アイリスと異世界食堂   作:虹華ξ紳士

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御子様洋食

 

 アイリスは今年になって十ほど年を重ねた一国の王女である。

 そんな彼女は、幼少期から高い知性と武芸の才能を持ち合わせており、王国の未来を担う存在として周囲から期待されている。

 彼女の生活は常に忙しさに包まれ、休む暇もなく日々の勉学や訓練に励む毎日が続いている。

 

 今日はそんな彼女のいつもの日課が行われていた。

 午前中はレインたち王宮の者たちによる歴史や政治の勉強に励み、午後にはクレアたち熟練の騎士たちから剣術や槍術の指導を受けた。

 

 そして夕方になると、ようやく一息をつける時間がやってくる。

 アイリスは従者たちに部屋へ戻ることを告げると、自室のベッドに腰を下ろし、ひとときの休息を取ることにした。

 

「ふぅ……今日でようやく今週の目標が終わりましたね。ふふっ」

 

 一週間のノルマを乗り切ってご機嫌なアイリス。

 彼女は小さなため息をつき、思わず微笑みを浮かべた。

 

 今週も多くの課題をこなしてきたが、その全てを無事にやり遂げたことで、達成感とともに充実感が広がる。

 常人であれば、この激務をこなしただけでへとへとになってしまうだろう。

 実際、アイリスの身の回りの世話をする従者たちでさえ、彼女のペースに追いつくのに逆に必死だった。

 

 しかし、王族としての彼女は違う。

 彼女の体力や精神力は歴代の勇者たちの血もあって規格外であり、朝から晩まで続く厳しい勉学や訓練も、まるで朝飯前のようにこなしてしまう。

 その強さこそが、王女たるアイリスの素質を示している。

 

 そして、アイリスの顔に浮かんだ「ふふっ」という小さな笑み――それは、この後に待っている特別な時間への期待感と喜びの表れであった。

 彼女はただ一週間を無事に乗り切ったことに満足しているのではない。

 その先に待っている”何か”が彼女をさらに喜ばせているのだ。

 

 コンコンと、部屋の扉が軽くノックされ、アイリスの従者の一人であるクレアが顔を覗かせた。

 彼女はいつも冷静で落ち着いた態度を崩さない、忠実で信頼のおける従者である。

 

「アイリス様、ご夕食の準備が整ったようです。どうぞお時間ですので、お着替えをなさったら私と共に城内の食堂へと向かいましょう」

 

 クレアは穏やかな声でそう伝えた。

 しかし、その瞬間、アイリスの反応は予想をはるかに超えていた。

 

「ええ、わかりました! 今すぐにでも行きます‼︎」

 

 即答するアイリス、すると。

 超・光速変身。

 その名の通り、アイリスはベッドから飛び上がり、目にも留まらぬ速さでクローゼットへと駆け寄ると、彼女の手はしゅばばっと動き、あっという間に可愛らしいドレスを選び取り、まるで魔法のように瞬時に着替えを済ませた。

 

 クレアが驚く間もなく、アイリスはすでに扉を開け放ち、食堂へと向かっていた。

 

「アイリス様⁉︎ そのようなはしたない行動は……って一人で行ってしまわれましたか」

 

 クレアは小さくため息をつきながら、アイリスの後を追った。

 

「しかし仕方ありませんね。今日はアイリス様の特別な日ですから」

 

 そう、今日という日はアイリスにとって、とっておきの時間。

 特別な日……城内食堂に設置されたあの神器が……いや、“扉”が唯一開く時間。

 

 

――彼の神器の名は『異世界食堂』

 

 

ξ

 

 

 チリンチリン、扉の開く音と共に鈴の音が優しく耳をくすぐった。

 アイリスとクレアは異世界食堂へ足を踏み入れる。

 

 二人は店内の賑わいに驚きながらも、ほっと一息をついた。

 異世界の人々や種族が一堂に会するこの場所は、どこか神秘的でありながらも、心地よい温もりに満ちている。

 

「アイリス様、覚えていますか? 本日は前回のように料理をお残しをしないよう、しっかりと自分のお腹と相談して料理を注文するのですよ?」

 

 クレアは注意深く言い聞かせる。

 

「わかっていますよ、クレア。私だってそれくらい学びました!」

 

 アイリスは胸を張って答えるものの、瞳の奥には、まだ幼さが残っている。

 しかし、その無邪気さが彼女の魅力でもあった。

 

「ほら、あそこの奥の席が空いています! 早く座りましょう!」

 

 と、彼女は勇んで席を見つける。

 店内を見渡すと、びーると呼ばれる黄金の液体を大きな木樽ジョッキに注いで飲んでいるドワーフや、明らかに異種族であるリザードマンのような生物がおむれつと呼ばれる物体に赤いソースのようなものをかけて頬張っていたりする姿が目に入る。

 

 まるで異国の市場に迷い込んだかのような雰囲気だ。

 

「いいですか、アイリス様。くれぐれも、店内を歩き回って他のお客様たちに声がけをしたりするのは、マナー違反ですからね」

「もう! わかっていますよ。でもクレアだって、前回は良くわからない魔法使いのおじさんと料理を語り合っていたじゃないですか」

「うっ、それは……いやいや『ほらクレア、早く席に着きましょう?』……はい」

 

 二人は席に着くと、ふんわりとしたソファーが彼女たちの背中を優しく支えた。

 柔らかい座り心地に、アイリスは思わず背筋を伸ばす。

 

 そんな中、角を生やしたウェイターが非常に透明に澄んだ水をサービスで運んでくる。

 

 からんからんと、これまた綺麗な氷が水中を泳いでいた。

 純度の高い水がアイリスの乾いた喉を潤す。

 

「どうしてこんなに澄んでいるのでしょうか。まるで龍が住む山の清流のようです」

 アイリスが感嘆すると、クレアも同意する。

「ええ、まさに神秘的ですね。異世界だからこそ、こういった奇跡が起こるのでしょう」

 

 しばらくして、アイリスはメニューを手に取り、じっくりと目を通す。

 そのために、万物の言語を翻訳するとてもすごい宝石の神器が使われているのだが、これはとりあえず置いておこう。

 

 あまりに魅力的な料理が並んでいて、どれを選ぶか悩んでしまう。

 

「私はもう決まっていますよ、アイリス様。やはりあれにします」

 

 とクレアが言うと、アイリスは驚いた。

 

「また同じものを頼むのですか? クレアはもっと冒険してみたほうがいいと思います」

「いいえアイリス様、私は一度天啓を受けた料理を変えるつもりはありません」

 

 真剣な顔で答えるクレアに、アイリスは思わず笑ってしまう。

 

「ふふっ、まったくクレアったら。私は少し悩みますから、待っていてくださいね」

 

 再びメニューを眺めてみる。

 にほんしゅ? ……確かこれは酔いがどうこうでクレアからは今はまだ駄目だと言われているやつだと他のメニューを探す。

 

 みーとそーすぱすた? を頼んでみたい気もするが、一品で頼むには勿体無い。

 

 であらば、はんばーぐはどうだろうか? これは確か肉の柔らかい塊であって、肉汁が口の中に広がって良いのだとか……。

 でも、前回は似た様なもので三百とかいう量を頼んでみたら残してしまったのだ、結局クレアが完食してくれたが、逆に百では物足りないきもするだろう。

 

 そうだ、先人を見習っておむれつならどうだろうか、これも中々香ばしい匂いがしていて、前回は異種族の方に見せてもらったやつだ。

 

 いやいや、ここは悩んだらてんぷらがいいと聞いたこともある、食堂の人たちがパンやら米やそのままが良いなど多くを語り合っていたほどの金字塔らしい。

 

 でもでも、甘いものを食べたいと思うのが少女の心、しかしこれではせっかくの料理がお菓子タイムになってしまうだろう、何か良い解決策はあるだろうか。

 すると……あった。

 

 アイリスは悩んだ末に、ついに決断する。

 

「クレア。その、私は”これ”を食べてみたい……です」

 

 言葉尻が小さくなり、アイリスの頬は少し紅く染まっている。

 その理由は皆まで言うまい、クレアは微笑んで了解をした。

 この料理は先ほど述べたものが少しずつ乗っていて、どうも贅沢だが最適に見えたのだ。

 

 ウェイターがやってきて、二人の注文を確認する。

 

「では飲み物は……ぐれーぷそーだ、をお願いします」

「私はにほんしゅを一つ」

 

 さらっとクレアが注文したものに、アイリスは目を丸くするが、微笑んで聞き流した。

 クレアは前回それを初めて飲んで、とても美味しそうに、幸せそうに浸っていたのだ。

 かく言う自分も、歯に悪いと言われている甘いものを頼んでいるが見逃してもらった。

 

 お互いに秘密を共有しながら、二人は注文が届くのを待つ。

 異世界の食堂で過ごすひとときは、アイリスにとって何よりも大切な時間だった。

 

 

ξ

 

 

 料理が届くまでの間、アイリスはこの扉が現れるまでの出来事を思い出していた。

 この扉――神器は、アイリスが宝物庫で遊んでいた(父公認)時。

 

 カッコいい剣や禍々しい斧などが散乱するこの部屋は、国のある意味心臓部。

 アイリスはそんな空間を自由に歩き回って様々な神器を物色していた。

 

「あっ、何かを落としてしまいました」

 

 するとある時、ふと彼女の小さな身体が豪華絢爛な机にぶつかってしまい、その衝動で縦に積み重ねられていた宝物の一部が落ちてしまった。

 

「いけません……何か壊したら父さまに怒られてしまいます。……んぅ?」

 

 アイリスは落とした物を拾うため身体をかがめる。

 すると、絨毯の上には小さな古びた箱があった。

 何やら重厚な箱であったが、特に危険感知にも反応することはないので、彼女は気にせず開いてみることにした。

 

――中にはピンクに輝く謎の鍵が一つ入っている。

 

「一体どこの鍵でしょうか? 何か大事なものを守っているのでしょうか」

 

 当初はどこの鍵かわからず、もしかしたら重要なものを封印しているかもしれないと思ったので、アイリスは興味本位で近くにあった宝箱に片っ端から手をかけようとした。

 

 するとそこに父が訪れ、彼女がその鍵を持っていることを発見される。

 父、王はなぜか汗をだらだらとかきながらアイリスに近寄ってくる。

 

「あ、アイリス。悪いことは言わない。その鍵は父さんに渡して欲しい。それは母さんに見つかったら……いや何でもない。それはとても重要な機密文書の入った非常に大切な鍵なのだ。とにかく! そういうわけで、その手に持っている物は私に預けて欲しい。男同士の友情だ」

「は、はい。ですが私は女ですよ、父さま?」

 

 大人しくピンクの鍵を返却するアイリス。

 しかし宝箱開封遊びに興じていた彼女は、少し寂しげ様子である。

 それを見かねた父はどうにも居た堪れない気持ちになった。

 

「代わりといっては何だが、アイリスにはこれをあげよう」

「そ、それは!」

 

 強大な魔力を感じる金色の鍵。

 黄金に輝くそれは、父が常日頃から肌身離さずに大切にしている、アイリス幼少期の頃から七不思議であった秘密の鍵。

 

 今まで幾度となく、その正体を教えてもらうとしたが渋々断られてきた神秘の存在。

 それが今なんと、アイリスの手元にある。

 嬉しさと同時に、だが困惑も残る。

 

「……ですが、一体なんなのでしょう?」

「これは、『異世界食堂』の鍵だよ、アイリス」

 

――異世界食堂

 

「とはいったい?」

「城内の食堂に一つ、飾り扉があるだろう? アレだよ、アレ」

「アレと言われましても……それと何の関係があるのですか?」

「実はだな、あの扉の正体は、週に一度だけ開く神器なのだよ」

「ええっ⁉︎」

「そしてそれに対応する鍵こそが、今アイリスにあげたものだ」

 

 手元に輝く黄金の鍵、それは神器の一部だと言う。

 

「そんなに大事な物を私に……あの飾り扉は開くものだったのですね。いえそれよりも、『異世界食堂』とはつまり何なのでしょうか」

「ふふっ、そう焦るでない。おお、ちょうど今夜がドヨウの日であったか。しかし私は今夜から大臣たちと魔王軍の対処について話し合いがあるからなぁ……。うむ、アイリスよ。今夜はこっそり、誰か従者一人を誘ってその鍵を持ったまま、あの扉の前に立ってみなさい。さすれば全てが分かる」

 

 父のその言葉に、アイリスは胸が高鳴った。

 異世界食堂……その響きは彼女にとって、未知の冒険を予感させるものだった。

 

「は、はい。父様がそうおっしゃるのなら、試してみます」

「おおそうだ、くれぐれもエリス硬貨を忘れない様に。今私がアイリスに渡しておこう。その名の通り食堂であるからな、対価が必要とされる」

 

 アイリスは少しばかりの(主観)の硬貨を渡され、そのまま自室へと戻ることになった。

 

 未知の場所であるので一人で行くのは少し心細い。

 父に言われたとおり、誰かを誘おうと悩んだ結果、彼女は信頼のおける従者であるクレアを選んだ。

 クレアは自分のことを理解してくれており、何より頼りになる存在だった。

 アイリスばクレアに「こっそりと一緒に来てほしい」と頼むと、彼女も快諾してくれた。

 

 その夜、アイリスは少しドキドキしながら、異世界食堂の前に立つこととなる。

 扉の謎と、これから訪れる未知の世界に思いを馳せながら、彼女の”初めての冒険”が始まろうとしていた。

 

 

ξ

 

 

「アイリス様、料理が出来上がったようです。今ウェイターがこちらに向かってきていますよ」

「はっ! もうそんな時間でしたか。ここは頼んでから届くまでが一瞬のように感じてしまいます」

 

 思考の波から引き戻されたアイリスは目の前に広がる料理に目を輝かせる。

 少女の頼んだ料理、それは“御子様洋食”。

 

 普通の人なら『おこさまようしょく』と読むだろうが、アイリスの身分にとってはむしろ『おおんこさまようしょく』であろう。

 ともかく、注文していた料理が届いたのである。

 

 アイリスの頼んだものはプレートの上に様々な料理が小さく乗って、しかし華やかだ。

 それは正しく夢が詰まったメニューであり、色とりどりの美食がぎゅっと詰まっている。 

 目の前に広がる御子様洋食の一皿は、見る者の心を躍らせる宝石箱のような存在感。

 我慢できない、というようにアイリスはクレアに目を向けると早速食事を始めた。

 

「では……いただきます!」

 

 まず目を引くのは、黄金色の輝きを放つぷっくりとしたえびふらい。

 サクサクの衣に包まれ、細かく繊細なパン粉が光を反射し、一口噛むたびにそのカリッとした心地よい食感が音を立てる。

 中からは甘みとほんのり塩気のあるぷりぷりとしたエビの身が顔を覗かせ、その甘くジューシーな味わいが口いっぱいに広がり、衣の香ばしさと見事調和する。

 

「うぅ〜ん」

 

 そして、たるたるそーす、と呼ばれるものをたっぷりとつけると、酸味とコクが加わり、さらに一層の深みを感じさせる至福のひとときをアイリスに与える。

 

 その隣には、黄色くふんわりと丸みを帯びたおむれつが静かに横たわっている。

 表面はほんのりとした光沢があり、彼女の唇に触れた瞬間にぷるんと弾むような柔らかさが伝わった。

 その黄色の柔肌をそっと切り開くと、中からはとろりとした半熟卵が溶け出し、鮮やかな黄色がプレートに人が広がる。

 

「わぁ……っ〜」

 

 香ばしいバターの匂いがふわりと漂い、舌に乗せた瞬間、卵の甘みとバターの濃厚なコクが一体となって、まるでアイリスを雲の上にいるかのような軽やかで幸せな味わいをもたらしてくれる。

 

 中央を陣取るのは、食欲をそそる真っ赤なミートソースに包まれたパスタだ。

 艶やかなトマトソースが麺にしっかりと絡みつき、ひき肉の旨みが強かな風味を楽しめる。

 ソースには、じっくりと煮込まれたであろうトマトの甘酸っぱさと、玉ねぎひゃガーリックの芳醇な香りが溶け込んでいて、一口食べるたびに異国の風景が頭の中に広がる。

 

「はわぁ〜っ!」

 

 粉チーズが軽く振りかけられ、その香りがさらに味わいを引き立てている。

 ひとつひとつの麺がしっかりとソースを抱きしめ、そのバランスの取れた味わいがアイリスを瞬く間に虜にした。

 

 そして、皿の主役といえるはんばーぐが、その中央パスタの上に堂々と鎮座している。

 肉厚でふっくらとした形状は、まるで職人の手で丁寧に作られた芸術作品のようで、料理を創作とするならば正にその名の通りであろう。

 ナイフを片手に、そっと切り込みを入れると、肉汁がじゅわっと溢れ出し、そのジューシーさにアイリスの目が釘付けになる。

 ひき肉の旨味がぎゅっと詰まったはんばーぐは、一口食べるごとに肉の柔らかさと甘みが広がり、噛むたびに心地よい満足感を彼女に与えてくれる。

 濃厚で奥深いデミグラスソースが全体を包み込んでおり、そのコクとほのかな酸味がハンバーグと絶妙なハーモーニーを奏でる。

 

「ごくりっ……」

 

 ソースにはほんのり大人な赤ワインの香りが漂い、まるで王城の宴会で出される逸品すらを凌ぐほどの、上品で洗練された味わいだ。

 

 お皿の彩りを豊かにしているのは、鮮やかな緑のブロッコリーと、真っ赤に輝くミニトマトだ。

 ブロッコリーは、ほんの少し塩茹でされたのか、その自然な甘みとシャキシャキとした歯応えがアクセントとなっている。

 

「んっ、ぅん」

 

 ミニトマトは、一口頬張ると、パチンと弾けるような感触とともに、みずみずしい酸味とほのかな甘みが口の中に広がり、食事全体に爽やかなリズムを添えている。

 

「最後にっ……!」

 

 皿の端にはぷりんが置かれていた。

 これこそがアイリスの一番の楽しみと言って良いかもしれない。

 まるで黄金色の宝石のように輝いているそれは、つるんと滑らかな表面でほんの少し店内の光を反射し、静かな振動とともに、見るだけでその柔らかさが伝わってくる。

 

「んん、幸せです〜」

 

 ふんわりと漂うバニラの甘い香りが、食べる前から幸せな気持ちを引き出してくれる。

 アイリスがスプーンをそっと入れると、ぷりんの滑らかな質感が心地よく、柔らかくスムーズに口元へと運ばれる。

 クリーミーで優しい甘さと、卵とミルクのまろやかな風味が舌の上で溶けるように感じられる。

 シンプルながらも奥深い味わいが、一口ごとに広がっていった。

 

 

ξ

 

 

 気づけば、料理は皿の上から綺麗さっぱり無くなっていた。

 

「……ふぅ。もうお腹いっぱいになってしまいました」

 

 満足げにそう呟く少女、正に眼福である。

 

「アイリス様、とても幸せそうな顔をしていましたね」

「全くクレアったら。そんな貴方だって、にほんしゅで少し顔が赤くなっていますよ?」

「ふふっ、いずれアイリス様も大人になられたら、一緒に嗜んでみましょう」

 

 幸せな時間はあっというまに過ぎてしまった。

 本当はもっと長居したいところだが、もうそろそろ寝る時間、帰宅する頃合いだ。

 

 ほんのりとした笑顔を咲かせたアイリスは最後に、自身の頭に纏う装飾である葡萄と同じ、ぐれーぷじゅーすを飲み干すと、爽やかな喉腰とともに、素晴らしい食事たちへお別れの挨拶をするのだ。

 

「ご馳走さまでした!」

 

 会計を済ませ、アイリスたちは異世界から王城へと戻っていた。

 その右手には、滑らかな黄金色の菓子の入った箱がある。

 そしてその顔には花の咲くような優しい笑みが。

 

 

「みんな、お土産喜んでくれるかな?」

 

―END―

 




御子様洋食、私たちも頼んで良いのでしょうか?

原作アイリスほどの魅力を出したい……出したい
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