【3話完結】仮面ライダーダブル&ビルド   作:アイナll

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2つの世界


3話 Bとの出会い/交差するライダー

 桐生戦兎は気がついた。コウモリ怪人との戦闘後、あの超音波と光の中で掃除機フルボトルが奪われていた。

 なんとも間抜けな話だが、この男 自称天才物理学者に抜かりはない。

 

 奪われた掃除機ボトルには微弱な電波を放つ小さな発信機をつけていた。通常の電波では拾えず、ベストマッチ関係のライオンフルボトルで強化した探知機(ビルドフォン)でようやく発見できるほど微弱な電波を。

 敵が去った後でマシンビルダーのレーダーを用いて発信源を追跡するだけだった。他の仮面ライダーが戦っている姿を見るまで。

 見たことが無い仮面ライダーがコウモリ怪人を退け、装置に入っていたボトルを持って去っていった。

 引き続き仮面ライダーに変身した男とフルボトルを追って市街に出ると戦兎は絶句した。

 

 気づかぬ間に、別世界に迷い込んでいるのだ。

 

 街の構造に大きな差は無いが、街のシンボルとなる巨大タワー、全く知らない都市の名前…街の景観は違和感がある程度だが、名称や店が変わるとまるで世界に取り残されたような…あの瞬間を思い出す。

 

 いや、今の自分に凹んでいる暇も感傷に浸る暇も残されていない。

 

 自称天才物理学者はフルボトルの追跡に戻る。

 

 

 

「すみませ〜ん。落とし物を探してるんですけど〜…」

 

 追跡の結果、フルボトルはこの鳴海探偵事務所という場所にあることが判明した。奇しくも喫茶店nascitaと同じ座標に店を構えていた。

 

 扉の中に入るが、そこには誰も居なかった。発信機はこの事務所の…隣、地下を示している。

 黄色い扉に手をかけたが、扉がひとりでに開いた。

 

「待っていたよ。さぁ、入りたまえ」

 

 扉を開けた青年は丁寧な口調のまま戦兎をガレージの中に招き入れた。

 

「っておいフィリップ!勝手に入れるんじゃ、」

 

「問題ないよ翔太郎。今回の件は彼の協力無しに解決は不可能だ。作戦会議をするなら彼の協力は必須だ。それはキミも分かっているだろ?」

 

 翔太郎と呼ばれた男性は感情的になるもフィリップと呼ばれた青年に論破される。彼らにとって日常的なやりとりをしている姿は万丈や猿渡達を連想してしまった。

 

「まずはコレを返そう」

 

 フィリップは掃除機フルボトルを戦兎の手に返した。

 

「気づいていたのか!」

 

「あぁ。だが、コレが何で何に使われていたか、までは分からなかったがね」

 

「そこは任せてくれ。この天ッ才物理学者 桐生戦兎に任せて下さいよ!」

 

「天才物理学者か。興味深い…。それも踏まえてブリーフィングを始めよう。桐生戦兎」

 

 

 

 フィリップはホワイトボードを一旦真っ白に消す。その間、翔太郎と戦兎は適当な椅子を見繕って腰掛ける。

 

「さて、今回の敵・最上魁星について桐生戦兎の知ることを教えてくれ」

 

「あぁ。俺の知る最上魁星という男は、、、」

 

 戦兎は自分の知る最上魁星という男について話した。そしてこの男を語る上で切り離せない、エニグマの話も。

 

「ってことは、あ〜…戦兎はそのエニグマって装置に巻き込まれてこの世界に来たのか」

 

「まぁそうなる」

 

 フィリップは戦兎の話をホワイトボードでまとめ、翔太郎は話を理解するので精一杯のようだった。

 

「…とするなら、最上魁星は今どこにいるんだ?2つの世界の自分と融合するのが目的なんだろう?」

 

「俺と最上が戦った時、最初はクモの怪人だったが後からコウモリの怪人になった。何か関係あるのか?」

 

「っ?!クモからコウモリ…ね」

 

 戦兎の情報を得てフィリップは何か思いつく。

 

「怪人、ここではドーパントと言うのだが、ドーパントになるにはガイアメモリを体内に取り入れる必要がある」

 

 フィリップの説明に合わせて翔太郎は写真を見せる。Mと書かれたメモリとマグマのドーパントを。

 

「原則としてガイアメモリは1人1つというものがある。理由は色々あるが、2つ以上使えば人間の限界を超えて消滅してしまう。ただしこれは“1人の人間につき”1本だ」

 

 フィリップは少し含みのある言い方をする。

 

「だが、こう考えるとどうだろう。2人の人間に1本ずつメモリを使用させ、ドーパントを融合させる。これならリスクは1人分だし、本質的に1人の人間だから拒絶反応も起こらない」

 

「そんなこと…ありかよ…」

 

「更に、今回使用されたバットメモリとスパイダーメモリは仮面ライダースカルに怨念を持つという共通点がある。メモリ同士の共鳴も考えられる」

 

「だが、、、」

 

 疑問が残る。

 1つ目。この世界の最上はどのようにして別世界の最上と繋がったのか。

 2つ目。別世界の最上はなぜこの研究に関わったのか。

 3つ目。倒された怪人のメモリがなぜ今あるのか。

 他にも疑問をあげればキリがない。

 

「その問いの答えとして、この世界の最上魁星は元財団Xの研究員だった。だろうね」

 

 分かりやすく、僕たちの世界をA、桐生戦兎の世界をBとしよう。

 

 財団Xとは危険な研究や兵器開発への資金協力を行う組織とされているが、その実態は不明だ。

 かつては風都でミュージアムという組織にガイアメモリの研究支援を行っていたが、組織の崩壊で財団はガイアメモリからは手を引いた。

 

 最上魁星Aは研究員として財団からミュージアムへ派遣されていた。

 彼は過去に破壊されたメモリの復元を担当していた。バット、スパイダーなど様々なメモリを復元したが、ミュージアム崩壊の前に組織を抜け単独で研究を始めた。おそらくこの時からエニグマの研究に着手したのだろう。

 エニグマを完成させたが、裏切りを許さないミュージアムの報復に遭いドーパント化した。

 おそらく、最上魁星Bは(僕は知らないが)カイザーシステムを応用し最上Aと融合しようとした。財団はコレを利用してドーパントの融合を作ったのだろう。

 

「つまり、最上Bは最上Aを。最上Aは最上Bを互いに利用し、互いに利用されて、最終的には財団Xの実験台になってしまったんだ。このまま放置すれば他の世界まで手を出しかねない」

 

「やってくれたな…財団X…!どれだけ人を弄べば気が済むんだ!」

 

 戦兎から得た知識とこの星の記憶を読んだフィリップにより、この恐ろしい計画の全貌が徐々に明かされていく。

 

「どうやれば2人の最上魁星を救える?」

 

 戦兎はフィリップに問いかける。

 

「僕たちダブルならドーパントからガイアメモリの摘出は可能だが、どれだけ大きな反動がくるか分からない。メモリから解放できたとして、メモリの毒素までは…」

 

「毒素…。よし、毒素は俺がどうにかしよう。この天才に救えない人はいない」

 

「なるほど。何かあると見た」

 

「後で見せてやるよ。俺の発・明・品」

 

「よし、いくぞフィリップ、戦兎。AだろうがBだろうが関係ねぇ。こっからは共闘して最上魁星を救うぞ」

 

 

 

 

 

「順調に融合しているわね」

 

 財団Xの研究員は苦しみもがくドーパントとステータスを見て呟く。

 カイザーシステムを基としスパイダードーパントとバットドーパントを融合させた。2度の戦闘でメモリ同士が強く共鳴し完全な1個体へと進化している。

 頭はクモが付きながらもコウモリ特有の牙と耳。右腕はコウモリの鉤爪、左腕はクモの鋭い爪その他にもクモとコウモリの要素が縫い合わされた、文字通りキメラの状態となっている。

 

「見つけたよ。財団X」

 

 研究所の扉が開かれる。そこには3人の男が立っていた。

 

「ちょうどいい。2人の仮面ライダー相手にどこまで戦えるのかデータを取ろう」

 

 研究員はパネルを操作し、部屋を二つに分断。自分は高所で見物し、3人はドーパントと同じ体育館ほどの広さの空間へ落とされる。

 

「これは…」

 

「完全に混ざってるね」

 

 男達はドライバーをベルトに巻き、変身する。

 

「「「変身!」」」

 

『ラビットタンク!』

『サイクロンジョーカー!』

 

 

「仮メん、、、rいだー!!!」

 

 

 怪人はもはや人の域を外れていた。

 クモとコウモリの特性を併せ持つドーパントは糸の弾丸、糸と超音波を利用した攻撃、爆破する網、蜘蛛爆弾を混ぜた爆破する爪…自分にダメージが入ろうと構わず攻撃の手を一才止めない。もはや人より獣のようだった。

 

「ダブル!一瞬奴を止めてくれ!」

 

「あぁ!」『任せたまえ』

『ルナメタル!』

 

 ダブルはメタルシャフトをムチのようにしならせ、クモの腕を絡める。そして本体へ接近し、コウモリの刃をメタルの装甲で強化された脇で押さえ込む。

 その間にビルドはフルボトルバスターにフルフルボトルを挿入し必殺技を放つ。

 

『フルフルマッチブレイク!』

 

 刃が赤く輝くフルボトルバスターでドーパントの“縫い目を”切り裂く。

 縫い目が開き、一つの体からバットとスパイダーが離れ始めているのが分かる。しかし完全には分離しきれていない。

 

「よし!」

 

『作戦の第一段階、融合システムの破壊を成功』「こっから俺たちの番だ」

『エクストリーム!』

 

 最上魁星を救う第一段階。2種類のドーパントを繋ぎ止めていたカイザーシステムを破壊。

 そして間髪入れずダブルがエクストリームにフォームチェンジ。瞬時にドーパントの状態を見極める。

 

『プリズム!マキシマムドライブ!』

「『プリズムブレイク!』」

 

 サイクロンジョーカーエクストリームから現れたプリズムビッカーの必殺技でバットとスパイダーの両面を斬る。が、

 

『メモリブレイクしきれない!』

 

 直前まで融合していた影響でメモリと使用者、メモリ同士、最上同士が深く結びついてしまい攻撃がメモリまで届かなかった。

 

「う、g、ああああ!!!!」

 

 しかしダメージは確かに刻まれた。

 メモリの能力は無効化されドーパントは内部から溢れようとするエネルギーに身動きができなくなっていた。

 第二段階、メモリと使用者の分離には失敗した。がこのまま放置すれば2体分のエネルギーに身を焼かれてしまう。

 

『ビルドジーニアス!』

「このまま畳み掛けるぞ!」

 

 すかさずビルドもビルドジーニアスにフォームチェンジ。

 第二段階が失敗した以上、取れる手段は1つしか残されていない。

 

『エクストリーム!マキシマムドライブ!』

「『ダブルエクストリーム!』」

 

『ジーニアスフィニッシュ!』

 

 2人のライダーによる同時攻撃。身動きが取れず、ダブルの作り出した竜巻に捕まったドーパントはコレを直撃する。

 

 ジーニアスの攻撃でガイアメモリの毒素を中和。

 エクストリームの攻撃でガイアメモリを摘出、破壊。

 

 ガイアメモリの抜けた怪人からは2人の最上魁星が弾かれるように倒れた。

 

 

 

 

 

「くそっ、やはり仮面ライダーが邪魔をするか。だがデータは手に入れた。次こそは」

 

 2人のライダーの戦闘を見た研究員は荷物をまとめて裏口から脱出を試みる。

 

「次はないぞ。数々の犯罪の首謀者としてお前を逮捕する」

 

 赤い革ジャンを着た刑事と他数名が行く手を阻む。

 

「っ?!お前は、なぜここに!」

 

「俺に質問するな」

 

「くそーーー!!!」

 

 

 

 

 

 あの後、2人の最上魁星は病院に搬送された一命を取り留めた。ジーニアスの影響か肉体的疲労以外は全く異常はなく、体力の回復と共に退院した。

 そして現在ーーー

 

「桐生戦兎。頼んでいたものは」

 

「あぁ。完っ璧に仕上げた」

 

「フィリップ君」

 

「こちらも、抜かりない」

 

「では取り掛かろう。今日中にエニグマを仕上げるぞ」

 

 探偵事務所のガレージで、再びエニグマの制作に取り掛かっている。

 

「っておかしいだろ!なんでまたエニグマを作ってんだぁ!」

 

「うるさいよ翔太郎。作業の邪魔だから君は亜樹子君とお茶でもしてるといい」

 

 相棒にここまでハッキリと言われると流石のハードボイルドも傷つくぜ…。

 いや、元々こうなる定めだったのかもしれない。

 星の記憶を閲覧する フィリップ、自称天才物理学者 桐生戦兎、そして世界を超える科学者 最上魁星2人。この4人が揃って一度発明の事になると止まらないのは目に見えていた。

 

「安心したまえ左翔太郎。今作っているエニグマは、こちらからあちらへの一方通行しかできない簡易版だ」

 

 Aと書かれたカードをかけたこの世界の最上魁星が説明をいれる。

 

「一度に移動できるのは多くて3名。更に、一度使えば自壊するプログラムを組み込んである。再びこの世界と繋がる事もないだろう」

 

 Bと書かれたカードをかけた別世界の最上魁星が捕捉を入れる。

 

「既に一度作った物だ。簡易版となると直すのも無理ない」

 

 フィリップも別世界へ渡る技術に興味深々の様子。いつもなら検索漬けになるが、星の本棚に無いだけにいつも以上に食い込んでいる。

 

「へぇ、この機械で…、」

 

 自称天才物理学者の桐生戦兎も破壊をしたことはあるらしいが、製造するのは初めてで物理学者魂が燃え上がっている。

 事務所の亜樹子は仕事詰めだった旦那が久し振りに帰ったらしく、かなり上機嫌だった。その旦那は連勤で寝ているんだとか。

 俺はと言うとこのレポートを残す他やることは無かった。

 

 あぁ元々受けていた依頼だが、怪人の消えた工場は取り壊し…ではなく、建物の中に研究施設を作る事になったらしい。建設費が浮いて、その分高価な機械を導入できると上機嫌だった。

 だが、消えた2人の同僚は未だ行方が分からない。財団Xが関わっていたとなると今はもう…。

 

「それはレポートか?」

 

「ん?あぁ。どんな大小関わらず、受けた依頼を遺すのは俺の流儀だ」

 

「…いいもんだな。自分の軌跡が残せるのは」

 

「そう言う戦兎こそ、エニグマの方はどうなった?」

 

「今最終調整に入った。最上魁星ABが仕上げるから俺は別れの挨拶でもしてこいって追い出されたんだ」

 

 タイプライターを打つ翔太郎のデスクに、コーヒーを飲みながら戦兎がやってくる。

 そうか、もう、終わるのか。

 

「3日も一緒にいなかったが…なんだ寂しいもんだな。誰かとの別れは」

 

「またいつか会えるさ。ダブル」

 

「そうだな。ビルド」

 

 俺たちは熱い握手を交わした。

 例えこの出会いが記憶に残らなかったとしても、俺たちの間に芽生えた絆は紛れもない本物だ。

 

 

 

「“またな”!風都のみんな!」

 

「あぁ。“またな”!」「またいつか」

 

 桐生戦兎と最上魁星Bは元の世界へ帰っていった。

 

 

 

 こうして1つの警告音から始まった事件は/ひょんな依頼から始まった事件は世界を超える大事件になった。

 利用し利用された科学者は正しい道を歩む事になった。男達はラブアンドピースのために/街の平和を守るために戦い続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎〜!かずみ〜ん!ゲンさ〜ん!どこー!伝説のプロテインは、どこだーーー!!!」

 

「…俺に質問するな(怒)」

 

 2人は案外、すぐ再開できるかもしれない。

 

 〜完?〜




今回の事件をプチ解説
(ダブル世界をA、ビルド世界をB)
・最上魁星Aは財団Xからミュージアムに派遣された研究員。過去に破壊されたメモリの復元を行なっていた。
ミュージアム崩壊前。財団から抜けて、永遠に研究するためエニグマの研究に着手する。

・最上魁星Bはエニグマを作るもビルドとエグゼイドに敗れる。
その後の新世界で研究員として生活するも、別世界に渡るためエニグマの開発に着手する。

【最上魁星はどの世界、どの時間軸にいても永遠の命/エニグマという理想に行き着いた】

・最上魁星ABはエニグマを完成させた。

・最上魁星Bはどこでもいいので出口を繋いだ結果、ダブルの世界と繋がった。
他の自分とカイザーシステムで融合しようと世界を超える。しかしA世界の財団Xに利用されスパイダードーパントにされる。

・最上魁星Aはバットドーパントにされた。財団Xによりカイザーシステムの応用でドーパンの融合に利用される。

・当初は混ざりきらず1つずつしか使用できなかったが、2度の戦闘とメモリが持つライダーへの怨念が2種類のドーパントを融合させた。



・ダブルとバットドーパントが最初に戦っていた場所の機械。コレはエニグマの一部で、世界との繋がりを作る役割をになっていた。
 フルボトルとはエボルトが標的とする惑星のエレメントを選出して作り出す物。新世界になったとはいえ、他ボトル・エボルトの遺伝子との繋がりによってB世界との繋がりが強固になり固定された。

・最後、科学者3人で作ったエニグマは言わば某Dらえもんの『どこでもドア』に近い。世界の繋がりを辿り、一方通行の道を作り出す。使用後は自壊プログラムと各ライダーが物理的に破壊して2度と開くことはない。他の世界から繋がらない限り。
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