマドン)を三連続で撃ち込む呪法です。」

「禁呪法……では?」

「むしろ使えるものなら使ってみろって感じの高等呪文でしたね。」

「使えるのか……」

「仕込みがあれば。」

 

どうやらアストルティアは想像以上の魔境らしい、とバランは戦慄した。

 




ベホマンの使う光の闘気は、つまるところ仲間モンスターのスライム系が使うスラ・フラッシュとかです。

バランとアンルシアはどちらが強いのか。呪文の格だけなら極大電撃呪文(ジゴデイン)極大協調呪文(ミナデイン)を使えるアンルシアに軍配が上がるけど、バランが彼女に負けるビジョンが全く見えない。
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